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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★

著者:  カズオ・イシグロ
出版社: 中央公論社

  主人公は、ダーリントンホールの執事スティーヴンス。彼はかつての主人ダーリントン卿を失い、新たにアメリカ人の主人ファラディ氏を迎えることとなります。ファラディ氏はジョークが好きなアメリカ人だったため、スティーブンスは戸惑いました。そんなある日のこと、主人に勧められ、イギリス西岸のクリーヴトンへと出掛けます。旧友ミス・ケントンと再会し、再び彼女とともにダーリントンホールを運営できたら嬉しい、と彼は考えたからです。小旅行の最中、美しいイギリスの田園風景に触発されるためかスティーブンスは回想ばかりを繰り返します・・・

  イギリスの小説。

  小説は、執事スティーブンスのしっとりとした語りで進んでいきます。その語り口がまたいいのですが、彼が書きたくないと思っていることは注意深く取り除かれています(たとえば、ミス・ケントンへの恋情とか)。つまり、大切なことは書かれていないわけです。そこが奥深いです。

  スティーブンスは品格ある執事であり続けるためにミス・ケントンに近寄ろうとはしません。ほとんどつっけんどんといってもいいような態度をとるわけです。2人は互いのことを想っているのに決して向き合うことは出来ません。本当にどうしようもないです。非常に哀しいです。

  そして、一方ではスティーブンスとその主人ダーリントン卿は、時代の荒波にのまれていきます。

  ダーリントン卿はイギリス流の騎士道精神に則った人間であろうとし続けたためにナチスドイツに操られ、スティーブンスは品格ある執事であり続けようとしたためにそれを助けることになってしまいます。あまりにも痛々しいです。ただただ誠実に、立派に生きようとすることで失われていくものがどれほど多いか、と考えさせられます。

  でも、執事スティーブンスの生き方は間違っていたけれど、それでも彼は立派だったのではないか、と感じます。とはいえ、「時代を読みきることが出来なかった程度の立派さ」といってしまうこともできるかも知れません。だから、余計に悲しい。

  ブッカー賞受賞作。


自森人読書 日の名残り
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★★★★★

著者:  モリエール
出版社: 新潮社

  アルセストは潔癖を好む青年でした。彼は嘘とお世辞と阿諛追従ばかりが満ちている社交界を憎み、妥協しませんでした。詩が下手な友人には詩が下手だと言い、決して自分の意見をまげなかったわけです。しかし、美しい未亡人セリメーヌに恋してしまいます。彼女は誰に対しても笑顔を浮かべ、親しくする浮気性な女性でした。友人フィラントの忠告を受け入れないアルセストは、自分の力でセリメーヌを変えてみせると豪語するのですが・・・

  フランスの古典劇。戯曲。

  あっさりとしているのだけど、深いです。初演は1666年だそうですが、現代の人間が読んでも理解できるし、共感できるのではないか、と感じます。

  アルセストは嘘とお世辞を言わず、剛直に生きていこうとしたために追い詰められ、恋に破れ、傷付いていきます。直情を貫こうとすれば人間社会では生きていくことが出来ず、かといって社会に適応しようとすれば自分を偽ることになるわけです。その問題で悩んでいる人も多いのではないか。まぁ青臭い悩みということもできるけど、切実な問題だと思えます。

  それに比べて、セリメーヌという女性のように奔放に生きていくことは、かえって随分と楽かも知れないと感じられます。だって、自分というものに一貫性がなくても構わない、というふうに思いながら、感覚的に生きていくわけです。今はあなたが傍にいるからあなたが好きだけど、あの人と会っているときはあの人が好き、というふうにくるくる変わるならば、どれだけ便利か。

  けど、彼女のように生きたいとは思いません。アルセストにようにもセリメーヌのようにも生きたくないとするならば、フィラントのように生きるしかないわけですが、彼のように良識を身につければ誰とでも付き合えるのかも知れないけど、様々な矛盾を自分のうちに受け入れることはなかなかに難しいといえます。やはり、中庸/ほどほどというのが一番難しいのではないか。

  でも、それを身につけることこそが大人になる、ということなのかも知れません。『人間ぎらい』は随分と面白いです。様々なことを考えさせてくれます。


自森人読書 人間ぎらい
*個人的に注目している人たち

科学者
○小出裕章 京都大学原子炉実験所助教。長年原発に反対してきた原発専門家。事故後、誰よりも正確に事態を把握して、具体的な見通しを示している。「水蒸気爆発が起きた場合、風向きによって、関東も汚染される」と発言している。
○上原春男 元佐賀大学学長。原発建設に関わった科学者。原発に、新しい外部冷却機装置を取り付けるべき、と提案している。

提言者
○飯田哲也 NPO法人 環境エネルギー政策研究所 所長。原発の専門家。「エネルギーは世代交代の時期がきている」と指摘している。原発の問題を的確に指摘。持続可能な社会の姿を具体的に提示している。
○田中優(運動家) 未来バンク事業組合理事長、非営利組織「ap bank」監事。脱原発を主張。再生可能エネルギーを用いた社会を築くべきと提案して、実際に行動を開始している。
★★★

著者:  R・A・ラファティ
出版社: 角川書店

  『どろぼう熊の惑星』はR・A・ラファティの日本版オリジナル短編集。『このすばらしい死骸』『秘密の鰐について』『寿限無、寿限無』『コンディヤックの石像』『とどろき平』『また、石灰岩の島々も』『世界の蝶番はうめく』『処女の季節』『意思と壁紙としての世界』『草の日々、藁の日々』『ダマスカスの川』『床の水たまり』『どろぼう熊の惑星』『イフリート』『公明にして正大』『泉が干あがったとき』『豊かで不思議なもの』収録。

  奇天烈な法螺吹きSF小説ばかりが収録されています。

  童話のように残酷。すぐに人間が殺されたり、首をちょん切られたりします。随分とシュールなのですが、シュールとかそういう言葉で説明するのは少し違うかもしれません。小説というよりは、おとぎ話といったほうがぴったりきます。

  言葉遊びに満ち、偶然が物語を支配しているようにみえて、しっかりとしたストーリーが存在しています。物語がどのように展開していくか読めないことも多くてはらはらします。

  分かりやすい『寿限無、寿限無』などはとくにおかしかったです。しかし、もう少しよく分からない短編もそれぞれ面白い。寓話的な『泉が干あがったとき』もいいなぁ、と感じました。

  『寿限無、寿限無』
  優柔不断な天使ボシェルは罰を受けます。6匹の猿にランダムにタイプを打たせ、シェイクスピアの全著作が収録されている<ブラックリスト・リーダーズ版>を一文字違わず再現するように命じられたのです。しかし、何千年たっても何万年たっても、完成せず・・・

  『泉が干あがったとき』
  泉の水が干あがってしまい、人々のアイディアは枯れてしまいます。事態を憂慮した有識者が集まるのですが、彼らも意味があることを考え付くことが出ません。それはどうしてなのか、というと多くの生物がはぐくんできた創造的なものを生み出す泉を、人間が勝手に、しかも大量に消費尽くしてきたから。


自森人読書 どろぼう熊の惑星
ねむい・・・

ウェブサイトが更新できない・・・
★★

著者:  トレヴェニアン
出版社: 角川書店

  モントリオールの一角に、ザ・メインという薄汚れた街がありました。ザ・メインは、イギリス地区とフランス地区の狭間に位置しており、元兵士や娼婦、ギャングの端くれ、老人など、様々な人間が溢れかえる吹き溜まりのような場所でした。ですが、それでも一定の秩序がありました。ラポワント警部補がいたからです。彼は三十年にもわたって毎日欠かさず街をパトロールし続けています。彼こそがザ・メインの法であり、運命なのです。そんなある日のこと、跪くようにして死んでいる男が発見されます。ラポワント警部補は、若い警官ガットマンとともに、その事件を追うのですが・・・

  物悲しい犯罪小説。

  不条理な世界に放り込まれ、猥雑な街の中で這いつくばりながら生きていく人たちが抱く悲哀のようなものが淡々と描き出されています。

  とくに、清濁併せ呑む主人公クロード・ラポワントの姿が印象的。彼は毎日ザ・メインの治安を守るため街を歩きまわり、糞のような連中を脅し、叩きのめし、殴り、すかし、貶めます。ですが、そういう行為が非難され、警察組織の中では孤立しています。その上、胸の中には動脈瘤が存在しているため明日も分からず、今では毎日のように若い頃喪った亡き妻と存在しない娘のことを妄想しつつ週に二晩友人とトランプで遊ぶことを楽しみにしているのです。

  「進歩的」な考え方を持つ若い警官ガットマンは、ラポワントのことを全面的には賛同できないけれど、立派な人だというふうに評します。その意見には共感しました。

  サ・メインという街そのものを描いた小説としても読めるのではないか、と感じます。

  ラストがあまりにも悲しすぎて堪らないです。地味な印象を受けるけど、しっかりと噛みしめたくなるしっかりとした小説。


自森人読書 夢果つる街
そういえば、東北公益文科大学のソーラーパネルはすごいみたいです。




公益大では屋上に結晶系シリコン太陽電池モジュール1872枚を約1900m² に渡り配置し、国内最大級の出力250kwの発電電力が得られる太陽光発電システムを導入しています。

教育研究棟の屋上に設置されています。日本最大級の発電能力(250kW、一般家庭の約100世帯分)を誇り、キャンパス内の電力として利用されます。
*この太陽光発電システムは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助事業を利用し、整備したものです。



東北公益文科大学 太陽光発電システム
★★★★★

著者:  ウィリアム・ギブスン
出版社: 早川書房

  主人公はカウボーイ(ハッカー)のケイス。彼は千葉市(チバシティ)にてリンダ・リーという女性と出会い、付き合うようになりますが、リンダはケイスとともにドラッグや酒に溺れていきます。一方、ケイスは依頼主を裏切ってしまい、脳神経を焼かれ、ジャックイン(電脳世界への接続)できなくなってしまいます。彼は能力を取り戻そうとするのですが、全身に武装インプラントを施したモリィという女性と出会い・・・

  SF小説。

  1984年に発表されたウィリアム・ギブスンのデビュー作。サイバーパンクの最高傑作とたたえられているそうです。それも納得。

  鮮烈なのです。

  ドラッグや酒、セックスに満ちている退廃的で美しくない未来が描かれています。そして、「マトリックス」と呼ばれる電脳空間(サイバースペース)が登場。ヴァーチャル・リアリティ(仮想現実)が登場したことによって現実と架空の狭間が曖昧になっていく様子が生々しく描かれています。とにかく、イカれていてどこまでも異様なところが面白い。

  そして文体も素晴らしいです。様々なものが積み込まれ、ミックスされていて読みづらいのですが、一文一文が妙に装飾的でギラギラしていて疾走していて、それでいて詩のようです。各章のタイトルから「第一部 千葉市憂愁(チバ・シティ・ブルーズ)/第二部 買物遠征(ショッピング・エクスペディション)/第三部 真夜中(ミッドナイト)のジュール・ヴェルヌ通り/第4部 迷光仕掛け(ストレイライト・ラン)/結尾(コーダ) 出発(デパーチャ)と到着(アライヴァル)」という感じ。黒丸尚の訳がいいのか。

  『ニューロマンサー』は、『マトリックス』や『攻殻機動隊』など、様々な小説・映画に多大な影響を与えています。それだけでなく、現実にも影響を与えたと思われます。一部の研究者やSF好き、オタクたちのものだったサイバースペースやネットやヴァーチャル・リアリティという概念やものが、その後クールなものとしてもてはやされるようになっていくのです。それだけ『ニューロマンサー』の描き出した、どこか壊れているのに先進的ともいえる未来像が衝撃的だったということではないか。

  『ニューロマンサー』とは、ニューロン(神経)とニュー・ロマンサー(新浪漫主義者)とをかけた言葉だそうです。

  84年のヒューゴー賞、フィリップ・K・ディック賞、85年のネビュラ賞、雑誌『SFクロニクル』誌読者賞、ディトマー賞受賞作。


自森人読書 ニューロマンサー
「本屋大賞2012」に関して・・・

有川浩『県庁おもてなし課』は、どうだろうか・・・

と思いましたが、出されたのは、いつなのだろう。

東野圭吾『真夏の方程式』はまあありえない・・・
それにしても、ねむいです・・・

原発はまだ安全とはいえない状況なのですが・・・

しかし、世間の緊張はほぐれた気がします。まあいつまでも緊張しているわけにはいきませんが。
6月に入ってから、読んだ本

猪口孝『アジア太平洋の戦後政治』
渡辺靖『アメリカン・デモクラシーの逆説』
夏野剛『1兆円を稼いだ男の仕事術』
ハーマン・カーン, トーマス・ペッパー『オーストラリアは大丈夫か』
レイ・ブラッドベリ『火星年代記』
浜矩子『グローバル恐慌』
堀江邦夫『原発ジプシー』
寺島実郎『世界を知る力』
白川静『中国古代の文化』
貝塚茂樹『論語』

という感じか・・・

『アメリカン・デモクラシーの逆説』と『火星年代記』をセットにして読むと面白いかも知れないです。アメリカとはなんなのか、と考えてしまいます・・・


飯田哲也さんのツイッターは読んでいると勉強になります。

飯田哲也 tetsu iida@ISEP
http://twitter.com/iidatetsunari


すっかり有名になったので、説明は不要だと思いますが・・・
飯田哲也さんは科学者。自然エネルギー導入は不可欠だと論理的に説明しています。


【経歴】
1959年、山口県生。83年、京都大学原子核工学専攻修了。同年、神戸製鋼入社。電力中央研究所勤務を経て、96年、東京大学大学院先端科学技術センター博士課程単位取得満期退学。

00年、NPO法人環境エネルギー政策研究所を設立して所長に就任する。92~06年日本総合研究所主任研究員を兼務。90~92年スウェーデンルンド大学環境エネルギーシステム研究所客員研究員を勤めた。

中央環境審議会、総合資源エネルギー調査会、東京都環境審議会などを歴任。鳩山内閣時には、中期目標達成タスクフォース委員、および行政刷新会議の事業仕分け人に指名された。
ついに家のパソコンを修理に・・・
そのため、ウェブサイトの更新ができないです。

なんということだ・・・
540モグラ博士のモグラの話
★★★ 川田伸一郎

539神狩り
★★ 山田正紀

538猫に時間の流れる
★★ 保坂和志

537地球の長い午後
★★★★★ ブライアン・W・オールディス

536オー・ヘンリー傑作選
★★★ オー・ヘンリー
ねむい・・・

この頃、睡眠不足か・・・

そういえば、家のパソコンがちかちかしています。大丈夫たろうか・・・
★★★

著者:  川田伸一郎
出版社: 岩波書店

  生物ニッチの授業の中で登場したので、モグラのことはいろいろと知ってはいたのですが(アズマモグラとコウベモグラの標本がなぜかあって、それをみせてもらった覚えがある)、それ以上のことが書かれていて面白かったです。日本にすむモグラは、ヒミズを別にすると3種類しかいない、というふうに習いました。けど、「6種類(アズマ、コウベ、サド、エチゴ、センカク、ミズラ)いることが分かっている」と書いてあって、モグラ研究が着々と進んでいるのかなぁ、と感じました。

  読んでいて、とにかく細かい部分に感心しました。「他の多くの動物と違って、モグラの毛はほとんど垂直にはえている」→「それは、前にも後ろにも進むため。毛が後ろ向きにはえていると穴の中ではひっかかっていまう」。そういうふうに進化したモグラも凄いけど、それを発見したモグラ研究者たちも凄い。

  でも、モグラがどういうふうにしてこどもを残すのか分かっていない、というのは意外でした。土の中にいるから大事なことも案外分からないのか。

  最後の辺りは難しいはなしのはずなのに(それでもまぁ生物学入門にすぎないのだろうけど)、するすると頭の中に入ってきました。というか、まるきり高校1年のときの生物の授業とかぶっていて、半分くらいはおさらいみたいな感じだったから、分かったのかも知れない。

  モグラ博士になるための方法が書かれている部分も面白かったです。どこまでも、モグラというひとつのものにこだわり、それを探求し、それで食っていく、というのは本当に楽しそうだなぁ、と感じました。でも。そのためにはきっちりとした幅広い知識(外国の人とも意思疎通できないといけないみたいだし。何かを研究するならば、やっぱり英語とかを書き、話すことができないとだめなのか・・・)が必要なのだということも分かりました。


自森人読書 モグラ博士のモグラの話
★★

著者:  山田正紀
出版社: 徳間書店

  主人公は天才情報工学研究者の島津圭助。彼は非常に頑固な男でした。若くして成功するのですが、古代遺跡の石室に刻まれた“古代文字”を目にした後に崩れる石室の中で気絶。目覚めると、嫉妬に狂う周囲の人間によって自分が石室崩壊の過失の責任を取らされ、出世街道からひきずりおろされたことを知ります。彼は怒るのですが、その後“古代文字”を解読しているとき、その言葉が人間には理解できない論理構造を持っていることがわかり・・・

  ソフトなSF小説。山田正紀のデビュー作。

  小道具は古臭いし、人物描写は類型的。そして、ハードボイルドチックで少しナルシスティックな主人公には違和感を覚えます。しかし、それでも日本SFの古典といわれるだけのことはあると感じました。なぜ人間が神を理解できないのか、という問いに対して、論理レベルが違うから、という回答をもってくるところがみごと。

  それによって、神を「認識できないけど、厳然とあるもの」にしてしまうのです。そして、神との戦いが実現。あまりにも魅力的なテーマなので感動します。じれったい神の描写も、随分とまどろっこしくてなかなかに面白いです。

  なんだか石ノ森章太郎の漫画を連想しました。それくらいサクッとしていて軽いです。

  しかし、ラストの辺りには失望させられました。なんというか、安っぽくてあやしげなサスペンスっぽくなってしまうのです。まぁ、デビュー作なのだし、拭えない安っぽさや作為的な文章がにじみ出てしまうのも仕方ないか。むしろ、これがデビュー作だということに驚くべきなのかも知れません。とはいえ、もうひとひねりすれば物凄い傑作になる気がします。

  第6回星雲賞受賞作。


自森人読書 神狩り
6.11、新宿にて、反原発デモがありました。

4.10高円寺デモ、5.7渋谷デモにはいきましたが、今回は、学校の授業があり、歩くことはできませんでした。
しかし、まだ終わっていないだろうと思い、夕方、なくとなく新宿に行きました。

やっぱり、まだまだ終わっていなかった!

次々と到着するたくさんの人たちを見ていました。

凄いことになっていました。

★★

著者:  保坂和志
出版社: 新潮社

  『猫に時間の流れる』は保坂和志の短編集。『猫に時間の流れる』『キャットナップ』収録。

  『猫に時間の流れる』
  ぼくは古ぼけたマンションの3階に住んでいるのですが、両隣の美里さんと西井はそれぞれチイチイとパキという猫を飼っていました。そこにシロクロという猫が乱入してきて毎日マーキングしていくのですが、いつの間にか慣れていき・・・

  『キャットナップ』
  千駄ヶ谷のアパートに引っ越してから2年。真下の階に住む上村さんから声をかけられ。猫をお風呂に入れることになります。彼女はモデルなので、腕に傷をつけるわけにはいかなかったからです。

  どちらも猫小説。

  しかし、決してほのぼのとしているわけではありません。保坂和志の小説はほわっとしているように見えるけど、実はいつでも考え続けています。多分、日常の中に存在する法則性/仕組みのようなものをえぐりだそうとしているのです。

  しかし、脈絡もなく考えているというわけではありません。個々の人間や猫が個々に成り立っているということはなくて、関係や空間の中でそれらは成り立つのだという思想が、大前提としてあるようです。だから、明快です。その辺りに、私がただ周辺の出来事をつらつらと語っているだけなのに、「私についての小説」にはなっていない秘密があるのかも知れない、と感じます。

  主人公は、若者たちの文化にとけこんでいるし、女性とも普通に会話できるし、狭い範囲内でしっかりと生活しています。他人と関係をつくることができる人間なのです。そこが妙に印象的です。破滅的だったり、閉鎖的だったりした、かつての文学者とは随分と違います。

  そして、全てが整備されきった現代社会というものに対して違和感を持ち、寂れた空間や隙間に目を向けるところも印象的。その、進歩への不信ともいうべきもやもやした感覚は、いかにも現代的。


自森人読書 猫に時間の流れる
★★★★★

著者:  ブライアン・W・オールディス
出版社: 早川書房

  物語の舞台は未来の地球。膨張しつつある太陽の影響を受け、地球の自転は停止し、昼側の世界では様々な進化をなしとげた凶暴な植物たちが大陸中を埋め尽くすようになります。糸をめぐらし、月に到達した蜘蛛的な植物ツナワタリなども登場。動物はほとんど滅亡寸前であり、人間もかつての知恵を失い、原始的な生活に戻っています。リリヨーに率いられた一団は、次々と仲間を失いつつも、なんとか命をつないでいるのですが・・・

  1962年に発表された、奇想天外なSF小説。

  とにかくぶっ飛んでいます。奇想を極めようとしているようです。サイエンス・フィクションっぽくなくて、むしろ伝説か神話のようです。だから、地球の自転が停止している(本当にそうなったならば、昼の側は灼熱の世界に、夜の側は極寒の世界になるのではないか)、とかそういう無茶な設定であっても受け入れられます。

  奇怪な進化を遂げた植物が山のように登場します。地球と月を糸で繋いでしまう蜘蛛のような生物ツナワタリ。知恵を貯蓄し、他の生物に取り付く醜悪なキノコ、アミガサダケなどなど。どの生物も非常に印象的。グロテスクな生物ばかりだけど、なぜか想像できるし、愛着が湧きます。

  物語自体も非常に面白いです。原始的な生活の中で、人間はあっさりと殺されていきます。主人公グレンはそのような状況に対応するためなのか、粗暴な面をよく垣間見せます。その部分もリアリティがあります。共感できないけど。

  宇宙の謎が解明される部分には感心しました。ただ、少し詰め込みすぎな気がしないでもないです。綻びというか、無茶な部分が各所にあります。とはいえ、これだけの分量に様々な要素がぶち込まれているからこそ、物凄いと感じるのかも知れません。とにかく、インパクトがあるし、その植物によって支配されている世界に惹きこまれます。

  『風の谷のナウシカ』など、植物が支配する世界を描いたファンタジー・SF作品はたいがい影響を受けているのではないか。

  ヒューゴー賞受賞作。


自森人読書 地球の長い午後
Jimallセレクトで自由の森学園に関する商品を買うと・・・
自由の森学園財政の支援につながるそうです。
(価格の3%~8%の手数料がJimallに入る)

そして、Amazonサーチでも、自森を支援できます。
「検索した商品をクリックして、Amazonで買い物をしていただくと、
 価格の3%~8%の手数料がJimallに入る」そうです。

Amazonに出品されている商品なら何でもかまわないらしい。
何でも良い、というのは凄い・・・
買うのだったら、Amazonサーチから買わないと、と思います。

「Amazonセレクトで自森支援」
そういえば、李白という人が面白い漢詩を書いています。

その一部。

余嘗學道窮冥筌、
夢中往往遊仙山。
何當脫屣謝時去、
壺中別有日月天。


壺中には、別に日月の天があるのだそうです。
そういえば、「本屋大賞 2011」を予想して、いろいろ書いていたらたくさんの人が検索して、このブログにきていたようです。今度は「本屋大賞 2012 予想」をやるか・・・

しかし、予想の的中率はあまり高くない・・・
今後補正していかなければ・・・


予想
宮部みゆき『小暮写眞館』
有川浩『ストーリー・セラー』
朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』
貴志祐介『悪の教典』
奥泉光『シューマンの指』
綿矢りさ『勝手にふるえてろ』
中島京子『小さいおうち』
伊坂幸太郎『マリアビートル』
柴崎友香『寝ても覚めても』
森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』

■2011年本屋大賞ノミネート作
『悪の教典』貴志祐介(文藝春秋)◆
『錨を上げよ』百田尚樹(講談社)◇
『神様のカルテ2』夏川草介(小学館)×
『キケン』有川浩(新潮社)×
『叫びと祈り』梓崎優(東京創元社)◇
『シューマンの指』奥泉光(講談社)◆
『ストーリー・セラー』有川浩(新潮社)◆
『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉(小学館)◇
『ふがいない僕は空を見た』窪美澄(新潮社)×
『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦(角川書店)◆


◆ ベスト10に入る
◇ ベスト10に入るかも
× ノーマーク・・・

これでは、全然だめだ・・・
★★★

著者:  オー・ヘンリー
出版社: 岩波書店(藤沢令夫)

  『オー・ヘンリー傑作選』はオー・ヘンリーの短編集。『賢者の贈りもの』『警官と讃美歌』『マモンの神とキューピッド』『献立表の春』『緑のドア』『馭者台から』『忙しい株式仲買人のロマンス』『二十年後』『改心』『古パン』『眠りとの戦い』『ハーグレイヴズの一人二役』『水車のある教会』『赤い酋長の身代金』『千ドル』『桃源境の短期滞在客』『ラッパのひびき』『マディソン・スクェア千一夜物語』『最後の一葉』『伯爵と結婚式の客』収録。

  小気味良い掌編ばかりです。

  さらっとしているけど、時折大仰になる語り口。気の利いた意外なオチ。どんなときでもどうしようもない絶望に陥ることはない陽気な登場人物たち。どれもなかなかに良いです。全体的に明るくてユーモアに溢れていて、愛を信じていて、とにかく気さく。

  とくに、非常に有名な『最後の一葉』なども印象的でしたが、『赤い酋長の身代金』なんかもおかしくて良いです。

  『最後の一葉』
  画家のジョンジーは肺炎を患います。そして、落ちていく蔦の葉を見つめながら、「最後の一葉が落ちたら死ぬ」といいます。ジョンジーの友達で同じく画家のスーは、そのことを階下に住む老画家のベアマンに語ります。ベアマンはジョンジーの思い込みをばかばかしい、と罵るのですが・・・

  『赤い酋長の身代金』
  ビルとサムは、お金をまきあげるため、アラバマ州の田舎町の有力者ドーセット氏の息子を誘拐します。ですが、その息子と言うのがインディアンの「赤い酋長」を名乗る腕白な子どもだったため、誘拐犯の2人は振り回され・・・ とても愉快です。

  オー・ヘンリーも嫌いではないけど、同じ掌編作家としては、どちらかというと冷たくて醒めているサキの方が好きかなぁ、と読みつつ感じていました。


自森人読書 オー・ヘンリー傑作選
ウェブサイトhttp://jimoren.my.coocan.jp/
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