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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★

著者:  殊能将之
出版社: 講談社

  少女が次々と惨殺されます。その首にはハサミが突き立てられていました。マスコミは犯人を「ハサミ男」と呼び、凶悪な犯行をセンセーショナルに報じます。一方、警察は犯人逮捕に全力を注ぐのですが、犯人はまったく姿を見せません。そして、とうとう3人目の被害者がでてしまいます。しかし、3人目の少女を殺したのは「ハサミ男」ではありませんでした。自分が狙っていた獲物を奪われた本物の「ハサミ男」は、2人目の「ハサミ男」、つまり模倣犯を追跡するのですが・・・

  トリッキーな叙述ミステリ。殊能将之のデビュー作。

  読んでいる最中、「語り手は誰か」ということを考えてみて一度はトリックに気付きかけました。しかし、視点が錯綜するのでやっぱり違うかも、と考えを改めたら騙されました。だけど、ミステリを齧ったことがある人ならば、真相に気付くかも知れません。この物語の仕掛けは、ある意味では定番ともいえるものだからです。

  とはいえ、全体の構成が見事だし、明快なところもなかなかに良いです。そして、伏線を回収していく手際も素晴らしいです。

  いかにも、京極夏彦的。二重人格なとなどが出てきてその上やたらと分厚くて、しかも最も肝心なところで読者の期待をみごとに裏切るのです。信じられないような偶然が発生します。著者はあえて、そのような偶然を挟み込んだのではないか、と感じます。

  不吉すぎるラストが印象的。

  第13回メフィスト賞受賞作。


自森人読書 ハサミ男
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