自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
叔父は旅に出た後、行方不明になってしまいます。私は、叔父に関する小説『アサッテの人』を完成させようとしましたが、その度に頓挫します。それなので、叔父に関する記憶、書きためてきた叔父に関する草稿、叔父の家に残されていた三冊分の日記をそのまま並べていきます。叔父は「ポンパ!」や「チリパッパ」といった言葉を唐突に発する奇癖を持っていて・・・
愉快な小説。
物語の主題は言葉です。叔父が、言葉と観念にとりつかれて四苦八苦する様が様々な角度から綴られています。その結果、言葉のわからなさのようなものが浮き彫りになります。
叔父は変人です。叔父のことをそのまま書き記したら、喜劇的な不条理小説が完成するはずです。しかし、『アサッテの人』は全てを突き放して、不可解に没していくわけではありません。狂気の世界に飛び込んでいくわけでもありません。
叔父を近くから見ていた私が常識を踏まえて綴ります。奇天烈は客観的に扱われていくのです。だから、奇天烈が徹底的に突き抜けることはありません。そういう構造自体は平凡かも知れません。作中に登場する小道具も古臭い気がしないではないです。ベケットか、という感じです。
しかし、諸々の要素を詰め込みながら、最後まで崩れません。なんとなく、「典型的な小説」と呼びたくなります。突き抜けて欲しいと思わないでもないですが、それでも、このとどまる具合がいいのかも知れません。本当に面白いです。
第50回群像新人文学賞、第137回芥川賞受賞作。
読んだ本
諏訪哲史『アサッテの人』
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