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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★

著者:  歌野晶午
出版社: 文藝春秋

  主人公は、成瀬将虎。彼は常日頃から肉体を鍛えつつ、女の子と遊んでいました。そんなある日、後輩のキヨシからお嬢様・愛子の心を掴むために助力してくれないか、と相談を受けます。ちょうど運悪く、愛子の父が、轢き逃げ事件に遭って死去。保険金詐欺事件に関係したために殺されたのではないか、と推測する愛子は、成瀬将虎に事件の謎を解いて欲しい、と依頼してきます。

  同じ頃、成瀬将虎は地下鉄で飛び降り自殺を図った麻宮さくらという女性を助けます。2人はだんだんと仲良くなっていくのですが・・・ その2つの出来事が錯綜しながらも絡み合っていきます。そして、物語が最後の辺りに突入していくと、トンデモないことが分かります。

  タイトルからして、トリッキー。

  まさかそういう話だとは・・・ 意外性は抜群。ため息をつきたくなります。びっくりでした。歌野晶午という人は騙りの名手だと感嘆しました。小説だからこそ成立する叙述トリックが仕掛けられています。素晴らしい出来です。

  「その物」が何であるのかを誤認させられるのが小説の特徴です。「それ」は物なのか、動物なのか、人間なのか。人間だとしたら男なのか女なのか、何歳なのか、何者なのか。小説だとそれらを全て隠したまま物語を進行できます(テレビや映画では、そうはいかないと思う)。

  その小説という表現方法の特徴が、とてもうまく活かされています。これに★5つあげないわけにはいかないのではないか。でもどうだろうか・・・ いろんな意味であざとすぎる気もします。

  第4回本格ミステリ大賞受賞。『このミステリーがすごい!』2004年版第1位。本格ミステリベスト10/2004年版第1位。


自森人読書 葉桜の季節に君を想うということ
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