自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
トムは、セントルイスでの日々を追憶しています・・・ ときは1930年代。一家は世界大恐慌に苦しめられていました。若きトムは詩をつくりたいと望みつつもそれを果たせず、倉庫に勤めて給料を稼いでいます。そして、そのおかげで一家はなんとか裏町の寂れたアパートに住むことができています。トムの母親アマンダは、内気な姉ローラのために青年を見つけて来いとトムに告げますが・・・
戯曲。テネシー・ウィリアムズの出世作。
母アマンダは子供たちの幸せをただ願っているだけなのに、それが故に現実を許容できません。そして愛で子供たちを押し潰してしまいます。姉ローラは今にも壊れかねないガラス細工のように繊細。恥ずかしがってしまい、他人と会話することがほとんどできません。弟トムは夢を果たせず、落ちぶれています。そして、父親はでていったきり帰ってきません。
成功から取り残された人たちの物語のようです。
トム一家にハッピーエンドは訪れません。非常に悲しいです。その悲しみはありふれたものなのかも知れませんが、だからこそ伝わってきます。
トムの語りは少しわざとらしいです。しかし、全てがトムの追憶/動かしようのない苦い思い出ということになっているおかげで、そこに奇妙なせつなさが生まれます。
小田島雄志訳。
読んだ本
テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』
読んでいる最中
森見登美彦『宵山万華鏡』
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