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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★★

著者:  安彦良和
出版社: 講談社

  「王道」をとるのか、それとも「覇道」をとるのか。

  明治初期、近代化に成功した日本は選択を迫られていました。アジアの進歩的な人たちと手を取り合い、「王道」を目指すのか。それともアジアに覇を唱えて、「覇道」を目指すのか。その王と覇とは、どうやらもともとは『孟子』の中の言葉のようです。「覇道」というのは、武力に拠って借り物の政治を行うことです。

  ・・秩父事件・大阪事件に関わった自由党の党員、加納周助と、風間一太郎の2人は、北海道の強制労働現場に投獄されますが、そこから脱出。アイヌ人として生きていくことにします。だけどいろんな人との出会いもあり、加納周助は朝鮮の改革派政治家・金玉均の護衛として活躍するようになります。その一方で、風間一太郎は新政府の大臣・陸奥宗光の側近として活躍するようになりました。金玉均は反対派の刺客に殺され、加納周助は打ちのめされますが、勝海舟の助けを得て、孫文と出会い、「王道の狗」たらんとして、「覇道」をいく風間一太郎と対立します・・・

  とても面白い物語です。これを読むだけじゃだめだけど(フィクションだらけだし)、これを読むと明治の頃から、辛亥革命までのアジアの歴史の流れが分かります。

  勝海舟が海千山千を経た、悪そうだけどかっこいい人に描かれているのもいいなぁ、と思いました。僕は、明治維新の立役者は勝海舟じゃないか、という気がしています。まぁいろんな研究者みたいな人が書いていることなんだけど、勝は当時最も視野のひらけた人物だったんじゃないかなぁ。彼は、日清戦争に反対していました。みんなが勝利に浮かれている中でも、中国っていう国は馬鹿でかいんだ、こんなんで勝ったと思っちゃいけない、みたいな言葉を吐いています。先の先まで読めているんだよなぁ・・・


自森人読書 王道の狗
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★★★

著者:  芥川龍之介
出版社: 忘れた

  ある日の夕暮れの頃。1人の下人が、羅生門の下で雨宿りしていました。もう何もあてはない、明日どうなっているのか分からない。ならば盗賊になってしまおうか、と悩みます。けれども決心はできません。羅生門の中に入っていくと、お婆さんがいました。死人の髪の毛を抜いて、それを金にしている老婆でした。彼女は、悪びれず生きるためにはしかたないのだ、と言います。下人は、その言葉に突き動かされ、老婆の着物を剥ぐとかけ去っていきました・・・

  飢え死にするか、それともものを盗るか? どちらかを選ばないといけない。死ぬか、罪びとになるか、という選択肢です。これは、生きるということ自体がそういう二択だ、と言っているのかなぁ。そんな訳じゃないかのか、いまいち分かりません。でも、そういう酷い時代だったから、そうなったのだ、とかそんなつまらない答えじゃ足らない気がしました。

   芥川龍之介は何が言いたいのだろう。あんまりいっぱい読んだことがないのでいまいち分かりません。でもこの人って仏教をモチーフにしたりしているから、生きることの「業」とか、そういうことまで考えているのかなぁ、もしかして。

  『羅生門』を歴史に分類するのもなんだか違和感があるのですが。でも他に、どこに分類すればいいのか、分からないです。いったいなんなんだろうか? いろいろ考える・知るなのかなぁ。それもまたそれで違う気がする。難しいです。


自森人読書 羅生門
★★★★

著者:  白土三平
出版社: 小学館

  江戸時代、士農工商のさらに下に位置づけられていた穢多非人たち。その1人にカムイがいました。カムイは、非人という立場を抜け出して、自由になろうと目指します。また、農民の正助や、武士の竜之進らはそれぞれ、体制の矛盾に気付き、改善しようと考えます。しかし、そう簡単にはいかない、それどころか徹底的な弾圧を受けます。上の者が下の者を差別し、下の者がさらに下の者を差別し、さらに下の者は、互いに監視しあう。その差別の連鎖から抜け出すことはとてつもなく難しいことでした・・・

  最後がどうなるのか、気になりながら読んでいました。だって史実通りにいくならば、250年間江戸幕府は安泰です。叛乱が起きることはあってもすぐ潰されるし、革命が起きることはありません。とすると、カムイたちはどう考えても幕府に勝てない、ということが物語が始まる前から決定していることになります。

  でもそれじゃつまらない。どうなるのだろう、と思っていたら・・・ 物語は進めば進むほど暗くて、救いがなくなっていく・・・ 少し光が見えたかと思ったら、次にはさらに悲惨な出来事が起こり・・ 先駆者は誰にも理解されず、潰されていくということじゃないか、という感じがしてきます(そんな単純じゃないけど)。第一部が終わった結論は、カムイたちにはほとんど救いが無いということかなぁ。

  勝つことが重要じゃない、闘争を続けることに意味があるんだ、というならはなしは別だけど。でも結局殺されると分かって戦うというのほど辛いことはないよなぁ。

  そういえば、カムイというのは何か、というと・・・ カムイというのは主人公の名前でもあり、狼の名前でもあります(アイヌ語の「神」という言葉らしい)。『カムイ伝』では各所に動物たちの争いがさしはさまれています。よくあれだけうまく描けるなぁ、と感心します。動物を描くのもそうだけど、あれだけたくさんの人間の顔をかき分けるのも大変だろうなぁ・・・

  ぼくは長いマンガはたいてい飽きてしまうのですが、この『カムイ伝』は違いました。まだ、『カムイ伝』は完結していません。やっと第二部が終わり、これから第三部が始まるところです。まだまだ全然見えていないことが多い気がします。作者・白土三平がすでに40年にわたって描き続けてきたストーリー。完結するところが見たいです。


自森人読書 カムイ伝 第一部
★★★★

著者:  田中芳樹
出版社: 祥伝社

  六世紀の始め、南北朝時代の中国が舞台です。

  北朝・魏は、南朝・梁を攻め滅ぼそうと機会をうかがっていました。梁の皇帝・蕭衍は弱冠二十三歳の将軍、陳慶之に軍備を任せます。陳慶之は、天才的な用兵の才能を持っていました。韋叡・曹景宗らに支えられた陳慶之は、守りを固めました。国境を流れる淮河の畔、鐘離の地に中山王・元英率いる魏軍八十万が押し寄せてきました。対する梁軍はたったの三十万。半分以下です。騎兵と水軍が入り混じる大乱戦が始まります・・・

  陳慶之という人が主人公です。どこか飄々としていて恋も、武芸もからきし。だけど用兵(兵を指揮する)の才能は超一流という人でした。『銀河英雄伝説』に登場するヤン・ウェンリーに似てるなぁ・・・ 彼は、白袍隊(全身白づくめの部隊)を率いて戦い、梁を守りました。のちに梁が滅亡したのは、陳慶之が死去した10年後のことです。それだけ陳慶之の存在が巨大だった、ということだと思います。

  実は、陳慶之という人は田中芳樹がとりあげるまで全くといっていいほど日本では知られていませんでした。だけど、この「奔流」という作品にとりあげられたことで一挙に有名になりました。今では「中国史上最強の武将は誰?」という話題になると、必ず陳慶之の名があがるほどです。(一般の人はあまり知らないので、中国歴史マニアの中でのはなしだけど・・・ しかも、アンチの人が大勢いるけど)

  僕は、陳慶之という人は凄いなぁ、と思います。史実に残った実績はものすごいです。7000の兵力で、敵国の首都を一時的に陥落させることにまで成功しています。でも、この「奔流」に登場するこの人柄がいいなぁ、と思いました。 彼以外の登場人物たちもとても魅力的で、面白いです。


自森人読書 奔流
★★★

著者:  海音寺潮五郎
出版社: 文芸春秋

  歴史の中には悪人というレッテルの貼られている人達がたくさんいます。その人たちのことを海音寺潮五郎が丹念に見ていったものです。蘇我入鹿、弓削道鏡、藤原薬子、伴大納言、平将門、藤原純友。藤原兼家、梶原景時、北条政子、北条高時、高師直、足利義満。日野富子、松永久秀、陶晴賢、宇喜多直家、松平忠直、徳川綱吉・・・・・

  読んでみると、けっこう面白かったです。弁護すべき部分のある人も多いんだなぁ。例えば陶晴賢という人。彼は、主君に背いたために、後代まで悪名を残してしまった人物です。しかも、のちに毛利元就に見事なまでに敗れ、死んだため、悪名高い上に、しかも歴史的にやられ役(ザコ)扱いになってる、という悲惨な人です・・

  主君に背いたのは当然のような気がしてきます。主君が武人ではなくなり、貴族のようになっていき、されに自分の地位も危うくなってきてしまう。そうなれば叛乱を起こすのも当たり前かも知れません。けれども、どうしようもなく、とんでもない人というのもいました。同情の余地の無い人、というか。そんな人もやっぱり歴史上にはいるのかな・・

  日本の歴史が好きな人なら、1度は読んでおいたらどうかな、と思います。偉人ばかりではなく、悪人に目を向けるというのは面白いです。それに海音寺潮五郎さんという人の、「歴史を見る視点」がみえて面白いです。僕はそういうふうには読まないかなぁ、とちょっと思った部分もありました。

  事実は1つ(のはず)です。でも、いろんな事情のため、見れない、知れない事実がたくさん生まれてきてしまうので、そこは推測や、想像で埋めていくしかありません。そうすると、その人の知識や考え方によって、全然違う「歴史」のかたちがつくられてしまいます。まぁそれはしかたの無いことだと思います。解釈の違いはある程度は致し方ないし、それが無害な部分についてならば、べつに構わないのではないか、という気がします。神武天皇は実在したんだ、とただ信じているという人がいても、いいのではないか。でも、自分の好きなように「歴史」を操って利用してしまうのはだめだよなぁ、と思います。そして、もしも誰かの生み出した架空が、誰かを冒涜するようなものなら、そこで考える必要があると思います。

  歴史は「財産」なのではないかな、とぼくは思います。たくさんの学びが詰まっています。たくさんの反省に満ちています。それなのに、都合の良いところだけ取り出したり、都合の悪いところを消し去ったりしたなら、また同じように悪い方向へ向かうことを繰り返すことにつながります。だからあえて悪い部分をえぐってみるのもいいかも知れません。


自森人読書 悪人列伝
★★★★

著者:  手塚治虫
出版社: 小学館

  友情に結ばれた藩士・伊武谷万二郎と、蘭方医・手塚良庵の2人の物語です。鎖国から開国へ。勤皇から倒幕へ。時代が大きく移り変わる中で、人々はどこを目指していくのか?

  ばかなほど真面目な伊武谷万二郎は、崩れ行く幕府のために戦い、時代の奔流に逆ら続けます。けれども倒幕への大きな流れは結局彼の力では変えることはできません。それでも、彼はそれに立ち向かうのか?手塚良庵は医師です。緒方洪庵に蘭学を学びました。遊び人で女にだらしなく、いつもは色街に入りびたっていますが、いざとなれば本気をだして、人を救います。そんな2人を中心にして、幕末から戊辰戦争までを描きます。

  手塚良庵は、手塚治虫のご先祖さんだそうです。種痘所(後の東京大学医学部の前身だそうです)の設立に尽力します。まぁだらしない一面もあるけれど、最後には人を救う、ということをつきつめていって、立派な医師になったようです、多分。死んじゃったときにはちょっとショックだったなぁ・・・

  幕末の、壮大なストーリーです。いろんな作家、漫画家が幕末を舞台にした物語をつくっているけど、手塚治虫は一味違う、というのか。うまい具合にたくさんのことをミックスして、歴史好きじゃない人も楽しめるストーリーを形作っていました。


自森人読書 陽だまりの樹
★★★

著者:  幸田露伴
出版社: 小学館

  戦国時代、利休七哲の1人として数えられ、家臣を大切にし、名将にして知られた蒲生氏郷。始めは織田信長に仕え、娘までもらい、寵臣として存分に活躍します。織田家の一門の者として迎えられたそうです。そして幾多の勝ち戦に参加し、武功を挙げました。本能寺の変が起きたときは忠義を貫き、明智光秀に対抗して織田信長の妻子を守りました。

  その後は明智光秀を討った豊臣秀吉に従います。そして陸奥会津にいき、東北の要としてその平和を守りました。伊達政宗とはたびたび対立したといわれます。大崎・葛西一揆が起きたときにはそれを鎮圧し、伊達政宗が裏で糸をひいていた、という告発もしています。彼がいたからこそ東北は治まった、とすら言えます。文人としても武人としても優秀だった人でした。

  そんな彼の生涯を幸田露伴が書いたのがこの「蒲生氏郷」です。おもに東北に行った後の、伊達政宗との駆け引きや、大崎・葛西一揆鎮圧のことです。これを読んでいると、蒲生氏郷という人はあまり知られていないけれど、案外大物だったみたいだなぁ、という気がします。織田信長にみこまれていただけある。決して、いのしし武者ではなくて、茶を嗜む風流の人でもあるそうです。

  戦国時代にはこんな人もいたのか。面白いなぁ、と思いました。


自森人読書 蒲生氏郷
★★★

著者:  塩野七生
出版社: 新潮社

  11世紀の頃十字軍を繰り出して、イスラム世界を踏みにじったキリスト教。だが歴史はめぐりめぐるもので、今度はイスラム世界に興ったオスマン・トルコがキリスト教世界へと攻め寄せてきます。オスマントルコはまずは、コンスタンティノープルを陥落させました。すると、ロードス島はイスラム世界と、キリスト教世界との戦いの最前線となってしまいました。1522年、大帝スレイマン1世は自ら陣頭指揮を取り、ロードス島攻略戦を開始します。

  島を守るのはヨハネ騎士団。イギリス、フランス、イタリア、スペイン等各国から集まった、信仰のために戦う者たちです。堅固な城をいかして、4ヶ月あまりの間になんと敵兵4万4千人を殺します。けれども最終的にはオスマントルコが城を接収し、ヨハネ騎士団の者達はマルタ島へと去っていきます・・・

  イスラム世界を侵略し、仲間同士で殺し合い、キリスト教世界『最後の砦』であったロードス島へ援軍も送れないキリスト教諸国ってどうなんだろう? と思いました。愚かしいことこの上ない。その一方で、オスマントルコのスレイマン1世はとても紳士的です。ヨーロッパの人から「騎士の中の騎士」といわれたほど優れた人物だったみたいです。この物語の中で、1番かっこ良いのは彼、スレイマン1世だよなぁ、と僕は感じました。君主としても、人間としても。

  僕はローマ(というよりカエサル)びいきの塩野七生という作家があまり好きではないのですが、この物語はすぐに読めました。塩野七生が西洋のローマの素晴らしさ(というか自慢?)を語りだすと、ぼくはどうしても東洋の中国の素晴らしさ(というか自慢・・・)を語りたくなってしまうんだよなぁ・・・ 中国びいきの田中芳樹みたいに。


自森人読書 ロードス島攻防記
★★★★

著者:  安能務
出版社: 講談社

  いわずと知れた「三国志」の、安能務版です。他の三国志と読み比べるとさらに面白いです。というより、他の三国志と比べてこそ、この安能流三国演義を存分に楽しむことができます。ぼくは数ある三国志の中でもとくにこの「三国演義」が1番好きなのですが、最初に読むことはあまりおすすめしません・・・ やっぱり「普通」を知ってからこれを読んだほうが楽しめます。

  劉備は本当に仁の人だったのか? 諸葛亮は軍人としては無能ではなかったか?

  この頃、諸葛亮を「政治家としては傑出しているが、軍略家としては並以下」という人たちがけっこういます。そういう考えを広めたのは安能務や田中芳樹といった作家たちのような気がします。結局、蜀という地方政権の宰相でしかない、諸葛亮がなぜ神仙のようにあつかわれるのか。それは簡単です。源義経とかと同じで、無念の死を遂げたからです。それと善政をしいたからかなぁ。

  蜀という国は、王朝の証といっても過言ではない「記録」がないそうです。後漢の後裔と名乗りながら、形式すら保てなかったほど人材も薄かったということじゃないかな、と思います。つまり政務をとりしきるだけで精一杯だったのです。とてもお粗末な気がします。

  それに対して、曹操の率いる魏には、有能な人材がごろごろいました。三国志ではやられ役・ザコ扱いに近い、司馬懿、張遼、夏侯淵、曹仁、曹真といった人たちは、実はかなり有能で万事に活躍していたようです。さらに、荀彧、郭嘉、賈ク、満寵、鄧艾、鐘会といった名参謀や名将たちもいました。それに比べて蜀は明らかに人材不足なのです。(だめだ、人名を羅列したりすると、三国志ファン以外の人がみんな逃げていくのに・・・)

  魏延、関羽、張飛、馬超、趙雲たちは戦闘には強くても、結局のところ斬り込み部隊を率いる将軍でしかないような気がします。司馬懿とか、曹真の部下程度かなぁ。そんな蜀を支えた名臣が諸葛亮なわけです。法正、李厳、蒋エン、姜維たちもかなり活躍したのだけれど、人格に問題があったり、終わりを全うしていなかったり、パッとしなかったり。やっぱり諸葛亮が1番かっこいいのです。だから、諸葛亮は神のようにあつかわれたんだろうなぁ。

  いろいろ考えられて、三国志って本当に面白いです。でもこれだけ人物名がでいくるとそれだけでうんざりされてしまうかもなぁ。僕の紹介の文章は、逆にみんなの読む気を削いでしまうかもしれない、と最後になって気付きました・・・


自森人読書 三国演義
★★★★

著者:  澤地久枝
出版社: 岩波書店

  沖縄返還交渉で、アメリカが支払うはずの400万ドルを日本が肩代わりするとした裏取引。時の内閣の命取りともなる「密約」の存在は国会でも大問題となりますが、やがて、その証拠をつかんだ新聞記者と、それをもたらした外務省女性事務官との男女問題へと、巧妙に焦点がずらされていきます。政府は何を隠蔽し、国民は何を追究しきれなかったのか。現在に続く沖縄問題の原点の記録。

  沖縄返還の時からすでに存在した「密約」。これは今なお日本が払い続けている「思いやり予算」にもつながってきます。このとき最高裁までもっていきながら、敗訴になったことが今でも尾をひいているような気がします。「密約」が暴けず、今も日本の「対米従属」の姿勢は変わらないし、それに対する批判もしっかりできているとは言えません。

  アメリカ側の人物の証言でもすでに明らかにされていることです。それなのに日本政府はいまだ「密約」の事実を否定しています。どうしてこんなばからしいことが許されるのだろうか、と思いました。サウスバウンドのお父さん、一郎じゃないが、「日本国民やめた」とか言って、どっかに行ってしまいたいなぁ。


自森人読書 密約 外務省機密漏洩事件
★★★★

著者:  北方謙三
出版社: PHP研究所

  「楊家将」というのは、精鋭を率いて北方の異民族と激戦を繰り広げ、中華民族のアイデンティティを守った名将、楊業とその一族の物語です。外様ということで軋轢もあり、最終的には悲劇的な死を遂げることとなります。中国では、「楊家将」はとても人気だそうですが、やっぱりそれは悲劇の死という要素がとても大きいのだろうなぁ。判官びいきと一緒です。

  楊業はもともと北漢という国の臣下でした。でも、内側からの圧力と外側からの圧力によって、最終的に宋に降伏することになります。そしてその後、宋に仕えて、異民族の国家、遼(りょう・キタン族)と最前線で戦うことになりました。使い捨てに近い使われ方をされて、もう勝たなければ生き残れないという状況にいつも追い詰められます。

  宋は中国の歴代王朝の中でも、文官の発言力が強い国だったといわれます。そのため軍部の力というのはとても弱くて、建国からずーっと苦労し続けます。地方の軍閥は警戒されて動けず、中央の軍隊も強くない、とするとどうしようもありません。シビリアンコントロールがなりたっていたというよりは軍部がとても恐れられた、ということだと思います。楊業はその中で苦しみながら、戦って戦って戦ってばかりです・・・ それでも戦って基本的には負けず、死ななかったというのは凄いなぁ、と思います。まぁ最期には、味方に裏切られ、子ども達までみんな死んでしまうことになるのですが・・・

  物語自体が日本では知られていませんでしたが、中国では根強い人気だということです。北方謙三が作者な訳ではないのですが、同じなのは物語の骨格だけというほどの意訳みたいです。やっぱり一作では読み比べもできないので、他の小説家の方にも書いて欲しいなぁ。ぜひ田中芳樹にぜひ書いてもらいたいなぁ。書く、書く、といろんなところで言ってるんだから・・・ でもそれで他の物語(アルスラーン戦記)の続編がでなくなったりしたらいやだからそちらを完結させてから、書いて欲しいなぁ。

自森人読書 楊家将
★★★

著者:  童門冬二
出版社: 実業之日本社

  舞台は戦国時代の終わり~江戸時代の始まりの頃。

  肥前佐賀藩の名君・鍋島直茂の生涯です。

  もともと鍋島直茂は竜造寺家の重臣でした。主君である龍造寺家政の死後、その息子、高房の後見人として、竜造寺家をとりしきることになります。すると、だんだん鍋島直茂こそが、君主にふさわしいのではないか、という声があがりはじめます。確かに彼は政治にすぐれており、また時の権力者・豊臣秀吉からみこまれるほどの人物でした。他の大名たちからも「名臣」として、よく知られていました。

  竜造寺家の内部はふたつに分裂してしまいます。けれども結局、人望のあった鍋島直茂が、竜造寺氏をおさえつけてしまいました。名実ともに佐賀藩の藩主は鍋島氏にうつっていきます。鍋島直茂は、とうとう大名になりました。

  天下分け目の戦い、関ヶ原の戦いのとき、鍋島直茂は徳川家康方(東軍)につくことを決断します。しかし手違いで、息子・鍋島勝茂が石田光成方(西軍)として行動してしまいます。けれども、最終的に家康方が勝利。鍋島直茂は取り潰しの危機をどうくぐりぬけるのか・・・

  童門冬二のおなはなしは戦国武将をとりあげても、戦争ものにはなりません。人間の動きや、経済のはなし等に重点が置かれています。それが好きな人は、この本も楽しく読むことができると思います。でも僕は、戦国時代のことを教訓として受け取るとか、そんなことはどうでもいい。むしろ面白い物語を読みたい、と思っています。だからあまり童門冬二の著書は好きになれないなぁ・・・

関連リンク(物語の250年ほどあとのこと)
明治維新の中の佐賀藩

自森人読書 葉隠の名将 鍋島直茂
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