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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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うまい。とにかくうまい・・・
『少女』
読者に嫌悪感を抱かせるような描写をしておきながら、かといってそこを主題にすえずにうまくそらしていき、最後にはきちりとオチをつける。みごとというしかないです。まぁ『告白』のほうが衝撃的ではあったけど。今回も面白い。

まぁちょっとパワーダウンしたかも知れないけど。


今日読んだ本
湊かなえ『少女』

今読んでいる本
小川洋子『ミーナの行進』
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世の中に、こんな小説家もいるのか、と驚かされました。
『名もなき孤児たちの墓』

『私の『パソコンタイムズ』顛末記』『彼女たちの事情など知ったことか』『女たちのやさしさについて考えた』『美容室「ペッサ」』『典子は、昔』『憎悪さん、こんにちは!』『鼻声で歌う君の名は』『記憶道場』『傷口が語る物語』『血を吸う巨乳ロボット』『女とつき合う柄じゃない』『ドキュメント授乳』『ドキュメント続・授乳』『名もなき孤児たちの墓』『大集合!ダンサー&アクターズ』といった短編がまずあって、その後中篇『点滅・・・・・・』があります。

不条理、かつエログロともいえるような意味があるようでなさそうな言葉のつながり。そして、その上で書くという行為に対しての憎悪を書き連ねていきます。面白いです。こういう立場に立って、書くということを否定する作家が世の中にいたのか・・・

読む側はどうすればいいのか。「読まない」という選択肢をとれば良いのかなぁ・・・

今日読んだ作品
中原昌也『名もなき孤児たちの墓』
中原昌也『点滅・・・・・・』


今読んでいる本
小川洋子『ミーナの行進』
湊かなえ『少女』
★★★★

著者:  川上健一
出版社: 講談社

  二宮清純というスポーツ評論家の著書の中で引用されていて、面白そうだなぁと思った本です。しかしどこを捜してもみあたらない。もうだめかなぁ、と諦めかけていたら、自由の森学園の図書館に文庫本がありました。案外いろんな本があるんだよなぁ、自由の森学園の図書館って。

  一匹狼の投手・江夏豊の野球人生を(途中までだけど)ずっと追っていったものです。冷静なアナウンスのような文章と、江夏豊自身の独白が交互につながってきます。現在では、ファンから『20世紀最高の投手』とまで絶賛されていますが、当時は、マスコミから徹底的に叩かれていました。「若い礼儀を知らない小僧」というふうに見られたからです。阪神時代、歴代監督との軋轢がクローズアップされて非難され、黒い霧事件に巻き込まれて非難され、巨人に9連覇を許したことを非難され、いろんな失言で非難され、スキャンダルで非難され・・・

  江夏豊は徹底的に叩かれます。それでもぼろぼろの体を薬(痛み止めとかその他いろいろ)でなんとか保って闘い続けるところは凄い、としか言いようがありません。あとになって見てみると、「礼儀を知らない小僧」「傲岸不遜な野郎」でありながら、それと同時に「孤高のエース」だったのだともいえる、ということに気付きます。

  『博士の愛した数式』のなかに登場する博士は、阪神というより江夏豊の熱烈なファンなのですが、その気持ちがよく分かります。江夏豊は凄い人だもんなぁ。


自森人読書 サウスポー魂
★★★

著者:  藤川大祐
出版社: 講談社

  最近流行している、子どもとケータイの関係性についての本。ケータイが子ども達に普及することによって、プロフ、学校裏サイト、メール依存、売春などの問題が浮上してきました。「携帯電話」ではなくてケータイと呼ぶのは、すでにそれが電話ではないからです。もっと多機能な、一種の小型万能機械みたいものです。そんなケータイと、どう付き合っていけば良いのか? というのかこの本です。

  子どもに、ケータイを持たせるのはダメだ、と言わないのが印象的でした。まぁ、ケータイはダメだといまさら言ったところで、ここまできてしまったら、もう後戻りはできないという認識がまずあるんだと思います。僕は持ってないけど、多分1度持ってしまったら手放せない、という感覚はよく分かります。

  ケータイって負の面ばかりが強調されているけど、そこまで悪いものなのかなぁ、と僕は思います。「最近の若者は、面と向かって人と接することができない、その元凶がケータイだ」と言われても・・・ 子どもにケータイを買ったのは親なわけだし。テレビや本では、「地域コミュニティーの崩壊」とかしたり顔で大人がいろいろ言っているけど(それは正しいのだとは思うけれど)、結局そういうふうな社会にしたのは、その言っている大人の人たちの訳だし。

  「最近の若者は・・・」という前に、そういう若者を育てた自分たちのことをまず振り返るべきじゃないのかなぁ。非難のほこさきが間違っている気がします。不登校・いじめといった教育に関しても同じです。「教育」を引っ張りまわして、その上競争を持ち込んでぶち壊しておいて、「よわっちいやつがいじめられたり、不登校したりするんだ、そういうやつは努力が足りない」というふうに言い出す。どう考えてもおかしい気がします。

  (僕が、 あさのあつこを気に入らないのは、そこらへんのことも関係しています。あさのあつこは新聞か何かで、いじめられてる子達に向けて「いつか幸せをつかめる、頑張れ」みたいなことを書いてました。幸せになれるとは思えないし、頑張れないから不登校したり、自殺したりするんだって・・・ 何にも分かってない。だから『復讐プランナー』とかそういうくだらない本がぬけぬけと書けるんだな、と思いました。)


自森人 ケータイ世界の子どもたち
『松本清張と昭和史』
『松本清張と昭和史』は、松本清張という人がどのように昭和史を考えていたのか、ということを掘り下げていったもの。具体的には、『昭和史発掘』と、『日本の黒い霧』を取り上げています。入門書みたいな感じ。とても分かりやすいです。

著者は、松本清張の持つ歴史への見方を「清張史観」と呼んでいるんだけど。けっこう考えさせられます。2.26事件は昭和史の中で最重要視の部分、という主張を行ったのは彼が最初なんだ・・・ 意外です。


今日読んだ本
保阪正康『松本清張と昭和史』

今読んでいる本
小川洋子『ミーナの行進』
中原昌也『名もなき孤児たちの墓』
湊かなえ『少女』
連作短編集『映画篇』を読み終わりました。
『ペイルライダー』『愛の泉』

『ペイルライダー』は、ほのぼのと、壮絶な闘いが並んでいて、全部の短編の中で1番面白い流れだなぁ、と僕は感じました。ヤクザとかがでてきて、闘いが巻き起こります。おばちゃんかっこいい。

『愛の泉』は、短編集の中で最もすんなりしていて読みやすいです。連れ合いをなくして元気をなくしたおばあちゃんを励ますために孫達が『ローマの休日』を大きな会場で見せてあげよう、と画策する物語。


今日読んだ作品
金城一紀『ペイルライダー』
金城一紀『愛の泉』


今読んでいる本
小川洋子『ミーナの行進』
中原昌也『名もなき孤児たちの墓』
★★★

著者:  平野弘道
出版社: 講談社

  平野弘道『史上最大の恐龍ウルトラサウルス』は長い時間かけて読んだ本。いろんなものを併読していたのでかなり時間がかかりました・・・

  いろんな恐竜のことが載っていて、面白かったです。日々、研究が進んでいるんだなぁ、と実感しました。だけど確定している「事実」は少ないんだなぁ。まだ研究中、という部分が多いようです。でもそれはそうだよなぁ。本物の恐竜を見た人間は誰もいない訳だからも、いろんな考え方がでてくるよなぁ・・・

  ウルトラサウルスのことだけできなくて、これまで最大とされてきた恐竜の歴史(ブラキオサウルスなど)や、それぞれの時代の最強の肉食恐竜(アロサウルス、ティラノサウルス(タイラノサウルスと書かれているのが昔だなぁ・・・)など)のことも載っていて読んでいて面白いです。恐竜好きの人が読んだら、絶対にこの本を好きになると思います。

  ウルトラサウルス、ひいては恐竜はどうして滅亡したのか、という部分がとても面白かったです。海の無酸素化とかいろいろ説明されても難しいけど、生物の滅亡にはとても興味があります。何か天変地異が起きたのか、それとも自然に環境の変化とともにじょじょに滅亡していったのか? う~んまだはっきりとは分かっていないのだけど、知りたいです。僕が死ぬまでに結論がでてくれたら嬉しいなぁ。まぁまたいつかその説が覆されたりしたら、もっと面白いけど。


自森人読書 史上最大の恐龍ウルトラサウルス
凄すぎる、と思わされました。
『ハサミ男』

「ハサミ男」は、少女を殺害し、その首にハサミを突き立てるという残虐な犯行を繰り返しました。マスコミは大騒ぎし、一方警察は逮捕にやっきになります。しかし犯人は、決してしっぽを掴ませませんでした。
そして、とうとう3人目の被害者がでてしまいます。ですが、その事件は実は今までの「ハサミ男」の行ったものではありませんでした。自分の狙っていた獲物を奪われた今までの「ハサミ男」は、もう1人の模倣犯である「ハサミ男」を追跡していき・・・

途中何度かあの手でくるのか、と想像していたのに、まんまとやられてしまった、というか。視点が錯綜するので、見事に騙されました。凄いです。今まで読んできたミステリの中でも10位内に入るほどの面白さ、といってしまっても良い気がする。ちょっと大げさかなぁ、いやでもそのくらい面白いです。

ラストシーンは、うわーまたやるのかも知れないなぁ・・・ と思わされます。

第13回メフィスト賞受賞、同年の宝島社「このミステリーがすごい!」第9位。


今日読んだ本
殊能将之『ハサミ男』

今読んでいる本
金城一紀『映画篇』
中原昌也『名もなき孤児たちの墓』
連作短編集『映画篇』を読んでいる最中。
名作とされる映画がたくさん登場します。ほとんど知らないです・・・

金城一紀は、日本国籍を持つ韓国系日本人。
『太陽がいっぱい』という短編の主人公は在日韓国人。どこか作者自身を連想させます。小説によって彼が何かを書く理由を描いた作品。

『ドラゴン怒りの鉄拳』は、夫が自殺した女性が主人公。彼女は夫の死後長くひきこもってしまうのですが、ビデオ店で映画を借りたり、ビデオ店員の青年との関わってたりする中で、立ち直っていき、あることを決断します・・・

金城一紀『恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス』は、親との関係がうまくいっていない青年が、弁護士の親から金を奪おうとする女性にひかれていく物語です。

このあたりまで読むと、どの短編も関連していることが分かってきます。面白い。そうか、そことそこでつながっているのかも知れないのか・・・ というふうに楽しめます。


今日読んだ作品
金城一紀『太陽がいっぱい』
金城一紀『ドラゴン怒りの鉄拳』
金城一紀『恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス』



今読んでいる本
金城一紀『映画篇』
中原昌也『名もなき孤児たちの墓』
殊能将之『ハサミ男』
どこまでも饒舌に繰り出される言葉。読んでいてぐるぐる眩暈を感じます。凄い、本当に!
『わたくし率イン歯ー、または世界』『感じる専門家 採用試験』

こういう文体の小説を何個も並べられたら辟易したかも知れないけど、これ1個ぽんと放り出されると凄すぎて感動してしまいます。ほんと凄い。テンポが良い。

主人公がわたしわたしわたしと言い出して叫びだしたあと、化粧した女性に逆に詰問されるところが痛いけど、凄い。どこまでが現実で、どこからが妄想なのか。う~ん、悩ましいです。それにしても凄い。

最後のシーン(無歯症かも知れない?少女とその母)が暗示的。


今日読んだ作品
川上未映子『わたくし率イン歯ー、または世界』
川上未映子『感じる専門家 採用試験』


今読んでいる本
金城一紀『映画篇』
中原昌也『名もなき孤児たちの墓』
やっと読めました、『文学賞メッタ斬り!』。
ずっと読みたいと思ってたのになかなかなくて。
『文学賞メッタ斬り!』

まず、大森望、豊崎由美の2人の語りが面白い。あとは内容も、面白いです。いろんな文学賞のことが紹介されています。日本ってけっこう文学賞がたくさんあるんだなぁ・・・ でも案外面白い新人賞というのはないんだ・・・

「まぁ個人的にチェックしときたいと思う新人賞は、メフィスト賞と、ファンタジーノベル大賞だけ」という豊崎由美の言葉には頷かされます。

そういえば、何故村上春樹に芥川賞はあたえられなかったのか、とか考えさせられます。「前衛文学」だったからか。

新人賞ではなくて、大家に与えられる賞としては、谷崎潤一郎賞がなかなか良いところを押さえているらしいので確認してみようと思います。第3回の安部公房『友達』と、第41回の町田康『告白』くらいしか読んだこと無いです・・・(それと泉鏡花賞も面白い、と書いてあったっけ、そちらも追っていきたいなぁ・・・)


今日読んだ本
大森望、豊崎由美『文学賞メッタ斬り!』

今読んでいる本
金城一紀『映画篇』
川上未映子『わたくし率イン歯ー、または世界』
中原昌也『名もなき孤児たちの墓』
『日本一怖い!ブック・オブ・ザ・イヤー 2006』面白いです。こういう本を読むと、読みたい本がどばーっと増えてしまう・・・
『日本一怖い!ブック・オブ・ザ・イヤー 2006』

まずは、『グランド・フィナーレ』読まなきゃ・・・ と思いました。どんな話なんだろうか。他にも読まないと、と思った本がたくさん溜まってしまった・・・ う~ん大変だ。休みももう終わりなのに。

《文芸・評論》高橋源一郎×斎藤美奈子
《エンターテインメント》北上次郎×大森望
《ベストセラー》宮崎吐夢×篠崎真紀
《ビジネス&サイエンス》稲葉振一郎×山形浩生
《コミック》村上知彦×南信長
《海外書評》NYタイムズ専属書評家・ミチコカクタニ
《タレント本》吉田豪

阿部和重やジョン・アーヴィングのインタビューもあり、さらには豊崎由美も少しだけ顔を出しています。


今日読んだ本
SIGHT編集部『日本一怖い!ブック・オブ・ザ・イヤー 2006』

今読んでいる本
金城一紀『映画篇』
大森望、豊崎由美『文学賞メッタ斬り!』
凄い! けど、全体的にありえない気がする・・・ 
『生首に聞いてみろ』

現代彫刻家の川島伊作が病死。彼は、その死の直前に、自分の娘をモデルにした石膏像を完成させて息を引き取ったはずであった・・・ しかし数日後確認したところ、いつの間にか石膏像の首がなくなっていた。そしてそのモデルになっていた娘まで行方不明になってしまい・・・

「このミステリーがすごい」2005年版1位。本格ミステリー大賞受賞。

豊崎由美が、「1回レイプしただけで都合よく妊娠するかよ?」と書評『正直書評。』に書いていたけど、その批判は的を射ている気がします。というより、全体として無理がありすぎじゃないか。大作ではあるけど、そこまで素晴らしい超傑作とは思えないなぁ・・・


今日読んだ本
法月綸太郎『生首に聞いてみろ』

今読んでいる本
金城一紀『映画篇』
大森望、豊崎由美『文学賞メッタ斬り!』
SIGHT編集部『日本一怖い!ブック・オブ・ザ・イヤー 2006』
とうとう『ささらさや』が読み終わりました・・・

『待っている女』はサヤのお隣さんの物語。そのお隣さんはいつも戸を開けて誰かを待っているようなのだが、何を待っているのか全く分からないのですが・・・

『ささら さや』は、元夫の家族によるユウ坊誘拐作戦再び、の回。ユウ坊が熱をだして慌てていたサヤは、なんとユウ坊をさらわれてしまいますが・・・

『トワイライト・メッセンジャー』は、幽霊になってしまった夫の1人語り。俺はもうすぐ去るけど、頑張れよ、みたいなメッセージ。

う~んのほほんとしているけど、でもちょっと毒も含んでいてけっこう良い話だなぁと思いました。僕は短編だと面倒になってしまうので、けっこう時間はかかったけど面白い物語でした。


今日読んだ作品
加納朋子『待っている女』
加納朋子『ささら さや』
加納朋子『トワイライト・メッセンジャー』


今読んでいる本
金城一紀『映画篇』
法月綸太郎『生首に聞いてみろ』
大森望、豊崎由美『文学賞メッタ斬り!』
SIGHT編集部『日本一怖い!ブック・オブ・ザ・イヤー 2006』
『職人を生きる』を再読。装丁が良いなぁ。
『職人を生きる』

 今は、職人として生きるということが難しい時代だろうなぁ、と読みながら思いました(本の中でも何度も触れられているけど)。中学をでたらすぐに技を磨くのが良い、と言う人もいるようだけど、多くの人は漫然と中学・高校・大学へと上がっていく気がします。僕も、中学を卒業したときすぐに職人になるという道を選ぶ勇気はなかったです。ただでさえ、新学歴社会とかそんなことが叫ばれている中で、「技で生きる」なんて可能なのかなぁ・・・

 本の中でも、「学歴」と「職人として生きること」について触れられていたけど、やっぱり釈然としないです。現代は、昔と比べて自由になったと言われるけど、案外生き方が限定される不自由な時代なのかもなぁ、とも考えました。人間も、機械と同じように幅広い有用性というか、万能性が求められてしまう、というか。一芸に秀でているだけでは生きていけないといえば良いのか。

 「相互扶助・相互監視(プライバシーの存在しえないようなつながり)」を兼ね備えた「ムラ」がなくなった代わりに「個人」が生まれて激しい競争の時代になった、という日本・明治の近代論みたいなものを読んだことがあるけど、それともかかわりがあるのかなぁ(その後も「ムラ」的関係は続いて、終戦後の占領統治下において個人主義が完全に導入された、という人もいるけど) それまでは互いに欠けた部分を補完しあえていたのに、1人ひとりに独り立ちが求められたことによって、1つのことをやって生きていくことが不可能になったのではないか。それは良いことなのか。悪いことなのか。判断が難しい。というか、難しくてよく分からない・・・

 随分と変なところに迷い込んでしまったので話を戻すと。
 いくら腕を磨いて良い物をつくっても、かってもらえないのでは生きていけないということも悩ましいなぁと感じました。海外からやってくる大量生産された安い物に対して立ち向かうためには、まず買う側の意識を変えて買ってもらう必要があります。だけどそれはかなり難しいことだというのは明らかです。だって、命に直接関わる食べ物を選ぶときだって、消費者の基準は「安さ」だから。

 グローバリゼーションの問題とも言える気がします。ソ連が崩壊して曲がりなりにも二分されていた世界が「1つ」になったことで問題が溢れかえっているといわれるわけですが。その中で、貴重な文化(言語とかも)もどんどん失われていくのかなぁ。そうだとしたら、「残念な出来事」ではすまない気がします。何もかも1色に染まってしまったら、とても、つまりらない世界になってしまうのではないか。

 それでは、人類は豊かになったはずなのに文化的には貧しくなっているということではないか(まぁ、よく言われる陳腐な論だけど・・・)。いろんな「色」を残すという点からも、職人を次の世代へとつなげていくべく奮闘している人たちには頑張って欲しいなぁと思いました。

今日読んだ本
鮫島敦『職人を生きる』(再読)

今読んでいる本
加納朋子『ささらさや』
金城一紀『映画篇』
法月綸太郎『生首に聞いてみろ』
なんだか外はけっこうよれよれな感じですが、中身は面白かったです。
『寺田寅彦随筆集 1』

『どんぐり』『龍舌蘭』『花物語』『旅日記から』『先生への通信』『科学者と芸術家』『物理学と感覚』『病院の夜明けの物音』『病室の花』『丸善と三越』『自画像』『芝刈り』『球根』『春寒』『春六題』『蓑虫と蜘蛛』『田園雑感』『ねずみと猫』『写生紀行』『笑い』『案内者』『断水の日』収録。

彼は明治・大正・昭和時代の人なのですが、とても文章が読みやすいことにまず驚きました。やっぱり、明治維新は大きな境目になっているなぁと感じます。それ以前のものは、ほとんど読めないです。明治維新より前のものは、ほとんど外国語と同じといってしまっても良いのではないか、と僕は勝手に思っています。

『どんぐり』はとても感傷的な作品。
だけど、そのあとからは理論っぽいのが続々とでてきます。心について述べているところでは、森博嗣を連想するような言葉がでてきます。

最初のあたり、『三国志』『八犬伝』が時折登場したり、「関羽」という文字列があったりするので、おーと思わされます(たぶん『花物語』)。今も昔も読まれている共通のものがあることに感動する、というか。

あと、『病院の夜明けの物音』には共感しました。寝ていると、音に敏感になる、というより気になってくる、ということが書かれています。暗い中、1人だと時計の音とかが気になり出すんだよなぁ。なんだか。

何かをただ描写していたはずなのに、時々ぽんと飛んで、文化論にまで発展するところがとても面白い。そういうふうにつなげていくのか、と感心させられます。飛躍しているのに、唐突ではなくて、どこか流暢さがあるんだよなぁ。

『自画像』は面白いです。寺田寅彦が病気で安静にしている時、自画像を描こうと思い立ち、何個か描くのだけどなかなか難しいと述べているもの。彼と、友達の画家とのいろんなやりとりとかは、自由の森学園の美術の授業でも使えそうな感じです。

『笑い』は、笑いという現象の分析。笑ってはいけないところでどうしても笑いたくなってしまう自分はおかしいのだろうか、と寺田寅彦が書いているのですが。やっはいけないと言われるとやりたくなるというのは誰にもあることだよなぁと共感します。どうしてなんだろう。


今日読み終わった本
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集1』

今読んでいる本
加納朋子『ささらさや』
金城一紀『映画篇』
法月綸太郎『生首に聞いてみろ』
鮫島敦『職人を生きる』
バカミス。
『六枚のとんかつ』

やあこれは凄い。いろいろな意味で。ギャグが・・・
笠井潔に「たんなるゴミ」といわれた、という作品。けど良いのではないか。推理小説のバカさをこういう形でおちょくるというのもそれはそれで面白い。

けど、食傷気味です。最後まで読むのはちょっと面倒・・・

「音の気がかり」「桂男爵の舞踏会」「黄金」「エースの誇り」「見えない証拠」「しおかぜ17号四十九分の壁」「オナニー連盟」「丸ノ内線七十秒の壁」「欠けているもの」「鏡の向こう側」「消えた黒いドレスの女」「五枚のとんかつ」「六枚のとんかつ」「『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』を読んだ男」「最後のエピローグ」「ボーナス・トラック 保険調査員の長い一日」収録。


第3回メフィスト賞受賞作。


今日読んだ本
蘇部健一『六枚のとんかつ』

今読んでいる本
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集』
加納朋子『ささらさや』
金城一紀『映画篇』
なんというか、「毒」がでてきて良い感じです、『ささらさや』。これまではおろおろするばかりだったさや。彼女の周りに面白おかしくて頼りがいのあるおばあさんたちが現れます(いやあんまり頼れなさそうな人もいるけど・・・)。彼女たちの毒舌が楽しいです。

『空っぽの箱』は、さやの家に集う3人のおばあさんたちのストーリー、みたいなもの。『ダイヤモンドキッズ』はユウ坊の誘拐未遂事件を描いた作品。


今日読んだ作品
加納朋子『空っぽの箱(ささらさや)』
加納朋子『ダイヤモンドキッズ(ささらさや)』


今読んでいる本
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集』
加納朋子『ささらさや』
蘇部健一『六枚のとんかつ』
格好良いです。倉橋由美子という小説家。
『偏愛文学館』

ダメなものはダメと言い、決して妥協しない。そして、自分の偏愛するものを語っていきます。

紹介されている本
夏目漱石『夢十夜』○
森鴎外『灰燼/かのように』
岡本綺堂『半七捕物帳』
谷崎潤一郎『鍵・瘋癲老人日記』
内田百閒『冥途・旅順入城式』
上田秋成「雨月物語」「春雨物語」
中島敦『山月記 李陵』○
宮部みゆき『火車』○
杉浦日向子『百物語』○
蒲松齢『聊斎志異』△
蘇東坡『蘇東坡詩選』
トーマス・マン『魔の山』
『カフカ短篇集』
ジュリアン・グラック『アルゴールの城にて』『シルトの岸辺』
カミュ『異邦人』
コクトー『恐るべき子供たち』
ジュリアン・グリーン『アドリエンヌ・ムジュラ』
マルセル・シュオブ「架空の伝記」
ジョン・オーブリー「名士小伝」
サマセット・モーム『コスモポリタンズ』
ラヴゼイ『偽のデュー警部』
ジェーン・オースティン『高慢と偏見』
『サキ傑作集』
パトリシア・ハイスミス『太陽がいっぱい』
イーヴリン・ウォー「ピンフォールドの試練」
ジェフリー・アーチャー『めざせダウニング街10番地』
ロバート・ゴダード『リオノーラの肖像』
イーヴリン・ウォー『ブライツヘッドふたたび』
壺井栄『二十四の瞳』
川端康成『山の音』
太宰治『ヴィヨンの妻』
吉田健一『怪奇な話』
福永武彦『海市』
三島由紀夫『真夏の死』
北杜夫『楡家の人びと』
澁澤龍彦『高丘親王航海記』
吉田健一『金沢』

倉橋由美子の偏愛している本の中で、僕が読んだことがあるのは4作だけでした・・・ もっと読んでいこうと思います・・・


今日読んだ本
倉橋由美子『偏愛文学館』

今読んでいる作品
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集』
加納朋子『ささら さや』
蘇部健一『六枚のとんかつ』
『イニシエーション・ラブ』

最後の2行で驚愕する、と書いてあったんだけど、確かに最後の2行で驚愕しました。凄い。そういうことか。最後になって、トリックに気付かされました。凄すぎる。それにしても予告されていても見抜けなかった・・・

途中まで普通の恋愛ものみたいな感じでそこまで面白くないし、語り手の男の独善的で、アホな感じにうんざりさせられるけど。最後まで読んだ甲斐がありました。


今日読んだ本
乾くるみ『イニシエーション・ラブ』

今読んでいる作品
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集』
加納朋子『ささら さや』
倉橋由美子『偏愛文学館』
ホストクラブ『indigo』と、そこのホスト達の物語第3弾。
インディゴの夜

『シン・アイス』は軽いんだけど死というものをあっさりと描いているところが案外良かったです。その軽さと重さが、微妙にアンバランスで面白い。
公園で死体を見つけてしまった犬マンとタクミ。ホームレスのタクミは、ホームレス仲間のアキオさんが犯人と疑われることを疑い、犬マンに助けを求める・・・

『ホワイトクロウ』は、indigoの改装をまかされた優れたデザイナー笠倉の片腕、白戸が失踪。彼女は、これまでホストクラブindigoに来ていた客でした。ホストたちは彼女を探すべく動き出しますが・・・

もうだめだー、という感じです。ワンパターン。先が見えてしまってつまらない。しかも、ホストクラブが舞台である(いやホストクラブindigoがはもうほとんど登場しない・・・)必要性もなくなってきてしまった気がします・・・

第1作目 『インディゴの夜』

第2作目 『インディゴの夜 チョコレートビースト』


今日読んだ本
加藤実秋『シン・アイス(インディゴの夜)』
加藤実秋『ホワイトクロウ(インディゴの夜)』


今読んでいる作品
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集』
加納朋子『ささら さや』
今、加納朋子の『ささら さや』を読んでいます。連作短編集。
『ささら さや』
『トランジット・パッセンジャー』は、自分が突然車に轢かれて死ぬところから始まります。びっくり。そして葬式の場面へと移っていくのですが・・・ えー、どういうことなんだという感じですが。彼は、幽霊になってこの世にい続けます。そして、妻・さやとユウ坊を見守っていくことに。

ほっとします。

『羅針盤のない船』は、さやがユウ坊を義姉にとられかけるところから始まります。さやは、さやの伯母が遺してくれた家が「佐々良(ささら)」というところにある、ということを思い出したそこへ引っ越そうとします・・・

『笹の宿』では、引越しの際不手際で、旅館・笹の屋に泊まることにしたサヤが奇怪な事態に出会います。しかし、幽霊になったおばあちゃんにとりついて夫が戻ってきて・・・


今日読んだ作品
加納朋子『トランジット・パッセンジャー』
加納朋子『羅針盤のない船』
加納朋子『笹の宿』


今読んでいる作品
加藤実秋『シン・アイス(インディゴの夜)』
加藤実秋『ホワイトクロウ(インディゴの夜)』
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集』
加納朋子『ささらさや』
マンネリ化しつつあるなぁ・・・
ホストクラブ「インディゴ」とそこのホスト達の物語第3弾。

語り手が晶さんじゃなくなったので、もうピリリとする晶のツッコミが聞けなくなって、もう★1つに限りなく近づいてきた気がします。ちょっともうガサガサで重みが全くない。セリフが説明っぽくてつまらない。

若者の言葉が耳に痛い。ホームレスなのに、「アーティストとかそういうくくりにとらわれたくないんだよね。俺を指すなら、フリーかな」とか言って・・・ まぁそこは作者が意図的にやっているんだろうけど。

『神山グラフィティ』は、お店のナンバーワンホスト・ジョン太の不器用な恋を描いた一編です。
ジョン太には、神山食堂という行きつけの店がありました。そこのバイトの可奈が気に入っていたから通っていたのです。しかし、商店街ではシャッターへの落書きが問題になり、その途端に可奈が失踪。ジョン太は、犯人を追い、可奈を探そうとしますが・・・

『ラスカル3』は、アレックスの物語。彼の通うキックボクシングのジムの会長が、ヤクザにつかまってしまい、1千万を要求されます。アレックスは黙ってはいない。仕返ししてやろうと動き出します・・・


今日読んだ本
加藤実秋『神山グラフィティ(インディゴの夜)』
加藤実秋『ラスカル3(インディゴの夜)』


今読んでいる本
加藤実秋『シン・アイス(インディゴの夜)』
加藤実秋『ホワイトクロウ(インディゴの夜)』
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集』
加納朋子『ささらさや』
面白い!
アジアやアフリカのいろんな国々の食事のことが分かります。
『アジアごはん紀行』

モロヘイヤのスープが、エジプトではお味噌汁みたいに飲まれているんだそうです。びっくりだなぁ・・・・・

それにしてもその国の食事を知ることは文化を知ることにつながるんだなぁ。アジア紀行したくなりました。


今日読んだ本
向山昌子『アジアごはん紀行』

今読んでいる本
加藤実秋『インディゴの夜 ホワイトクロウ』
ウェブサイトhttp://jimoren.my.coocan.jp/
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