自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
物語の語り手は、ジェローム。彼は、2歳年上の従姉アリサに惹かれているのだけど、アリサは母親の不倫に悩まされ、それ以来キリスト教を信じ、幸せを軽快しているためなかなかジェロームのもとにはきません。アリサは幸福ではなく、幸福へ到る道を求めていたのです。二人は惹かれ合うのですが、両者とも相手に聖なる部分を見出し、それが故に惹かれあっているので、結局結ばれることはなく・・・
恋愛小説。
「狭き門」とはマタイ福音書第7章第13節にあらわれる言葉だそうです。他の書物から引用された文章が頻出します。しかし、難しくはありません。余分なものが削りとられた写実的な描写と、平易な文体が良いです。
二人の関係は非常に歯痒いのだけれど、それがこの物語の肝になっています。
アリサは世俗的な愛を拒もうとします。そして、ジェロームのことを愛していないわけではないのに逃れていこうとします。ジェロームはそういう状態を好まず、追いすがろうとします。つまり、結婚を迫ろうとするわけです。だけど、上手に切り出すことが出来ません。
アリサの矛盾が、ジェロームを苦しめているかのようです。だけど、彼の行動が、アリサのそういう態度を誘発しているようにも感じられます。どちらかに問題があるわけではなく、両者の関係というか組み合わせに、問題があるのではないか、と感じます。
なんというか、やるせないです。
多分、二人の関係は、どうしたってうまくいくはずがないのです。アリサは、もしも幸福(結婚)になったら、あとは不幸(配偶者の死を恐れ、不倫を疑うようになる)になるしかない、といふうに感じ取ってしまう人なわけだから。
読んだ本
アンドレ・ジッド『狭き門』
読んでいる最中
遠藤周作『沈黙』
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