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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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『きのう何食べた? 3』
いつ読んでもおいしそうです。


今日読んだ本
よしながふみ『きのう何食べた? 3』

今読んでいる本
佐々木譲『ベルリン飛行指令』
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『厭世フレーバー』
リストラされた父親が失踪。14歳の次男ケイは陸上部をやめ、新聞配達を始めました。17歳の長女カナはアルバイトを始め、深夜まで家に寄り付かなくなります。27歳の長男リュウは突如として家に帰ってきて家族の面倒を見ようとします。42歳の母・薫は昼から酒浸り。73歳の祖父・新造はボケが進行してきて会話が成立しません。家族ともいえないような家族は、いったいどうなるのか?

家族と言うものを描いた作品。

「十四歳」「十七歳」「二十七歳」「四十二歳」「七十三歳」によって構成されています。それぞれの視点から、家族のことが語られます。非常によく練られています。読み終わったときにはなんだか温かい気持ちになっています。

なんというか、金城一紀っぽいです。がさついた文体といい、ちょっと良いはなしに落ち着くところといい、そっくりです。ついでに設定が似ているからか、『グッドラックららばい』を思い浮かべてしまいました。どちらというとドロッとしたものも掬い上げている『グッドラックららばい』の方が面白かったかなぁ・・・

文藝春秋。


今日読んだ本
三羽省吾『厭世フレーバー』

今読んでいる本
佐々木譲『ベルリン飛行指令』
よしながふみ『きのう何食べた? 3』
ベスト10確実
●伊坂幸太郎『あるキング』
●道尾秀介『鬼の跫音』
●万城目学『プリンセス・トヨトミ』
●奥田英朗『無理』


ベスト30確実
●村上春樹『1Q84』
●湊かなえ『少女』or『贖罪』
●東野圭吾『パラドックス13』or『新参者』
●川上未映子『ヘヴン』
●柳広司『ダブル・ジョーカー』
●高村薫『太陽を曳く馬』
●有川浩『三匹のおっさん』or『植物図鑑』or『フリーター、家を買う。』
●森見登美彦『恋文の技術』or『宵山万華鏡』


ベスト30に入るかも?
●村山由佳『ダブル・ファンタジー』
●北村薫『鷺と雪』
●宮部みゆき『英雄の書』
●真保裕一『アマルフィ』
●米澤穂信『追想五断章』
●三浦しをん『神去なあなあ日常』

2010年(2009年に出版された本が対象)の本屋大賞候補を再度予想してみます。まぁ多分、あまり当たらないと思います。半分あたればいいなぁ・・・
『新宿鮫』
新宿署の鮫島警部は「新宿鮫」と呼ばれ、恐れられています。警察機構に楯突き、ヤクザとはつるまず、ただ1人で犯罪者を追跡するからです。鮫島は銃密造の天才・木津を追っているうちに、歌舞伎町で発生した警察官連続射殺事件との関連を見出します。彼は単独で木津を追い詰めていきます。しかし信頼した人に裏切られ、絶体絶命に危機に陥り・・・

ハードボイルド小説の傑作。

物語自体はいくらなんでも出来すぎと言ってしまっても過言ではないのですが、あまりにも鮫島がかっこいいので気になりません。

鮫島は、正義を貫徹するためならば、全ての人間を敵に回します。もともとキャリア組だったのに、新宿署に左遷されたのです。鮫島と愛し合うロックシンガー・晶もまたかっこいいです。

やさぐれた『踊る大捜査線』みたいな感じです。


今日読んだ本
大沢在昌『新宿鮫』

今読んでいる本
佐々木譲『ベルリン飛行指令』
三羽省吾『厭世フレーバー』

学校休んで『聖☆おにいさん 4』を読んでいました・・・
やはり面白い。というか、どんどん面白くなってきたような気がします。


今日読んだ本
中村光『聖☆おにいさん 4』

今読んでいる本
佐々木譲『ベルリン飛行指令』
大沢在昌『新宿鮫』
三羽省吾『厭世フレーバー』
自由の森学園学園祭フィナーレ""
今日、延期になっていた後夜祭がありました。
これでとうとう学園祭はおしまい・・・
『電話男』
『電話男』
電話越しに様々な人の言葉を聞き、その人の心を受け止めることを務めとしている電話男の独白。電話男たちはどこから出現し、どこへ向かうのか。そして最大の敵とは? 第3回海燕新人文学賞を受賞したデビュー作。

『迷宮生活』
K氏は自分でつくったそれなりのルールに従って淡々と日々を過ごしています。彼は無為の日々の中で変な思想を抱き、意味のないことを繰り返しています。しかし、その内神をつくろうとしてとんでもないことになっていきます・・・

高橋源一郎や島田雅彦とともに「ポストモダン文学」の旗手といわれる小林恭二の作品はサクッとしています。やっぱり、他の「ポストモダン文学」作家の人たちと同じように人懐こくてポップで読みやすいのです。まぁ内容はちょっと不可解な感じもしますが、高橋源一郎と比べれば露骨というか、分かりやすい方かもしれません。

『電話男』は名作。文体はさらさらしているのに、分かり合えないことが前提となってしまった断絶の時代の中で苦しむ孤独な人間たちの抱え込んだ苦しみと哀しみが的確に表現されています。

すでに言語や理性すら頼りにならない今、いったいどこほ目指して生きていけばいいのか。考えさせられます。


今日読んだ本
小林恭二『電話男』
小林恭二『迷宮生活』


今読んでいる本
佐々木譲『ベルリン飛行指令』
『ソラリス』
心理学者ケルヴィンは、ソラリス上空に浮かぶステーションで発生した異常を調査するためにそこへ赴くのですがステーションは半ば放棄されていました。その上、出迎えてくれた研究者の説明は全く要領を得ません。しかも、自分が原因で自殺したはずの恋人ハリーが目の前に現れ、ケルヴィンは有機的な反応を示す海によって覆われている惑星ソラリスの謎の中へと取り込まれていくことになります・・・

『ソラリス』は、ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムが1961年に発表したSF小説。

早川書房から出版された『ソラリスの陽のもとに』が有名なようですが、国書刊行会から2004年に出版された新訳を読みました。『ソラリス』新訳は、ポーランド語から直訳し、ソ連による検閲のために削られた部分が補完されているそうです。

科学的でありながら哲学的。

赤い色をした太陽と青い色をした太陽に引っ張られながら不可解な軌道を描くソラリスという惑星のことを考えていくと人間中心主義(人間形態主義)から脱することができない人間というものの限界が露になってきます。本当に考えさせられました。

ケルヴィンとハリー(らしきモノ)の愛の行方も気になります。愛とは何なのか。命とは何なのか。人とは何なのか。本当に様々なことを考えさせてくれるいかにもSFらしいSF。


今日読んだ本
スタニスワフ・レム『ソラリス』

今読んでいる本
小林恭二『電話男』
2010年(2009年に出版された本が対象)の本屋大賞候補を再度予想してみます。まぁ多分、あまり当たらないと思います。半分あたればいいなぁ・・・(%は本屋大賞を受賞する確率を気分で予想)


●村上春樹『1Q84』 50%
ここまで話題になり、売れたのだから本屋の人たちも無視できないと思います。本屋大賞をとるかどうかは分からないけど、候補にはなるのではないか。あまりなって欲しいとは思わないけど。

●伊坂幸太郎『あるキング』 40%
今までベスト10には必ず入っている伊坂幸太郎の作品なのだから、やはり今回も候補にはなるはず。本屋大賞をとれるとは思わないけど。

●奥田英朗『オリンピックの身代金』or『無理』 40%
『オリンピックの身代金』は本屋大賞候補になるのではないかなぁ、読んでないけど。

●北村薫『鷺と雪』 30%
直木賞受賞作だからくるかなぁ・・・

●万城目学『プリンセス・トヨトミ』 30%
●村山由佳『ダブル・ファンタジー』 30%
●道尾秀介『鬼の跫音』30%

●東野圭吾『パラドックス13』 20%
●湊かなえ『少女』or『贖罪』 20%
●宮部みゆき『英雄の書』 20%
●真保裕一『アマルフィ』 20%
●柳広司『ダブル・ジョーカー』 10%
●高村薫『太陽を曳く馬』 10%
『クリスマス・カロル』
初老の商人スクルージは書記としてボブという男を安く雇い、ロンドンの下町に事務所を開いています。彼は、決して他人のためには金を使わず、人間の心や愛などいうものを気にかけたことはない冷酷な守銭奴でした。あるクリスマスイヴの夜、かつての共同経営マーレイの幽霊が現れ、これから毎晩三人の精霊が現れるだろうと告げます。そしてその言葉通り、毎晩、過去・現在・未来のクリスマスの霊が現れ、スクルージは悔い改めることになります・・・

文豪ディケンズの作品の中でもとくに有名なものの一つだそうです。もともと「クリスマスの本」シリーズの第1作目として出版されたそうです。まさにクリスマスにぴったりの本。

吝嗇への戒めや弱者への慈愛がテーマとなっています。

しかし、全体としては堅苦しいことはなく、むしろ軽快です。いきなり幽霊が出てきて、しかも精霊までぞろぞろと登場するのです。登場人物たちも筋書きもすっきりくっきりしています。暗くて孤独で笑わないスクルージと笑いに満ちた甥一家の対比など、とても分かりやすいのです。

まぁ非常に類型的ではあるけれど、それでも面白いし、人のために何かを為すということは大切だよなぁ、と思わされます。

当時の英国の街や家々についての描写は興味深かったです。

村岡花子訳。新潮社出版。


今日読んだ本
チャールズ・ディケンズ『クリスマス・カロル』

今読んでいる本
スタニスワフ・レム『ソラリス』
昨日今日と自由の森学園では学園祭がありました。
楽しかったです。しかしもう疲れました・・・

ずっとおでんとフランクフルトと焼き鳥を売っていました。けっこう売れてよかったです。
自由の森学園学園祭
★★★★

著者:  折原一
出版社: 講談社

  受賞間違いなしと信じて送った推理小説新人賞応募作が、何者かに盗作されていた。怒った「原作者」は、「盗作者」を破滅に追いやろうするのだが・・・

  折原一といえば叙述トリック、叙述トリックといえば折原一、といわれるほど折原一という人は叙述トリックにこだわっている人と聞いて、どんな感じなのかと思い、初めて読んでみました。江戸川乱歩賞最終候補作。折原一の事実上の第1作目。凄く面白かったです。

  途中までは、あまりミステリとは思えないような「原作者」と「盗作者」の暗闘が繰り返されるのですが、最後は、ひっくり返りを繰り返していきます。「倒錯のロンド」というタイトルの意味も最後になって分かるようになってきます。

  物語全体が、トリックというのには驚きました。女性のキャラクターが、男にとって都合良く動いているなぁ、と思ったら狂人の主観なのか。あまり色々書くと完全にネタバレになってしまうんだけど・・・ 予想できない展開を見せます。

  伊坂幸太郎の『鴨とアヒルのコインロッカー』も一種の叙述トリックなんだけど、そっちの作品のつくりが叙述トリックものとしては甘いな、と感じさせられるほど『倒錯のロンド』は凄いです(まぁ『鴨とアヒルのコインロッカー』はトリックというよりは伊坂幸太郎の文体と、その爽やかさと、悲哀が持ち味だから比べるものではないのかも知れないけど)。

  密室トリックに飽きたら(まだ飽きるほど読んでいないけど)、今度は叙述トリックにいけば良いのか・・・ 楽しみが増えました。


自森人読書 倒錯のロンド
★★

著者:  小泉武夫
絵:  江口修平
出版社: 東洋経済新報社

  内容はなかなか面白い。あの面白くて凄い漫画『もやしもん』にも通ずるような発酵についての絵本なのですが。

  なんというか、絵本なのに子どもを無視している気がします・・・ 難しい言葉を分かりやすい言葉に置き換えるとか、そういう気配りをしていません。絵本として失格じゃないか。自分の思想を広めるための宣伝本としか思えません。

  著者がやたらと、「日本民族は素晴らしい!」と言いまくるので、ちょっとうんざりしました。日本の食事は「地球上で最も優れた民族食といわれています」などと書いてあります。そんなこと誰が言っているのかなぁ。あえて「・・・といわれています」という言葉を末尾にくっつけて、自分の書いた文章の責任を負わないところもあざとい。(風土にあったものを食べるのが1番良い、と僕は思うけどなぁ・・・)

  あとは断定したがるところもうんざり。「ゆでた大豆と、納豆どちらがうまいか?(もちろん納豆のほうです)」とわざわざ()までつけて意見を押し付けようとするその態度がいやな感じです。偏屈。そこまで自分の意見を押し付けなくても良いじゃないか。

  絵本の表紙にも載っている「発酵仮面」というのがいろいろ喋るんだけど、全体的に滑稽で、気味が悪い。内容は素晴らしいのに、著者の「日本民族最高」という考えと「発酵仮面」が絵本全体をだめにしているのではないか、と僕は感じました。


自森人読書 わが輩は発酵仮面である!
★★★★

作者:  田中芳樹
出版社: 徳間書店


  銀河帝国の皇帝・ラインハルトが、とうとう自由惑星同盟を滅ぼすべくフェザーンを発ちます。それに対して、自由同盟惑星の老将ビュコックは最後の抗戦を試みるべく立ち上がります。そして2人はマル・アデッタにおいて衝突することになりました。同じ頃、今まで守ってきた祖国に追われたヤン・ウェンリーと彼の率いる不正隊は、エル・ファシルの独立革命政府と合流。再び、イゼルローン要塞を奪還し、そこに反銀河帝国の拠点を築くことを目指していました・・・

  ラインハルト率いる銀河帝国による銀河系統一がほぼ成し遂げられてしまいます。

  老将・アレクサンドル・ビュコックの最期が記憶に残ります。同盟は独裁国家として長らえるより、民主国家として滅びるべきと言い放ち、勝ち目のない戦いへと進んでいきます。あとは、味方の手で殺される最高評議会議長・ジョアン・レベロの最期も印象的です。結果としてはヤンを放逐し、同盟を滅亡へと追い込んでしまった1人なわけですが。それでも、最期には毅然とした態度をとります。

  民主主義の擁護者として奮戦するヤンの姿が印象的です。これまで属してきた同盟からも追われてしまった彼には、銀河帝国に降伏するという選択肢もありえます。だけど、迷いながらもその道を歩まない、ということを決意します。

  この巻でとうとう自由惑星同盟は滅亡し、ヤンらのほとんどゲリラ戦に近いような抵抗が始まります。こうしてみると、5巻が全体のなかのクライマックスだったのだということが分かります。しかし物語はまだ終わりません。ここからもまだまだ続いていきます。


自森人読書 銀河英雄伝説7 怒濤篇
★★★

講演者: 鐸木能光
出版社: 岩波書店

  なかなか参考になる部分が多い本でした。デジカメで撮った写真は良いところだけ切り取れるんだから、その切り取るということを大切にしよう、とか。確かにその通りだよなぁ。デジカメ写真を撮る上で大切にしないといけないことが確認できます。

  とはいえ、全体的には知っていることばかり書いてあったので、拍子抜けしました。「写真編集には、フリーソフト『IrfanView』が良いよ!」ということが書いているのですが。『IrfanView』ってもう超有名ソフトではないか。僕も前から使っています。軽くてぴぴっとできてはまうところが良い。

  『自森人』の写真も、だいたい『IrfanView』で編集してしまうことが多いです。

   IrfanView32 日本語版のページ

  だけど、『デジカメ写真は撮ったまま使うな!―ガバッと撮ってサクッと直す』の中で紹介されていた『縮小専用。』というのは面白そうだなぁ、と思いました。

  まぁ読んでおいて損はしないです。多分。デジカメで撮った写真をどういうふうに整理していけば良いのか悩んでいる人がいたら、読んでみると良いと思います。


自森人読書 デジカメ写真は撮ったまま使うな!―ガバッと撮ってサクッと直す
★★★

著者:  竹内真
出版社: 新潮社

  自転車に憧れ、そして自転車とともに生きていく昇平と草太。音楽の道を選びながらも2人とどこかでつながっている幼馴染、奏。彼らの青春を描いていったものです。

  数人の登場人物が各々の視点から語る章が積み重なっていき、大きな物語が完成する、といういかにも好きそうなパターンの物語。

  それなのに、登場人物たちの書き方がありきたりでちょっと読むのが辛くなってしまいました。あまりにも話が出来すぎているという点も、ちょっと気になる。あとは4歳の男の子が異性のことを気にかけているという部分にも違和感を覚えました。

  とはいえ、物語は進むごとに段々と面白くなってきます。きちりきちりと細かい部分まで描写していく小説家・竹内真という人は凄い、と感心させられます。ただし、逆に言えばちんたらしているということです。この本を読む直前に壮絶で爽快なロードレースを描いた近藤史恵の『サクリファイス』を読んだばかりなので、なおさら『自転車少年記』のたらたらさが目に付いてしまい、うんざりしてしまいました・・・

  それぞれの章は、それぞれ色々あって面白いし、最後の辺りは感動します(昇平の息子が自転車に乗るシーンとか)。だけど、とにかく「長い」(二段組で400ページ超)というところで減点、という感じです。長くても物語に、山があり、谷があれば良いんだけど、この話はそれがなくて小さい話がチョコチョコ次から次へと出てくるだけ。かなり散漫です。章が進むごとにプツプツと切れてしまう。

  どうして、こうも起伏がないんだろうか。同じく竹内真の書いた長編小説『カレーライフ』は、凄く面白かったのに・・・ もしかしたら、ネットで連載していたものを本にしたから、こんなふうになってしまったのかなぁ。『自転車少年記』は、もともと「新潮ケータイ文庫」として配信したものを単行本化したものだそうです。


自森人読書 自転車少年記
『アルト=ハイデルベルク』
若き皇太子ハインリヒは律儀で頑固な宮廷の人間たちに囲まれて育ちます。唯一の救いは家庭教師のユットナー博士だけでした。彼は独特の寛大さを持ち合わせた人だったからです。とはいえ、厳しく全てが定められた生活は続きました。ですが、青年になったハインリヒはとうとう1年の間、風光明媚なハイデルベルクへと赴くこととなります。そして、そこで溌剌とした少女ケーティや多くの大学生たちと出会い、ともに大学生活を謳歌するのですが・・・

戯曲。

物語自体は、単純で平凡でありきたりです。「高貴なる王子さまと身分の低い可憐な娘が惹かれあい、結局のところ結ばれない」というただそれだけの物語なのです。しかし、心をくすぐられました。

青春というものを描いた作品ではあるのだけど、青春時代のエピソードはそれほど多くはありません。詳しいことが書かれていないためにむしろ想像の幅が広がります。巧みな演出だなぁと思いました。

ユットナー博士と内侍ルッツの掛け合いが面白いです。若者の文化に理解を示し、むしろそれを受け入れる寛大な自由人ユットナー博士と頑固に宮廷のしきたりを守ろうとするルッツの間には深い溝があるわけですが、2人ともハインリヒのためを思って行動しているという点は共通しています。なのに食い違い、言葉の喧嘩を繰り返すのですが、そのやりとりが愉快です。

徹底的に頑固な男ルッツが、最後の辺りで大学生たちから敬遠されて沈み込むハインリヒに理解を示し、騒がない大学生どもに文句を言うのですが、その場面はぐっときます。偏狭な人なのだけど、ハインリヒのためを思っているということは揺るがないのです。


今日読んだ本
マイヤー・フェルスター『アルト=ハイデルベルク』

今読んでいる本
スタニスワフ・レム『ソラリス』
210銀河英雄伝説6 飛翔篇
★★★★ 田中芳樹

209孫文と中国の革命運動
★★★★ 堀川哲男

208高野長英
★★★ 筑波常治

207MAZE(めいず)
★★★ 恩田陸

206壷の中
★★★ 西東登
★★★★

作者:  田中芳樹
出版社: 徳間書店

  銀河英雄伝説シリーズ全体の感想のページ

  自由惑星同盟は銀河帝国との戦いに敗北し、事実上隷属国のような状態となりました。そうして宇宙には平和が訪れたかに見えました。しかし、それはつかの間のことに過ぎなかったのです・・・

  帝国の全権大使として同盟にやってきたレンネンカンプ提督は、すでに軍隊を離れたヤン・ウェンリーを監視しました。一方、同盟政府の高官たちもヤンを警戒し、彼を監視します。憧れの年金生活になったはずのヤンは不愉快な気分にさせられました。ですが、彼も辛抱していました。

  そんな中で、レンネンカンプは同盟政府に圧力をかけました。それに屈した同盟政府は、ヤンを不当に拘束し、殺してしまおうと目論見ます。今まで幾度となく自由惑星同盟という国家を救ってきた彼が、その自由惑星同盟のために殺される、という事態になったわけです。

  しかし、ヤンの部下達はそれを黙ってみてはいませんでした。ヤンは、副官フレデリカや、シェーンコップなど白兵戦の得意な『薔薇の騎士連隊』に救出されました。そしてその救出作戦の間に、シェーンコップらは勝手に同盟の最高評議会議長ジョアン・レベロを拉致し、さらには帝国の全権大使レンネンカンプをも拉致してしまっていました。そうして、助かったヤンは仲間を連れ、レンネンカンプを人質にとって同盟の首都を脱出しました・・・

  その一方、銀河帝国では地球教の暗躍がさらに進んでいきます。ラインハルトは、地球に部隊を派遣して地球教を叩き潰そうとしますが・・・

  物語はさらに大きく動いていきます。地球教というものが登場。不気味な存在感を放ちます。今回は、宇宙から地上へと物語が移ります。次はどのように展開していくのか、楽しみになってきます。


自森人読書 銀河英雄伝説6 飛翔篇
   ◇ポストモダン系

●正統な「ポストモダン文学」
   高橋源一郎、島田雅彦、小林恭二

●すっとぼけ系・デカダン派?
   中原昌也、町田康

●アメリカナイズされたスカした国際派
村上春樹・池澤夏樹


―――――関連

●「ポストモダン文学」の先祖?
筒井康隆

●純文学系(重厚で陰鬱・ポストモダン入っている)
   笙野頼子・奥泉光

●よくわからない・・・
川上弘美

●「ポストモダン文学」の全く逆?
堀江敏幸
★★★★

著者:  堀川哲男
出版社: 清水書院

  『孫文と中国の革命運動』は、孫文という偉大な革命家の足跡をたどり、そこから中国の革命運動というものを見つめていこうというもの。孫文とは、どういう人か、というと・・・

  広東省の農家の家に生まれ、ハワイに渡って西洋の文化を学びます。その後帰国、マカオで医者として開業。ですが、国家の腐敗に憤り、ハワイに渡って愛国結社・興中会をつくりました。しかし興中会は仲良し組合と化します。なので孫文は中国に舞い戻り、武装蜂起するも失敗。今度は渡英。すると清国大使館に抑留され、危ういところを英人の協力者に救われます。その事件が、彼を一躍有名にしました。その後、彼は国外の中国人をまとめていきます。

  その後、辛亥革命が起こると帰国、臨時大総統に就任。しかし政府の基盤が脆弱だったため清国の皇帝退位を実現する代わり、清国の将軍・袁世凱に首相の位を譲ります。その後、袁世凱に弾圧され、今度は日本に渡ります。その後、軍閥の内紛を利用して広州に他方政権を築きました。そしてソ連と組んで革命を起こすことを画策するも「革命未だならず」と言い残して死去。

  読んでいて、孫文という人は凄いやと感じました。彼は、若い頃から清朝の独裁制に反対し、外側から清朝を倒して新政府を築こうと画策します。しかし、近代化はそう簡単ではなく、やることなすこと全て失敗します。それでもただ前進していくのです。人民のために革命を起こそうとして決してくじけないところは本当に感心します。

  今でこそ中国近代革命の先駆者として、孫文は中国の「国父」とすら言われます。だけど、辛亥革命までは単なる「口先だけの男」とみなされていました(あだなは孫大砲(孫のほら吹き))。要するにドン・キホーテみたいなヤツだと思われていたのです。当時、清帝国を倒し、さらに西欧諸外国の侵略をはねのけよう、というのは、それだけ非現実的な行為と思われていたということがよく分かります。しかし、それは孫文の死後になって最終的に、一応実現します。毛沢東ら中国共産党が中華人民共和国という国をつくっていくのです(内部にはたくさんの問題を抱えたけど)。凄いなぁ。


自森人読書 孫文と中国の革命運動
★★★

著者:  筑波常治
絵:  坂本玄
出版社: 国土社

  「堂々日本人物史―戦国・幕末編」シリーズのなかの1冊。子ども向けのものです。僕は、偶然地元の図書館にあったこのシリーズを通して日本の戦国・江戸時代の詳しい流れを知るようになりました。だからなのか、このシリーズには愛着があります。

  この『高野長英』という本も、戦国に活躍した格好良い武将達(『山中鹿之介』『上杉謙信』『織田信長』などなど)の本の中に混じっていたのだけど、「江戸時代後期に活躍した蘭学者」と聞いてあまり興味を持てず、後回しにしていました。

  しかし、読んでみたら、高野長英という人は学者なのに、壮絶といってもいいような一生を送っていると知って驚きました。

  もともと仙台藩の医者の家に生まれましたが、学問をやりたくて故郷を離れます。まずは江戸へ行き、それでは飽き足らずに最先端の蘭学が学べる長崎へ行き、シーボルトの鳴滝塾に入門。色々なことを学びました。「シーボルト事件」(シーボルトが日本の地図を持ち出そうとしたら幕府が激怒。シーボルトは国外追放となり、彼に地図を渡した役人は死刑になった)が起きると巧みに罪を逃れ、江戸へ戻ります。

  その後、蘭学を知悉する政治家・渡辺崋山と仲良くなり、飢饉対策・海防策を練り、活発な活動を繰り返しました。ですが、彼らは鎖国を国策としている幕府から警戒されました。

  「蛮社の獄(国際状況を知って幕府を批判した蘭学者などの知識人への弾圧)」が起こると投獄されます。それでもへこたれず、牢屋の劣悪な環境を批判。火事が起こると脱獄し、宇和島藩を頼り、書物などを書きながら生活。ですが、それは長続きせず、高野長英は江戸へ戻って町医者になりました。人相を変えていたそうです。しかし、発覚してしまい、幕府の役人によって捕縛されるのに抵抗し、死亡しました。

  無知な権力者を批判して闘い殺される、というのは戦国武将の一生と同じくらい激しくて、凄いなぁと感じます。「平和」といわれた江戸時代にもそんなことがあったと知って驚きました。


自森人読書 高野長英
『漢方小説』
みのりは、元カレが結婚すると知ってから突如として体調を崩してしまいます。固形物をほとんど食べられず、その上震えが止まらなくなって救急車で病院に運びこまれることもありました。しかし、どこの病院に行ってもとくに悪いところは見つかりません。そして、最終的にたどり着いたのは漢方診療所でした。そこにはかっこいいお医者さんがいて・・・

あらすじだけ読むと陰鬱な小説っぽいですが、実はユーモアに溢れています。もともと脚本を書いていた人らしく、物語としてもきちりとまとまっています。読みやすいです。

漢方に関する説明はかなり真面目できっちりしています。これを読んで漢方診療所に行こうという人が出てくるのではないか、と思うほど。

第28回すばる文学賞受賞作。


今日読んだ本
中島たい子『漢方小説』

今読んでいる本
スタニスワフ・レム『ソラリス』
『スティル・ライフ』『ヤー・チャイカ』

『スティル・ライフ』
染色工場でアルバイトをしていたぼくは、同僚の佐々井と親しくなります。佐々井は染色工場での仕事をやめた後、ぼくにある企みをもちかけてきます・・・ 中央公論新人賞・芥川賞受賞作。

『ヤー・チャイカ』
娘を家に残し、仕事に出掛けた父はひょんなことからソ連から来た男・クーキンと親しくなります。女の子と恐竜ディプロドクスとの交流の物語が途中途中に挟まれます。むしろ僕は表題作よりも好きでした。

池澤夏樹の小説は、いかにも「御伽噺」のようにみえます。基本的に単調だし(素人っぽいし)、ご都合主義的なのです。だから、小説としての完成度は低いように思えます。

しかし、美しい文章が散りばめられているため、そのたびにはっとさせられ、惹きつけられます。小説らしくない「スナップのような小説」といってしまっても良いかも知れません。それまでは詩人として活躍していたことが影響したのかなぁ・・・

ただし、スナップ的なのだけど、分析的な面も併せ持っているため摩訶不思議なことになっています。「世界は様々な部品によって組み立てられたシステムの複合体なのだ」というような思想が背景にあるのです。非常に面白い。


今日読んだ本
池澤夏樹『スティル・ライフ』
池澤夏樹『ヤー・チャイカ』


今読んでいる本
中島たい子『漢方小説』
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