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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★★

著者:  町田康
出版社: 中央公論新社

  「河内十人斬り」という実際に起きた大量殺人事件を取り上げた小説です。なぜ、犯人である熊太郎は、友である弥五郎とともに10人もの人間を次々と殺してしまったのであろうか・・・? というよりも、熊太郎という男はなぜに「孤独」なのだろう? 自分の考えていることと、吐き出される言葉が一致しないことで苦しむ彼の苦悩を追っていった物語です。

  冬休みと春休みに分割して読んだ本。文庫で800ページ。ポケットに入らない厚さ・・・ だけど、最後のあたりは一気呵成に読めてしまいます。それだけ乗りやすい文章です。登場人物たちが使う河内弁というのが生きています。

  暴走しまくりでぶっ飛ぶ文体。町田康の冷静な分析(著者が物語に口を挟む)。それに加えて、主人公・熊太郎のスパイラルのような思考の追跡、どれもおかしくて笑えます。深刻なのに滑稽、いや滑稽にして深刻です。

  最後の殺戮の部分だけしかなかったら、熊太郎はなんだかよく分からない理屈で人を次々と殺す極悪非道な理解できない「やつ」としか思えなかっただろうけど、そこに到るまでの彼の人生が語られることで、熊太郎も人間の1人なんだということがよく分かります。ちょっと考えることがいちいちアホっぽいんだけど・・・

  言いたいことは山ほどあるのにそれを言語化できない熊太郎。言葉ってなんだろうか、と考えさせられます。言葉というのはとても便利なもののはずなんだけど、それですくい取れないものっていうのもあるのではないか。人間の「思弁的」であるがゆえの、つらさみたいなものが表されています。

  いや、逆に人間は、言葉でもって思考を働かせているのだとしたら、全ては言葉にできるのではないか。だって言葉にならないものはそもそも存在しないのだから。でも、言葉にできない心情というのも確かにありそうな気がするよなぁ・・・ しかし、「言葉に出来ないもの」というふうな表現によって、「言葉にできないもの」も言葉に出来てしまうんだよなぁ。そこまでいくとほとんど言葉遊び、というかジレンマだけど・・・

  第41回谷崎潤一郎賞受賞作。2006年第3回本屋大賞ノミネート作(7位)。


自森人読書 告白
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