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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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『ある家族の会話』
父レーヴィ教授は、とにかく短気な人。すぐ激怒し、雷のような声で怒鳴り散らし、「社会主義と英国、ゾラの小説とロックフェラー財団、山とアオスタ渓谷のガイドたち」を愛し、母や子供たちが何かにはまると「新星発見!」といいます。母リディアは、天真爛漫な人。「社会主義とヴェルレーヌの詩と、音楽とくにローエングリン」を愛し、自分よりも若い女友達との会話を好んでいます。長女パオラは母親と仲が良くて、長男ジーノは登山を好む上に真面目なので父親に愛され、次男マリオは「イル・バーコ・デル・カーロ・デル・マーロ」と言うのが好きで文学とくにプルーストについて語ることを好み、三男アルベルトはサッカーにうつつを抜かしているものの誰よりも人付き合いが得意。

ファシズムが台頭してくるイタリアの中で明るく生き抜いていく一家のことを、末娘ナタリアが綴っていきます。

ナタリア・ギンズブルグの自伝小説。

多分、須賀敦子の翻訳が素晴らしいのだと思います。読むのが楽しいし、笑えます。とくに、父レーヴィ教授がとにかく愉快。彼はすぐに激怒し、怒鳴ります。社会常識を知らず、少しだけ変てこなのだけど、それが素晴らしい。

一家は、表立ってムッソリーニ率いるファシズム党に反対し、追われる人たちを庇い続けます。たとえば、社会主義者トゥラーティを自宅に匿います。

しかも、後半になってくるとユダヤ系ということもあって、否が応でも政治に関わるようになってきます。友人が投獄されたり、父が逮捕されたりします。それでも一家はくじけないし、変わりません。父レーヴィはすぐ激怒し、怒鳴るし、母リディアは天真爛漫なまま。それが楽しいです。とはいえ、何もかもが変わらないわけでもありません。ナタリアの夫レオーネ・ギンズブルグは獄死するし、いろんな人が禿げていきます。その辺りが痛々しくて寂しいです。時がたったのだなぁと感じます。

白水社。


読んだ本
ナタリア・ギンズブルグ『ある家族の会話』

読んでいる最中
レイ・ブラッドベリ『塵よりよみがえり』
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