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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★

著者:  海音寺潮五郎、司馬遼太郎
出版社: 講談社

  海音寺潮五郎、司馬遼太郎の対談。

  「日本歴史」という言葉、聞いたことありません(今だったら「日本の歴史」か「日本史」になるのではないか)。古い本なんだなぁ、と感じさせられます。中身はけっこう面白いです。海音寺潮五郎、司馬遼太郎2人の博覧強記ぶりがよく分かります。よくそこまで話がつながっていくなぁ・・・

  主に、江戸・明治維新のことが話されています。

  天皇制の分析などは面白いです。もともとの天皇制は、土俗的な神聖視(天皇も、お稲荷さんみたいもの)だったのに、そこにプロシャの皇帝を当てはめたから、人工的でよく分からないものになってしまった、と司馬遼太郎は考えているそうです。

  「勝海舟はでかい男だったんだろうね」と両人が言いまくるのですが、僕も納得です。当時、明治新政府の中で、「日本・中国・朝鮮三国が連携することで西洋列強に対抗しよう」と言っていたのは勝海舟くらいでした。他の人たちはみな朝鮮を石ころにように扱い、日本が奪うべき弱国と看做していました。最終的には、多数派の意見が通り日本は朝鮮に乗り出していってそして中国、ロシア(ソ連)と敵対、泥沼の戦争へと突き進むわけですが、全ては失敗しました。勝海舟の先見の明がよく分かります。

  国民が健忘症では議会制民主主義は決してよくならない、という意見にも同感。汚職などで失脚した人物が、ほとぼりが醒めるとまたもや復活するというのはどういうことなんだろうか・・・ 摩訶不思議です。どうにかならないものなのか。


自森人読書 日本歴史を点検する
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★★★★★

著者:  飯嶋和一
出版社: 小学館

  江戸時代に活躍し、「史上最強」と謳われる相撲取り・雷電と、彼を取り巻く人々の物語。という紹介では、さっぱり何も伝わらないよなぁ・・・

  雷電はもともと農家の生まれでした。本名は為右衛門と言います。彼は、浅間山噴火、地震などの天災と、それらを利用して私欲を貪る商人、侍たちによる人災に、苦しめられている村の人たちの中で育ちました。為右衛門は優しい性格から誰からも好かれる若者になってきます。ですが、父親はそれを心配し、1人息子の彼を相撲取りにしてしまいました。村にい続ければ、いずれ人望のある彼が一揆などの時にみんなから祭り上げられ、辛苦の道を進むのは確実だったのです・・・

  そうして為右衛門は「雷電」となり、相撲取りに変わりました。しかし、彼は相撲取りになっても変わりませんでした。武士達の家来となって嬉々としている相撲取りたちとは一風変わった立場をとります。

  雷電は、土俵の上では「凶悪」とすらいえるほどの強さを発揮しました。しかし、土俵を降りれば途端に優しさを見せ、どんな赤ちゃんでも抱き上げて魔除けをしてあげました。抑圧された人々は彼に希望を託しました。彼は、圧倒的なまでの強さを誇ります。200回以上闘って、生涯にわずか10敗でした。

  ほんとに格好良い。相撲の場面の描写は、圧巻です。だけど最後には、彼は孤独になっていきます。最強故の孤独です。そして、何の関係も無い幕府内の権力闘争に巻き込まれて、罪人に仕立て上げられ・・・ それでも毅然とした態度で役人に臨みます。どんな状況にもめげず、決して倒れません。雷電はほんとに格好良い。

  作者・飯嶋和一は凄い、と読後しみじみ感じました。あらは、探せばいくらでもあるかもしれません。文章だってきちりと整っているといえるようなものではないのです。長いから、最後まで読むのはけっこう大変です。しかし、紙上に全てを叩きつけたような迫力が素晴らしい。読んで感動する小説というのは案外少ないけど、飯嶋和一の作品は感動します。


自森人読書 雷電本紀
★★★★

著者:  堀川哲男
出版社: 清水書院

  『孫文と中国の革命運動』は、孫文という偉大な革命家の足跡をたどり、そこから中国の革命運動というものを見つめていこうというもの。孫文とは、どういう人か、というと・・・

  広東省の農家の家に生まれ、ハワイに渡って西洋の文化を学びます。その後帰国、マカオで医者として開業。ですが、国家の腐敗に憤り、ハワイに渡って愛国結社・興中会をつくりました。しかし興中会は仲良し組合と化します。なので孫文は中国に舞い戻り、武装蜂起するも失敗。今度は渡英。すると清国大使館に抑留され、危ういところを英人の協力者に救われます。その事件が、彼を一躍有名にしました。その後、彼は国外の中国人をまとめていきます。

  その後、辛亥革命が起こると帰国、臨時大総統に就任。しかし政府の基盤が脆弱だったため清国の皇帝退位を実現する代わり、清国の将軍・袁世凱に首相の位を譲ります。その後、袁世凱に弾圧され、今度は日本に渡ります。その後、軍閥の内紛を利用して広州に他方政権を築きました。そしてソ連と組んで革命を起こすことを画策するも「革命未だならず」と言い残して死去。

  読んでいて、孫文という人は凄いやと感じました。彼は、若い頃から清朝の独裁制に反対し、外側から清朝を倒して新政府を築こうと画策します。しかし、近代化はそう簡単ではなく、やることなすこと全て失敗します。それでもただ前進していくのです。人民のために革命を起こそうとして決してくじけないところは本当に感心します。

  今でこそ中国近代革命の先駆者として、孫文は中国の「国父」とすら言われます。だけど、辛亥革命までは単なる「口先だけの男」とみなされていました(あだなは孫大砲(孫のほら吹き))。要するにドン・キホーテみたいなヤツだと思われていたのです。当時、清帝国を倒し、さらに西欧諸外国の侵略をはねのけよう、というのは、それだけ非現実的な行為と思われていたということがよく分かります。しかし、それは孫文の死後になって最終的に、一応実現します。毛沢東ら中国共産党が中華人民共和国という国をつくっていくのです(内部にはたくさんの問題を抱えたけど)。凄いなぁ。


自森人読書 孫文と中国の革命運動
★★★

著者:  筑波常治
絵:  坂本玄
出版社: 国土社

  「堂々日本人物史―戦国・幕末編」シリーズのなかの1冊。子ども向けのものです。僕は、偶然地元の図書館にあったこのシリーズを通して日本の戦国・江戸時代の詳しい流れを知るようになりました。だからなのか、このシリーズには愛着があります。

  この『高野長英』という本も、戦国に活躍した格好良い武将達(『山中鹿之介』『上杉謙信』『織田信長』などなど)の本の中に混じっていたのだけど、「江戸時代後期に活躍した蘭学者」と聞いてあまり興味を持てず、後回しにしていました。

  しかし、読んでみたら、高野長英という人は学者なのに、壮絶といってもいいような一生を送っていると知って驚きました。

  もともと仙台藩の医者の家に生まれましたが、学問をやりたくて故郷を離れます。まずは江戸へ行き、それでは飽き足らずに最先端の蘭学が学べる長崎へ行き、シーボルトの鳴滝塾に入門。色々なことを学びました。「シーボルト事件」(シーボルトが日本の地図を持ち出そうとしたら幕府が激怒。シーボルトは国外追放となり、彼に地図を渡した役人は死刑になった)が起きると巧みに罪を逃れ、江戸へ戻ります。

  その後、蘭学を知悉する政治家・渡辺崋山と仲良くなり、飢饉対策・海防策を練り、活発な活動を繰り返しました。ですが、彼らは鎖国を国策としている幕府から警戒されました。

  「蛮社の獄(国際状況を知って幕府を批判した蘭学者などの知識人への弾圧)」が起こると投獄されます。それでもへこたれず、牢屋の劣悪な環境を批判。火事が起こると脱獄し、宇和島藩を頼り、書物などを書きながら生活。ですが、それは長続きせず、高野長英は江戸へ戻って町医者になりました。人相を変えていたそうです。しかし、発覚してしまい、幕府の役人によって捕縛されるのに抵抗し、死亡しました。

  無知な権力者を批判して闘い殺される、というのは戦国武将の一生と同じくらい激しくて、凄いなぁと感じます。「平和」といわれた江戸時代にもそんなことがあったと知って驚きました。


自森人読書 高野長英
★★★

著者:  司馬遼太郎
出版社: 文藝春秋

  『故郷忘じがたく候』は、バラバラの破片を集めるようにして、16世紀豊臣秀吉の侵略によって拉致され、日本の薩摩にやってきた朝鮮の人たちの数奇な軌跡を江戸・明治・大正・昭和とたどっていった短編。彼らは今でも鹿児島の地に生き続けているそうです。

  日本人として鹿児島に住みながらも先祖の心を引き継いで故郷を想い続ける朝鮮人、沈寿官が、朝鮮に行ったとき、学生に向けて講演したという言葉が印象に残ります。「あなた方が三十六年をいうなら、私は三百七十年をいわねばならない」。彼は、戦争被害を言い続け、後ろを振り向くのはやめよう、と祖国の人たちに呼びかけます。

  拉致問題にも、同じ言葉があてはまるのではないか、と感じました。「おあいこ」ですむ問題では決してないし、まだ拉致されている人が北朝鮮にいるならば、その人たちを救うのは急いで為さねばならないことです。しかし、日本国が北朝鮮による何十年間前かの拉致の罪を声高に糾弾するならば、朝鮮の人たちは「日本による60年間前の拉致の罪を糾弾せねばならない」となるのではないか・・・

  司馬遼太郎の物語は、短い中にたくさんのものが詰め込まれていて、感心させられます。「無味乾燥な歴史に命を吹き込んだ歴史作家」といわれるほどなのだから当然か。

  とはいえ、司馬遼太郎が本領を発揮しているのは多分長編だろうと思います。だから、『坂の上の雲』『関が原』『街道をゆく』といった辺りは、いつか読みたいとは思っているけど、読破するのがとても大変な気がして、いまだに何作か(『燃えよ剣』と『項羽と劉邦』)しか読んでないです。『竜馬がゆく』は途中で放り出してしまったし・・・ う~んなぜか波長が合わない・・・


自森人読書 故郷忘じがたく候
★★★★★

著者:  井上靖
出版社: 新潮社

  北宋の時代、趙行徳という男が科挙を受けるために首都開封へ行きます。しかし最終試験・殿試の待ち時間に居眠りしていて、試験を受けられず、失格に。行徳は、とんでもない失態をしでかしてしまって茫然とし、ふらふらと首都を漂います。すると異国の裸の女が、豚肉と同じ扱いで売られているのと出くわしました。思わず行徳が彼女を買って助けると、彼女は見慣れない文字だらけの紙をくれて去りました。行徳は、それが西方の国家・西夏の文字と知り、「西夏の文字・文化を知りたい」と感じます。そして彼は、西方へと旅立ちます・・・

  中国西方の圧倒的で壮大な自然と歴史を背景にした感動の作品。色んなものに翻弄されながらしぶとく生きていく主人公が最後に果たすことは・・・ 彼の行く道が、敦煌という地から発見された膨大な量の経巻を巡る物語へと結びついていきます。フィクションなんだけど、きちりと史実を背景にしているので、ほんとにこんなことがあったのではないか、と思わされます。

  前からずっと気になっていたのですが、探すのが面倒でほったらかしに。ですが、読んでみたらあまりに面白くて、これまで手に取らなかったことを後悔しました・・・ 中国の歴史ものが好きな人間として失格だなぁ、という感じです。

  井上靖の文章が良いです。登場人物たちの心情をそこまで詳しく書きこむということはないんだけど、伝わってくるものがあります。西夏軍の先鋒を務める漢人部隊の隊長・朱王礼と、王族の末裔だということをやたらと誇る盗賊・尉遅光、そして行徳に玉の首飾りの片割れを渡したウイグル人の若い女。その3人を主な登場人物として物語はどんどんと展開していきます。


自森人読書 敦煌
★★★★

著者:  渡辺精一
出版社: 講談社

  『三国志人物事典』は、三国志演義に登場する全人物を網羅した辞典。

  一場面にしか登場しない端役まで含めて全員載っています。凄すぎる・・・ もう感動というしかないです。どうしてこんなことができてしまうのか。壮大な『三国志』という物語を解読していこうと思った時にとても役立ちます。

  渡辺精一は、中国古典文学者として知られている人です。物凄く『三国志』というものを愛しているらしく。三国志の翻訳や、三国志に登場する人物の辞典作りのみならず、異本『反三国志』の翻訳までやってのけてしまいました。ほんとに凄い。

  『反三国志』っていうのは、史実では負けちゃったはずの劉備・諸葛亮率いる蜀陣営が逆転して勝ってしまうというテンデモない本なんだけど・・・ とにかく分厚いです。最後まで読むのは一苦労。最初らへんはまだそれなりに読めるのですが。途中からはもう蜀軍が勝ちっぱなし、「△△で蜀軍は大勝」「それで魏の将軍は戦死」「□□で蜀軍は大勝」というのが延々と続き、ほとんど一方的な殺戮ゲームと化します。もう少しきっちり物語として組み立ててくれれば、まだ読めるんだけど・・・ というのは翻訳者である渡辺精一に言っても仕方ないか・・・

  はなしを戻して。
  三国志に興味がある人は、『三国志人物事典』を一度手にとってみると感動するのではないか、と思います。ぜひ手にとってみて欲しいです。この本に★4つつけるというのは、どうなのかという気もするけど、面白いのでまぁ良いかなぁ・・・


自森人読書 三国志人物事典
★★

著者:  童門冬二
出版社: PHP研究所

  恩田木工、栗山大膳、長野主膳といったマイナーな名家老や、その他有名な名家老たちの事跡を眺めていき、そしてそこから何らかの「教訓」を引っ張り出して、それを学んで活かしていきましょうよ、というものなんだけど・・・

  つまらないです。歴史小説というのは楽しむためにあるのであって、「企業戦士である自分の実生活に活かすため」というのでは、どうも面白くない。というか、戦国時代と現代って価値観や概念が全然違うから、江戸時代に生きる「家老」と近代に生きる「自分」とでは、比較のしようがないと思うんだけど。無理に比べたら齟齬をきたすんじゃないかなぁ・・・

  歴史は、大切なものだから活かさなければならないという、その姿勢には賛成です。歴史に学ぶのでなければ、これから進むべき道を考える時、いったいぜんたい何に拠って進路を考えていけば良いのか、ということになってしまう。

  なんというか読んでいると、大きな歴史小説書いている片手間にこういうちょっとした列伝ものみたいな軽い小説も書いてみました、という雰囲気もします。読んでみて損したかもという気がしてきてしまうなぁ、どうしても。まぁ決して全部が全部つまらないわけではないんだけど・・・

  まぁ江戸時代の家老たちのことを知ることができるのはちょっと面白かったので★2つ。


自森人読書 名家老列伝―組織を動かした男たち
★★★★★

著者:  飯嶋和一
出版社: 小学館

  物語の舞台は江戸時代初期の長崎。徳川家康の子・秀忠が大御所としていまだ力を握る一方で、家光の時代が迫る頃です。主人公は海外との貿易により、西方一の豪商として名を馳せる末松平左衛門(二代目末次平蔵)と、長崎の火消組頭・平尾才介。2人は、長崎の人たちへの思いを胸に、内から外から迫る敵を打ち払っていきます。

  当時は、どんどん幕府の国家統制が強まっていく時代でした。民衆はどんどん締め付けられていきます。各地で、切支丹弾圧の嵐が吹き荒れました。とくにキリシタンの多い長崎など九州では、徹底的な弾圧が行われました。海の男たちもどんどんと締め付けられていきました。貿易はじょじょに幕府に抑えられていきました。末松平左衛門は、それに対抗しようとして自分の力の及ぶ限り、色々な方策を打っていきます。

  そして締め付けの一方で、鬱屈とした思いを抱える大名たちは諸外国への侵略に乗り出そうとします。それは、西洋諸国の強い反発を招くことは確実です。そうなれば、九州一の良港・長崎がまっさきに戦場となります。末松平左衛門はその無謀なる海外侵略も阻止しようとします・・・

  読んでいて、ローズマリー・サトクリフを思い出しました。もちろん全く異なる作風なんだけど。でも、歴史を基にした小説であること、「めでたしめでたし」の結末が待ち構えているわけではないこと、歴史の流れの中では敗者にいる位置の人物を取り上げること、等は共通しているよなぁ、多分(あとは両者とも、とても面白い作品をたくさん書いていることも共通している)。

  飯嶋和一は、文藝春秋の直木賞をもらったら、今まで自分の本を出版してくれた小学館に対して顔向けできないからと直木賞を辞退している人です。候補になったあとに辞退したらそれはそれで話題になるけど、候補になる前から辞退しているという人も珍しい。

  本屋大賞ができたから、それにランクインして最近は注目されるようになりました(あと、2008年には『出星前夜』で第35回大佛次郎賞を受賞したか)。僕も、最近飯嶋和一のことを知って感動しました。世の中には、こんなふうな面白さを持つ小説を書いている人もいるんだなぁ・・・ ちょっと登場人物の思想や思考が、「近代人」っぽすぎる気もするけど、でも、飯嶋和一が書こうとしているのは、国家などの「権力」に対抗する「個人」の踏ん張る姿なのだから仕方ないのかなぁ、という気もします。

  2005年第2回本屋大賞ノミネート作(8位)。


自森人読書 黄金旅風
★★

著者:  山岡荘八
出版社: 講談社

  『山田長政』は短編集。『山田長政』『頼朝勘定』『親鸞の末裔たち』『黒船懐胎』収録。

  『山田長政』は江戸時代前期にシャムの日本人町で活躍した山田長政という人物のことを取り上げた中篇小説。

  山田長政は、主君の家が取り潰しになったため、全てを捨てて旅に出ました。その後長崎から密航してシャムへと向かいます・・・(飯嶋和一『黄金旅風』にもでてきた末次舟が登場しておー、と思いました)そしてシャムの日本人町の一員となり、傭兵として活躍。段々と力を持っていき、最後にはシャムの国王に信頼されるまでになります。そして、シャムの王位争いに対して発言権を持ち、自分たちと仲の良い人物を国王にたてることに成功。

  ですが、外国人ということもあって敵対勢力から嫌悪されます。そして、六昆というところに左遷され、最後には暗殺されてしまいました。彼の死後、日本人町は焼き払われ、シャムなど日本国外の日本人たちは苦難の道を歩むことになります・・・・・

  ちょっとロマンチックな話も混じったりしているけど(密航のとき、助けてくれる女性の話とか)、中篇なのでどうしても広がっていかないなぁ・・・ 「壮大な歴史物語」と言うのはやはり長編小説じゃないとだめな気がします。まぁ長ければ良いというわけではないけど。

  山岡荘八ってけっこう昔の人だから、古臭い文章なのかなぁとか思いつつ読み始めたら、けっこう普通で読みやすかったです。気楽に読める歴史小説、という感じでした。そういえば、山岡荘八ってがちがちの保守だよなぁ。日本国を大切にしようとかそういうことやってなかったっけ。あまり好きになれない・・・


自森人読書 山田長政
★★★

著者:  陳舜臣
出版社: 講談社

  17世紀(日本では江戸時代)頃のインドが舞台の物語。どうしてインド全土を支配した大国家・ムガル帝国は滅亡してしまったのか、というのを読み解いていこうというもの。主に、推理小説や中国の歴史小説を書いていることで有名な小説家、陳舜臣の意欲作です。

  なぜ彼は、中国史ばかりではなく、インド史にも目をむけられたのか? 日本に住んでいるから日本史を扱おうというのならば分かりやすいけど、そうではないのです。ではなぜなのか、というと別にたいした理由はなくて、偶然の結果なんだそうです。

  陳舜臣は若い頃、倍率が低いからという理由でインド語専攻の道を選びました。そして、その結果として「自分たち中国の文化が世界の中心である」というような中華思想に縛られず、アジア全体を眺めるようなもっとずっと広い視野を手に入れられたそうです。つまり青春の頃の思索が、この『インド三国志』に活かされているわけです。偶然が人をつくるんだなぁ・・・ 面白い。

  さて、では『インド三国志』はどんな物語かというと・・・

  毎回代が代わるたびに、兄弟が「帝位か、死か」を賭けて文字通り殺しあい(ムガル帝国の衰退の原因の1つとして、帝位の継承時の激しい争乱があると陳舜臣は見ていますが、とても納得します)、熾烈な帝位争いを繰り返すムガル帝国。その帝国に刃向かって、自由と独立を手に入れようとする幾多の少数民族。そしてそこへ割り込み、インドへの侵攻を開始する東インド会社。その3者による、三つ巴の戦いの始まりを描いたものです。

  一方の主人公は、兄弟を殺してムガル帝国皇帝となったものの、その視野の狭さのあまり多文化を弾圧し、帝国を自壊させていく皇帝・アウラングゼーブ。もう一方の主人公は、傭兵を稼業とするマラータ族をまとめ、国家を築いていった優れた指導者シヴァージ。そこに、東インド会社の面々が微妙に絡む感じです。ですが、東インド会社が本格始動するのは最後の章。あまりでてきません。

  『インド三国志』はあまりにも面白くて一気に読んでしまったのですが・・・ なんだか尻切れトンボというか、最後のところに〔未完〕とついていても良いような感じの終わり方になってしまっています。そこが残念です。壮大な物語の前半部分としか思えない。ぜひとも、続きを書いて欲しいなぁと思いました。


自森人読書 インド三国志
★★★

著者:  菊池寛
出版社: 文藝春秋

  『日本武将譚』は、タイトル通り日本のいろんな武将を、史実に沿って紹介していくもの。簡潔で、すぱっとした文章が小気味いいです。登場するのは、平将門、(源)八幡太郎義家、(源)木曾義仲、源義経、楠木正成、太田道灌、北条早雲、明智光秀、黒田如水、伊達政宗、加藤清正、石田光成、謙信と信玄。だいたい平安時代の終わり頃から、江戸時代の始まり頃までに活躍した武将たちです。

  そして、最後にちょっと物語風の「秀吉と政宗」というのがくっついています。2人ともそれぞれ魅力的な人物です。菊池寛は、豊臣秀吉と伊達政宗のことが気に入っているのかなぁ、多分。

  北条早雲も登場。僕がけっこう気に入っている人です。北条早雲は、それまで力を持っていた守護から、関東を奪い取った戦国大名の先駆け。つまり戦国時代を切り開いた男なわけです。しかし、一度も大河ドラマにされていません。いたのかも分からない山本勘助ではなくて、北条早雲を大河ドラマにして欲しいのになぁ・・・

  この『日本武将譚』を基礎にして、厚い歴史小説を書いたら面白そうだと感じました。いや、もうとっくの昔に全部誰かがやってしまっているか。今では、歴史小説は一大ジャンルとなってしまっていて、小説の題材になっていない時代というのはもはや存在しないといってもいいほどです。昔は、脚光を浴びることが少なかった南北朝時代を舞台にした小説だってけっこうでてきています(その筆頭が、北方謙三かなぁ、たぶん)。

  そういえば、これまでは菊池寛と聞くと芥川賞・直木賞を創設した人というイメージしかなかったけど、『日本武将譚』を読んだ後、興味を持ったので、彼がどんな人なのか調べてみました。

  彼は、大正・昭和の大人気作家。今にまで脈々と続く「文壇」の代表格のような雑誌『文藝春秋』を私財を投じて刊行した人なのだそうです。さらに、大映(映画会社)の初代社長に就任したり、多方面で活躍、「文壇の大御所」といわれていたらしい。しかし、太平洋戦争後は戦争協力の責任を問われて公職追放になり、そのまま死去。一時期、彼の作品群はかなり冷遇されたみたいです。今でも、冷遇されてるのかなぁ・・・ あまり見かけない気がする。


自森人読書 日本武将譚
★★★

著者:  三戸岡道夫
出版社: 学習研究社

  日露戦争において日本軍を勝利に導いた男・児玉源太郎の生涯をたどって行くもの。

  児玉源太郎は、もともと長州藩の支藩、徳山藩に生まれました。西南戦争(西郷隆盛の叛乱)の時には、谷干城配下の幹部として政府側の拠点、熊本城を敵から守り抜きます。その後、台湾総督になると、後藤新平(のち関東震災後、東京都復興を指揮した人)を抜擢し、統治を順調に行いました。単なる「武将」ではなく、政治家としても優れていたわけです。

  そして、彼の一番の「見せ場」とも言うべき日露戦争がやってきます・・・ 彼は、内務大臣を務めていたのですが、参謀次長の田村怡与造が突如病死したため、その後任となりました。大山巌参謀総長に請われ、降格人事を受け入れたのです。日本陸軍の中で、降格人事を受け入れたのは彼ただ1人です。そうして参謀次長になると、児玉源太郎は戦争全体の構想の立案、戦費の調達などを行いました。

  彼の努力もあって、日本軍は最終的にロシアとの戦いに一応の勝利をおさめました。児玉源太郎は、英雄になりました。ですがその後、1年たたない内に脳溢血で死去。日露戦争後、日本は狂ったような軍国主義化に走っていきますが、彼はそれに関わらずに生涯を終えました。

  太平洋戦争のとき、スケールのでかい軍人が1人も残っていなかった、といわれます。それで、頭でっかちの官僚軍人ばかりが揃ってしまった、というのです。明治・大正時代のビッグな軍人といえば、山縣有朋、大山巌、児玉源太郎といった人たちが思いつきます。みんな死んじゃったんだなぁ・・・

  それにしても、大日本帝国は、どうして無謀な太平洋戦争を始めてしまったんだろうか・・・ とめられる人はいなかったのかなぁ。


自森人読書 児玉源太郎―明治陸軍の巨星


著者:  南原幹雄
出版社: 新潮社

  江戸幕府の創始者・徳川家康の家臣の中に、石川数正という男がいました。彼は、三河の時代から家康に従っていた譜代の中の譜代です。家老にまでなり、家康の右手とすら言われました。しかし、天正13年、突如出奔し、天下取り間近の豊臣秀吉の配下となってしまいます。

  その裏切りは、いったい何故おきたのか。何が理由だったのか、今でも分かっていません。出奔を知った時、家康は驚愕した、と伝えられています。そして、これでは豊臣方に内部情報が筒抜けだと言うことで、軍制を全て改めたと伝えられています。そのくらいの衝撃的な裏切りだったわけです。

  この『謀将 石川数正』は、大胆にも、石川数正は裏切ったふりをして実は密かに豊臣方の情報を流し、徳川家康を助けていたのではないか、と推測。その推測をもとに物語を組み立てていきます。けどちょっと無理があり過ぎるような気がします。

  その上二番煎じなんだよなぁ。そのような推理、つまり石川数正は二重の裏切りをしていて実は家康方だった、という推理はこれが最初ではありません。元祖は、たぶん山岡荘八の『徳川家康』です。だから、そこまで評価できないかも知れない。

  しかもやたらと濡れ場が多い。読者サービスなのかなぁ。それにしても多すぎだよなぁ。

  しかも構成も悪い。石川数正は、あんまり活躍できないまま、物語の半ばで倒れます(ふぐ中毒で・・・)。なんだか、主役なのにほとんど活躍できないままあっけなく死にます。そのあと活躍するのは、石川数正の息子・石川康長。けどだいたいあとは、蛇足といっても良い様な・・・

  というわけで★1つ。根幹の設定(石川数正は二重の裏切り者だった)はけっこう面白いはずなのに、うまく活用できていない・・・ 説得力を持たせられなかった、というか。


自森人読書 謀将 石川数正
★★★★★

著者:  井出孫六
出版社: 社会思想社

  井出孫六のデビュー作。「秩父困民党」を闇の中から掬い上げた名著。何度も繰り返し、新装版がだされています。多分、秩父事件が映画になったりしてブームになるとそれに乗じて、新たにだされるのだと思います。読みやすくて分かりやすいから手にとられやすいんじゃないかなぁ。

  僕は、『王道の犬』という漫画を読んで、秩父事件のことを知りました。それでもう少し詳しいことが知りたいなぁと思っていたら、自由の森学園の図書館に『秩父困民党群像』があったので手に取りました(それにしても、自森の図書館っていうのは古い本の宝庫です、1986年出版の古いのが綿ぼこりの中に置いてあった・・・ もう他の社(新人物往来社・文元社などなど)からたくさんの新装版もだされているのに)

  そもそも秩父事件とは何か。まぁ簡単に説明するなら、「明治17年11月、埼玉県秩父郡の農民が日本政府に対して武装蜂起した事件。1週間あまりで鎮圧され、1万4千人が処罰の対象になった。背景には自由民権化運動の激化があったとされる」というふうになります。ですが、それでは何も見えてきません。単なる農民一揆みたいなものなのか? とも思えます。

  井出孫六は、秩父事件にした参加した中心人物たち1人ひとりの足取りを丹念に追っていきます。すると、叛乱を指導した「秩父困民党」の田代栄助らは、最初暴力的なやり方ではなく交渉によって状況を打開しようとしていたと分かります。高利貸や役所に借金の軽減を求めて交渉したり、政府に租税の軽減を求めて嘆願し・・・ しかし全く効果がありませんでした。

  背景には、「松方デフレ」がありました。西南戦争の戦費が嵩んで国家財政はぼろぼろ。国内はインフレ状態。大蔵卿・松方正義はそれを解決するため、デフレ政策を行いました。そしたら物価が下落。完全な不況に陥ったわけです。そして、しわ寄せをくらった農村はもっとぼろぼろに。埼玉県秩父の農村もそんな状況でした。

  「秩父困民党」は、話してもらちがあかないので怒りました。そして、最後の手段として武装蜂起を画策。彼らは、秩父に「独立国」を築くことを目指しました。つまり、革命に近い叛乱です。準備不足ではあったものの民衆のパワーは、警察や憲兵隊を圧倒しました。しかし、最後にはとうとう東京から軍隊出動。民衆を圧殺しました。そうして、叛乱は1週間で終わってしまいました・・・

  井出孫六は、人間くさい「秩父困民党」のメンバーたちを中心に、「秩父事件」を描き出してみせます。基本的に彼らに寄り添って。章ごとにいろんな人を取り上げていきます。各章のタイトルを挙げていくと・・・ 「血盟のオルグたち 落合寅市・坂本宗作・高岸善吉」。「風布の人びと」。「神官と信徒たち」。「佐久の同盟者 菊池貫平・井出為吉を中心に」。「学務委員と教師たち新井周三郎を中心に」。「悲劇の組織者・小柏常次郎」。「群馬からの助っ人 新井虎吉・貞吉父子を中心に」。「秩父の谷間の女たち」という感じです。

  それほど分厚い本ではないけれど、いろんなことを考えさせられます。とても読み甲斐があります。


自森人読書 秩父困民党群像
★★★

作者:  松本清張
出版社: 講談社

  『軍師の境遇』は、歴史小説の短編・中篇集『軍師の境遇』の表題作(他に『逃亡者』、『版元画譜』の3篇を収録)。

  『軍師の境遇』は、知略に優れ、人格にも優れた希代の智将・黒田孝高(如水)を主人公に据えた物語。舞台は、戦国時代の終わり。黒田孝高は、いまの姫路市の辺りに割拠していた小大名の小寺政職に仕え、一代で重臣にまで取り上げられた人。織田信長が伸長してくると、主君・小寺政職を説いて織田方に従い、自身は羽柴秀吉に惚れこみ、仕えるようになります。そして、言葉でもって敵を味方につけるということをやるようになりました。

  しかし離反者・荒木村重に再び織田方に戻るように説きにいったとき失敗。捕縛されて土牢に閉じ込められてしまいます。約1年間後、城の陥落とともに救出されました。しかしその生活の中で体が不自由になり足を引きずるようになり、その後は輿に乗って軍を指揮するようになります。

  主君が織田方を裏切った毛利方についたため滅ぼされることがあり、その後羽柴秀吉の参謀として活躍。毛利氏との戦いで数々の献策をしました。苛烈なる鳥取城の兵糧攻め、備中高松城の水攻めのときの参謀だそうです。本能寺の変で織田信長が斃れると、嘆く豊臣秀吉に「いまはチャンスなのです」と説いて、中国大返しを勧め、その結果明智光秀を討つことで豊臣秀吉は一躍天下人へ近付きます。

  その後は、そのあまりの知略を豊臣秀吉から恐れられ、彼に「俺の死んだ後天下をとるのができるのは、あの黒田だろう」とまで言われたというはなしもあったそうです。黒田孝高は野心のないことを表すために如水と名乗って隠居。そうして、一代の智将は身を引いた・・・というところまでが『軍師の境遇』の物語。

  いろんな人たちの心情を的確に、だけど短く表現していて面白かったです。松本清張の文章って良いなぁと思いました。小説ではあるけれど、かなり事実に則っていて、かつ作者の推測がその上に積み上げられているから読んでいて自分でもいろいろ考えてしまいます。


自森人読書 軍師の境遇
★★★

著者:  筑波常治
絵:  坂本玄
出版社: 国土社

  「堂々日本人物史―戦国・幕末編」シリーズのなかの1冊。子ども向けのものです。僕は、偶然地元の図書館にあったこのシリーズを通して日本の戦国・江戸時代の詳しい流れを知るようになりました。なので、このシリーズには愛着があります。

  今回の巻は、尼子氏に仕えて命を散らし、忠義の人として昔からもてはやされてきた山中鹿之介。三日月に向かって、「願わくば、我に七難八苦を与えたまえ」と祈ったという逸話は広く知られています。彼はほとんど無謀としか思えないような作戦をたてて、宿敵・毛利氏に幾度となく挑んでいきます。

  1回目は、隠岐の豪族・隠岐為清の協力を得て毛利氏から新山城を奪い、出雲をほとんど手中に収めるところまでいきますが、最終的には敗北。山中鹿之介自身も捕縛され、厠に行くふりをして脱出。2回目は、覇者として全国に勢力を広げつつあった織田信長や、信長に属する勢力の助力を受けて、若桜鬼ヶ城・私都城を奪取。しかし織田信長は、毛利氏との関係悪化を恐れて、山中鹿之介ら尼子氏遺臣勢力を放置。またもや尼子氏勢力は毛利氏に敗北し全ての城を放棄して逃走。

  そして3回目。山中鹿之介らは、織田信長勢力の先鋒として毛利氏と戦い、上月城を奪取して尼子氏再興をねらいます。しかし、織田信長は別の方向から攻め寄せる本願寺・上杉謙信の攻撃に対応するため、山中鹿之介ら尼子氏遺臣勢力を見殺しにして撤退。孤立した上月城は毛利氏の包囲によって陥落。山中鹿之介は再び捕われ、今度は謀殺されます・・・

  凄い生き方をした人だなぁ、と思います。不屈の闘志を持っている、といえば良いのか。3回も、強大な毛利氏に挑み、最期には命を落としてしまう・・ う~ん、悲劇の名将としてもてはやされるのも無理ないな、と思います。


自森人読書 山中鹿之介 「堂々日本人物史―戦国・幕末編」
★★★★

著者:  小島晋治 丸山松幸
出版社: 岩波書店

  「中華人民共和国」という国の近現代史をしっかりと見つめていこうというもの。かなり簡潔に、まとめられています。よく新書1冊にこれだけの内容を詰め込んだなぁ、と感心してしまいます。ただ、分かりづらい部分が多々あります。ぽんと、宋慶齢とか、周恩来とか名前を出されても分からない人には分からないだろうなぁ・・・ あまり親切じゃないとも言えるけど、でも中国の近現代史がみごとに圧縮されています。これ1冊あるとかなり便利です。

  ぎりぎり天安門事件のあとの辺りまでのことが載っています。

  中国の近現代史は民衆にとっては、苦難の歴史だったのだなぁ、と『中国近現代史』を読んで改めて思いました。清国と戦い、西洋列強の侵略と戦い、日本の侵略と戦い、各地に割拠する軍閥と戦い、もう何が敵であるのかすら区別しがたい。本当に混沌としています。さらには国民党と、共産党との戦いに巻き込まれ、共産党独裁下でも誤った政策が行われたことで、苦しむことになる・・・

  ただ、日本という国は上から「民主政治」をアメリカに与えられましたが、中国は外敵を全て打ち払い、そして毛沢東崇拝の歴史を自己反省し、国内では自由や民主化を掴むためにいろんな人が闘っています。とはいってもいまだに一党独裁が続いているわけですが。これからいったいどういうふうに歴史は動いていくのだろう。とても気になります。

  これから、中国、インドなどアジアの国々が力を増してくるといわれます。そうしたら世界のバランスはどういうふうになっていくのか。その中で、日本はアメリカ一辺倒(そういえば、「一辺倒」という言葉は毛沢東が流行らせた言葉)でいられるのか。というより、それで良いのか。

  だけど、日本とアジアの国々との間には、第二次世界大戦以来の因縁というか、わだかまりが残っているとよく言われます。それをどうするのか。やはり誠実に、その事実と向き合うことが大切だと思うのですが、つい最近航空幕僚長だった田母神俊雄が日本は侵略国家ではない、という幼稚な論文をだして、大騒ぎになりました。戦争から、もう60年間たったはずなのになぁ・・・


自森人読書 中国近現代史
★★★

著者:  後藤健生
出版社: 中央公論新社

  『ワールドカップ』は、ワールドカップというサッカーの大会の歴史をたどっていくもの。けっこう面白いです。かつては、国家の権威を高めるために利用されたこともあったということ(イタリアのファシズム・ムッソリーニに利用された)を始めて知りました。そういう歴史があったんだ・・ まぁスポーツの大会なんてどれも似たようなものだよなぁ。オリンピックもドイツのナチ・ヒットラーに利用されたし。

  サッカー大国・ブラジルの軌跡を初めて知りました。ブラジルって強いんだなぁ。だから、よく「サッカーといえば、ブラジル」といわれるのか。

  2002年日韓共同開催の直前までのことが書かれています。共同開催をめぐっても、いろいろな政治的駆け引きがあったことが簡潔に書かれています。サッカーの大会でどこが勝って、どんな記録が生まれたということだけでなくて、その背景までしっかりと書かれていて、僕としてはそちらの方がむしろ面白かったです。サッカーという競技が拡大したのはなぜか、とか考えてみるのは面白いです。

  野球は、いまだにアメリカの大リーグが圧倒的な優勢を誇っています。どこの国の人も受け入れるという大リーグの姿勢が、そういう状況を生んでいるといえます。ただし、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の誕生によってこれから何か変わっていくのかもなぁ。

  サッカーは、以前から国際大会があって、各国にいろんなリーグがあることで、もう少し割拠が進んでいるようです。まだまだアジア・アフリカ勢が弱いみたいだけど。

  う~ん、そんな歴史があるのか。面白いです。


自森人読書 ワールドカップ
★★★

著者:  筑波常治
絵:  坂本玄
出版社: 国土社

  「堂々日本人物史―戦国・幕末編」シリーズのなかの1冊。子ども向けのものです。僕は、偶然地元の図書館にあったこのシリーズを通して日本の戦国・江戸時代の詳しい流れを知るようになりました。なので、このシリーズには愛着があります。

  「天草四郎」という人を始めて知った時、何を思ったか詳しくは覚えていません。だけど、同時期に読んだ白土三平のマンガ『サスケ』シリーズともつながる部分(キリシタンに対する過酷な弾圧)があって、何かいろいろ考えたような覚えがあります。

  天草四郎とは、どういう人かというと・・・
  彼は、江戸時代初期、天草・島原地方に生まれました。イエスと同じように数々の奇跡を起こし、しかも美少年だったため、近隣のキリシタン(キリスト教信者)達から信奉される存在となります。1637年10月、過酷な税のとりたてに苦しんでいた民衆が、一揆を起こしました。その時まだ16,7歳の天草四郎は総大将として民衆を率いることになり、幕府軍と戦いました。一揆軍は、籠城戦を繰り広げ、幕府軍の大攻勢によく耐えるも3カ月あまりで鎮圧され、全滅。天草四郎もその時戦死した、といわます・・・

  島原天草の乱は、江戸時代初期最大の大反乱でした。幕府はその後極度にキリスト教を恐れるようになります。島原天草の乱以後、鎖国政策が徹底されました。

  3万7千人の一揆軍のほとんど全員が殺されたそうです。一揆軍皆殺しとはひどい、と僕は思います。そもそも悪政を行っていたのは、藩主です。民衆はそれに対して抗議しただけで殺されてしまったのです。う~ん、その当時と比べれば今の世の中はましになったのかなぁ、と思います。

  だけど、イラクをアメリカ軍が侵略したということもあるわけだし。一概に昔の方が悪かったとは言えないのかなぁ・・ 空爆とか、いろいろあって戦争の被害者の数が飛躍的に増加しているわけだし。昔より、今の方が大量虐殺が普通に行われている、という見方もありえるかもしれない、と思いました。


自森人読書 天草四郎 「堂々日本人物史―戦国・幕末編」シリーズ
★★★★★

著者:  田中芳樹
出版社: 中央公論新社

  13世紀、地上最強ともいわれる騎馬軍団を擁する元軍が疾風怒濤のごとく、南宋へと攻め寄せます。それに対して、南宋の士大夫や武将達は必死の抵抗を試みました。しかし、敵わず、とうとう数十艘の船団でもって海上に脱出するのですが・・・ 悲劇の士大夫・文天祥、南宋に尽くす剛直な武将・張世傑、敵前逃亡を繰り返す宋の旧宰相・陳宜中の3人を中心にして物語はすすみます。壮大な歴史物語です。

  文天祥はものすごい人です・・

  文天祥は政治家・軍人。20歳のとき、科挙(官吏になるための試験)にトップで合格。1度、時の権力者の政策に反発して下野しますが元軍との戦いで活躍して出世。その後、和平交渉の使者として元に赴き、捕えられてしまうのですが脱出。南宋再興のために2年間以上に渡ってゲリラ戦を繰り広げました。しかし、再び元に捕われてしまいます。彼が獄中にある間に南宋は完全に滅亡。フビライから「元の臣下にならないか?」と何度もすすめらますが、それでも忠義を貫き、獄中で『正気の歌(せいきのうた)』を書いて刑死しました。

  僕は、漢詩の本か何かで文天祥という人のことを知りました。あまりにも凄い人だ・・ となんと言って良いのか分かりませんでした。どうして、彼を主人公にした小説が日本に無いのか? ちょっと不思議な気がしていました。と思ったら、田中芳樹が小説にしてた・・・

  文天祥は、元の皇帝・フビライや元の武将からは大きな評価を受けました。そして、後世いろんな人たちから、徹底的なまでに褒めちぎられることになります。しかし、味方(南宋の士大夫・武将)からは対して評価されませんでした(単なるゲリラ扱い)。南宋の武将・士大夫の人たちは視界が狭かったのか、もしくは嫉妬に目がくらんで文天祥の凄さが認められなかったのか。どうしてだろう・・・

  『海嘯』は、田中芳樹の書く中国ものシリーズの1つ。田中芳樹は中国史にけっこう詳しくて、中国史を題材にした物語をたくさん書いています。しかも文章が読みやすいのところが良いです。ミステリ作家で、中国の歴史小説もいっぱい書いている陳舜臣は、文章がちょっと読みにくい気がします。

  宮城谷昌光は漢字を多用し、独特の世界をつくりあげていて面白いんだけど、あの人は春秋戦国・秦・漢・三国志以降の歴史を題材にとったことがまったくないので、正直あまり期待できないなぁ、という気がします。もっと南北朝や宋の時代の物語が読みたいのに。


自森人読書 海嘯
★★

著者:  酒見賢一
出版社: 文藝春秋

  中国周王朝の政治家、周公旦を主人公にした小説。歴史をもとにしつつもどこまでも自由に想像を広げていった、という感じです。孔子が崇拝したとすら言われる、周公旦の唱えた「礼」とは何か、というのが大きな主題の1つです。

  『封神演義』という物語の下敷きにされたことで、有名な殷から周への易姓革命の時代。その時代をもう少し史実寄りに、だけどやっぱり物語として見ていこう、という感じです。面白いけど、やっぱり前半の戦争のときにはどうしてもほとんど見せ場が無い。まぁしかたないといえばしかたないんだけど。でもしかたないではすまないよなぁ・・・

  呪術的な言葉(礼)の力とか、こういう文体からは、中島敦が連想されます。でも、『周公旦』は、中島敦の小説にはかなわない気がします。なんていうか格調高さでは負けているし、かといって『墨攻』ほどの良さもないような気がするし。

  酒見賢一の作品の中だったら、『墨攻』の方が面白かったです。『周公旦』には『墨攻』のあの流れるようなテンポの良さが全然ない。『周公旦』はきれぎれでもたもたしていて、それでいてどこか軽くて、なんというか読みづらいです。まぁつまらないことはないんだけど。でも読みにくい。


自森人読書 周公旦
★★★

著者:  三好徹
出版社: 光文社

  三国志に登場するいろんな脇役達に目を向けた短いストーリーの数々。

  崔えん―直言の士がはまった陥穽/とう芝―三国鼎立を生んだ外交の才/陸遜―軍事の天才も政治センスは欠如/劉曄―才能があり過ぎた男の「不足」/劉巴―無欲の士が拘った主君の資質/太史慈―主君運がなかった弓の名手/張遼―関羽が心を許した勇猛なる人格者/馬超―曹操が恐れた「意地」の武将/魯粛―国を動かした高所からの軍略思考/陶謙―劉備に国を譲った無欲の恩人などなど24人の人物を取り上げています。

  『三国志傑物伝』のあとがきに、三好徹が中国史の中で面白いのは、「史記」「三国志」「清国滅亡(辛亥革命)」の3つだ、とか言っているけど、どうせそれ以外の中国の歴史をろくに知らないで言っているのだろうなぁ。作家の田中芳樹がずっと前から言い続けていることだけど、日本人は、中国史のことをまったくしらないんだよなぁ・・・ それで、「史記」「三国志」「水滸伝」ばかり持ち上げる。唐・宋の時代だったものすごく面白いのに。


自森人読書 三国志傑物伝
★★★★

著者:  高橋克彦
出版社: 講談社

  織田信長は、戦国時代を終わらせ、安土・桃山時代という1つの時代を築き、天下統一まであと1歩に迫りました。しかし、本能寺にて明智光秀に暗殺されてしまいます。その後、台頭してきたのが豊臣秀吉です。彼、豊臣秀吉は、政敵を次々と滅ぼし、天下の覇者になろうとしていました・・ その頃、奥州(東北地方の奥の方)に割拠していた南部家は跡継ぎ争いから内部分裂を起こしていました。南部家の一族にあたる、九戸政実が、宗家(南部家)と激しく対立したのです。九戸政実率いる九戸党は、南部家最強と言われており、南部家にとって重要なものだったので、排除されることがありませんでしたが、完全に異端視されていました。

  だんだんと、南部家は自らの家を守るために、豊臣秀吉に臣従するようになります。どんなに酷い扱いを受けてもただ黙って、愛想笑いを浮かべるような態度をとったのです。九戸政実は憤慨しました。そして、決意します。豊臣秀吉に弓を引く、と。中央の権力に抵抗して、東北の誇りを守るためにはそれしか手段は無かったのです。

  「北の鬼」九戸政実は、たった5千の九戸党を率いて、豊臣軍10万と戦いを挑みます・・・

  とにかく九戸政実がかっこいいです。勝てると分かっていなければ戦(いくさ)はしない人なのに、最期は天下人に喧嘩をふっかけて壮絶な戦いを繰り広げます。周囲の九戸党の人たちの仲間思いなところもかっこ良いです。作者がテレビに登場して少しだけ解説していたのを見て、面白そうと思って図書館で借りたのですが、やっぱり面白かったです。


自森人読書 天を衝く ―秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実
★★

著者:  爆笑問題
出版社: 幻冬舎

  爆笑問題が、日本の歴史を突っ込みつつ、解説していくみたいな感じです。縄文時代から始まり、2・26事件まで語ります。とっつきやすい、というところがよく褒められている気がします。確かに面白いは面白いけど、普通に文章で書いた方がよりたくさんのことが書けるだろうなぁ・・・

  だけど、意外さでもってひきつける、というところとか、案外深く突っ込んでいくところが面白いかなぁ、という気がしました。どうでもいいような、でも歴史好きが飛びつくようなはなしとかもあったかなぁ・・・ 随所に。源平合戦の仕掛け人は、天皇だった、みたいなよくある推測とか。

  歴史があんまり好きじゃないけど教科書で習った程度は覚えている、という人が読むと面白いのかも知れません。僕はそこまで面白い、とは思わなかったなぁ・・・・・ というかほとんど知っていることばかりで、読んでもなんにもならない。

  というわけで★2つ。


自森人読書 爆笑問題の日本史原論
ウェブサイトhttp://jimoren.my.coocan.jp/
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