自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
無限のことを深く考えていく前に、まず数について考えていきます。普段、誰もが何気なく数を使っています。ですが、実は数というものも案外奥が深いのだということを遠山啓は明らかにします。2+3が、5だということはすぐに分かります、一つ一つ数えていけば良いのです。しかし、200000000と300000000を地道に足していこうとすれば、大変な時間がかかります。恐ろしいことになります。素直に数えるのでは無理です。そういうときどうするか。
1億をひと塊とみれば良いのです。そうすると、2億という数は「1億」の塊が2つ、3億という数は「1億」の塊が3つ集まったもの、ということになります。そうすれば、すぐに足せます。「「1億」の塊2つ+「1億」の塊3つ=「1億」の塊5つ」です。だから、「2億+3億=5億」というふうになります。
そこで、遠山啓は、「数の概念の規定は集合数と単位であり、数そのものは両者の統一である」というヘーゲルの言葉を引用しつつ、「1億という数は、一方では1をたくさん集めたものである点では集合数であり、他方ではひと塊とみなされる点では単位」であると示します。つまり、相反するものが数のなかには共存していることを明らかにするわけです。深いです。しかし、まだ、それがスタート地点。そういうふうにして、基礎的な部分にも論理が活きていることを確認してから、カントールの集合論、幾何学、群論、位相空間、トポロジー、非ユークリッド空間などを扱っていきます。
平明な啓蒙書。1952年初版。
遠山啓は、はしがきで、「音符が読めなくても、すぐれた音楽鑑賞家にはなれるように、難解な数式などに触れずとも数学を鑑賞することはできるのではないかという乱暴な類推を頼りにし、ひたすら読者の知的感受性をあてにしながら、この弁明をつづった」と書いています。
数学の定理が、発見者の人生などとからめつつ説明されているので、興味が持てます(「盲目の幾何学者」ポントリャーギンなど)。多用されるたとえが面白いところも良いです。
「第1章 無限を数える/第2章 「もの」と「働き」/第3章 創られた空間/第4章 初めに群ありき」といった各章のタイトルも魅力的。
最後の辺りはかなり難しいのですが、全体的にはわかりやすいです。数学というもののことが分かります。数学は、物事を抽象化するわけですが、その抽象化の過程を理解することが出来ます。だから、面白いし、興味深いです。数学の中では、独特の言葉が多用されるわけだけど、それらについても説明されています。「点」や「距離」といった言葉が、数学の様々な分野で使われているので混乱しますが、『無限と連続』を読んでおくとさほど混乱しないはず。
読んだ本
遠山啓『無限と連続』
読んでいる最中
川上弘美『センセイの鞄』
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