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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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今後の自由の森学園の予定は、自由の森学園公式ウェブサイトを見たら、わかります。

今後も変更があるかも知れません。
常時、公式ウェブサイトを確認したほうがいいです。
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まだ安心できませんが。
地震の方、収まってきたのかも、と感じます。よかったです。
一応、卒業生になりました。
なので、ブログの更新は三月の終わりまでにしようと思っています。その後は放置。

ウェブサイトのほうは、どうしようかと考えているのですが。まだ決まっていないです。

自森人
530極楽 笙野頼子・初期作品集1
★★★★ 笙野頼子

529目白雑録(ひびのあれこれ)
★★★ 金井美恵子

528政治のしくみがわかる本
★★★★ 山口二郎

527人類は衰退しました④
★ 田中ロミオ

526きりこについて
★★ 西加奈子
★★★★

著者:  笙野頼子
出版社: 講談社

  『極楽 笙野頼子・初期作品集1』は笙野頼子の短編集。『極楽』『大祭』『皇帝』収録。

  『極楽』
  主人公は檜皮という男。彼は子供の頃から無邪気ではなく、無自覚で鈍感だったため周囲から忌み嫌われ、家族からも抑圧を受けます。彼は尻のような顔をした女と結婚し、娘を持つのですがほとんど意識もしません。そして自宅に引きこもり、観念的な憎悪を描きたいと願い、様々な地獄絵を参考にし、下絵を描き続けるのですが・・・ 著者のデビュー作。

  『大祭』
  主人公は、七歳の少年。彼は、五十年に一度巡ってくる街の大祭を待ち焦がれていました。大祭がくれば何かが変わるような気がしていたからです。しかし・・・

  『皇帝』
  主人公は、私であることを拒否し、皇帝を名乗る男。彼は声に張り合い、ほとんど錯乱しかけながらも皇帝であり続けるため、呪文を唱え、塔を想像しているのですが、過去の記憶が蘇り。小説としては破綻しているような気もするし、だれるけど凄いです。すっきりとはしていないけど、近代的自我や、唯物論や、管理社会や家族のことを、真正面から扱おうとしてるのがよく分かります。初長篇。

  ここまで陰鬱で、薄暗くて重たくて読むのが辛い小説と言うのも、最近では珍しいのではないか、と思います。読もうとしても突き放されるのです。『極楽』はまだちょっとしたブラックユーモアが感じられますが、『大祭』の鎮痛でグロテスクな読み応えにはいらいらさせられます。そして『皇帝』はまどろっこしいのに、破壊的。

  笙野頼子は、近代社会というものの構造と、それを成り立たせるために存在している醜悪で抑圧的な力のありかのようなものを全力で暴こうとしているようです。けど、まだ道筋がついていないような印象も受けます。とはいえ、非常に挑戦的。

  「私」のことを書くためにゆがんだ社会を描いているので、「私」が使われていたとしても全然私小説ではなくて、反私小説ともいえるのではないか。なので、やっぱり笙野頼子という小説家は、文学史的にも重要といえるのではないかなぁ、と僕は感じるのですが。


自森人読書 極楽 笙野頼子・初期作品集1
★★★

著者:  金井美恵子
出版社: 朝日新聞社

  金井美恵子のエッセイ。

  どこまでも途切れなく続く文章は、読みづらいけど、味があります。切れ目がない文章は悪文といわれることもありますが、よく練られていれば悪くない気もします。

  そして、とにかく金井美恵子の毒舌が素晴らしいです。構成力に欠け、その上変な理屈を振り回す島田雅彦をこきおろし、高尚そうな言葉を発する割には文学がまったく読めていない文芸評論家・福田和也を嗤い、レイシスト石原慎太郎を叩き、バカなアメリカ大統領ブッシュを非難し、稚拙な小説を書く柳美里などほとんど歯牙にもかけず、リベラルな立場に立つことで知られる文芸評論家・加藤典洋のオヤジ臭さとセンスの悪さを指摘し、かの『桃尻娘』を書いた橋本治がまるで村上龍のようなオヤジに変貌したことに首を傾げ、阿呆みたいな素振りを見せる高橋源一郎を観察し、対談相手の本を読んでもいない(読めない?)すが秀実をあげつらうのです。

  とはいえ、全ての評論家を否定するわけではありません。まともなことを書いていると彼女が思う人、たとえば蓮實重彦などは評価しているようです。そして、あとは愛する映画のことが延々と書かれています。とてもついていけませんでした・・・

  ポンと批判が提出されるので、それほど、くどくはないのですが、いちいち鋭いです。切れ味抜群。ここまで書いて良いのか、と心配になるほど。

  しかし、そういうふうにして世間から離れ、一人で闘う皮肉屋の文学者というのはかっこいい、と思いました。


自森人読書 目白雑録(ひびのあれこれ)
『批評を考える。 自我作古』
筑紫哲也が多くの問題を論じていきます。本当に幅広いです。メディアを検討する部分などはとくに面白いです。日本のメディアはこれから維持できない、気がします。出版社は、広告収入を失っていくわけだから・・・

『週刊金曜日』に掲載されていた「自我作古」をまとめたもの。


読んだ本
筑紫哲也『批評を考える。 自我作古』
★★★★

著者:  山口二郎
出版社: 岩波書店

  岩波ジュニア新書。

  国会の仕組みなど、随分と知っていることも多かったけど、それを再確認する上でも役立つかなぁ、と感じました。読んでいて民主主義に則った政治を行うことは本当に難しいのだなぁ、と感じました。自民党は、大規模な公共事業を行って地方と企業に金を流し、それでもって支持を取り付けていたけれど、多くの人が満足するならば民主的ではない政治が支持されるということもありうるわけで、その部分については考えさせられます。

  多数決が民主主義というわけではないし、大勢の人が間違った方向へ進んだとき、それをとめることは容易ではない、とも思います。小泉元首相が叫んでいた「構造改革/郵政民営化」という言葉に引き寄せられて多くの人が自民党に票をいれ、結果として格差と貧困は拡大しているのを見るとなおさらそう感じます。

  全くはなしはそれるのだけど。日本にはこれまで一度も民主主義が根付いたことはない、と主張する人もいて、全面的には賛成はできないけれど(これまで日本を民主的な国にするべく多くの人が努力してきたわけで、それらに全く意味がなかったとは思えないし)、なんとなく言いたいことはわかります。民衆が権力者を倒して革命を起こしたこともないわけだし(明治維新が革命だという人もいるけどそうは思えないです。武士である薩長が天皇を掲げて幕府を倒しただけだし、それに「大政奉還」とか「王政復古」とかそういう言葉で年表が埋め尽くされているわけです。武士以外の者が集まって結成した奇兵隊は、後々天皇の軍隊に組み込まれ、それを率いていた高杉晋作は病死してしまうし)。

  自己責任という言葉がいつでも持ち出される世の中になってしまったけど、権利を訴えることはやはり大切だと思います。デモも政治参加の一種だという主張には共感します。

  「政治的中立」の部分を読んでいて、政治的中立というものはありえないという主張に共感しました。だって、誰もがこれまでの人生、今の自分の位置、目指す先を持っているはずです。それらをいったん忘れて中立の位置に立つ、というのはどういうことなのか、さっぱり分からない。それに問題意識を持ちつつ、神の視点に立ってそれらの問題に関して口出ししないというのは、無理だし。


自森人読書 政治のしくみがわかる本


著者:  田中ロミオ
出版社: 小学館

  『人類は衰退しました③』の続編。

  人類が衰退して数世紀がたちました。人類最後の学校を卒業し、調停官となった旧人類の少女は、新人類「妖精さん」たちと仲良くなります。妖精さんたちはお菓子が大好きな小人さん。わらわらと集まるととんでもないことをしでかすのですが、すぐに散らばってしまいます。『妖精さんの、ひみつのこうじょう』『妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ』収録。

  『妖精さんの、ひみつのこうじょう』
  クスノキの里は、食糧不足に悩まされていました。それで鶏を数羽絞めることにしたのですが逃がしてしまい、その後なぜか加工済みのチキンが森の中を走り回り・・・

  『妖精さんの、ひょうりゅうせいかつ』
  クスノキの里に妖精が密集していることが判明。あまりにも集まるのはよくないだろうということで、私は一度里を離れることにしました。

  もうマンネリ化しつつある気もするのだけど、なかなかに面白いです。というか、ライトノベルというのは、たいていダラダラしていて、同じようなはなしを際限なく繰り返すものといえます。それを考えてみれば、『人類は衰退しました』も非常にまっとうと言えるかも知れません。

  突如としてグロテスクなものがひょいと投げ込まれるところが笑えます。加工済みのチキンが走り回る、とか。

  けどそろそろ飽きてきた・・・


自森人読書 人類は衰退しました④
★★

著者:  西加奈子
出版社: 角川書店

  少女きりこと黒猫ラムセス2世の物語。迫力がある容貌のため、きりこは、小さい頃から子供たちを率い、仕切っていました。ですが、ブスであると看做されてから力を失い、美人な女の子たちに敵わなくなります。けれどどうして自分がブスといわれるのか分からず、引きこもるようになるのですが、開けっぴろげな猫たちとの交流の中で、自分を見つめ直していき・・・

  単なる「良いはなし」になってしまいそうなのですが、現実的で俗っぽい話が混ざっています(子供たちの中での理不尽な関係とか、男は自分より優れた女を嫌う、とか、セックスばかりしている女性が強姦されると誰も同情しない変な世の中のこと、とか)。設定(猫が喋りだす)も文章も軽いです。そのために面白い小説になっています。

  人間の世界と猫の世界が対比されるところがおかしくて良いです。雄猫は良い匂いのお尻とセックスしたいだけであり、人間の男もそれと変わらないだろうに社会があるために本音が言えない、とか。けれど、一般論で全てを説明していくので底が浅い感じがします。

  決して悪くはないのですが、随分とずるい構成になっていると感じてしまいました。ラストの辺りで、ブスってなんだろう、なぜ人は外見で人を判断するのか、ときりこは考えていきます。そして、「いれものとなかみ両方込みで、その人なんだ」と悟るのですが、ようするに大切なところで反論しようのない正しい結論がでて、おしまいなのです。

  ブスと言われている人にとって苦しいのは、容貌に自信が持てず、誰ともコミュニーケションをとることができなくなることなのに、きりこはいつでも人間と変わらない猫と会話しているわけです。ある意味では、まだ全然救いのある浅い苦しみではないか。その辺りが甘いために、妙に共感できません。

  そして、ラストの告白はちょっとあまりにも狙いすぎではないか、と感じました。着地が綺麗過ぎて、かえってわざとらしい・・・


自森人読書 きりこについて
今日は、自由の森学園中学の学習発表会なのですが。
その詳細は「トトロのトポス」を見ると、わかります。
いろいろな企画があり、面白そうです。

「トトロのトポス」 本日、中学*学習発表会3/9

「トトロのトポス」 中学学習発表会・前日
『ソーシャルネットワークの現在 ユリイカ 2011年2月号』
東浩紀大活躍。

インターネットと批評家・東浩紀は不可分なのかも、と感じます。しかし、インターネットは東浩紀を必要としていなくて、一方、東浩紀はインターネットを必要としています。非対称なのです。東浩紀はこれからどうなるのだろう・・・

それから、米光一成登場。
意外だと感じました。


読んだ本
『ソーシャルネットワークの現在 ユリイカ 2011年2月号』
525銀河ヒッチハイク・ガイド
★★★★★ ダグラス・アダムス

524サキ傑作集
★★★★★ サキ

523リメイク
★★ コニー・ウィリス

522怖るべき子供たち
★★★★ ジャン・コクトー

521限りなき夏
★★★★ クリストファー・プリースト
★★★★★

著者:  ダグラス・アダムス
出版社: 新潮社

  朝起きるとアーサーの自宅の前にブルドーザーが現れました。バイパス建設に邪魔だからアーサーの家を破壊しようとしていたのです。彼は抵抗しますが、なぜか友であるフォードに連れ出され、酒場へ。そして衝撃的なことを告白されます。フォードは、ベテルギウス人(宇宙人)であり、『銀河ヒッチハイク・ガイド』の遊軍記者として地球に来ていたというのです。そして、もうすぐ地球に最後が訪れるとも聞かされます。その言葉通り、地球はヴォゴン人の船団によってバイパスを作るために消滅させられます。アーサーとフォードは宇宙に放り出され、銀河をヒッチハイクするはめになります・・・

  バカバカしくて不真面目で壮大なSF小説。

  不条理なSF小説を書くことで知られているヴォネガットと似ていますが、こちらの方が哲学的ではなく、もう少しバカっぽいです。意識的に笑わせようとしているのが感じられます。あまり笑えないけど、そのうまく当たらない感じ、ちょっとしらける感じが物凄く良いです。笑いを巻き起こすわけではないのに、面白いジョークというものが世の中にはあるのだなぁ、と感心しました。

  登場人物たちはたいてい変です。というか、むしろ奇人変人しか登場しません。とくに愉快なのは、ロボットのマーヴィン。彼は人嫌いで、その上鬱病。とにかく暗くてブツブツと悲観的なことを呟いているので誰からも避けられます。あとはいちいち口を挟む機械たちもおかしすぎるし、ヴォゴン人イェルツの詩の朗読もおかしい・・・

  そして、時折挟まれる『銀河ヒッチハイク・ガイド』という書物の記述もいちいちおかしいです。本当に奇妙な味。

  最後には、地球が作られた理由まで明かされてしまいます。そして本当の地球の支配者まで登場してしまいます。なんというか、全面的に42。


自森人読書 銀河ヒッチハイク・ガイド
★★★★★

著者:  サキ
出版社: 岩波書店

  サキはスコットランドの小説家。短編の名手として知られているそうです。『サキ傑作集』には、『アン夫人の沈黙』『狼少年』『二十日鼠』『トバモリー』『刺青奇譚』『スレドニ・ヴァシュター』『イースターの卵』『グロウビー・リングトンの変貌』『開いた窓』『宝船』『蜘蛛の巣』『宵闇』『話上手』『物置小屋』『毛皮』『おせっかいと仕合わせな猫』『クリスピナ・アムバリーの失踪』『セルノグラツの狼』『人形の一生』『ショック療法』『七つのクリーム壷』が収録。

  傑作集と銘打ってあるだけあって、はずれがないです。

  どの短編も、ひねりがきいています。ポンと放り出される意外なオチを噛みしめることになります。こうくるな、と予想していてもはずれるところが面白いです。『狼少年』や『開いた窓』、『セルノグラツの狼』などがとくに面白かったです。

  『狼少年』
  主人公の青年は狩りの最中に不気味なことを口走る少年と出会います。伯母は身寄りがないらしい少年を引き取り、可愛がるのですが、私は不安でなりません・・・

  『開いた窓』
  ナトルは神経衰弱のため田舎で療養していたのですが、お節介な姉に紹介状を渡され、サプルトン夫人を訪問します。すると対応に出た夫人の姪ヴェラから、恐ろしい話を聞かされ・・・ ホラーかと思いきや、そういうわけではありません。みごとなオチが素晴らしいです。

  『セルノグラツの狼』
  この館には、館の人間が死ぬと森の獣たちが一晩中遠吠えするという言い伝えがあるがそれは嘘だと男爵夫人がコンラッドに話しかけていました。すると、アマリーという白髪の家庭教師が口出ししてきます。セルノグラツ家の者が死んだ時だけ狼が鳴く、と彼女は告げます。そして、私が最後の生き残りだとも。男爵夫人は嘘だと罵るのですが・・・

  皮肉に満ちていて、なんというか醒めきっています。かなり苦いブラックジョークに満ちているのに、それでいて物静かなのです。この味は癖になりそうです。


自森人読書 サキ傑作集
★★

著者:  コニー・ウィリス
出版社: 早川書房

  物語の舞台は、近未来のハリウッド。そこではデジタル技術が発達し、昔の名優たちを使い回したリメイク映画ばかりが山のように作られていました。映画マニアの大学生トムは、あるパーティでアステアに憧れる女子学生アリスと出会い、彼女にひとめぼれ。彼女は今では作られることのないミュージカル映画に出演したいと望んでいたので、それは無理だとトムは忠告するのですが、アリスは去ってしまいます。その後トムは古い映画の中にアリスを見つけ・・・

  甘いラヴストーリー。

  映画ネタが満載。ハイパーテキスト的。知らない映画も多かったため、あまり入り込めなかったのですが『スター・ウォーズ』の一場面がでてきたときには面白いな、と感じました。

  不適切な場面があったからと言って、それを修正してしまっていいとは考えていない主人公トムには共感しました。それが当たり前の感覚ではないかと思うのですが、昔の映画を見ると差別用語や問題のある場面が抹消されていることもけっこうあります。隠せばいいという問題ではなくて、むしろ隠すことでそれを多くの人に意識させてしまう気もするのだけど。

  それはさておき、物語的に最も重大なのは、アリスのことです。

  トムはアリスが古い映画の中に出演しているのを発見し、タイムトラベルの結果なのかどうなのか考えていきます。その結果、意外なことが明らかになります。その問題が鮮やかに解決される部分がみごとです。そして最後にはハッピーエンドが待っています。

  ローカス賞受賞作。


自森人読書 リメイク
★★★★

著者:  ジャン・コクトー
出版社: 角川書店

  病弱な少年ポールは、大人に媚びない暴れ者ダルジュロに憧れていました。ですが、ダルジュロは弱いポールのことを好ましく思っておらず、雪合戦の時、彼に雪を当て気絶させてしまいます。級友だったジェラールは、ポールを彼と彼の姉エリザベートが住む部屋へと連れ帰ります。そこは、子供たちが築き上げた子供だけの空間でした・・・

  ジャン・コクトーはフランスの詩人・芸術家。

  善悪を見分けられない子供の残酷さを扱った「小説詩」だそうです。そこまで恐ろしいとは感じなかったし、別に反社会的だとも思わなかったけど、鮮烈ではあるし、狭い自分の空間の中に閉じこもり、いつでも何かにとりつかれているポールらの姿が印象的でした。

  訳者も書いていますが、なんだか妙に色が感じられないです。黒と白とそれらの狭間にある色だけでつくられているような感じ。しかし飽きません。物語の構成が綺麗です。逃れがたい破局へと向かっていくラストの辺りがとくに良いなぁと感じました。

  文体も特徴的。ポールらの生活を些細な点まで写し取った即物的な文章と、大仰で詩的な文章(というか、警句のようもの?)が並び、融合しているところが面白かったです。エリザベートが巫女にたとえられ、物語自体が子供の儀式のなかにあるためか、妙に生活臭のようなものが欠けています。そのため、寓話的です。

  やたらと回りくどい表現がなかなかに良かったのですが、それとは別に日本語としてしっくりこない部分が随分とありました。それは詩的ということで許されるのだろうか。いまいちよく分からないです(角川書店。東郷青児訳)。


自森人読書 怖るべき子供たち
★★★★

著者:  クリストファー・プリースト
出版社: 国書刊行会

  『限りなき夏』はクリストファー・プリーストの日本オリジナル短編集。『限りなき夏』『青ざめた逍遙』『逃走』『リアルタイム・ワールド』『赤道の時』『火葬』『軌跡の石塚』『ディスチャージ』収録。

  『限りなき夏』
  1903年の夏の日。トマスは愛するセイラに告白しようとします。しかし、その瞬間、凍結者によって彼女は「活人画(タブロー)」にされてしまい、凍結。トマスはいつまでもいつまでも、セイラが動き出すのを待ち続けるのですが・・・ タイムトラベルと恋愛、その2つの題材は非常にマッチするものなのかも知れない、と改めて感じました。最高のSF小説として絶賛する人も多い、『夏への扉』にしてもそうだし(僕は『夏への扉』はそれほど好きではないけど)。

  『青ざめた逍遙』
  幼い少年はフラックス流路を飛び越え、未来に飛び、若い女性にひとめぼれ。その後、少年は何度も未来へ飛び、遠くから彼女を見つめ続け・・・

  『逃走』
  押し寄せる少年たちに囲まれつつ、車を走らせ続ける上院議員は・・・ 不気味な週末を描いた短編。著者のデビュー作。

  『リアルタイム・ワールド』
  惑星に設置されたコロニーの中で様々なことを研究している学者たち。主人公ダンは、彼らに様々なニュースを伝える役目を背負っています。しかし実はその反応をみることが目的で・・・

  『赤道の時』
  この短編から、夢幻群島(ドリーム・アーキペラゴ)シリーズになります。『赤道の時』はその舞台となる世界についての説明。不可思議な渦のことが語られます。

  『火葬』
  叔父の代理として葬式に参加したグライアンは、島の慣習を知らないために怯え、何ごとも起こさないように注意していました。ですが、謎の女性の挑発を受け・・・ スライムという気持ち悪い生物が登場。かなり怖いです。

  『軌跡の石塚』
  主人公は、昔からジェスラという地に住んでいました。ですが、子どもの頃伯母らに会うため荒涼としたシーヴルに何度か赴いたことがありました。今回、親族の遺品を整理してほしいと頼まれたため、女性の警察官とともに何年かぶりにシーヴルへいきます。少し神秘的。

  『ディスチャージ』
  わたしは徴兵から逃れるため夢幻群島へくるのですが、そのとき不意に自分が画家だったことを思い出します。そして触ると画像が溢れてくる絵を描き続けるのですが。少し危なくてやたらとエロいです。


自森人読書 限りなき夏
520刺青
★★★ 藤沢周

519グッドラック-戦闘妖精・雪風
★★★★ 神林長平

518刺青・秘密
★★★ 谷崎潤一郎

517キリンヤガ
★★★★ マイク・レズニック

516オイディプス王
★★★★ ソポクレス
昨日、自由の森学園卒業式でした。
昨日、自由の森学園高校の卒業式でした。

とうとう卒業でした。

このブログのタイトルも変更したほうがいいのか、と思ったので、「元」とつけてみたのですが、これからも適当にダラダラと更新しそうです・・・
★★★

著者:  藤沢周
出版社: 集英社

  十八歳の少女アヤは廃業を決意していた彫物師・彫阿弥のところへ赴き、全身に刺青を彫って欲しいと告げます。彼女は、観世音の刺青によって自分にセックスを強要するある男を圧倒したいと願っていたのです。しかし、彫阿弥は拒否します。若い女の体に彫ることは容易ではないし、刺青は糞なのだというふうに彼は考えていたからです。ですがアヤは刺青にさほどの意味はない、と思いつつもそれを欲し・・・

  ぎくしゃくとして、時折状況を把握しづらくする文体が作品の雰囲気と合っています。

  どろどろとしたものが底の方に溜まっているみたいなのに、全体としてはガサガサした冷たい印象を受けます。不思議なことに耽美的ではない気がします。登場人物たちが一途だからか。

  アヤは、刺青を彫ることで自分を追い詰め、生きる力を捻り出そうとします。妙に神々しい感じがします。彫阿弥は刺青にこだわりつつも、それが何であるのか分からずに迷い、醒めています。彼は非常に冷淡です。自分の行為に溺れつつもぎりぎりのところで踏みとどまり、それを凝視しています。

  彫阿弥の冷淡さというか、思いやりというか、勝手さが明確になるのはラスト。南無阿弥陀仏と書いて欲しいとアヤに言われたのに、全てをぶち壊してしまいます。綺麗な物語のままでは終わりません(むしろ終われないのか)。彫阿弥の行動は、非常にエゴイスティック。ある意味では、お茶目ともいえるのかも知れないけど。

  登場する人たちが抱え込んでいる絶望があまりにも深すぎるせいか、読んでいても入り込めないような印象を受けます。どこにも温かみを感じないです。


自森人読書 刺青
★★★★

著者:  神林長平
出版社: 早川書房

  FAF(人類が結成した空軍)は、人類と地球を守るために惑星フェアリイで未知の存在ジャムと日夜戦い続けていました。ですが、一進一退の戦況に苦しめられます。その中でも、特殊戦に属する主人公・深井零は戦術戦闘電子偵察機・雪風に乗り込んで雪風とともに、孤独な戦いを続けていました。彼の任務は、味方を見捨ててでも戦闘の情報を得て、それを確実に持ち帰るというものでした。彼は雪風を恋人のように思っていました。しかし、戦いの中で機械に意思があるのかも知れないという思いを強めるようになります。そして、雪風から射出されたことでショックを受け、眠ったまま起きなくなってしまいますが・・・

  『戦闘妖精・雪風』の続編。

  前作以上に状況は過酷に、そして複雑になってきます。

  ジャムの正体がじょじょに明らかになってくるのですが、それとともに寄り合い所帯に過ぎないFAFというものの脆さも明らかになってきます。その中で、FAF内の一部隊に過ぎない特殊戦(とあとは情報軍)の重要性が増してきます。自分の保全しか目指さない冷徹な個人の集まりである特殊戦こそが、最も強力な組織である、という予想外の事実が明らかになるからです。

  零とブッカーの厚い友情関係は続きます。

  ですが、零と戦闘機・雪風の関係は変化していきます。機械は意識を持つのか、ということが再三論じられ、結局結論は出ないのですが、意識のようなものを宿すということが明確になってくるからです。雪風も、人と変わらないような存在として認識せざるを得ない状況が生まれてくるわけです。

  最後に愛という単語が出てきます。とうとうそこにまでたどり着くのか、と感心してしまいました。続きがさらに楽しみになってきました。『アンブロークンアロー』に続きます。

  読みつつ、やっぱりこなれていない日本語が少し微妙かなぁ、と感じてしまいました。それが良さでもあるのかも知れないけど。


自森人読書 グッドラック-戦闘妖精・雪風
そういえば、さきほど明日が自由の森学園高校の卒業式だと書きましたが。

「トトロのトポス」を読んだら、卒業式のことが最もはやくわかるかも。自由の森学園図書館の司書トトロが書いています。

下記がリンク。

トトロのトポス
★★★

著者:  谷崎潤一郎
出版社: 新潮社

  『刺青・秘密』は、谷崎潤一郎の初期の作品を収めた短編集。『刺青』『少年』『幇間』『秘密』『異端者の悲しみ』『二人の稚児』『母を恋うる記』収録。

  『刺青』
  刺青師は、思い焦がれていた無垢な少女を麻酔で眠らせ、彼女の肌に女郎蜘蛛を彫りこんでいきます・・・ 美を崇める人たちの物語。10ページしかないのですが、非常に強烈でした。谷崎潤一郎のデビュー作。

  『少年』
  学校では弱気な少年・信一が、家では暴君として君臨していました。彼の友達である主人公は、信一らと一緒に遊びながら信一の姉・光子を苛めるのですが・・・

  『幇間』
  桜井は人を笑わせ、楽しませるためならばなんでもする男。彼は人から見くびられてもなんとも思いません。

  『秘密』
  女装を楽しんでいた私はあるとき、以前捨てた女と邂逅し・・・

  『異端者の悲しみ』
  自伝的作品だそうです。主人公である章三郎は、不真面目な男です。彼は、落魄して気力を失いつつある両親と病弱で今にも死にそうな妹に苛立ち、友から金を借りつつ返しもせず、それらを後悔しつつ決してやめません。そして、自分の持つ天才的な芸術の才能が発揮できないことを悲しむのですが・・・

  『二人の稚児』
  女人禁制の比叡の山に預けられた二人の稚児、千手丸と瑠璃光丸。彼らは仲良しだったのですがあるとき千手丸が「女人」を見るため下界に行きたいと言い出し・・・ 少し風雅。

  『母を恋うる記』
  子どもの私は、夢の中にでもいるのか美しい景色の中をずっと彷徨っています・・・ 少し冗長ではないかとも感じるのですが。非常に印象的でした。

  文章は情緒に溢れ、端正なのに中身は変態的。マゾヒズムに浸る人たちが登場します。ようするに弄られる喜びを綴った小説なわけであり、読みやすいです。時折挟まる横文字が奇妙で、面白いです。気取っているような印象を受けます。


自森人読書 刺青・秘密
★★★★

著者:  マイク・レズニック
出版社: 早川書房

  アフリカのキリンヤガ周辺に住んでいた少数部族キクユ族は西洋文化が侵入してきたため滅びかけます。ですが、伝統を大切にする人たちは古くからの生活を守り続けるため、政策の一環としてキリンヤガという惑星に移住します。惑星を仕切るのはイェールとケンブリッジを出た祈祷師・コリバ。彼は、キリンヤガを守るために奮闘するのですが、矛盾は拡大していき・・・

  寓話的なSF小説。

  オムニバス長篇。『プロローグ もうしぶんのない朝を、ジャッカルとともに』『1 キリンヤガ』(ヒューゴー賞受賞)『2 空にふれた少女』『3 ブワナ』『4 マナモウキ』『5 ドライ・リバーの歌』『6 ローストと槍』『7 ささやかな知識』『8 古き神々の死すとき』(ローカス賞受賞)『エピローグ ノドの地』収録。

  テーマはかなりはっきりしています。アフリカとその地に生きる人々の悲劇を扱った作品。西洋人による文化的・軍事的侵略の結果、何が引き起こされたのか考えさせられます。

  コリバは白人の中で育ちながら、その社会の矛盾に苦しめられます。そして、自分がキクユ族ではなく黒いヨーロッパ人になっていくことに納得できず、西洋文化に背を向け、家族さえ捨て、キリンヤガにキクユ族のユートピアを復活させようとします。彼は首尾一貫しています。例外は決して認めず、伝統を頑固に守ります。老いた者や逆子はジャッカルに食わせてしまうのです。

  コリバが寓話を大切にするところは印象的。彼は物語によって人々の心を捉えようとします。彼の説教臭い部分が好きになれない人もいるかも知れないけど、僕は頑固でいいなぁと感じます。

  ですが、最終的にキリンヤガは破綻します。やはり近代的な文化(合理主義・時間を短縮する便利な機械)には敵わなかったのです。そもそもキリンヤガという惑星を、西洋人と彼らの持っている科学によって用意してもらったこと自体が矛盾ともいえるし、西洋文化を身につけ、それでもってキクユ人の世界キリンヤガに大きな影響力を及ぼすコリバ自身が矛盾した存在ともいえます。そのような矛盾を抱えたまま、無事に社会が続いていけるとは思えません。

  ですが、コリバの気持ちはよく分かります。近代化が世界にもたらした害悪は決して小さなものではありません。それらと対峙しようとするところには共感します。

  ラストはあまりにも哀しすぎます。夢破れ、象とともに去りゆくコリバはどこへいく・・・


自森人読書 キリンヤガ
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