自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
1922年にドイツ・バイエルン地方の片田舎で一家が惨殺されました。警察は必死で捜査したものの犯人は分からないまま。そして、事件は迷宮入りになってしまいました。著者シェンケルは、第二次大戦後に時代をうつし、その事件を様々な角度から見ていきます。探偵は登場しません。様々な関係者が自分の見たままを語るだけです。そして、様々な謎が掘り起こされていきます。なぜ事件は起こってしまったのか。殺された一家はどのような家庭を築いていたのか。犯人はいったい誰なのか・・・?
ドイツのミステリ。
曖昧にはなっていますが、犯人の側からも事態が記述されているため、叙述ミステリのようです。
基本的に、意外性はないし、どっきりさせられることもありませんが、とにかく陰鬱です。風景も登場人物も物語自体も。
いろんな人に取材していくうちに、事件の構造が明らかになってくるところは、宮部みゆき『理由』に似ていますが、『理由』ほど壮大ではありません。『凍える森』で扱われている事件が、案外単純なものだからなのか。少し肩透かしをくらったように感じます。
しかし、事件をみていくことで社会のゆがみのようなものが明らかになってくるところは共通しています。殺された一家の中には、強権的で抑圧的な家長がいたと分かります。彼の行いには疑問を覚えます。
ドイツ・ミステリー大賞受賞作。シェンケルのデビュー作。
読んだ本
アンドレア・M・シェンケル『凍える森』
読んでいる最中
森見登美彦『宵山万華鏡』
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