★★★★
著者: 川上未映子
出版社: 講談社
ある女性の独白みたいな小説。説明するのがとても難しいんだけど・・・ 彼女は、歯に「わたくし」があると考えている人でした。とこだけでも面白いんだけど。彼女は、未来に生まれるかも知れないわが子のために日記をつけ始めます。その日記と、彼女の勤める歯医者でのシーンが交互に並んでいくのですが、意外な形で全てが壊れてしまいます・・・
主人公がわたしわたしわたしと叫びだしたあと、化粧した女性に逆に詰問されるところが痛いけど、ここがミソだなぁと思います。どこまでが現実で、どこからが妄想なのか。う~ん、悩ましいです。全て主人公の妄想だったのか・・・
こういう文体の小説を何個も並べられたら辟易したかも知れないけど、これ1個ぽんと放り出されると凄すぎて感動してしまいます。『わたくし率イン歯ー、または世界』というタイトルがまずもって凄い。そこだけでなくて中身もほんと凄い。テンポが良い。そして、そのテンポに乗ったまま、ずーっと書いていて、最後まで持っていくことができるところがとくに凄いです(最後に少し、普通の文章で書かれたシーンが置かれているんだけど)。
最後のシーン(無歯症かも知れない?少女とその母)が暗示的。
町田康と比較する人が多いみたいです。大阪弁、しかも多弁といったところが似ています。とはいえ、中身も似ているのかなぁ・・・ よく分からないです。あまり読んだことが無いので。
川上未映子のデビュー小説。アーティストとしても活躍していて、詩を書けて、しかも小説まで書けて・・・ という凄い人。そこも、町田康と似ているなぁ、そういえば。
自森人読書 わたくし率イン歯ー、または世界
著者: 川上未映子
出版社: 講談社
ある女性の独白みたいな小説。説明するのがとても難しいんだけど・・・ 彼女は、歯に「わたくし」があると考えている人でした。とこだけでも面白いんだけど。彼女は、未来に生まれるかも知れないわが子のために日記をつけ始めます。その日記と、彼女の勤める歯医者でのシーンが交互に並んでいくのですが、意外な形で全てが壊れてしまいます・・・
主人公がわたしわたしわたしと叫びだしたあと、化粧した女性に逆に詰問されるところが痛いけど、ここがミソだなぁと思います。どこまでが現実で、どこからが妄想なのか。う~ん、悩ましいです。全て主人公の妄想だったのか・・・
こういう文体の小説を何個も並べられたら辟易したかも知れないけど、これ1個ぽんと放り出されると凄すぎて感動してしまいます。『わたくし率イン歯ー、または世界』というタイトルがまずもって凄い。そこだけでなくて中身もほんと凄い。テンポが良い。そして、そのテンポに乗ったまま、ずーっと書いていて、最後まで持っていくことができるところがとくに凄いです(最後に少し、普通の文章で書かれたシーンが置かれているんだけど)。
最後のシーン(無歯症かも知れない?少女とその母)が暗示的。
町田康と比較する人が多いみたいです。大阪弁、しかも多弁といったところが似ています。とはいえ、中身も似ているのかなぁ・・・ よく分からないです。あまり読んだことが無いので。
川上未映子のデビュー小説。アーティストとしても活躍していて、詩を書けて、しかも小説まで書けて・・・ という凄い人。そこも、町田康と似ているなぁ、そういえば。
自森人読書 わたくし率イン歯ー、または世界
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T・S・ガープという男の物語。『ガープの世界 上巻』の続き。
不寛容に対して不寛容を貫くガープの姿勢が悲劇を巻き起こしていきます。悲劇的な展開が多くなり、非常に哀しいです。しかし、それでいていちいち滑稽。ガープは、母親の葬式に女装して出席することになります。
上巻にもまして面白くなってきます。とくに、エピローグが素晴らしく良いです。なんというか、物語を読み終えた、という気分にさせてくれます。
読んだ本
ジョン・アーヴィング『ガープの世界 下巻』
読んでいる最中
ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』
不寛容に対して不寛容を貫くガープの姿勢が悲劇を巻き起こしていきます。悲劇的な展開が多くなり、非常に哀しいです。しかし、それでいていちいち滑稽。ガープは、母親の葬式に女装して出席することになります。
上巻にもまして面白くなってきます。とくに、エピローグが素晴らしく良いです。なんというか、物語を読み終えた、という気分にさせてくれます。
読んだ本
ジョン・アーヴィング『ガープの世界 下巻』
読んでいる最中
ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』
★★★
著者: 藤原伊織
出版社: 講談社
ある日、突如として新宿中央公園で爆発事件が発生。多数の死傷者をだしました。その場に偶然居合わせたアルコール中毒のバーテンダー・島村は、結果として事件に巻き込まれてしまうことに。彼は、全共闘時代、警察官を爆弾で殺してしまった、という過去があったため、警察から疑われてしまいました。しかし、彼はそれらをうまく潜り抜けながら、ヤクザなどと組んで、真犯人を探していきます・・・
読み始めた時は、あまり面白くないなぁ、と感じていました。僕は、基本的にハードボイルド小説というのが好きになれないのです。一般的に世間からはくだらないと言われている男が、実は誰よりも強くて、人間らしい心を持っていた、というよくある筋書きにちょっとうんざりしてしまうからです。
もともとは登場人物たちの内面描写を行わない、硬い小説をハードボイルドと読んでいたはずではないのかなぁ。それなのに、どうして「見た目はよれよれだけど、実はカッコイイ男が主人公の物語」になってしまったのか。よく分からないです。
とにかくそういうわけで、最初はあまり物語に入り込めなかったのですが、読み終わった後には、凄いと感じました。謎の部分が面白いし、犯人の冷酷さも非常に印象に残りました。あと回想シーンとして延々と全共闘時代のことが出てくるのですが、そういうふうにして歴史をミステリの中に絡める手腕も見事だと思わされました。
藤原伊織の出世作にして、江戸川乱歩賞(第41回)と、直木賞(第114回)のW受賞を果たした初めての作品だそうです。W受賞しただけのことはある、かも知れない。
自森人読書 テロリストのパラソル
著者: 藤原伊織
出版社: 講談社
ある日、突如として新宿中央公園で爆発事件が発生。多数の死傷者をだしました。その場に偶然居合わせたアルコール中毒のバーテンダー・島村は、結果として事件に巻き込まれてしまうことに。彼は、全共闘時代、警察官を爆弾で殺してしまった、という過去があったため、警察から疑われてしまいました。しかし、彼はそれらをうまく潜り抜けながら、ヤクザなどと組んで、真犯人を探していきます・・・
読み始めた時は、あまり面白くないなぁ、と感じていました。僕は、基本的にハードボイルド小説というのが好きになれないのです。一般的に世間からはくだらないと言われている男が、実は誰よりも強くて、人間らしい心を持っていた、というよくある筋書きにちょっとうんざりしてしまうからです。
もともとは登場人物たちの内面描写を行わない、硬い小説をハードボイルドと読んでいたはずではないのかなぁ。それなのに、どうして「見た目はよれよれだけど、実はカッコイイ男が主人公の物語」になってしまったのか。よく分からないです。
とにかくそういうわけで、最初はあまり物語に入り込めなかったのですが、読み終わった後には、凄いと感じました。謎の部分が面白いし、犯人の冷酷さも非常に印象に残りました。あと回想シーンとして延々と全共闘時代のことが出てくるのですが、そういうふうにして歴史をミステリの中に絡める手腕も見事だと思わされました。
藤原伊織の出世作にして、江戸川乱歩賞(第41回)と、直木賞(第114回)のW受賞を果たした初めての作品だそうです。W受賞しただけのことはある、かも知れない。
自森人読書 テロリストのパラソル
★★★
著者: 保阪正康
出版社: 平凡社
松本清張は昭和史をどのように捉えていたのか、という問いを取り上げたのが『松本清張と昭和史』。具体的には、『昭和史発掘』と、『日本の黒い霧』を掘り下げ、それらを引用しながらすすんでいきます。入門書みたいな感じ。とても分かりやすいです。
そもそも松本清張とはどのような人なのか、というと。1909年生まれ。家が貧しかったため、小学校までしか卒業できず、戦時中は給仕、版工などの職を転々としました。戦後になってから(1953年・44歳)、『或る『小倉日記』伝』で芥川賞を受賞してデビュー。1958年に、推理小説『点と線』『眼の壁』を発表。「社会派推理小説」という分野を築き上げ、それから一躍人気作家となりました。
彼はとにかく多作です。しかも多彩な分野で活躍しました。推理小説、歴史小説、古代史の発掘、昭和史を見つめたノンフィクションなどいろんな小説を書いています。政治にも深い関心を持ち、「民主主義者」としていろんな発言を行っています。共産党を支持したから「左翼」と叩かれたけど、それでいて広範囲から支持を得ていました。戦後民主主義を擁護し、弱者の側に立って世の不正を暴くというそのスタンスが彼を国民的作家に押し上げたと言われます(というので、だいたいの紹介になっているかなぁ・・・)
この『松本清張と昭和史』では、昭和史を見つめたノンフィクション(『昭和史発掘』と、『日本の黒い霧』)が取り上げられています。2.26事件を起こした青年将校や数々の「謀略」を行うGHQに対する松本清張の怒りというのは共感できるなぁと感じます。
著者は、松本清張の持つ歴史の見方を「清張史観」と呼んでいるんだけど(「司馬史観」のまねか)、けっこう面白いです。とても考えさせられます。「2.26事件は昭和史の中で最も重要視すべき」という意見を世間に広めたのは松本清張だそうです。そうだったんだ・・・
自森人読書 松本清張と昭和史
著者: 保阪正康
出版社: 平凡社
松本清張は昭和史をどのように捉えていたのか、という問いを取り上げたのが『松本清張と昭和史』。具体的には、『昭和史発掘』と、『日本の黒い霧』を掘り下げ、それらを引用しながらすすんでいきます。入門書みたいな感じ。とても分かりやすいです。
そもそも松本清張とはどのような人なのか、というと。1909年生まれ。家が貧しかったため、小学校までしか卒業できず、戦時中は給仕、版工などの職を転々としました。戦後になってから(1953年・44歳)、『或る『小倉日記』伝』で芥川賞を受賞してデビュー。1958年に、推理小説『点と線』『眼の壁』を発表。「社会派推理小説」という分野を築き上げ、それから一躍人気作家となりました。
彼はとにかく多作です。しかも多彩な分野で活躍しました。推理小説、歴史小説、古代史の発掘、昭和史を見つめたノンフィクションなどいろんな小説を書いています。政治にも深い関心を持ち、「民主主義者」としていろんな発言を行っています。共産党を支持したから「左翼」と叩かれたけど、それでいて広範囲から支持を得ていました。戦後民主主義を擁護し、弱者の側に立って世の不正を暴くというそのスタンスが彼を国民的作家に押し上げたと言われます(というので、だいたいの紹介になっているかなぁ・・・)
この『松本清張と昭和史』では、昭和史を見つめたノンフィクション(『昭和史発掘』と、『日本の黒い霧』)が取り上げられています。2.26事件を起こした青年将校や数々の「謀略」を行うGHQに対する松本清張の怒りというのは共感できるなぁと感じます。
著者は、松本清張の持つ歴史の見方を「清張史観」と呼んでいるんだけど(「司馬史観」のまねか)、けっこう面白いです。とても考えさせられます。「2.26事件は昭和史の中で最も重要視すべき」という意見を世間に広めたのは松本清張だそうです。そうだったんだ・・・
自森人読書 松本清張と昭和史
著者が、「打ちのめされるようなすごい」と感じた50の小説が紹介されています。三島由紀夫を熱烈に愛している、ということが、三島由紀夫の文章をやたらと引用したがることや、三島由紀夫の『豊饒の海』に満点をつけていることから分かります。その時点で、少しうんざりなのですが。
紹介されている50の作品はだいたいお決まりの名作ばかり。そして文体も奇妙です。全体的に、妙に大仰なのです。まるで演説のよう。滑稽な印象を受けます。
たとえば、大江健三郎『万延元年のフットボール』を紹介している部分。『万延元年のフットボール』の書き出しを延々と引用した後、「何とグロテスクな、兇々しい、奇怪な書き出しだろう。」とくるのです。なんというか、もう少しどうにかならないのか。ちょっと笑える書き出し、とかそういう素朴な感想はないのだろうか・・・
というか、まずその日本語がどうにかならないのか。
読んだ本
富岡幸一郎『打ちのめされるようなすごい小説』
読んでいる最中
ジョン・アーヴィング『ガープの世界 下巻』
紹介されている50の作品はだいたいお決まりの名作ばかり。そして文体も奇妙です。全体的に、妙に大仰なのです。まるで演説のよう。滑稽な印象を受けます。
たとえば、大江健三郎『万延元年のフットボール』を紹介している部分。『万延元年のフットボール』の書き出しを延々と引用した後、「何とグロテスクな、兇々しい、奇怪な書き出しだろう。」とくるのです。なんというか、もう少しどうにかならないのか。ちょっと笑える書き出し、とかそういう素朴な感想はないのだろうか・・・
というか、まずその日本語がどうにかならないのか。
読んだ本
富岡幸一郎『打ちのめされるようなすごい小説』
読んでいる最中
ジョン・アーヴィング『ガープの世界 下巻』
★★★★★
著者: 芦原すなお
出版社: 河出書房新社
ベンチャーズに憧れ、ロックに燃える四国の少年達の物語。彼らが高校に入学してから、卒業していくまでの3年間を描いています。「田舎臭い」感じの高校生たちなわけだから、ミュージシャンみたいに「かっこいい」というわけではないんだけど、最後の最後、学園祭で演奏する場面では、ほんとにかっこいいです。そして、全てが終わってしまった後のオチも良い。
爽快。まさにこれこそ青春小説、と言いたくなるような青春小説。「青春小説」のお手本といってしまって良いような作品。素晴らしいです。高校生活の3年間をぎゅっとコンパクトにまとめているその手腕が凄い。ここが足りないというところはないのに、それでいてこのちょうど良い長さ。ほとんど、完璧といってしまっても構わないのではないか。
のちに私家版という、もう少し長いバージョンをだしたそうなのでそちらもいつか読んでみたいなぁ、と思いました。賞に応募するために枚数を削ったのが『青春デンデケデケデケ』。元々の長いバージョンが『青春デンデケデケデケ 私家版』らしいです。新たな人物が加わっているのかなぁ。それとももう少し細部が凝っているのかなぁ。まぁ読んでみないことには分からない。
僕は、この『青春デンデケデケデケ』には、まったく欠けている部分はないと勝手に思っています。だから『私家版』という補足バージョンは、蛇足だらけのものになってしまうのではないか、と心配なのですが・・・ とにかく読んでみないことには何も分からない・・・
そういえばどことなく映画『スウィングガールズ』を連想しました。全然違うけど・・・
第27回文藝賞、第105回直木賞受賞作。映画化もされ、漫画化もされているそうです。
自森人読書 青春デンデケデケデケ
著者: 芦原すなお
出版社: 河出書房新社
ベンチャーズに憧れ、ロックに燃える四国の少年達の物語。彼らが高校に入学してから、卒業していくまでの3年間を描いています。「田舎臭い」感じの高校生たちなわけだから、ミュージシャンみたいに「かっこいい」というわけではないんだけど、最後の最後、学園祭で演奏する場面では、ほんとにかっこいいです。そして、全てが終わってしまった後のオチも良い。
爽快。まさにこれこそ青春小説、と言いたくなるような青春小説。「青春小説」のお手本といってしまって良いような作品。素晴らしいです。高校生活の3年間をぎゅっとコンパクトにまとめているその手腕が凄い。ここが足りないというところはないのに、それでいてこのちょうど良い長さ。ほとんど、完璧といってしまっても構わないのではないか。
のちに私家版という、もう少し長いバージョンをだしたそうなのでそちらもいつか読んでみたいなぁ、と思いました。賞に応募するために枚数を削ったのが『青春デンデケデケデケ』。元々の長いバージョンが『青春デンデケデケデケ 私家版』らしいです。新たな人物が加わっているのかなぁ。それとももう少し細部が凝っているのかなぁ。まぁ読んでみないことには分からない。
僕は、この『青春デンデケデケデケ』には、まったく欠けている部分はないと勝手に思っています。だから『私家版』という補足バージョンは、蛇足だらけのものになってしまうのではないか、と心配なのですが・・・ とにかく読んでみないことには何も分からない・・・
そういえばどことなく映画『スウィングガールズ』を連想しました。全然違うけど・・・
第27回文藝賞、第105回直木賞受賞作。映画化もされ、漫画化もされているそうです。
自森人読書 青春デンデケデケデケ
フォート・イザベル癩病院に務めているエドワード・サンダーズ博士は、クレア博士夫妻から貰った手紙が検閲されていたことに不審を抱き、夫妻の住むカメルーンを訪れます。彼は奇妙な感覚に囚われます。白と黒がくっきりと分かれていて、妙に世界が薄暗いのです。サンダーズ博士はそこでジャーナリスト・ルイーズ・プレと出会い、親しくなり、彼女とともに行動します。彼らは、結晶化した植物を見つけ、右腕が結晶化した男の死体が流れてくるのを発見します。それはルイーズの知り合いでした。いったい何が起きているのか?
陰影に富んだSF小説。
対照的な白と黒のイメージがふんだんに用いられているため、まるで銅版画のようです。何もかもがくっきりとしています。どろどろした人間関係が渦巻いている上に、じっとりとして薄暗い現実世界に、華麗な結晶世界が少しずつ割り込んでくるわけです。
あまりにも壮烈で、それでいてグロテスクで美しい現象の中にあって人々は決断を迫られます。結晶化すると、その生物は死なずにその状態のまま停止します。ようするに不死性を手に入れられるわけです。現実世界にとどまって死ぬか、それとも結晶世界にとりこまれるか?
とはいえ、全体としては淡々としていて哲学的です。妙にしっとりとしています。宇宙がじょじょに結晶化していくというのに、主人公サンダーズはそれをどうすることもできずにただ受け止めます。そして不倫相手であるスザンヌ・クレアと彼女の面影を感じさせるルイーズ・プレの間を行き来します。
瑕疵がないわけではありません。微妙に差別的な部分もあるのではないか。しかし、引き込まれます。
綺麗にまとまっている美しい物語です。
読んだ本
J・G・バラード『結晶世界』
読んでいる最中
ジョン・アーヴィング『ガープの世界 下巻』
2010年(2009年に出版された本が対象)の本屋大賞候補を再度予想してみます。まぁ多分、あまり当たらないと思います。半分あたればいいなぁ・・・
●ベスト30確実?
奥田英朗『無理』(大作らしいし、どうだろう。微妙か)
藤谷治『船に乗れ!』(青春小説枠で入るのでは?)
道尾秀介『鬼の跫音』(道尾秀介は候補になりそう。短編集だから少し弱いけど)
川上未映子『ヘヴン』(川上未映子が苛めとセックスを扱っただけで注目の的では?)
万城目学『プリンセス・トヨトミ』(万城目学はパッとしない・・・)
東野圭吾『新参者』(人情ものらしい)
高村薫『太陽を曳く馬』(ベスト10には入らないか。大作)
柳広司『ダブル・ジョーカー』(『ジョーカー・ゲーム』の続編ならば)
村上春樹『1Q84』(8、9位くらいに入るのかなぁ。本屋大賞はとってほしくはない)
伊坂幸太郎『あるキング』(まぁこの辺りになるのでは?)
今野敏『同期』
湊かなえ『少女』or『贖罪』
有川浩『植物図鑑』or『三匹のおっさん』or『フリーター、家を買う。』
森見登美彦『恋文の技術』or『宵山万華鏡』
村山由佳『ダブル・ファンタジー』
三浦しをん『神去なあなあ日常』
奥泉光『神器―軍艦「橿原」殺人事件』
和田竜『小太郎の左腕』
東野圭吾『パラドックス13』
夏川草介『神様のカルテ』
荻原浩『オイアウエ漂流記』
佐々木譲『廃墟に乞う』or『暴雪圏』
綾辻行人『Another』
米澤穂信『追想五断章』
●ベスト30に入るかも?
北村薫『鷺と雪』
宮部みゆき『英雄の書』
真保裕一『アマルフィ』
恩田陸『訪問者』
桜庭一樹『製鉄天使』
竹内真『文化祭オクロック』
歌野晶午『密室殺人ゲーム2.0』
●ベスト30確実?
奥田英朗『無理』(大作らしいし、どうだろう。微妙か)
藤谷治『船に乗れ!』(青春小説枠で入るのでは?)
道尾秀介『鬼の跫音』(道尾秀介は候補になりそう。短編集だから少し弱いけど)
川上未映子『ヘヴン』(川上未映子が苛めとセックスを扱っただけで注目の的では?)
万城目学『プリンセス・トヨトミ』(万城目学はパッとしない・・・)
東野圭吾『新参者』(人情ものらしい)
高村薫『太陽を曳く馬』(ベスト10には入らないか。大作)
柳広司『ダブル・ジョーカー』(『ジョーカー・ゲーム』の続編ならば)
村上春樹『1Q84』(8、9位くらいに入るのかなぁ。本屋大賞はとってほしくはない)
伊坂幸太郎『あるキング』(まぁこの辺りになるのでは?)
今野敏『同期』
湊かなえ『少女』or『贖罪』
有川浩『植物図鑑』or『三匹のおっさん』or『フリーター、家を買う。』
森見登美彦『恋文の技術』or『宵山万華鏡』
村山由佳『ダブル・ファンタジー』
三浦しをん『神去なあなあ日常』
奥泉光『神器―軍艦「橿原」殺人事件』
和田竜『小太郎の左腕』
東野圭吾『パラドックス13』
夏川草介『神様のカルテ』
荻原浩『オイアウエ漂流記』
佐々木譲『廃墟に乞う』or『暴雪圏』
綾辻行人『Another』
米澤穂信『追想五断章』
●ベスト30に入るかも?
北村薫『鷺と雪』
宮部みゆき『英雄の書』
真保裕一『アマルフィ』
恩田陸『訪問者』
桜庭一樹『製鉄天使』
竹内真『文化祭オクロック』
歌野晶午『密室殺人ゲーム2.0』
★★★
著者: 蘇部健一
出版社: 講談社
文庫版を読みました。「音の気がかり」「桂男爵の舞踏会」「黄金」「エースの誇り」「見えない証拠」「しおかぜ17号四十九分の壁」「オナニー連盟」「丸ノ内線七十秒の壁」「欠けているもの」「鏡の向こう側」「消えた黒いドレスの女」「五枚のとんかつ」「六枚のとんかつ」「『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』を読んだ男」「最後のエピローグ」「ボーナス・トラック 保険調査員の長い一日」収録。
凄いと感じました。いろいろな意味で。とくに。ギャグ。ほんとうにしょうもない、というか、もう脱力。呆れるしかないです。
笠井潔に「たんなるゴミ」といわれた、という伝説の作品。確かに、他作家のミステリ小説のパロディとか、下ネタとか、くだらないジョークとかそういうのが満載の『六枚のとんかつ』なんて認めない、という人も多いのも知れないけど。
まぁこういうのがあっても良いのではないか、と僕は感じます。推理小説のバカバカしさを、こういう形でおちょくるというのは、それはそれで面白い。別にそれほど深い意図があるというわけではないんだろうけど、この本を読むと、ミステリそのものへの懐疑が生まれてきます。「まじめに謎解きとかやっているけど、バカじゃないか」みたいな。
けど、食傷気味です。最後まで読むのはちょっと面倒・・・ こういうような作品を何個も読まされたら怒り出したくなるかも知れないです。たまになら読んでも良いかなぁという感じ。
第3回メフィスト賞受賞作。「メフィスト賞=イロモノを輩出」というイメージをつくりだした作品。その後、優れた作品がメフィスト賞からたくさんでてきたことでそういうイメージは払拭されたらしいけど。それでも、メフィスト賞はやっぱり新人賞の中では異端だよなぁ・・・ 舞城王太郎が飛び出してきたりするわけだから。だからこそ面白いんだけど。
自森人読書 六枚のとんかつ
著者: 蘇部健一
出版社: 講談社
文庫版を読みました。「音の気がかり」「桂男爵の舞踏会」「黄金」「エースの誇り」「見えない証拠」「しおかぜ17号四十九分の壁」「オナニー連盟」「丸ノ内線七十秒の壁」「欠けているもの」「鏡の向こう側」「消えた黒いドレスの女」「五枚のとんかつ」「六枚のとんかつ」「『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』を読んだ男」「最後のエピローグ」「ボーナス・トラック 保険調査員の長い一日」収録。
凄いと感じました。いろいろな意味で。とくに。ギャグ。ほんとうにしょうもない、というか、もう脱力。呆れるしかないです。
笠井潔に「たんなるゴミ」といわれた、という伝説の作品。確かに、他作家のミステリ小説のパロディとか、下ネタとか、くだらないジョークとかそういうのが満載の『六枚のとんかつ』なんて認めない、という人も多いのも知れないけど。
まぁこういうのがあっても良いのではないか、と僕は感じます。推理小説のバカバカしさを、こういう形でおちょくるというのは、それはそれで面白い。別にそれほど深い意図があるというわけではないんだろうけど、この本を読むと、ミステリそのものへの懐疑が生まれてきます。「まじめに謎解きとかやっているけど、バカじゃないか」みたいな。
けど、食傷気味です。最後まで読むのはちょっと面倒・・・ こういうような作品を何個も読まされたら怒り出したくなるかも知れないです。たまになら読んでも良いかなぁという感じ。
第3回メフィスト賞受賞作。「メフィスト賞=イロモノを輩出」というイメージをつくりだした作品。その後、優れた作品がメフィスト賞からたくさんでてきたことでそういうイメージは払拭されたらしいけど。それでも、メフィスト賞はやっぱり新人賞の中では異端だよなぁ・・・ 舞城王太郎が飛び出してきたりするわけだから。だからこそ面白いんだけど。
自森人読書 六枚のとんかつ
★★
著者: 五十嵐貴久
出版社: 双葉社
1985年、厳しい校則だらけの小金井公園高校の野球部9人は、まじめに野球をすることもなく、遊びまくっていました。しかし、ある日、天才ピッチャーの沢渡が転校してきて野球部を叱咤。それでも野球部はだらけたままでした。しかし、偶然かわいい女の子がマネージャーになったことで野球部は急変、初めて甲子園向けて動き出します・・・・・
凄く「1985年なんだ」ということを意識させるものが詰め込まれています。ほんとにてんこ盛り。おニャン子クラブのメンバーの中で誰が1番可愛いのか争って野球部同士で殴りあい、「夕やけニャンニャン」があるからって野球の練習を切り上げて早く帰ってしまって・・・ 高校生が、たとえとして持ち出したり、話題にする人間は、とんねるずやらチェッカーズやら菅原文太やら石原裕次郎やらサザンやら、キョンキョン(小泉今日子)やら。そして、野球場では応援席のみんなが、『セーラー服を脱がさないで』を合唱する・・・
軽くて爽やかな青春小説。テンポが良くて、読みやすいです。しかし、これに★を2つで良いのかと悩みました。もうはっきり言って、ステレオタイプ。楽しいといえば楽しいけど、新鮮味というものは全くありません。あだち充のマンガと同じじゃないか。それでもまぁ読んでいて楽しいんだけど・・・
あさのあつこの『バッテリー』よりは、まだ青春スポーツ小説として、ノリがあって、野球があるのだから、良いといえるかも知れない。
読んでいて強く感じたのですが、ホモをやたらと侮蔑的に扱いすぎじゃないか。ふざけをぎりぎり越えていないところに踏みとどまれているといえるのかなぁ・・・ 微妙な気がします。まぁそれは、岡村浩司の主観で語られているのだからしかたないか。いや、でもどうなんだろうか。熱くそれでいて爽やかな青春ものとしては、そういう差別意識丸出しの部分というのは、欠点になる気がするんだけど。
やっぱり★2つかなぁ・・・
自森人読書 1985年の奇跡
著者: 五十嵐貴久
出版社: 双葉社
1985年、厳しい校則だらけの小金井公園高校の野球部9人は、まじめに野球をすることもなく、遊びまくっていました。しかし、ある日、天才ピッチャーの沢渡が転校してきて野球部を叱咤。それでも野球部はだらけたままでした。しかし、偶然かわいい女の子がマネージャーになったことで野球部は急変、初めて甲子園向けて動き出します・・・・・
凄く「1985年なんだ」ということを意識させるものが詰め込まれています。ほんとにてんこ盛り。おニャン子クラブのメンバーの中で誰が1番可愛いのか争って野球部同士で殴りあい、「夕やけニャンニャン」があるからって野球の練習を切り上げて早く帰ってしまって・・・ 高校生が、たとえとして持ち出したり、話題にする人間は、とんねるずやらチェッカーズやら菅原文太やら石原裕次郎やらサザンやら、キョンキョン(小泉今日子)やら。そして、野球場では応援席のみんなが、『セーラー服を脱がさないで』を合唱する・・・
軽くて爽やかな青春小説。テンポが良くて、読みやすいです。しかし、これに★を2つで良いのかと悩みました。もうはっきり言って、ステレオタイプ。楽しいといえば楽しいけど、新鮮味というものは全くありません。あだち充のマンガと同じじゃないか。それでもまぁ読んでいて楽しいんだけど・・・
あさのあつこの『バッテリー』よりは、まだ青春スポーツ小説として、ノリがあって、野球があるのだから、良いといえるかも知れない。
読んでいて強く感じたのですが、ホモをやたらと侮蔑的に扱いすぎじゃないか。ふざけをぎりぎり越えていないところに踏みとどまれているといえるのかなぁ・・・ 微妙な気がします。まぁそれは、岡村浩司の主観で語られているのだからしかたないか。いや、でもどうなんだろうか。熱くそれでいて爽やかな青春ものとしては、そういう差別意識丸出しの部分というのは、欠点になる気がするんだけど。
やっぱり★2つかなぁ・・・
自森人読書 1985年の奇跡
『放浪者の軌道』
突如として思考・思想が感染するようになり、人々はある考え方を持った集合体となっていきます。それを嫌う主人公は、フリーウェイを歩き続けるのですが・・・ 秀逸。「どこにも属さない」ことを目指していたのに、もしかしたら「どこにも属していないグループ」に属していることになっているのかも知れない。
『ミトコンドリア・イヴ』
「全ての人間は、一人の女性の子孫にあたる」ということを科学的に証明し、それだから人種は越えられると呼びかけ、世界に平和をもたらそうとするグループが現れます。主人公は違和感を覚えつつ、恋人に説かれ、彼らに協力するのですが・・・
『無限の暗殺者』
主人公は暗殺者。無限の平行世界を巻き込む渦を巻き起こす犯人を探し出し、殺そうとするのですが・・・ 多分、収録されている中で最も難解。
『イェユーカ』
主人公は医者。ウガンダで奇病・イェユーカを追いかけるのだけど。医療を扱った作品。
『祈りの海』
物語の舞台は惑星コヴナント。そこに移住した人々は海と陸に分かれていきました。そして生殖の方法も大きく変化していました。主人公マーティンはおもりをつけられて海に沈み、恍惚感に浸ります。そして、深淵教会に属するのですが。
硬派。
読んだ作品
グレッグ・イーガン『放浪者の軌道』
グレッグ・イーガン『ミトコンドリア・イヴ』
グレッグ・イーガン『無限の暗殺者』
グレッグ・イーガン『イェユーカ』
グレッグ・イーガン『祈りの海』
読んでいる最中
ジョン・アーヴィング『ガープの世界 下巻』
突如として思考・思想が感染するようになり、人々はある考え方を持った集合体となっていきます。それを嫌う主人公は、フリーウェイを歩き続けるのですが・・・ 秀逸。「どこにも属さない」ことを目指していたのに、もしかしたら「どこにも属していないグループ」に属していることになっているのかも知れない。
『ミトコンドリア・イヴ』
「全ての人間は、一人の女性の子孫にあたる」ということを科学的に証明し、それだから人種は越えられると呼びかけ、世界に平和をもたらそうとするグループが現れます。主人公は違和感を覚えつつ、恋人に説かれ、彼らに協力するのですが・・・
『無限の暗殺者』
主人公は暗殺者。無限の平行世界を巻き込む渦を巻き起こす犯人を探し出し、殺そうとするのですが・・・ 多分、収録されている中で最も難解。
『イェユーカ』
主人公は医者。ウガンダで奇病・イェユーカを追いかけるのだけど。医療を扱った作品。
『祈りの海』
物語の舞台は惑星コヴナント。そこに移住した人々は海と陸に分かれていきました。そして生殖の方法も大きく変化していました。主人公マーティンはおもりをつけられて海に沈み、恍惚感に浸ります。そして、深淵教会に属するのですが。
硬派。
読んだ作品
グレッグ・イーガン『放浪者の軌道』
グレッグ・イーガン『ミトコンドリア・イヴ』
グレッグ・イーガン『無限の暗殺者』
グレッグ・イーガン『イェユーカ』
グレッグ・イーガン『祈りの海』
読んでいる最中
ジョン・アーヴィング『ガープの世界 下巻』
★★★★★
著者: 飯嶋和一
出版社: 小学館
江戸時代に活躍し、「史上最強」と謳われる相撲取り・雷電と、彼を取り巻く人々の物語。という紹介では、さっぱり何も伝わらないよなぁ・・・
雷電はもともと農家の生まれでした。本名は為右衛門と言います。彼は、浅間山噴火、地震などの天災と、それらを利用して私欲を貪る商人、侍たちによる人災に、苦しめられている村の人たちの中で育ちました。為右衛門は優しい性格から誰からも好かれる若者になってきます。ですが、父親はそれを心配し、1人息子の彼を相撲取りにしてしまいました。村にい続ければ、いずれ人望のある彼が一揆などの時にみんなから祭り上げられ、辛苦の道を進むのは確実だったのです・・・
そうして為右衛門は「雷電」となり、相撲取りに変わりました。しかし、彼は相撲取りになっても変わりませんでした。武士達の家来となって嬉々としている相撲取りたちとは一風変わった立場をとります。
雷電は、土俵の上では「凶悪」とすらいえるほどの強さを発揮しました。しかし、土俵を降りれば途端に優しさを見せ、どんな赤ちゃんでも抱き上げて魔除けをしてあげました。抑圧された人々は彼に希望を託しました。彼は、圧倒的なまでの強さを誇ります。200回以上闘って、生涯にわずか10敗でした。
ほんとに格好良い。相撲の場面の描写は、圧巻です。だけど最後には、彼は孤独になっていきます。最強故の孤独です。そして、何の関係も無い幕府内の権力闘争に巻き込まれて、罪人に仕立て上げられ・・・ それでも毅然とした態度で役人に臨みます。どんな状況にもめげず、決して倒れません。雷電はほんとに格好良い。
作者・飯嶋和一は凄い、と読後しみじみ感じました。あらは、探せばいくらでもあるかもしれません。文章だってきちりと整っているといえるようなものではないのです。長いから、最後まで読むのはけっこう大変です。しかし、紙上に全てを叩きつけたような迫力が素晴らしい。読んで感動する小説というのは案外少ないけど、飯嶋和一の作品は感動します。
自森人読書 雷電本紀
著者: 飯嶋和一
出版社: 小学館
江戸時代に活躍し、「史上最強」と謳われる相撲取り・雷電と、彼を取り巻く人々の物語。という紹介では、さっぱり何も伝わらないよなぁ・・・
雷電はもともと農家の生まれでした。本名は為右衛門と言います。彼は、浅間山噴火、地震などの天災と、それらを利用して私欲を貪る商人、侍たちによる人災に、苦しめられている村の人たちの中で育ちました。為右衛門は優しい性格から誰からも好かれる若者になってきます。ですが、父親はそれを心配し、1人息子の彼を相撲取りにしてしまいました。村にい続ければ、いずれ人望のある彼が一揆などの時にみんなから祭り上げられ、辛苦の道を進むのは確実だったのです・・・
そうして為右衛門は「雷電」となり、相撲取りに変わりました。しかし、彼は相撲取りになっても変わりませんでした。武士達の家来となって嬉々としている相撲取りたちとは一風変わった立場をとります。
雷電は、土俵の上では「凶悪」とすらいえるほどの強さを発揮しました。しかし、土俵を降りれば途端に優しさを見せ、どんな赤ちゃんでも抱き上げて魔除けをしてあげました。抑圧された人々は彼に希望を託しました。彼は、圧倒的なまでの強さを誇ります。200回以上闘って、生涯にわずか10敗でした。
ほんとに格好良い。相撲の場面の描写は、圧巻です。だけど最後には、彼は孤独になっていきます。最強故の孤独です。そして、何の関係も無い幕府内の権力闘争に巻き込まれて、罪人に仕立て上げられ・・・ それでも毅然とした態度で役人に臨みます。どんな状況にもめげず、決して倒れません。雷電はほんとに格好良い。
作者・飯嶋和一は凄い、と読後しみじみ感じました。あらは、探せばいくらでもあるかもしれません。文章だってきちりと整っているといえるようなものではないのです。長いから、最後まで読むのはけっこう大変です。しかし、紙上に全てを叩きつけたような迫力が素晴らしい。読んで感動する小説というのは案外少ないけど、飯嶋和一の作品は感動します。
自森人読書 雷電本紀
★★★★
著者: 谷川流
出版社: 角川書店
変人・涼宮ハルヒは、周囲の人間を強引に巻き込んで、SOS団(世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団)を結成。キョンや、みくる、長門有希、古泉一樹らはそれに付き合うことに。実は彼らにはそれぞれ秘密があって・・・
ちょっと『究極人あ~る』を連想します。読んでいると途轍もなく恥ずかしくなってくる青春学園もの。
スニーカー大賞受賞作。この作品を高く評価するとそれだけでオタク扱いされるけど・・・(表紙からして、ラノベっぽいかわいい女の子が飾っている) とはいえ、ラノベとしてまったくそつがなくて、なおかつ良くも悪くも「ラノベ」でありながらそれに自覚的(つまり自虐的)なところが面白い。かつこれ以後のシリーズで「物語」とは何かという問題に面白おかしく挑んでいくところはさすがです。とか、そういうことを書いたところで「御託に過ぎない」と言われればそれまでですが・・・
とにかく、願望小説としてよくできているのです。青春したいけどそれを素直に認められない子どもたち(とそれを通り越してしまった大人たち)のためにあるような小説と言ってしまって良い気がします。ハルヒみたいな女の子がいて、SOS団みたいなゆるくて心地よい空間があったら・・・ と、誰もが望むのではないか。
しかも、最終的に主人公キョンが選び取るのは魅惑的な「非現実・バーチャル」ではなくて味気ないけどそれなりに何かがあるはずの「普通の日常」。そこだけでも、現実(というか主に女性)から逃げまくる『エヴァ』より素晴らしいのではないか(いろいろと設定がずるいけど)。
ライトノベルというのは、『ビューティフルドリーマー』『エヴァ』などのサブカルチャーの系譜を受け継いだものなわけですが。そのラノベというものが行き着くところまで行き着いたらどうなるのか、ということに挑んだところは評価できると思います。回答は「日常への回帰」だから、ある意味では「二次元」の敗北を指し示しているんだけど(いや、あらゆる要素を取り込んでしまえる可能性だろうか)。
ラノベの一種の到達点ともいえるし(あんまり、ライトノベル読んでいないのに偉そうに言うな、という感じですが・・・)、ラノベそのもののパロディとしても読めて面白いです。
自森人読書 涼宮ハルヒの憂鬱
著者: 谷川流
出版社: 角川書店
変人・涼宮ハルヒは、周囲の人間を強引に巻き込んで、SOS団(世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団)を結成。キョンや、みくる、長門有希、古泉一樹らはそれに付き合うことに。実は彼らにはそれぞれ秘密があって・・・
ちょっと『究極人あ~る』を連想します。読んでいると途轍もなく恥ずかしくなってくる青春学園もの。
スニーカー大賞受賞作。この作品を高く評価するとそれだけでオタク扱いされるけど・・・(表紙からして、ラノベっぽいかわいい女の子が飾っている) とはいえ、ラノベとしてまったくそつがなくて、なおかつ良くも悪くも「ラノベ」でありながらそれに自覚的(つまり自虐的)なところが面白い。かつこれ以後のシリーズで「物語」とは何かという問題に面白おかしく挑んでいくところはさすがです。とか、そういうことを書いたところで「御託に過ぎない」と言われればそれまでですが・・・
とにかく、願望小説としてよくできているのです。青春したいけどそれを素直に認められない子どもたち(とそれを通り越してしまった大人たち)のためにあるような小説と言ってしまって良い気がします。ハルヒみたいな女の子がいて、SOS団みたいなゆるくて心地よい空間があったら・・・ と、誰もが望むのではないか。
しかも、最終的に主人公キョンが選び取るのは魅惑的な「非現実・バーチャル」ではなくて味気ないけどそれなりに何かがあるはずの「普通の日常」。そこだけでも、現実(というか主に女性)から逃げまくる『エヴァ』より素晴らしいのではないか(いろいろと設定がずるいけど)。
ライトノベルというのは、『ビューティフルドリーマー』『エヴァ』などのサブカルチャーの系譜を受け継いだものなわけですが。そのラノベというものが行き着くところまで行き着いたらどうなるのか、ということに挑んだところは評価できると思います。回答は「日常への回帰」だから、ある意味では「二次元」の敗北を指し示しているんだけど(いや、あらゆる要素を取り込んでしまえる可能性だろうか)。
ラノベの一種の到達点ともいえるし(あんまり、ライトノベル読んでいないのに偉そうに言うな、という感じですが・・・)、ラノベそのもののパロディとしても読めて面白いです。
自森人読書 涼宮ハルヒの憂鬱
少女きりこと黒猫ラムセス2世の物語。迫力がある容貌のため、きりこは、小さい頃から子供たちを率い、仕切っていました。ですが、ブスであると看做されてから力を失い、美人な女の子たちに敵わなくなります。けれどどうして自分がブスといわれるのか分からず、引きこもるようになるのですが、開けっぴろげな猫たちとの交流の中で、自分を見つめ直していき・・・
単なる「良いはなし」になってしまいそうなのですが、現実的で俗っぽい話が混ざっています(子供たちの中での理不尽な関係とか、男は自分より優れた女を嫌う、とか、セックスばかりしている女性が強姦されると誰も同情しない変な世の中のこと、とか)。設定(猫が喋りだす)も文章も軽いです。そのために面白い小説になっています。
人間の世界と猫の世界が対比されるところが面白いです。雄猫は良い匂いのお尻とセックスしたいだけであり、人間の男もそれと変わらないだろうに社会があるために本音が言えない、とか。けれど、一般論で全てを説明していくので底が浅い感じがします。
決して悪くはないのですが、随分とずるい構成になっていると感じてしまいました。ラストの辺りで、ブスってなんだろう、なぜ人は外見で人を判断するのか、ときりこは考えていきます。そして、「いれものとなかみ両方込みで、その人なんだ」と悟るのですが、ようするに大切なところで反論しようのない正しい結論がでて、おしまいなのです。
ブスと言われている人にとって苦しいのは、容貌に自信が持てず、誰ともコミュニーケションをとることができなくなることなのに、きりこはいつでも人間と変わらない猫と会話しているわけです。ある意味では、まだ全然救いのある浅い苦しみではないか。
そして、ラストの告白はちょっとあまりにも狙いすぎではないか、と感じました。着地が綺麗過ぎて、かえってわざとらしい・・・
読んだ本
西加奈子『きりこについて』
読んでいる最中
グレッグ・イーガン『祈りの海』
人類が衰退して数世紀がたちました。人類最後の学校を卒業し、調停官となった旧人類の少女は、新人類「妖精さん」たちと仲良くなります。妖精さんたちはお菓子が大好きな小人さん。わらわらと集まるととんでもないことをしでかすのですが、すぐに散らばってしまいます。『妖精さんの、ひみつのこうじょう』『妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ』収録。
『妖精さんの、ひみつのこうじょう』
クスノキの里は、食糧不足に悩まされていました。それで鶏を数羽絞めることにしたのですが逃がしてしまい、その後なぜか加工済みのチキンが森の中を走り回り・・・
『妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ』
クスノキの里に妖精が密集していることが判明。あまりにも集まるのはよくないだろうということで、私は一度里を離れることにしました。
もうマンネリ化しつつある気もするのだけど、なかなかに面白いです。
読んだ本
田中ロミオ『人類は衰退しました④』
読んでいる最中
グレッグ・イーガン『祈りの海』
西加奈子『きりこについて』
朝起きるとアーサーの自宅の前にブルドーザーが現れました。バイパス建設に邪魔だからアーサーの家を破壊しようとしていたのです。彼は抵抗しますが、なぜか友であるフォードに連れ出され、酒場へ。そして衝撃的なことを告白されます。フォードは、ベテルギウス人(宇宙人)であり、『銀河ヒッチハイク・ガイド』の遊軍記者として地球に来ていたというのです。そして、もうすぐ地球に最後が訪れるとも聞かされます。その言葉通り、地球はヴォゴン人の船団によってバイパスを作るために消滅させられます。アーサーとフォードは宇宙に放り出され、銀河をヒッチハイクするはめになります・・・
バカバカしくて壮大なSF小説。なんというか、全面的に42。
不条理なSF小説を書くことで知られているヴォネガットと似ていますが、こちらの方が哲学的ではなく、もう少しバカっぽいです。意識的に笑わせようとしているのが感じられます。あまり笑えないけど、そのうまく当たらない感じ、しらける感じが物凄く良いです。
奇人変人しか登場しません。とくに愉快なのは、ロボットのマーヴィン。彼は人嫌いで、その上鬱病。とにかく暗くて誰からも嫌われます。あとはいちいち口を挟む機械たちもおかしすぎる・・・
最後には、地球が作られた理由まで明かされてしまいます。そして本当の地球の支配者が登場し・・・
読んだ本
ダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』
読んでいる最中
グレッグ・イーガン『祈りの海』
西加奈子『きりこについて』
田中ロミオ『人類は衰退しました④』
グレッグ・イーガンの短編集『祈りの海』を読んでいる最中。
『百光年ダイアリー』
日記を読めば、未来のことが分かってしまうようになりました。しかし、日記はすでに記されていた通りにしか記すことが出来なくて・・・ 自由意志とはなんであるのか、問う作品。
『誘拐』
妻を無事に帰して欲しければ金を払え、と映話がかかってきます。主人公は慌てて確認すると妻は無事で・・・ そこそこに面白いです。
グレッグ・イーガン『百光年ダイアリー』
グレッグ・イーガン『誘拐』
読んでいる最中
グレッグ・イーガン『祈りの海』
本の雑誌編集部『本屋大賞2006』
ダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』
西加奈子『きりこについて』
田中ロミオ『人類は衰退しました④』
『百光年ダイアリー』
日記を読めば、未来のことが分かってしまうようになりました。しかし、日記はすでに記されていた通りにしか記すことが出来なくて・・・ 自由意志とはなんであるのか、問う作品。
『誘拐』
妻を無事に帰して欲しければ金を払え、と映話がかかってきます。主人公は慌てて確認すると妻は無事で・・・ そこそこに面白いです。
グレッグ・イーガン『百光年ダイアリー』
グレッグ・イーガン『誘拐』
読んでいる最中
グレッグ・イーガン『祈りの海』
本の雑誌編集部『本屋大賞2006』
ダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』
西加奈子『きりこについて』
田中ロミオ『人類は衰退しました④』
笙野頼子『極楽 笙野頼子・初期作品集1』を読んでいました。
『極楽』
主人公は檜皮という男。彼は子供の頃から無邪気ではなく、無自覚で鈍感だったため周囲から忌み嫌われ、家族からも抑圧を受けます。彼は尻のような顔をした女と結婚し、娘を持つのですがほとんど意識もしません。そして自宅に引きこもり、観念的な憎悪を描きたいと願い、様々な地獄絵を参考にし、下絵を描き続けるのですが・・・ 著者のデビュー作。
『大祭』
主人公は、七歳の少年。彼は、五十年に一度巡ってくる街の大祭を待ち焦がれていました。大祭がくれば何かが変わるような気がしていたからです。しかし・・・
『皇帝』
主人公は、私であることを拒否し、皇帝を名乗る男。彼は声に張り合い、ほとんど錯乱しかけながらも皇帝であり続けるため、呪文を唱え、塔を想像しているのですが、過去の記憶が蘇り。小説としては破綻しているような気もするし、だれるけど凄いです。すっきりとはしていないけど、近代的自我や、唯物論や、管理社会や家族のことを、真正面から扱おうとしてるのがよく分かります。初長篇。
ここまで陰鬱で、薄暗くて重たくて読むのが辛い小説と言うのも、最近では珍しいのではないか、と思います。読もうとしても突き放されるのです。『極楽』はまだちょっとしたブラックユーモアが感じられますが、『大祭』の鎮痛でグロテスクな読み応えにはいらいらさせられます。そして『皇帝』はまどろっこしいのに、破壊的。
笙野頼子は、近代社会というものの構造と、それを成り立たせるために存在している醜悪で抑圧的な力のありかのようなものを全力で暴こうとしているようです。けど、まだ道筋がついていないような印象も受けます。とはいえ、非常に挑戦的。
「私」のことを書くためにゆがんだ社会を描いているので、私小説でありながら、ある意味では反私小説ともいえるのではないか。なので、やっぱり笙野頼子という小説家は、文学史的にも重要といえるのではないかなぁ、と僕は感じるのですが。
今日読んだ本
笙野頼子『極楽』
笙野頼子『大祭』
笙野頼子『皇帝』
読んでいる最中
グレッグ・イーガン『祈りの海』
本の雑誌編集部『本屋大賞2006』
『極楽』
主人公は檜皮という男。彼は子供の頃から無邪気ではなく、無自覚で鈍感だったため周囲から忌み嫌われ、家族からも抑圧を受けます。彼は尻のような顔をした女と結婚し、娘を持つのですがほとんど意識もしません。そして自宅に引きこもり、観念的な憎悪を描きたいと願い、様々な地獄絵を参考にし、下絵を描き続けるのですが・・・ 著者のデビュー作。
『大祭』
主人公は、七歳の少年。彼は、五十年に一度巡ってくる街の大祭を待ち焦がれていました。大祭がくれば何かが変わるような気がしていたからです。しかし・・・
『皇帝』
主人公は、私であることを拒否し、皇帝を名乗る男。彼は声に張り合い、ほとんど錯乱しかけながらも皇帝であり続けるため、呪文を唱え、塔を想像しているのですが、過去の記憶が蘇り。小説としては破綻しているような気もするし、だれるけど凄いです。すっきりとはしていないけど、近代的自我や、唯物論や、管理社会や家族のことを、真正面から扱おうとしてるのがよく分かります。初長篇。
ここまで陰鬱で、薄暗くて重たくて読むのが辛い小説と言うのも、最近では珍しいのではないか、と思います。読もうとしても突き放されるのです。『極楽』はまだちょっとしたブラックユーモアが感じられますが、『大祭』の鎮痛でグロテスクな読み応えにはいらいらさせられます。そして『皇帝』はまどろっこしいのに、破壊的。
笙野頼子は、近代社会というものの構造と、それを成り立たせるために存在している醜悪で抑圧的な力のありかのようなものを全力で暴こうとしているようです。けど、まだ道筋がついていないような印象も受けます。とはいえ、非常に挑戦的。
「私」のことを書くためにゆがんだ社会を描いているので、私小説でありながら、ある意味では反私小説ともいえるのではないか。なので、やっぱり笙野頼子という小説家は、文学史的にも重要といえるのではないかなぁ、と僕は感じるのですが。
今日読んだ本
笙野頼子『極楽』
笙野頼子『大祭』
笙野頼子『皇帝』
読んでいる最中
グレッグ・イーガン『祈りの海』
本の雑誌編集部『本屋大賞2006』
国会の仕組みなど、随分と知っていることも多かったけど、それを再確認する上でも役立つかなぁ、と感じました。
読んでいて民主主義に則った政治を行うことは本当に難しいのだなぁ、と感じました。自民党は、大規模な公共事業を行って地方と企業に金を流し、それでもって支持を取り付けていたけれど、多くの人が満足するならば民主的ではない政治が支持されるということもありうるわけで、その部分については考えさせられます。
多数決が民主主義というわけではないし、大勢の人が間違った方向へ進んだとき、それをとめることは容易ではない、とも思います。小泉元首相が叫んでいた「構造改革/郵政民営化」という言葉に引き寄せられて多くの人が自民党に票をいれ、結果として格差と貧困は拡大しているのを見るとなおさらそう感じます。
日本にはこれまで一度も民主主義が根付いたことはない、と主張する人もいて、全面的には賛成はできないけれど(これまで日本を民主的な国にするべく多くの人が努力してきたわけで、それらに全く意味がなかったとは思えないし)、なんとなく言いたいことはわかります。民衆が権力者を倒して革命を起こしたこともないわけだし(明治維新が革命だという人もいるけどそうは思えないです。武士である薩長が天皇を掲げて幕府を倒しただけだし、それに「大政奉還」とか「王政復古」とかそういう言葉で年表が埋め尽くされているわけです。武士以外の者が集まって結成した奇兵隊は、後々天皇の軍隊に組み込まれ、それを率いていた高杉晋作は病死してしまうし)。
自己責任という言葉がいつでも持ち出される世の中になってしまったけど、権利を訴えることはやはり大切だと思います。デモも政治参加の一種だという主張には共感します。
「政治的中立」の部分を読んでいて、政治的中立というものはありえないという主張に共感しました。だって、誰もがこれまでの人生、今の自分の位置、目指す先を持っているはずです。それらをいったん忘れて中立の位置に立つ、というのはどういうことなのか、さっぱり分からない。それに問題意識を持ちつつ、神の視点に立ってそれらの問題に関して口出ししないというのは、無理だし。
今日読んだ本
山口二郎『政治のしくみがわかる本』
読んでいる最中
グレッグ・イーガン『祈りの海』
笙野頼子『極楽 笙野頼子・初期作品集1』
グレッグ・イーガンの短編集『祈りの海』を読んでいる最中。
『貸し金庫』
眠るたびに様々な人間の体の中を飛び移ってしまう男が主人公。彼は、貸し金庫の中に自分を宿した何千もの人間の記録を書き溜め、その現象について考えようとしていたのですが・・・
『キューティ』
子供が欲しくてたまらない男は、4年で死ぬ赤ん坊に似た生物を買います。そしてキューティと名付けるのですが、あまりにも可愛いので・・・
『ぼくになることを』
<宝石>を頭のなかに埋め込むことが普通になりました。多くの人はそれに自分そのものを記憶させ、ある年齢に達したら、脳を捨てて<宝石>に乗り移り、老衰を免れました。ですが主人公は、<宝石>が自分といえるのか分からず、苦悩しますが・・・
『繭』
ある企業が、胎盤の組織を改変することで胎児を様々な汚染物質から守る繭を開発しようとしていました。ですが、その企業の研究所が爆破されます。ゲイの主人公はその謎を追うのですが・・・
ハードSFというもの本来の面白さが追求されています。
読んだ作品
グレッグ・イーガン『貸し金庫』
グレッグ・イーガン『キューティ』
グレッグ・イーガン『ぼくになることを』
グレッグ・イーガン『繭』
読んでいる最中
グレッグ・イーガン『祈りの海』
山口二郎『政治のしくみがわかる本』
『アン夫人の沈黙』『狼少年』『二十日鼠』『トバモリー』『刺青奇譚』『スレドニ・ヴァシュター』『イースターの卵』『グロウビー・リングトンの変貌』『開いた窓』『宝船』『蜘蛛の巣』『宵闇』『話上手』『物置小屋』『毛皮』『おせっかいと仕合わせな猫』『クリスピナ・アムバリーの失踪』『セルノグラツの狼』『人形の一生』『ショック療法』『七つのクリーム壷』収録。
傑作集と銘打ってあるだけあって、はずれがないです。
どの短編も、ひねりがきいていて、意外なオチに愕然とさせられます。こうくるな、と予想してもはずれるところが面白いです。『狼少年』や『開いた窓』、『セルノグラツの狼』などがとくに面白かったです
『狼少年』
主人公の青年は狩りの最中に不気味なことを口走る少年と出会います。伯母は身寄りがないらしい少年を引き取り、可愛がるのですが、私は不安でなりません・・・
『開いた窓』
ナトルは神経衰弱のため田舎で療養していたのですが、お節介な姉に紹介状を渡され、サプルトン夫人を訪問します。すると対応に出た夫人の姪ヴェラから、恐ろしい話を聞かされ・・・ ホラーかと思いきや、そういうわけではありません。みごとなオチが素晴らしいです。
皮肉に満ちていて、なんというか醒めきっています。かなり苦いブラックジョークに満ちているのに、それでいて物静かなのです。この味は癖になりそうです。
今日読んだ本
サキ『サキ傑作集』
今読んでいる本
グレッグ・イーガン『祈りの海』
物語の舞台は、近未来のハリウッド。そこではデジタル技術が発達し、昔の名優たちを使い回したリメイク映画ばかりが山のように作られていました。映画マニアの大学生トムは、あるパーティでアステアに憧れる女子学生アリスと出会い、彼女にひとめぼれ。彼女は今では作られることのないミュージカル映画に出演したいと望んでいたので、それは無理だとトムは忠告するのですが、アリスは去ってしまいます。その後トムは古い映画の中にアリスを見つけ・・・
甘いラヴストーリー。
映画ネタが満載。ハイパーテキスト的。知らない映画も多かったため、あまり入り込めなかったのですが『スター・ウォーズ』の一場面がでてきたときには面白いな、と感じました。
アリスが古い映画の中に出演しているのが発見され、それがタイムトラベルなのかどうなのか問題となります。その問題が鮮やかに解決される部分がみごとです。そして最後にはハッピーエンドが待っています。
ローカス賞受賞。
今日読んだ本
コニー・ウィリス『リメイク』
今読んでいる本
サキ『サキ傑作集』
病弱な少年ポールは、大人に媚びない暴れ者ダルジュロに憧れていました。ですが、ダルジュロは弱いポールのことを好ましく思っておらず、雪合戦の時、彼に雪を当て気絶させてしまいます。ジェラールは、ポールを彼と彼の姉エリザベートが住む部屋へと連れ帰ります。そこは、子供たちが築き上げた子供だけの空間でした・・・
ジャン・コクトーはフランスの詩人・芸術家。
善悪を見分けられない子供の残酷さを扱った「小説詩」だそうです。そこまで恐ろしいとは感じなかったけど、鮮烈ではあるし、なんというか構成が綺麗です。逃れがたい破局へと向かっていくラストの辺りがとくに良いなぁと感じました。
ポールらの生活をそのまま写し取ったような文章と、大仰で詩的な警句のような文章が並び、融合しているところが面白かったです。
やたらと回りくどい表現がなかなかに良かったのですが、それとは別に日本語としてしっくりこない部分が随分とありました。それは詩的ということで許されるのだろうか。いまいちよく分からないです。
角川書店。東郷青児訳。
今日読んだ本
ジャン・コクトー『怖るべき子供たち』
今読んでいる本
コニー・ウィリス『リメイク』
サキ『サキ短編集』
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