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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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ベスト10確実?
●伊坂幸太郎『あるキング』
●万城目学『プリンセス・トヨトミ』
●奥田英朗『無理』
●道尾秀介『鬼の跫音』
●東野圭吾『新参者』(or『パラドックス13』)
●有川浩『三匹のおっさん』or『植物図鑑』or『フリーター、家を買う。』
●村上春樹『1Q84』


ベスト30確実?
●湊かなえ『少女』or『贖罪』
●柳広司『ダブル・ジョーカー』
●川上未映子『ヘヴン』
●高村薫『太陽を曳く馬』
●森見登美彦『恋文の技術』or『宵山万華鏡』
●村山由佳『ダブル・ファンタジー』
●三浦しをん『神去なあなあ日常』
●奥泉光『神器―軍艦「橿原」殺人事件』
●今野敏『同期』
●和田竜『小太郎の左腕』


ベスト30に入るかも?
●北村薫『鷺と雪』
●宮部みゆき『英雄の書』
●米澤穂信『追想五断章』
●真保裕一『アマルフィ』
●恩田陸『訪問者』
●桜庭一樹『製鉄天使』
●夏川草介『神様のカルテ』
●佐々木譲『廃墟に乞う』or『暴雪圏』
●綾辻行人『Another』


2010年(2009年に出版された本が対象)の本屋大賞候補を再度予想してみます。まぁ多分、あまり当たらないと思います。半分あたればいいなぁ・・・
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ベスト10確実?
●伊坂幸太郎『あるキング』
●万城目学『プリンセス・トヨトミ』
●奥田英朗『無理』
●道尾秀介『鬼の跫音』
●東野圭吾『新参者』(or『パラドックス13』)
●有川浩『三匹のおっさん』or『植物図鑑』or『フリーター、家を買う。』


ベスト30確実?
●村上春樹『1Q84』
●湊かなえ『少女』or『贖罪』
●川上未映子『ヘヴン』
●柳広司『ダブル・ジョーカー』
●高村薫『太陽を曳く馬』
●森見登美彦『恋文の技術』or『宵山万華鏡』
●村山由佳『ダブル・ファンタジー』
●三浦しをん『神去なあなあ日常』
●奥泉光『神器―軍艦「橿原」殺人事件』
●今野敏『同期』


ベスト30に入るかも?
●北村薫『鷺と雪』
●宮部みゆき『英雄の書』
●真保裕一『アマルフィ』
●米澤穂信『追想五断章』
●和田竜『小太郎の左腕』
●恩田陸『訪問者』
●桜庭一樹『製鉄天使』

2010年(2009年に出版された本が対象)の本屋大賞候補を再度予想してみます。まぁ多分、あまり当たらないと思います。半分あたればいいなぁ・・・
『本屋大賞〈2004〉』
世の中には本がたくさんあるんだなぁ、と実感できます。なのに読む暇は全然ない。

う~ん、読みたい本がまた増えてしまいました・・・
『SFが読みたい!〈2002年版〉』



今日読んだ本
本の雑誌編集部『本屋大賞〈2004〉』
SFマガジン編集部『SFが読みたい!〈2002年版〉』


今読んでいる本
コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』
『時間衝突』
物語の舞台は近未来の地球。人類亜種を駆逐して異種戦争に勝利した白人たち(真人)の国家タイタンが、世界を支配していました。考古学者ヘシュケは、三百年前に撮られた一枚の写真を見て驚きます。そこには現在の姿よりもはるかに古びた遺跡が写っていたからです。ようするにその遺跡は日に日に新しくなっているわけです。いったいどういうことなのか。その後、彼は偶然に発見した時間旅行機に乗って未来へいくことになるのですが・・・

時間を扱ったSF小説。タイトル通り、時間の衝突が描かれています。

途中で、突如として時間を自在に操作する中国人たちの宇宙都市〈レトルト・シティ〉に、はなしが移ります。その都市では生産区域と娯楽区域が分断され、行き来できないようになっています。なんというか、奇妙な仕組みです。登場する中国人たちも面白いです。いつでも冷静で、茫洋としていて決して感情に流されないのです。

人種差別の問題も巧みに取り込まれていますが、基本的にリアリズムとは無縁と言ってもよく、とにかく奇想天外な驚きが追求されています。よくこのようなことを考え付くものだ、と感心しました。

日本版序文はブルース・スターリング。訳者は大森望。愛に満ちた訳者あとがきがまた良いです。

星雲賞受賞作。


今日読んだ本
バリントン・J・ベイリー『時間衝突』

今読んでいる本
コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』
『ハイブリッドチャイルド』
『ハイブリッドチャイルド』は、大原まり子の中短編集。

『ハイブリッド・チャイルド』
サンプルBⅢ号は、人類が強大な機械帝国アディアプトロンに対抗するため作り出した戦闘用生体メカニック。肉と機械によって構成され、そして原動力は核融合炉であり、不死を誇るため雑種(ハイブリッド)と呼ばれます。彼は人間の命令に絶対に従うはずだったのになぜか意思を持ち、脱走します。そして、人里離れた一軒家で、著名な女性作家とその娘ヨナに出会います。作家はほとんど発狂寸前、娘は虐待され続けて死んでしまったのに意外な形で蘇っていて・・・

『告別のあいさつ』
ヨナ(サンプルBⅢ号)は、孤独を好んで険しい山に住処を決めた老人のもとで過ごします。ですが、老人のもとを訪れた人に気付かれ、ヨナは背中から翼をはやし、飛び立ちます。

『アクアプラネット』
ママであるドラゴン・コスモスに庇護されつつ宇宙を漂っていたヨナは、白い棺の中に閉じ込められたシバという少年に出会います。2人は惹かれあい、惑星カリタスに降り立つのですが、その星を支配している人工知能ミラグロスがアディプロトンの攻撃を受け、「学習障害」を起こし、発狂。それを復元するために動き回っていたら、2人は離れ離れになってしまい・・・

子と母の物語。

ヨナ(サンプルBⅢ号)の他に、もう一人主人公がいます。八百年の記憶を持ったまま老人の姿でこの世に生まれ落ちた神官です。彼は国の頂点にあって人類の全てを把握し、指揮します(サンプルBⅢ号をつくったのも彼)。ですが、年を経るごとに若返っていき、全ての記憶を失っていきます。そして迷いの中に陥っていきます。

予想ができず、ザクッと刈り込まれているのにぴったりくる文章。くらくらするほどぶっ飛んでいて、どこまでも広がっていくイメージ。壮大で寓話的・神話的な物語。いかにも大原まり子らしい作品。


今日読んだ本
大原まり子『ハイブリッド・チャイルド』
大原まり子『告別のあいさつ』
大原まり子『アクアプラネット』


今読んでいる本
コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』
バリントン・J・ベイリー『時間衝突』
『戦国自衛隊』
米軍と自衛隊は日本海側全土にまたがる大演習を行っていました。その最中、伊庭三尉らの一団は突如として戦国時代にタイムスリップしてしまいます。彼らは、戦国時代で生きていく覚悟を決め、長尾景虎(上杉謙信)の臣下として活躍。哨戒艇、装甲車、ヘリコプターなどの近代兵器を用いて他の大名たちを蹴散らしていきますが・・・

中篇。

気軽に読めるのですが、「自衛隊とは何か」「天皇とは何か」「歴史には修正機能があるのか」といった様々なことを考えさせてくれます。意外に深いです。

最後になって伊庭三尉が、歴史を変えようとしていたのに、結局のところ自分たちの行動が歴史を修正していたのだと気付くところではどきりとさせられました。少し遅すぎる気もしないではないのですが。


今日読んだ本
半村良『戦国自衛隊』

今読んでいる本
コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』
大原まり子『ハイブリッドチャイルド』
『百年の孤独』
まだマコンドが小さな街だった頃、ふらりと現れたジプシーの賢人・メルキアデスと仲良くなったホセ・アルカディオ・ブエンディアは、優れた指導者ではなく錬金術などに入れ込む変人になってしまいます。ジプシーたちは強力な磁石や望遠鏡や空飛ぶ絨毯を次々と持ち込みますが、ホセ・アルカディオ・ブエンディアの妻ウルスラはそれらには目もくれず、アルカディオ、アウレリャノ、アマランタ、拾い子レベーカといった子どもたちを育て上げました。アルカディオはピラル・テルネラに夢中になりますが子どもができたと知ると失踪。一方、アウレリャノは自由党に属して大佐となり、何十度となく政府に叛乱を起こす非道な男となります。アマランタ、レベーカはピエトロ・クレスピをめぐって反目しあいますが・・・

マコンドという地に根付き、100年にわたって繁栄し、近代化の狂奔の中で腐敗し、消え去っていくブエンディア一族の物語。

ほとんど要約不可能。なんでも起こる蜃気楼の街マコンド。空飛ぶ絨毯まで持ってくるジプシーたち。チョコを飲んで浮遊する神父。内向的で、未来を予測する少年アウレリャノ。盲目になっても匂いで全てを把握する気丈な母親ウルスラなどなど変人奇人が溢れています。

最初のうちは神話的なのですが、じょじょに生々しくなっていきます。少年の頃は内向的だったアウレリャノが自由党側に属し、政府軍に対して何十度も叛乱を起こすようになります。次々と様々な人が去っていきます。そして、バナナ会社が街に侵入してきます。マジックリアリズムの手法でもってラテンアメリカそのものを表現したといわれる理由が分かってきます。

それにしても物凄い、というしかないです。最後の辺りには著者自身が少しだけ登場。


今日読んだ本
G.ガルシア=マルケス『百年の孤独』

今読んでいる本
コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』
半村良『戦国自衛隊』
『人類は衰退しました③』
人類が衰退して数世紀がたちました。人類最後の学校を卒業し、調停官となった旧人類の少女は、新人類「妖精さん」たちと仲良くなります。妖精さんたちはお菓子が大好きな小人さん。わらわらと集まるととんでもないことをしでかすのですが、すぐに散らばってしまいます。今回、私は助手さんとともにヒト・モニュメント計画(過去の人類の全てをまとめる壮大な計画)に参加。その影響で「夏の電気まつり」が開催されることとなり、辺りはお祭り騒ぎになりますが、電磁波のために妖精さんたちは去り・・・

今回は長篇。

なかなかに面白いのですが、さすがに長いのでだれる部分があります。もう少しコンパクトにならないものか、と感じてしまいました。

ギャグやパロディが次々と飛び出すけれど、凝った展開ではありません。基本的にはダンジョン形式みたいな感じ。ただし、最後の怪獣乱闘の部分には笑いました。


今日読んだ本
田中ロミオ『人類は衰退しました③』

今読んでいる本
G.ガルシア=マルケス『百年の孤独』
コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』
アマゾンの人たちの写真と岡本太郎の言葉が並べられています。なんというか迫力がありました。

しかし、岡本太郎の言葉は意味が分からないです。でも写真を見ているだけで楽しいので別に構わないのですが。


今日読んだ本
『アマゾンの侍たち×岡本太郎』

今読んでいる本
G.ガルシア=マルケス『百年の孤独』
田中ロミオ『人類は衰退しました③』
『華氏451度』
物語の舞台は、焚書が行われ、日常的に戦争が行われている近未来の世界。多くの人はテレビやラジオなどの感覚的なメディアに入り浸り、何も考えずに日々を過ごしています。そして禁止された本などには見向きもしませんでした。主人公ガイ・モンターグは、ファイアマンとして本を燃やすことを仕事としています。ですが、クラリスという感受性豊かな人と出会い、自分の仕事の意味を疑い始めます。そして、それを裏切りととられ・・・

SF小説。

華氏451度というのは紙が自然発火する温度。

『華氏451度』の中でレイ・ブラッドベリは本というものの素晴らしさと必要性を謳いあげています。文化を継承する道具として本というものは大切だよなぁ、と感じます。

感覚的なメディアが世界を均一化し、全ての人間の思考・思想を一色に染め上げていくことは容易に予想できますが、それに対してどのように向き合えば良いのか考えることは非常に難しいです。自分もまたテレビやラジオに入り浸っている人間の一人でもあるからです。インターネットが生まれたために状況はさらに複雑になっています。本当にどうすれば良いのだろう・・・

レイ・ブラッドベリの小説は基本的にファンタジックです。詩的で感傷的で、読みづらいのだけど、読めば読むほど引き込まれていきます。バックにはいつでも暗闇があり、それでいて色彩豊か。もう本当に良いです。


今日読んだ本
レイ・ブラッドベリ『華氏451度』

今読んでいる本
G.ガルシア=マルケス『百年の孤独』
『園芸少年』
おとなしいけれど、実は案外戦略的な篠崎が主人公。彼は、高校入学後、元不良の大和田と一緒にいたとき、野球部とバスケ部の人たちに入部を迫られ、それを断るために園芸部に入部します。いつの間にか2人は意気投合。段ボール箱をかぶらないと外に出られない庄司という少年が偶然通り掛かったので引っ張り込み、彼らは3人で植物を育て始めます・・・

のほほんとした軽い部活小説。

魚住直子の小説はさほど好きではなかったのですが、今回は非常に楽しめました。笑えるのです。段ボールを被った男というと安部公房『箱男』を連想しますが、こちらの場合はそこに深い意味があるというわけではありません。

台詞が状況説明みたいになっていてちょっと自然ではない気もしましたが、物語の運び方は非常に巧くなっています。


今日読んだ本
魚住直子『園芸少年』

今読んでいる本
レイ・ブラッドベリ『華氏451度』
G. ガルシア=マルケス『百年の孤独』
『刺青』
十八歳の少女アヤは廃業を決意していた彫物師・彫阿弥のところへ赴き、全身に刺青を彫って欲しいと告げます。彼女は、観世音の刺青によって自分にセックスを強要するある男を圧倒したいと願っていたのです。しかし、彫阿弥は拒否します。若い女の体に彫ることは容易ではないし、刺青は糞なのだというふうに彼は考えていたからです。ですがアヤは刺青にさほどの意味はない、と思いつつもそれを欲し・・・

退廃的な雰囲気が漂っています。

アヤは、刺青を彫ることで自分を追い詰め、生きる力を捻り出そうとします。妙に神々しい感じがします。

彫阿弥は刺青とは何であるのか分からずに迷いつつも醒めています。彼は非常に冷淡です。自分の行為に溺れつつもぎりぎりのところで踏みとどまり、それを凝視しています。だから、甘美ではありません。

彫阿弥の冷淡さが明確になるのはラスト。南無阿弥陀仏と書いて欲しいとアヤに言われたのに・・・ ある意味ではお茶目なのかも知れないけど。

すっきりとしていなくて時折状況を把握しづらくする文体も、作品の雰囲気と合っています。

こういう系統の作家たちの系譜が書けたら面白そうだなぁ、と感じます。


今日読んだ本
藤沢周『刺青』

今読んでいる本
レイ・ブラッドベリ『華氏451度』
G. ガルシア=マルケス『百年の孤独』
魚住直子『園芸少年』
『からくりアンモラル』
性愛SF短編集。『からくりアンモラル』『あたしを愛したあたしたち』『愛玩少年』『いなくなった猫の話』『繰り返される初夜の物語』『一卵性』『レプリカント色ざんげ』『ナルキッソスの娘』『罪と罰、そして』収録。

『からくりアンモラル』
初潮を迎えた姉・秋月は、妹・春菜になつくロボット・ヨハネを見ていらっとしてしまい、ある悪戯を思いつきます・・・

だいたい表題作『からくりアンモラル』と似たような短編ばかりが収録されています。やたらとエロが多いです。SF的な設定が取り入れられているけど、SFに分類していいものか悩むほど。

しかし、母と子、父と子の関係を描いた少し心温まる作品も入っています。


今日読んだ本
森奈津子『からくりアンモラル』

今読んでいる本
レイ・ブラッドベリ『華氏451度』
G. ガルシア=マルケス『百年の孤独』
『どうで死ぬ身の一踊り』
芝公園で凍死した無頼作家・藤澤清造に共感を覚えている私が主人公。私は6歳年下の女と同棲するようになり、彼女の給料で暮らし、彼女の親から借りたお金で藤澤清造全集を出そうとします。しかし些細なことで逆切れし、彼女に何度も暴行を加え、そのたびに彼女は実家へ帰ってしまうのですが、その途端に私は卑屈な態度をとり、戻ってくるように懇願し・・・

あまりにも無惨で救いがたいダメな男の日常を綴った陰惨な物語。

本当に笑えます。なんというか、凄い。トイレの蓋があがっていなかったからと言って女に対して激怒し始めるところなどは、もうなんとも言いがたい。そもそも同居している女性のことを「女」としか表記しないこと自体が凄い。

それでいて文章は非常に端正なのです。


今日読んだ作品
西村賢太『墓前生活』
西村賢太『どうで死ぬ身の一踊り』
西村賢太『一夜』


今読んでいる本
レイ・ブラッドベリ『華氏451度』
森奈津子『からくりアンモラル』
220インディゴの夜
★★★ 加藤実秋

219サクリファイス
★★★★★ 近藤史恵

218伊豆の踊子
★★★ 川端康成

217自民党と戦後-政権党の50年
★★★ 星浩

216アヒルと鴨のコインロッカー
★★★★★ 伊坂幸太郎
★★★

著者:  加藤実秋
出版社: 東京創元社

  連作短編集。『インディゴの夜』『原色の娘』『センター街NPボーイズ』『夜を駆る者』収録。『インディゴの夜』は第10回創元推理短編賞受賞作。

  女性ライター・高原晶は、大手出版社の編集者・塩谷とともにちょっと変わったホストクラブ(「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに」という着想から始まったもの)『club indigo』をつくり、そこのオーナーとなります。すると、『club indigo』は大繁盛。

  ですが、その矢先にクラブの客が謎の事件に巻き込まれてしまいます。『club indigo』の面々は、それを解決するべく動き出しますが、なんと以前クラブを辞めていったホストが事件に関連しているらしくて・・・

  軽くてとても読みやすいです。

  「30女」の晶さんの心の中での辛辣なツッコミにはいちいち頷きたくなります。「プリクラが思い出作り」という若者の言葉に対して、「いつの間にか思い出は意図的に、しかも機械で作られるものに変わったらしい。」と晶は心の中で毒づくのです。

  そういう世代間の考え方の隔たり、というよりは晶の常識と、「チャラチャラ」した若者の常識との間の、ちょっとした隔たりが随所に見受けられるところは面白い。

  だけど、その他に読みどころはないといっても良い。といったら言い過ぎだけど、ミステリとしてはそこまで面白みがないです。謎解きと物語がうまくからまっていないんだよなぁ。しかも意外性はないし。ほとんど、キャラで物語がもっているような感じです。まぁそこが巧みで、面白いんだけど。


自森人読書 インディゴの夜
★★★★★

作者:  近藤史恵
出版社: 新潮社

  サイクルロードレースというあまり一般的ではないスポーツと、その競技の中でしのぎを削る人たちの姿を描いた青春ミステリ。

  サイクルロードレースとは、何百キロもの道程を自転車で駆けていき、ゴールを目指す競技です。先頭を走ると前からもろに風圧を受けます。それなので、敵同士で先頭を争うときでも交替交替に走るので、「紳士の競技」ともいわれるのだそうです。

  サクリファイスとは生贄のこと。アシストのことをさしています。サイクルロードレースのチームには、役割分担があるのだそうです。アシストを踏み台にして勝利へと向かうエースと、自分の勝利のためではなくてエースをサポートするために走るアシスト。アシストは勝つことが務めではありません。エースを風圧から守って先頭を走り、ゴールまで届けるのが仕事なのです。

  主人公・白石誓はアシスト。彼は、常に自分のためではなくて、チームのために走っています。そしてそれに満足もしているのですが・・・ かつて、起きた事故が彼を悩ませることになります。チームのエースが、自分を追い越す才能を潰すためにわざと事故を起こしたのではないか・・・? 力を発揮したら自分も潰されるのではないか?

  青春もの・スポーツものとしても面白いのに、その上ミステリの要素が加わっています。最後まで読むとびっくりします。タイトルが、二重の意味を持っていたことに気づかされます。壮絶なんだけど爽快。

  けっこう軽い本なので読みやすいです。そこもいいところ。

  大藪春彦賞受賞作。2008年第5回本屋大賞ノミネート作(2位)。


自森人読書 サクリファイス
★★★

著者:  川端康成
出版社: 集英社

  20歳の一高生が、湯ヶ島、天城峠を越えて下田に向かう旅路の中で、旅芸人の一座と一緒になります。そして一座に属する可憐な踊子と出会い、なんとなく心を通わせるような通わせないような。とにかく学生は何かを感じるわけです。しかし、旅の中で2人は別れていきます・・・

  短編小説。

  不思議なほど、乾いた小説だなぁと感じました。なんだかみずみずしさに欠けているし、最後の涙だって爽やかなものだとは思えないです。「清らかで美しい初恋の物語」だというふうに褒めている人がいるけれど、理解できないです。まず妙に死を意識させる言葉/部分が多いところは気にかかります。

  そして、物語全体に満ちている旅芸人一座に対する差別意識も印象的。主人公が踊子に対して抱く感情は恋心なのか。彼は、踊子を金によって買うことができる対象として認識し、彼女が幼くて純真なことを意識しつつ、しかし隔たりを感じ、彼女の属する共同体の秩序(四十九夜)に添って行動することは拒絶し、去っていきます。

  主人公は「自分の死を容認し、女性と付き合って子どもを生むこと」を否定しているのかなぁ、と推理してみたのですが、どうだろう・・・ 違うか。

  日本流の奥床しさ・美しさが存分に発揮された作品だと評する人もいるけれど、そのように評しておくのが一番無難なのかも知れません。

  日本人として初めてノーベル文学賞を受賞した小説家・川端康成の代表作の1つ。6度も映画化されているそうです。しかもアニメにもなり、ラジオドラマにもなり、テレビドラマもなり、劇にもなっているらしい。凄い・・・


自森人読書 伊豆の踊子
『プレーンソング』
競馬を気に入っているぼくという男が主人公。ぼくは最近、子猫に惹かれるようになり、餌をあげるようになります。しかし、なかなか寄ってきてはくれません。子猫ではなく、アキラ、よう子、島田といった自主映画作りに取り組む若者たちがぼくの家へ現れます。彼らとの日々は非常にたわいもないものでした。最後、彼らは、アキラが運転手として連れてきたゴンタとともに海へ赴きます・・・

様々な人間たちと、その関係を描いた作品。保坂和志のデビュー作。

四方田犬彦の解説がとても良いです。書いてあることがいちいち最もなので、とくに付け足すことがないです・・・

なにげない日常を描いた小説のように見えるけれど、決して普通の小説ではありません。個々のキャラクターや物語の粗筋ではなくて、場の空気や人間同士の関係が小説の中心に据えられているからです。非常に挑戦的なのではないか。

「小説家を目指しながらそれを諦め、映画作りに専念するゴンタという人物の思考・視点が、作者の思考・視点と一致している」と解説者は指摘していますが、全く同じことを感じました。普通の映画というものは喋る人を中心にして撮ります。しかし、そうではなくてそれを聞く側の動きや、全体の空気や些細な部分こそが肝要なのではないか。


今日読んだ本
保坂和志『プレーンソング』

今読んでいる本
西村賢太『どうで死ぬ身の一踊り』
レイ・ブラッドベリ『華氏451度』
『流星の絆』
横須賀市にある小さな洋食屋アリアケを経営していた有明幸博、塔子らが深夜殺害されます。功一、泰輔、静奈ら3人の子供たちは家を抜け出して流星群を見に行ったため無事でしたが、彼らは身よりがなかったため養護施設に収容されます。そして、その後3人は様々な人たちに騙され、強く生きることを誓って詐欺師になります。そうして、事件から14年。洋食チェーンの御曹司・戸神行成に高価な宝石を売りつけようとした3人は、行成の父を見かけ、衝撃を受けます。その人は、事件当時殺人現場から逃げ去っていった男に似ていたのです・・・

やっぱり、東野圭吾の作品はサクッとしていて面白いです。

しかし、毎度のことではあるのですが、物語に深みがあるわけではありません。とにかく軽いし、淡白です。そして、これもまた毎度のことながら、東野圭吾の作品に登場するヒロインには魅力が感じられません。

それに真相も意外ではあるけれども、そこまで衝撃的ではありません。まぁ普通に面白いけど、それ以上のものはないという感じです。


今日読んだ本
東野圭吾『流星の絆』

今読んでいる本
保坂和志『プレーンソング』
★★★

著者:  星浩
出版社: 講談社

  星浩は、政治部記者の人。

  『自民党と戦後-政権党の50年』は、記者として培った政治への見方をもとに、自民党という、戦後の日本政治を担ってきた「巨象」のような政党のことを再考していこう、というもの。いろんな人の名前がぽんとでてくるので、そこが分からないとまずだめだけど、まぁ基本的なところを知っていれば、だいたい読めます。よくまとまっていて分かりやすいです。

  著者なりの考えも時折述べられているので(一番裏側にいる黒幕は誰か、とか)、とても勉強になります。そういうふうにも考えられるのか・・・・・

  1993年、一度自民党が下野した時、梶山静六が、「自民党の下野は良いことだ。何年かは政権からはずれたほうが良い。55年体制下において38年間も政権に在り続けて、緊張感を失って、惰性で続いてきた。野党になって贅肉を落として、再び政権に戻れば強力な政党になるだろう。」と言ったというエピソードは面白いなぁと感じました。

  今、そんなことを言い切れる自民党議員はいるのかなぁ。もしかしたら若手にはそういう威勢のいい人もいるかも知れないけど、だいたいの人はみんな与党の場所にすがりつくんじゃないか。梶山静六といえば田中眞紀子に「軍人」と命名されたおじいちゃんとしか記憶になかったけど、なかなか気概のある人だなぁ、と感じました。凡人、小渕恵三に敗れてしまったけど。


自森人読書 自民党と戦後-政権党の50年
『ベルリン飛行指令』
太平洋戦争開戦前夜。ドイツ軍はイギリス本土を攻め切れず、結局撤退しました。その事態を憂慮したヒトラー総帥は、日独伊三国軍事同盟を結んだばかりの日本が新開発した戦闘機(零式艦上戦闘機)の噂を聞きつけ、ライセンス生産を行うかどうか検討するために購入したいと日本政府に持ちかけます。それを受け入れた海軍は困難だと自覚しつつ、安藤啓一、乾恭平ら優秀でありながら反骨精神に満ちた男たちに零式艦上戦闘機を任せます。彼らは遥かなベルリンを目指し、東京を出発するのですが・・・

なかなかに読み応えがあります。壮大なif歴史小説。ようするに法螺話。

けっして嫌いではないのですが、少し読みづらいです。

新潮社。


今日読んだ本
佐々木譲『ベルリン飛行指令』

今読んでいる本
保坂和志『プレーンソング』
★★★★★

著者:  伊坂幸太郎
出版社: 東京創元社

  引っ越してきたばかりの椎名は、アパートの隣人である悪魔めいた長身の美青年から、突然「本屋を襲わないか」と誘われます。なんとなく断れなかった椎名は、なぜだか、本屋から広辞苑を奪う手伝いをすることになり、モデルガンを持って本屋へ向かうことに・・・

  パラパラと散らされたわざとらしいセリフや、個性的な登場人物たちもそれぞれ面白いんだけど、『アヒルと鴨のコインロッカー』最大の仕掛けは物語自体に施されています。現在の物語と過去の物語を同時並行で描いていくのです。そして、謎が解明されていきます。

  ミステリファンからすると、そこのところががちょっと甘い(種がばれやすい)らしいけど、僕は全然気にならなかったです。まぁそんなにたくさんミステリを読んでいるわけじゃないので。

  ラストは本当に鮮やかです。不思議なタイトルの意味。最後になってそれが明らかになります。爽やかだけど重くて悲しい、そんな感じです、多分。そういえばブータン人のドルジの考え方が面白いなぁと感じました。どこまでもゆったりとしていて、日本人みたいなせかせかしたところがない。

  『重力ピエロ』は、ちょっと好きになれなくて(舞城王太郎と比較したのが間違いだった・・・ 全然別のタイプの作家だよなぁ)、しかし、映画を見にいったからと、『『死神の精度』を読んでみてこれは凄いと感じ、この『アヒルと鴨のコインロッカー』で伊坂幸太郎にはまりました。

  第25回吉川英治文学新人賞受賞作。2004年第1回本屋大賞ノミネート作(3位)。すでに映画化もされています。伊坂作品ってほとんど映画化されているよなぁ・・・


自森人読書 アヒルと鴨のコインロッカー
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