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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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著者:  早乙女愛
出版社: 岩波書店

  1944年10月10日、沖縄本島の那覇はアメリカ空軍の空襲を受け、大変な被害を受けました。それは10・10空襲と呼ばれていますがその空襲が沖縄戦の始まりだというふうによく言われています。しかし、実はそれ以前にも沖縄の子どもたちの命が数多く失われていました。疎開のために九州を目指して沖縄を出立し、アメリカ軍に沈められた船があったのです。対馬丸といいます。

  『海に沈んだ対馬丸―子どもたちの沖縄戦』は、7人の生存者の証言をもとにしながら、対馬丸沈没のときの様子を明らかにした1冊。

  20万人の方が亡くなったと言われても、いまいち理解できません。だからこそ「100万人死んだ」とか普通に書いてある軍記物が読めるのだろうと思います。一方『海に沈んだ対馬丸』は視点をぐっと個人にたぐり寄せています。ずっと泣いていたという妙、泣かず無駄口も叩かない強い清。1人ひとりの人が克明に描かれていてそれが積み重なり、伝わってきます。ずしりと重く考えさせられる本です。

  ふと思い出したのですが、中学修学旅行のとき、お会いした金城重明さん(「集団自決」を経験した方)は「沖縄戦は、軍官民共生共死が強要された残酷な戦い」と語っていました。その第一歩が、この対馬丸による子ども達の疎開とその沈没なのではないか。対馬丸の沈没は「離れるも地獄、残るも地獄」といわれた沖縄戦の端緒、ひいては「人類史上最大の戦争」第二次世界大戦の一部なのであって、その背景も含めて考えていくことが大切だと感じました。

  妙さんが「戦争が終わってからが本当に大変だった」と語っているのも印象的でした。事実のもみ消しによって対馬丸のことを喋る事が許されず、沖縄とは異なる地での暮らしに苦しみ、戦後は故郷・沖縄が米軍に接収されることになる・・ 記録上の終戦は本当の終戦ではない、たくさんの傷痕が残されていたんだという当たり前のことを痛感しました。


自森人読書 海に沈んだ対馬丸―子どもたちの沖縄戦
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