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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★

著者:  海老沢泰久
出版社: 文藝春秋

  『美味礼讃』は一応フィクション。辻静雄と言う人の半生を描いた重厚な小説。

  でも、主人公の辻静雄は実在の人物。フランス料理研究家。美味しいものを追求するために、一生を捧げた人です。

  辻静雄は日本に本当のフランス料理というものを持ち込み、それまでのでたらめな「西洋料理」を駆逐しました。そして、それだけでなく父の学校を引き継いで発展させ、辻調理師学校を設立、優れた料理人をたくさん育成していきました。最期は色々食べ過ぎて肝臓を悪くして死去。

  美食というのは怖いものだなぁと感じました。料理の世界はとにかく残酷らしいです。とにかく古くなったらもうおしまい、味が落ちたらもうおしまい、という世界だから、もうみんな必死で蹴落としあうわけです。壮絶です・・・

  あと、辻静雄らは料理の研究のために何千万・何億円とお金をつぎ込むわけですが。地球の裏側では何万という人が餓死している一方で、日本では美食のために金が山積みされているこの世界と言うのはいったいなんなのか、と感じました。

  食べるという行為の意味自体が場所によって全く異なるわけです。一方の場所においては生きるためであり、もう一方の場所においては楽しむため。楽しむのが悪いとは思わないけど、物凄い差です。「辻の美食はブルジョアの真似事だ!」と吠える辻静雄の元同僚の記者がいるんだけど(嫉妬から言ったとしか思えないけど)、ある程度は共感します。

  しかし、辻静雄が「料理は芸術だ」というふうに言って、金に糸目を付けないところはやっぱり凄いとは感じました。日本の食を変革した、辻静雄の静かでありながら凄まじい人生を淡々と描いたところが素晴らしいです。


自森人読書 美味礼讃
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