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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★

著者:  小島信夫
出版社: 講談社

  大学講師の夫は、ある日妻がアメリカ兵と情事を重ねていると聞いて驚愕。それをどうにかするべく、息子・娘を誘って家事を手伝おうとしたり、米兵と妻を対決させたりしようするのですが、どうしても上手くいきません。何をしても滑稽になってしまうのです。そして彼は家を引っ越すのですが、その途端に妻の乳癌を発見してしまい・・・

  高度成長期の崩壊していく日本の家族を描いた作品、なのか?

  アメリカ的なものが侵入してきて、日本の家父長制をぶち壊していくその様子を陰惨かつ滑稽に描いたものらしいです。あまりにもありきたりな展開をみせるのですが、「それは狙ってやったことだ」と指摘する大江健三郎の解説を読んで、ちょっと納得しました。

  全体的にもやもやして気持ち悪いです。文章に掴みどころがない。展開にも掴みどころがない。悲劇的な雰囲気が最高潮に達すると、それをぶち壊すように何かが起こり、ぐにゃりと悲壮感とかががねじまげられます。凄くもやもやもやもや。隔靴掻痒とはこういうことか。

  最初から最後までなんだか何かがわからない。それは、物語としての論理性が破壊されており(文学を支える「お約束」が通用せず)、そして主語と述語が妙にずれた文体がその支離滅裂な世界を支えているからなのではないかと思いもするのですが明確には理解できなかったです。だけど、そこが作者の持ち味なのではないか、とも感じました。

  カフカの「不条理」と通ずるものがある気がします。いや、もししたら全く逆なのかも知れないけど。カフカの作品では、「自分」と「世界」は断絶しているのですが、小島信夫の作品だと「自分」は「世界」に取り込まれてしまいます。

  最終的に抱擁どころか離散しているし。タイトルはいったいなんだったのか。考えさせられます。

  第1回谷崎潤一郎賞受賞作。


自森人読書 抱擁家族
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