自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
物語の舞台は、無政府主義者が築き上げた人工島ステートレス。その島はバイオテクノロジーを用いて作られ、巨大企業を利する法と国家を拒否した人たちが住んでいます。物語の主人公は、片目にカメラを埋め込んだジャーナリスト・アンドルー・ワース。彼は人付き合いがさほど得意ではなく、ジーナという恋人との関係に苦しんでいましたが、それから逃れるため仕事に精を出していました。2055ステートレスで万物理論=全ての理論を統一する理論に関する話し合いが開催されることになりました。アンドルーは、最も有力な万物理論を唱えている女性科学者ヴァイオレット・モサラに取材するためステートレスへ向かうのですが・・・
壮大なSF小説。
テクノロジーと人間の尊厳に関する問題、セックスとジェンダーの問題、Hワード(Helth(健康)とHumanity(人間性)を狭くとる人たちとの長い闘い)に関する問題、無知カルトや信仰の問題、人間第一主義=人間宇宙論の問題などなどが扱われています。
どれも難しい問題ですが、理解できないわけではありません。むしろ考えても答えがでないからこそ難しいです。たとえば、具体的には犯罪捜査のために一時的な死後蘇生が行われた場合どうするか、と考えてみると訳が分からなくなります。しかし、いつかはあり得るかも知れません。
横道にそれることが多いから冗長だし、御都合主義といえなくはない部分もあります。登場人物の描き方にも無理がある気もします。
最大のテーマとなっている「万物理論」は、物理学的にみればトンデモとみなされるような理論なのではないかと感じます。しかし、これは小説なのだし、構わないのではないか。とにかく圧倒されます。様々な問いが絡み合い、混ざり合い、しかも決して予想の範囲内ではおさまりません。
とくにラストの辺りの美しさと強引さには感心させられました。あまりにも強烈。
読んだ本
グレッグ・イーガン『万物理論』
読んでいる途中
森見登美彦『宵山万華鏡』
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