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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★★

著者:  高村薫
出版社: 毎日新聞社

  競馬好きの薬局店主・物井清三は、かつて労働組合運動に関わったために日之出麦酒社を解雇され、老人ホームで死んだ兄のことを知ります。彼は、それをタネにして、日之出麦酒社を脅そうと考え、旋盤工・松戸陽吉、信用金庫職員・高克己、トラック運転手/元自衛官・布川淳一らとともに計画を立案。彼らは、「レディジョーカー」と名乗り、日本ビール界最大手の日之出麦酒社社長の誘拐を企みます。そうして、未曾有の誘拐事件が幕を開けます・・・

  ミステリ、サスペンスといった枠に収まりきらない小説。

  上下巻ともに、400ページを超える分厚さ。しかも2段組。濃密かつ圧倒的。全てがきちりとしていて、ごまかしがありません。

  会社は「レディジョーカー」と水面下で衝突しつつ取引をかわし、一方警察とも密かに連絡を取り合いつつも大事になることは恐れて対立します。警察内部はまとまっておらず、本庁と所轄の間には鋭い確執があります(『踊る大捜査線』を連想)。その上、事件の背後には闇世界(総会屋、右翼、暴力団)が蠢き、その影を追及する記者は圧力を受けます。そういった全てのことが詳細に書かれています。

  言葉が積みあげられていくごとに、かえって人間の心というものはどれほど言葉を尽くしても説明しきれるものではないということが分かってきます。被害者・加害者・第三者など様々な立場の人が登場します。誰もが犯罪に巻き込まれて一貫性を保てず、複雑な思いを抱え、苦悩します。その辺りの描き方は非常に面白いです。

  「グリコ・森永事件」をもとにしているそうです。『レディ・ジョーカー』を読むと他のミステリ/犯罪小説は、犯罪というものの表面をなぞったものでしかない、と感じます。読後、疲れます。哀しい気分にもなります。重いものをつきつけられます。決して這い上がれないところに追い詰められた時、人はどうすれば良いのか。巨大なものが瓦解する現場に居合わせた時、何ができるのか。


自森人読書 レディ・ジョーカー
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★★★

著者:  大沢在昌
出版社: 角川書店

  近未来。東京には、不法滞在者や、その二世ホープレスの住む地域ができていました。その地域(東新宿辺り)は完全にスラム化し、「B・D・T」と呼ばれるようになりました。

  日本人の中には、ホープレスやB・D・Tに対して憎しみを抱く者たちもいました。そういった勢力は、ホープレス排除計画を推し進めていきます。そんな中、ある女性の失踪事件を追っていたホープレスの探偵、ケン・ヨヨギはその壮大な陰謀に巻き込まれ、「純粋な日本人以外は追放すべき」と唱える勢力を倒すべく、孤独な闘いを挑むことになります・・・

  がさっとしたハードボイルド小説。文章がちょっといい加減なのではないか、という気がしてならないです。そこがちょっと引っかかりました。でも、スピード感があるからか、セリフが多いからか、あっさりさっくり読めます。

  『B・D・T 掟の街』は、典型的なハードボイルドです、多分。舞台は無法地帯(東京だけど)。数々の危機を潜り抜け、時には女を抱き、自分の信念を持って疾走する主人公。憎まれ口を叩きつつも主人公と理解し合い、彼に協力する孤独な警察官。その2人が活躍。

  主人公の唱える、「日本人以外は日本を出て行けなどというのは無理だ」という考え方には共感。そういうふうに社会問題を小説の主題として取り込むと、よく全体のバランスが崩れます。しかし、『B・D・T 掟の街』はしっかりと物語が成立しているなぁ、と感じました。

  激変した近未来の東京を描いているという共通項があったので、『シャングリ・ラ』を連想しました。「東京」という都市は、それ自体が主人公になるほどの存在感があるんだなぁ・・・


自森人読書 B・D・T 掟の街
★★★

著者:  平山夢明
出版社: 光文社

  『独白するユニバーサル横メルカトル』は平山夢明の短編集。『C10H14N2(ニコチン)と少年-乞食と老婆』『Ωの聖餐』『無垢の祈り』『オペラントの肖像』『卵男/Egg MAN』『すまじき熱帯』『独白するユニバーサル横メルカトル』『怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男』収録。

  救いがなく、そしてグロテスクな物語が多いです。

  どっきりとはさせられます。例えば、『C10H14N2(ニコチン)と少年-乞食と老婆』は、優等生の「たろう」が突如いじめられてしまい、そのはけ口を老人に向ける、と言う物語。凄惨。

  しかし、どう考えてもミステリ小説とは思えません。誰がこの本を「このミス」第1位にしたんだろう。世の中には不可解なことがあるものだ、と思いました。ちょっとだけでも、ひねりのきいていたオチがついていたならば、それはミステリに分類されるのか・・・? 意味が分からない。

  そもそも文章がいまいちじゃないか、と感じました。なんだかごちゃごちゃしていて読みづらいです。下手、というか、凝りすぎてかえってよく分からなくなっている、というか。汚物は、端正な文章で語るからこそ面白みがでてくると思うんだけどなぁ。

  『怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男』のグロテスクさはそれはそれで見物。なんだか不気味な美しささえ感じさせるほど。しかし食傷気味。もうどれもこれもエグいのばかり、というかなんというか・・・ 疲れる。


自森人読書 独白するユニバーサル横メルカトル
★★

作者:  真保裕一
出版社: 角川書店

  主人公は、相馬克己。彼は、衝突事故を起こしてしまい、一度は死に掛けます。しかし母親の献身的な介護と、本人の尋常ではない回復力によって生き延びることができました。全ての記憶を失ったものの、何年かかけて中学生程度の知能は得るようになります。つけられたあだなは、「奇跡の人」。彼は母の死とともに退院するのですが、自分はかつてどういう人間だったのか気になり、周りの人間の静止をとめて自分探しへと踏み出しますが・・・

  不気味な小説。

  裏表紙に「静かな感動を生む「自分探し」ミステリー。」なんて説明がついているのですが、もうまったくもって的外れではないか。読み終わった後には薄気味悪さを感じました。。「母」が、主人公克己を支えるのは、「博愛」の心があるではなくて、罪滅ぼしの思いを消せないからだとしか思えないです。

  長すぎて少しうんざりしました。読んでいて疲れます。

  最初のあたりは主人公が良い人なので読んでいられるのですが途中からはほぼストーカーと化します。しかもそれを本人は自覚しながらも認識できてはいないのです。かなり怖いよなぁ・・・ こうなってしまったら、どうしようもない、というか。

  ラストに到達してもそのラストには納得できないです。「博愛」みたいなものを作者は描こうとしたのかも知れないけど、うまくいっていない気がします。むしろ、どこか狂気を秘めたような感じ。う~ん、作者はホラー小説(全てが再び繰り返される)を書いたつもりなのか。だとしたらなかなかなんだけど、どっちなのかよく分からないです。


自森人読書 奇跡の人
★★★

作者:  桜庭一樹
出版社: 双葉社

  主人公は、中学2年生の大西葵という少女。彼女は下関からほど近い、ある小さな離島に住んでいました。父親は無職で酒びたり、母親は愚痴ばかりこぼしているので家にいるのが苦痛でした。でも、学校では明るい役を演じていました。そうして彼女は疲れていきました・・・ そんなある日のこと、羊を殴っていたら、不思議な少女・宮乃下静香と出会い、どこか共鳴。2人は共に闘っていくことになります。

  ハードボイルドっぽいミステリ小説。

  タイトルと、そして各章のタイトルがまず面白いです。「用意するのはすりこぎと菜種油です、と静香は言った」とか。

  ミステリ小説だけど、そこまでびっくりさせられることはないです。でも、最後まで読んで感嘆しました。「2人の少女の闘いの物語」という説明がもっともこの物語をうまく言い表しているのではないか。ものすごく壮絶な闘いだなぁ・・・ その相手/対象は何なのか、というのは難しいんだけど、自分たちを容器に詰め込んで、型にはめこむ「世間」なのかなぁ、多分。

  桜庭一樹という作家は何が何でも「少女」にこだわるんだなぁ、と読んで感じました。「少女」という存在はどういうものなのか、いろんな方法で解明してみて、そしてその上で「少女」を描いています。面白い人だなぁ・・・

  物語は面白いのに、いまいち文章が読みにくいです。なぜだろう。桜庭一樹は「読書魔」といわれている人だそうです。だから翻訳書もいっぱい読んでいてそれの影響を受けているからなのか。違うかなぁ。分からないです。


自森人読書 少女には向かない職業
★★★

作者:  柳広司
出版社: 双葉社

  結城中佐は日本陸軍内部に「D機関」という諜報機関を設立し、本物のスパイを育成しようとします。彼は、軍人らしくない者ばかりを集め、自分を殺すことと敵を殺すことを禁じました。死ほど目立つものはないからです。スパイというものは決して目立ってはならない、とかつてスパイだった結城中佐は考えていました・・・ 『ジョーカー・ゲーム』『幽霊』『ロビンソン』『魔都』『XX』収録。

  スパイ小説。

  非常に面白いです。「D機関」とそこに属する人たちが、とにかくかっこいいです。だけど、かっこよすぎて非現実的ではないか、と感じてしまいました。本当に天皇制を信奉しない日本人を育成する機関が存在したら、徹底的に弾圧されるのではないか。

  まぁ『ジョーカー・ゲーム』はフィクションだから無理があっても構わないし、一種の思考実験のようで面白い気もしますが、どうせだったらもう少し現実味をもたせてほしかったです。まぁ、、説明すればするほど逆に嘘みたいになってくるかも知れないから、さっくりとした説明のみでも良いのかも知れないけど。

  あとは、影の黒幕のはずの結城中佐が、饒舌すぎてかえって大物に見えないことは気になりました。そして、一番つまらないと感じたのは結城中佐が決して過ちを犯さないということ。まぁ安心して読めるけど、どうしても緊張感に欠けます。そこらへんが、物語の面白さを半減しているのではないか、と思いました。けど、まだまだ小手調べなのかも知れません。続編が次々出てくるのかも。

  続編がでたら是非とも読みたいと思います。

  2009年第6回本屋大賞ノミネート作(3位)。第30回吉川英治文学新人賞、第62回日本推理作家協会賞受賞作。


自森人読書 ジョーカー・ゲーム
★★★★

作者:  湊かなえ
出版社: 双葉社

  娘を喪って学校を去ることとなった女性教師は終業式のHRの時、告げます。「愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」と。そして、ある「制裁」をくだして退職していきます。ですが、事件は終結せず、どこまでも負の連鎖は続いていくことになります・・・

  高く評価する人がいる一方で、激しく拒否反応を示す人も多い作品。面白いとは思うけど、僕は好きにはなれません・・・ 陰鬱です。「まとも」な人間が一人も登場しない小説です。

  心の暗黒面を描いています。母親の息子への偏愛、歪んだマザーコンプレックス、ゆがんだ憎悪、幼い悪意。しかし、どれもこれもそうたいしてものではなくて、やたらとみみっちい。ちょっとだけ常識の範疇から飛び出してしまった、というような感じ。ですがそれが効果をあげています。かえって、妙に生々しくてリアルなのてす。

  最後は、ある意味爽快。バーンと母(聖母崇拝)を吹っ飛ばしてしまいます。

  「ケータイ小説的」と言って否定する人もいるけど、それは全く的を射ていないのではないか。むしろ、湊かなえという人はかなり実力のある人だと思います。上手いし、読みやすいです。

  これは、完璧なエンターテインメント小説として捉えれば良いのだと思います。薬丸岳『天使のナイフ』みたいな社会的な問いを含んでいるわけでもないし。でも、正直、エイズですら道具にして物語を仕立て上げてしまうところや、「熱血」や「感動」や「正義」を蔑む作者の視点は好きになれないなぁ・・・ 凄いとは思うけど、誰かにおすすめしようとは思わないです。

  第29回小説推理新人賞、2009年第6回本屋大賞受賞作。どうしてこれが本屋大賞なのか・・・


自森人読書 告白
★★★★

著者:  横山秀夫
出版社: 文藝春秋

  北関東新聞社の遊軍記者、悠木和雅が主人公。彼は、販売部の安西耿一郎とともに、これまで数多くの登山家たちの命を奪ってきた難関、谷川岳衝立岩を登る予定でした。しかし、その直前に日本航空123便墜落事故が発生。悠木和雅は、その事故の全権デスクを担当することになります。彼は迷いながら報道というものについて考えつつ進んでいくのですが、衝突が絶えません。

  そしてただでさえ忙しい中、なんと安西耿一郎が倒れた、という連絡が入り・・・

  とても面白かったです。一気読みしてしまいました。山岳小説、「家族」をテーマにした小説、マスコミというものの意義を問う小説、どれともとれます。たくさんのものを詰め込んであるんだけど、決して薄っぺらくはありません。横山秀夫の圧倒的なまでの筆力がみごとです。

  ただし、墜落事故という重い出来事を追う中で何が見えてきたのか、ということがいまいち分からないです。

  墜落事故に押し潰され、囚われながらもそれに立ち向かう悠木和雅という男を描いた小説として読めば良いのかも知れません。だけど、全体としては墜落事故というものを持て余しているような印象を受けます。まぁそもそも、1つの小説の中に押し込めるようなものではないのかも知れないけど。

  あと、爽やかなラストが釈然としないです。結局落とし所はそこなのか・・・ 家族というものをもってくるのか。ご都合主義ではないのか。しかし、物語全体としてはとにかく面白いことに変わりはありません。いまいち分からない部分も多いけど、それでも★5つつけたくなります。しかし、やっぱりそこまでではないかもなぁ・・・ 横山秀夫はやっぱり短編が素晴らしい気がします。

  2004年第1回本屋大賞ノミネート作(2位)。週刊文春ミステリーベストテン2003年第1位。


自森人読書 クライマーズ・ハイ
★★★

著者:  藤原伊織
出版社: 講談社

  ある日、突如として新宿中央公園で爆発事件が発生。多数の死傷者をだしました。その場に偶然居合わせたアルコール中毒のバーテンダー・島村は、結果として事件に巻き込まれてしまうことに。彼は、全共闘時代、警察官を爆弾で殺してしまった、という過去があったため、警察から疑われてしまいました。しかし、彼はそれらをうまく潜り抜けながら、ヤクザなどと組んで、真犯人を探していきます・・・

  読み始めた時は、あまり面白くないなぁ、と感じていました。僕は、基本的にハードボイルド小説というのが好きになれないのです。一般的に世間からはくだらないと言われている男が、実は誰よりも強くて、人間らしい心を持っていた、というよくある筋書きにちょっとうんざりしてしまうからです。

  もともとは登場人物たちの内面描写を行わない、硬い小説をハードボイルドと読んでいたはずではないのかなぁ。それなのに、どうして「見た目はよれよれだけど、実はカッコイイ男が主人公の物語」になってしまったのか。よく分からないです。

  とにかくそういうわけで、最初はあまり物語に入り込めなかったのですが、読み終わった後には、凄いと感じました。謎の部分が面白いし、犯人の冷酷さも非常に印象に残りました。あと回想シーンとして延々と全共闘時代のことが出てくるのですが、そういうふうにして歴史をミステリの中に絡める手腕も見事だと思わされました。

  藤原伊織の出世作にして、江戸川乱歩賞(第41回)と、直木賞(第114回)のW受賞を果たした初めての作品だそうです。W受賞しただけのことはある、かも知れない。


自森人読書 テロリストのパラソル
★★★

著者:  加藤実秋
出版社: 東京創元社

  連作短編集。『インディゴの夜』『原色の娘』『センター街NPボーイズ』『夜を駆る者』収録。『インディゴの夜』は第10回創元推理短編賞受賞作。

  女性ライター・高原晶は、大手出版社の編集者・塩谷とともにちょっと変わったホストクラブ(「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに」という着想から始まったもの)『club indigo』をつくり、そこのオーナーとなります。すると、『club indigo』は大繁盛。

  ですが、その矢先にクラブの客が謎の事件に巻き込まれてしまいます。『club indigo』の面々は、それを解決するべく動き出しますが、なんと以前クラブを辞めていったホストが事件に関連しているらしくて・・・

  軽くてとても読みやすいです。

  「30女」の晶さんの心の中での辛辣なツッコミにはいちいち頷きたくなります。「プリクラが思い出作り」という若者の言葉に対して、「いつの間にか思い出は意図的に、しかも機械で作られるものに変わったらしい。」と晶は心の中で毒づくのです。

  そういう世代間の考え方の隔たり、というよりは晶の常識と、「チャラチャラ」した若者の常識との間の、ちょっとした隔たりが随所に見受けられるところは面白い。

  だけど、その他に読みどころはないといっても良い。といったら言い過ぎだけど、ミステリとしてはそこまで面白みがないです。謎解きと物語がうまくからまっていないんだよなぁ。しかも意外性はないし。ほとんど、キャラで物語がもっているような感じです。まぁそこが巧みで、面白いんだけど。


自森人読書 インディゴの夜
★★★★

著者:  原りょう
出版社: 早川書房

  沢崎は突如として少女誘拐殺人事件に巻き込まれ、自分が犯人と疑われてしまう。被害者家族、警察、犯人の手先と思われる2人組の男といった、いろいろな人たち中で少女を救うべく奔走していくのだが、悪戦苦闘。彼は、いったいどこへとたどり着くのか。

  第102回直木賞受賞作。ついでに、1989年度版『このミステリーがすごい!』ランキング第1位。「週間文春 傑作ミステリーベスト10」1989年 第2位。

  というから期待して読んだら、なんなんだ、これは、と思ってしまいました。確かに面白い、面白いけれどミステリと思って読んでいたら、なんだかハードボイルド小説っぽい感じというか、もろにハードボイルド小説で、別にたいした謎があるわけでもないし。

  最後にどんでん返しがあるんだけど、それもそこまで衝撃的ではなかった・・・ まぁ予測の範囲内でした。中華料理を食べようとしたら、精進料理がでてきた、みたいな気がしてしまいます。う~んどうもよく分からない・・・

  「推理小説」だと思って読み始めたのがいけなかったのかも知れません。ぎちりと固まっている文章とかとても良い感じなのに、どうしても肩透かしをくらったような感じがしててしまう・・・ 

  沢崎っていうひねくれた探偵の主人公は格好良いし、錦織警部も格好良い。その2人がとにかく格好良いような感じです。徹底的に硬派です。もちろん、主人公と女性のからみなんてまったくありません。沢崎にくっついてくるのは、探偵に憧れる少年です。


自森人読書 私が殺した少女
★★★

著者:  雫井脩介
出版社: 双葉社

  巻島は、幼児誘拐事件の捜査に失敗の結果。その上、マスコミに対して逆ギレしてしまい、左遷された。それから6年後。新たな連続幼児誘拐殺人事件が発生し、巻島は特別捜査官として呼び戻されることになる。なぜ、彼が呼び戻されたのか。それは、彼が一度失敗した人間だから。彼に与えられたのは、テレビを使った日本初の特別公開捜査という任務であった。犯人逮捕に失敗すれば、世間から罵倒されるピエロと化してしまう役割。しかし、雫井脩介は、それを受け入れる。

  テレビ会社同士の反目、警察内部の縄張りをめぐる暗闘、そして愉快犯たちの暗躍。その中で、孤立していく巻島。警察は、犯人「バッドマン」を逮捕できるのか?

  ちょっと長すぎるような気もしたけど、面白かったです。中だるみしているように感じたんだけど、それはまぁ最後の爽快感のためには仕方ないかも知れない。警察のおじさん達が渋くて格好良いです。とくに主人公。何か悟ってしまったみたいに何事にも動じないんだけど、最後には・・・

  まぁ物語自体とても面白いんだけど、「横山秀夫、福井晴敏、伊坂幸太郎らに絶賛された」ということもあって、相乗効果でベストセラーに。たぶん帯も書いていたんじゃないかなぁ・・・ あとは、映画化もされたそうです。しかも賞も受賞し、というわけで大ヒット。

  第7回大藪春彦賞受賞作。2004年度週刊文春(ミステリーベストテン)第1位。2004年度週刊現代(最高に面白い本)第1位 。2005年度「このミステリーが凄い!」第8位 。2005年第2回本屋大賞ノミネート作(7位)。


自森人読書 犯人に告ぐ
★★★

著者:  福井晴敏
出版社: 講談社

  1945年8月、日本の無条件降伏によって太平洋戦争は終わろうとしていました。

  そんな中、日本軍の浅倉大佐は「あるべき終戦の形」を求めて暗躍します。彼は、将兵を無駄死にさせ、その上戦争の責任をとろうともしない軍上層部に呆れかえり、失望と絶望を感じていました。そして、日本という無責任な国家を変えるためには「国家の切腹」しかない、と考えます。それは帝都・東京に原爆を落とそう、ということでした。

  朝倉大佐は、米軍と取り引きをおこないます。日本の潜水艦・伊507と、ローレライをさしだす代わりに東京に原爆を落としてくれ、と頼んだのです。ローレライというのはナチス・ドイツが開発した、特殊音響兵装のことです。海の中を立体的に再現してしまうことが可能、というトンデモないものです。ローレライシステムには秘密がありました。その機械の核の部分は人なのです。決してまねすることが出来ません。もちろんアメリカは欲しがりました。

  朝倉大佐は、伊507を騙して、彼らを米軍の中へ放り込みます。艦長・絹見真一は、最初は朝倉大佐に協力していましたがやはり日本を破滅させるためにはいかない、と決意。核弾頭を配備した戦闘機が飛び立つ予定のテニアン島へ向かい、東京への原爆投下阻止しようとします。それはアメリカ軍の懐にはいっていくということです。伊507は孤立無援の中、絶望的な戦いを繰り広げることとなります・・・

  分厚いです。それで行間がなくて息苦しいです。舞台は回想シーン以外ほとんどが海中。しかも静かな、ほとんど無音の戦闘です。息詰まる戦いです。長くてだらだらしている割には緊迫感があります。

  最後に、戦争のあとの「現代」が書かれています。あの戦争を受けて、僕たちはどうするのか・・・? そう問いかけているんだなぁ、と思います。

自森人読書 終戦のローレライ
ウェブサイトhttp://jimoren.my.coocan.jp/
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