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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★

著者:  遠藤周作
出版社: 新潮社

  「イエス・キリスト」とはどんな人だったのか?

  それは多くの人が抱き、追求してきた問いです。『イエスの生涯』は、優れた文学者でありながら、悩み多きキリスト教信者でもあった(日本人でありながら、キリスト教を信ずることは矛盾するのではないか、と彼は悩んでいたという)、遠藤周作が彼なりに思索し、イエス・キリストという人のことを読み解いていった結果生まれた彼のイエス像を綴ったものです。

  あとがきでは、井上洋治が「永遠の同伴者としてのイエス」こそがこの本のテーマである、と書いています。全くその通りで、人類全体に寄り添い、1人ひとりを慮り、一生を送った人イエスという人のことが書かれています。

  「右の頬を打たれたならば、左の頬を差し出せ」という言葉が象徴している、といわれますが、キリスト教の根本には「博愛」という思想があります。そこに遠藤周作も注目しているようです。

  作中で、遠藤周作は「キリストは、神の愛、愛の神を説いた」というふうに書いています。神を、それまでの(たとえばユダヤ教の)罪に対して残酷な罰をくだす厳格な父ではなくて、罪人ですら愛する母として説いたから、イエスが支持を受けたという考え方は非常に面白いと感じました。

  つまり弱き者のためにある、のか・・・

  しかし、どうして博愛を説いたキリスト教が、ヨーロッパ中世において権力者の支配の道具になり下がってしまったのか。遠藤周作は、そういうふうにして変わってしまった「キリスト教」をぶち壊し、それを再び普遍的なもの(たとえば、日本人にも通ずるもの)として捉え直そうとしているようですが、そこには共感します。


自森人読書 イエスの生涯
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