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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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『ミステリ・オペラ―宿命城殺人事件』は凄かった・・・
着地点が凄い。「昭和」という時代を総括してしまおうという目論み。それが成功したかどうかというのはまず置いといたとしても、感動します。
『ミステリ・オペラ―宿命城殺人事件』

とにかく、2段組で680ページという分厚さと、その「小道具」の多さにまず圧倒されました。

30分間宙に浮かんだあと墜死した男、各所に登場する不可解なトランプ。主人公の女性が信じる平行世界のこと、オペラ『魔笛』の解釈。残された旧仮名遣いの文書の引用、古典ミステリへの言及。さらに、三大奇書への言及。
銀仮面で顔半分を隠している謎の人間、甲骨文による見立て殺人。2メートルもの巨人の骨の発掘、戦闘中に消失する列車。日本が満州国に押し付けようとする新たな「神話」。検閲図書館なる謎の存在、暗躍する幾つもの組織。

まぁそういった目くらましに引き込まれちゃいけないんだろうけど。これでもか、というくらいに繰り出される魅力的な謎とその小道具には感心するしかないです。

物語は、現代(平成元年)の東京と、昭和13年の満州国をいったりきたりします。とてもごちゃごちゃになっていて眩暈がしてきそうなくらいだけど、最後に到達すれば、だいたいきちりと全ての謎が解決されます。大風呂敷を広げた割には、全てがきちりと片付いていて、素晴らしい。

しかも、最後の最後に著者が提示するのは、「推理小説」による昭和史の総括。そして、「力に押し潰された弱者の声を掬うというのは凄く難しいことだけど、やっぱり為されなければならない」という意思。
とても格好良い。

推理作家・小城魚太郎の著作『赤死病館殺人事件』の中の一文が、何度も引用されて、とても印象的です。
「この世の中には異常(アブノーマル)なもの、奇形的(グロテスク)なものに仮託することでしか、その真実を語ることができない、そんなものがあるのではないか。君などは探偵小説を取るに足りぬ絵空事だと非難するが、まあ、確かに子供つぽいところがあるのは認めざるを得ないが、それにしても、この世には探偵小説でしか語れない真実といふものがあるのも、また事実であるんだぜ。 」

そして、「昭和史」とはすなわち「探偵小説」なのだ、いや「探偵小説」によってこそ見えてくる「昭和史」があるんだ、というふうになるわけなのですが。もう凄すぎる。傑作です。

第2回(2002年)本格ミステリ大賞受賞作。
2002年このミステリーがすごい! 3位


今日読み終わった作品
山田正紀『ミステリ・オペラ―宿命城殺人事件』

今読んでいる作品
北村薫『蝶』
北村薫『俺の席』
北村薫『新釈おとぎばなし』
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雑誌編集者の千春は、きのこのことばかり取材していたのですが。そんなある日、喫茶店でおじさんに声をかけられます。落っことしてしまったものがあるので、拾って欲しい、というだけのことだったんだけど・・・
その落っことしてしまったものとは、「十面ダイス」。
いったい何に使うものなのか・・?

実は、そのおじさんは教員で、生徒を指すときにそのサイコロを使うんだと教えてくれます。

『おにぎり、ぎりぎり』は、『サイコロ、コロコロ』と同じ千春さんが主人公。彼女は、ある日何人かでフィールドに出かけました。
そして帰ってくると、残っていた人たちがおにぎりをつくってくれていました。出かけていた方の1人、稲村先生はそのおにぎりからあることを推理するのですが・・・


今日読んだ本
北村薫『サイコロ、コロコロ』
北村薫『おにぎり、ぎりぎり』


今読んでいる作品
山田正紀『ミステリ・オペラ―宿命城殺人事件』
北村薫『蝶』
北村薫『俺の席』
北村薫『新釈おとぎばなし』
★★★★

著者:  江國香織
出版社: 新潮社

  江国香織のデビュー作『桃子』などが収録されている短編集。『デューク』『夏の少し前』『僕はジャングルに住みたい』『桃子』『草之丞の話』『鬼ばばあ』『夜の子どもたち』『いつか、ずっと昔』『スイート・ラバーズ』の9つの短編が含まれています。

  1番印象深かったのは、やっぱり1番最初に収録されている、『デューク』。「私」の大好きだった犬のデュークが死んでしまい、泣きじゃくっていた時、美しい少年に出会う。そしてその少年と1日を過ごすのだが、犬のデュークみたいに上手なキスをのこして、「うす青い夕暮れ」とともに少年は去っていく・・・

  解説の川本三郎が『デューク』のなかの「うす青い夕暮れ」について、「マジック・アワー」のことだ、と書いていました。「マジック・アワー」とは、夕日が地平線に沈んでいったあとの、光の具合がもっとも美しい数分間のことです(三谷幸喜の映画のタイトルになっているなぁ)。別れがやってくるのが、その「マジック・アワー」の瞬間。そして「夜がはじまる」ところで終わる。最後まで、熱くなることはなくて、すーっと溶けていくみたいな感じで終わります。きれいな情景だなぁ、と思いました。

  他の短編も、だいたいみんな面白いです。ちょっと感傷的なのがあったり。うわ怖いなと感じされられるものもあったり。ほんわりとしたものもあったり。

  これまで、江國香織を全然読んだことが無かったのですが(なんかエッセイみたいなのを読んだ気がするけど、まったく中身を覚えていない・・・・・)、読んでみて良いなぁと感じました。図書館にもたくさんあるし、どんどん読んでいこうかなぁ、と思います。


自森人読書 つめたいよるに
『溶けていく』は、ホラーっぽいサイコサスペンスっぽい感じの短編。
主人公は健康食品会社に勤める女性。彼女は、ある漫画家の絵を見ていたら、それが会社の人たちに似ているなぁと考え始め・・・
現実と、妄想(虚構)の境目がいつの間かなくなって、そして逆転してしまう怖い作品。あれあれ、という間に終わってしまって、どきっとさせられます。

『紙魚家崩壊』と、『死と密室』は、ちょっとミステリ小説というものの「お決まり」をからかったようなメタミステリっぽい雰囲気の作品。
「両手同士が恋している」というのは、面白い。本筋と関係ないけど。

『白い朝』は、ちょっとロマンチックな物語。
ある女性が、昔の話を語り始めます。それは、今の夫と出会った日のこととつながっていきます・・・

北村薫

今日読んだ作品
北村薫『溶けていく』
北村薫『紙魚家崩壊』
北村薫『死と密室』
北村薫『白い朝』


今読んでいる作品
山田正紀『ミステリ・オペラ―宿命城殺人事件』
北村薫『サイコロ、コロコロ』
北村薫『おにぎり、ぎりぎり』
北村薫『蝶』
北村薫『俺の席』
北村薫『新釈おとぎばなし』
五木寛之って、今では大御所みたいな人だよなぁ・・・ 直木賞、小説すばる新人賞、吉川英治文学賞、泉鏡花文学賞、坪田譲治文学賞の選考委員をやっていて。だけど、これまで全く読んだことなかったです。

『冥府への使者』は、インテリに憧れる日雇いの男が主人公。
彼は、朝日ジャーナルと平凡パンチをいつでもしっかりと手にしている男。ちょっと頭の良さそうなことを言って、へー凄いねと思われるのが好きでした。
そんなある日、とても良い仕事があるというので、それについていきました。とても厳重で、まったくどこへ連れて行かれたのか分からない。着いた先は宿。そこで3日間寝泊りしろ、ということらしい。
そしてボタ山の発掘をやらされます。いったい何を探しているのかさっぱり分からないのですが・・・
何十人分もの骨が見つかった途端に、その発掘は終わりました。

男はあまりにも怪しいので、一緒に働いていた学生と共謀して雇い主の話を盗み聞き。そしてどうやら、その骨は終戦まもなくの頃、殺された日本人以外の労働者らしいと知り、2人は脱走して新聞社に駆け込みます・・・


今日読んだ作品
五木寛之『冥府への使者』

今読んでいる作品
森村誠一『紺碧からの音信』
山田正紀『ミステリ・オペラ―宿命城殺人事件』
北村薫『紙魚家崩壊』
100ABCDEFG殺人事件
★★ 鯨統一郎

99シチュエーションパズルの攻防―珊瑚朗先生無頼控
★★ 竹内真

98蟹工船
★★★★★ 小林多喜二

97三国志傑物伝
★★★ 三好徹

96ことばの未来学―千年後を予測する
★★ 城生佰太郎
軽くて爽やかな青春小説。テンポが良くて、読みやすいです。
ある高校の、野球チームの物語。


凄く、「1985年なんだ」ということが意識されているなぁ・・・
1985年を意識させるものが、てんこ盛りです。おニャン子クラブのメンバーの中で誰が1番可愛いのか争って殴りあい、「夕やけニャンニャン」があるからって野球の練習を切り上げて早く帰ってしまって・・・
高校生が、たとえとして持ち出したり、話題にする人間は、とんねるずやらチェッカーズやら菅原文太やら石原裕次郎やらサザンやら、キョンキョン(小泉今日子)やら。

そして、野球場では応援席のみんなが、『セーラー服を脱がさないで』を合唱する・・・


今日読んだ本
五十嵐貴久『1985年の奇跡』

今読んでいる作品
五木寛之『冥府への使者』
森村誠一『紺碧からの音信』
★★

著者:  鯨統一郎
出版社: 理論社

  探偵事務所に勤める女の子・堀アンナが主人公。彼女は聴力を失った代わりに物の声を聞き取れるようになります。事件に巻き込まれつつも、その力を使って、次々事件を解決していきます・・・ なぜか彼女の周囲の人間はばたばた奇怪な死を遂げていくんだよなぁ・・・ 1冊に、「Aは安楽椅子のA」「Bは爆弾のB」「Cは地下室のC」「Dは電気椅子のD」、「Fは不干渉のF」、「Gは銀河のG」の7つの短編が含まれています。

  う~ん。ゲテモノというのだろうか・・・ 脱力してきます。まぁつまらないことはないんだけど、気が抜ける。『殺意の時間割』というミステリ・アンソロジーのなかに「Bは爆弾のB」があったので、それは読んでいたけど。他のも全部同じようなはなしだったのかぁ・・・・・

  まぁパラドックス学園同様、気軽に読めば良いんじゃないかなぁ。割り切って、というか。なんとなく読む、というか。

  かなり投げやりだなぁ・・


自森人読書 ABCDEFG殺人事件
西東登『壷の中』は、短編小説。
会社では閑職に追いやられ、家庭では孤独な私は、ある日骨董屋さんで壷を見かける。その壷を、戦時中中国でみかけたことがあるような気がした私は、そこで立ち止まって、壷をまじまじと見つめてしまった・・・ そしてちょっと興味を持つのだが、その壷のことをいろいろ調べているうちに、戦後の混乱期壷を中国から持ち帰った男が突如毒死したことを知る。
いったいこれはどういうことなのだろうか・・・

コオロギ同士を闘わせる賭けというのが登場します。
実は、その壷は、中国では闘わせるために買われているコオロギを入れるものとして使われていたのです。

最後に意外なことも分かります。
なかなか面白い短編。


今日読んだ作品
西東登『壷の中』

今読んでいる作品
五木寛之『冥府への使者』
森村誠一『紺碧からの音信』
森村誠一『悪魔の飽食』

冬休みに半分まで読んで、それから置きっぱなしにしていた『告白』を今日読みました。文庫でも800ページは長い・・・ だけど、最後のあたりは一気呵成に読めてしまいます。それだけ読みやすくて、乗りやすい文章です。
『告白』

「河内十人斬り」という実際に起きた大量殺人事件を取り上げた小説です。なぜ、犯人である熊太郎と、その友である弥五郎は10人もの人間を次々と殺してしまったのであろうか・・・? というよりも、熊太郎という男はなぜに「孤独」なのだろう? 自分の考えていることと、吐き出される言葉が一致しないことで苦しむ彼の苦悩を追っていった物語です。

町田康の冷静な分析(著者が物語に口を挟む)と、暴走しまくりでぶっ飛ぶ文体。それに加えて、主人公・熊太郎のスパイラルのような思考の追跡、どれもおかしくて笑えます。
深刻なのに滑稽、いや滑稽にして深刻、なのです。

最後の部分だけしかなかったら、熊太郎はなんだかよく分からない理屈で人を次々と殺す極悪非道な理解できない「やつ」としか思えなかっただろうけど、そこに到るまでの彼の人生が語られることで、熊太郎も人間の1人なんだということがよく分かります。

言いたいことは山ほどあるのにそれを言語化できない熊太郎。言葉ってなんだろうか、とても考えさせられます。

面白い、読みやすい、考えさせる、凄い本だなぁと思います。

第四十一回谷崎潤一郎賞受賞作。2006年本屋大賞候補作(7位)。


今日読んだ本
町田康『告白』

今読んでいる作品
西東登『壷の中』
五木寛之『冥府への使者』
森村誠一『紺碧からの音信』
森村誠一『悪魔の飽食』
乙一の別名だという噂の人、中田永一の短編集を読みました。
『百瀬、こっちを向いて。』

『百瀬、こっちを向いて。』『なみうちぎわ』『キャベツ畑に彼の声』『小梅が通る』収録。

明るい恋愛未満っぽいような恋愛小説。
そこまで甘ったるいということもないです。

『百瀬、こっちを向いて。』は、高校1年生のモテない男の子が主人公。彼には兄貴のような存在として宮崎瞬というかっこ良い先輩がいました。宮崎瞬は、美人の神林先輩とつき合っていたのですが、裏では百瀬という女の子ともつき合っていて・・・
宮崎瞬は、百瀬とつき合っていることを他人にばれないために主人公に、百瀬とつき合っているふりをして欲しい、と頼んできます・・・

『なみうちぎわ』は、高校生になったばかりの私が主人公。彼は、不登校の男の子の家庭教師になります。2人はだんだんと仲良くなってくるのですが。ある日、主人公の女の子は入り江に浮かぶ男の子を見つけて海へ飛び込み、おぼれてしまい・・・

そんな感じの短編集。

かたかなが多くてなんだか気持ち悪いです。座りが悪い、というか。かえって気になってきて読めなくなってくる。


今日読んだ本
中田永一『百瀬、こっちを向いて。』
中田永一『なみうちぎわ』
中田永一『キャベツ畑に彼の声』
中田永一『小梅が通る』


今読んでいる作品
西東登『壷の中』
五木寛之『冥府への使者』
森村誠一『紺碧からの音信』
森村誠一『悪魔の飽食』
佐野洋『灰色の絆』は、戦後ベトナム戦争の頃の物語。
米兵の男・トムが謎の失踪をとげてしまいます。もしかして脱走したのではないか、とトムの女・桃子は思い、慌てて辻村という弁護士の男に相談するのですが・・・ なんとこんどは彼女まで青酸カリで毒死します。いったいどういうことなのか・・・?

仁木悦子『山のふところに』は、これぞ短編の醍醐味、というような面白さを感じさせてくれる傑作。戦争によって孫を奪われた、あるお婆さんの復讐の物語です。
企業の社長となって、村へ帰ってきた男がいました。彼は、この村に工場をつくろうとしていたのです。土地を売るのに頑固に反対する農民のおやじが1人いるだけで、あとはもう全て準備万端となっていたので彼は自ら村まで出向いてきました。

それを見かけたお婆。その社長がかつて孫を死に追いやった男である(その社長はかつて陸軍の飛行大尉として活躍していた。孫はそれに憧れて戦地へ赴き、沖縄で死亡)、と知り、彼を退治してしまおうと決意します・・・・


今日読んだ作品
佐野洋『灰色の絆』
仁木悦子『山のふところに』


今読んでいる作品
西東登『壷の中』
五木寛之『冥府への使者』
森村誠一『紺碧からの音信』
森村誠一『悪魔の飽食』
井上靖『敦煌』が面白かったです!
『敦煌』

前からずっと気になっていたのですが、探すのが面倒でほったらかしに。ですが、読んでみたらあまりに面白くて、これまで読まなかったことを後悔しました・・・ 中国の歴史ものが好きな人間として失格だなぁ、という感じです。

北宋の時代、趙行徳という男が科挙を受けるために首都開封へ行きます。しかし最終試験・殿試の待ち時間に居眠りしていて、試験を受けられず、失格に。行徳は、とんでもない失態をしでかしてしまって茫然とし、ふらふらと首都を漂います。
すると異国の女が、豚肉と同じ扱いで売られているのと出くわしました。
思わず行徳が彼女を買って助けると、彼女は見慣れない文字だらけの紙をくれて去りました。行徳は、それが西方の国家・西夏の文字と知り、「西夏の文化を知りたい」と感じます。そして彼は、西方へと旅立ちます・・・

もうなんというか中国西方の圧倒的で壮大な自然と歴史が描かれていて、感動です。色んなものに翻弄されながらしぶとく生きる主人公が最後に果たすことは・・・


今日読んだ本
井上靖『敦煌』

今読んでいる作品
佐野洋『灰色の絆』
仁木悦子『山のふところに』
西東登『壷の中』
森村誠一『悪魔の飽食』
★★

作者:  竹内真
出版社: 東京創元社

  短編集。「クロロホルムの厩火事」、「シチュエーションパズルの攻防」、「ダブルヘッダーの伝説」、「クリスマスカードの舞台裏」、「アームチェアの極意」の5つの短編が含まれています。殺人事件とか、大きな事件ではなくて、もっと小さな事件を珊瑚朗先生が解いていくもの。それを、珊瑚朗先生にかわいがられている「僕」の視点から見ていきます。

  全体的に文章も中身も小気味良いんだけど、正直そこまで好きではありませんでした。竹内真の著書の中では(といってもほとんど読んでいないんだけど・・・)『カレーライフ』が1番好きです。『カレーライフ』は傑作だと思います。分厚いけど読む甲斐があります。と、なぜか『カレーライフ』のお奨めみたいになっているけど・・・

  『シチュエーションパズルの攻防』もまぁまぁ面白いです。短いからすっと読めてしまいます。だけど、『カレーライフ』を読んだあとに、この本と出合うと、どうしても★が低くなるよなぁ。それに、短編の、身近な「事件」を追う物語には面白いものがひしめいているから、見劣りする気がする・・・

  『インディゴの夜』というホストの人たちが探偵をやるという小説があるんだけど、そちらの方がもっと面白いかなぁと思ってしまいました。


自森人読書 シチュエーションパズルの攻防―珊瑚朗先生無頼控
とうとう高2になってしまいます・・・
なので自森人もいろいろ変わるかなぁ・・・
変わらないか。
今日、折原一『倒錯のロンド』を読みました。どんでん返しが楽しめる、ミステリ小説。
『倒錯のロンド』

折原一は面白い、というはなしは前から聞いていたし、それにミステリ小説のランキングにもよく登場するので名前は知っていたのだけど、なかなか読む機会がありませんでした。
面白かったです・・・

女性のキャラクターが、男にとって都合良く動いているなぁ、なんなとく。まぁ狂人の主観なのだから良いのか。

叙述トリックっていうのは、こういうのを言うのか。
解説に、『アクロイド殺人事件』が叙述トリックの原型っぽいものの1つとしてある、と書いてあったけど、そうなんだ。ああいうのが「叙述トリック」というのか。知りませんでした。
森博嗣の短編にあったなぁ、男と思わせておいて実は女、とか。
そういえば、伊坂幸太郎『鴨とアヒルのコインロッカー』も叙述トリックっぽかったなぁ。あれはまた違うか。

あと、読んだことないけど読んでみたいミステリ小説作家は・・ 佐々木譲、原遼(の2人は、『倒錯のロンド』内にも名前だけ、登場してました・・・)、法月綸太郎、有栖川有栖など。う~んなかなか読めないなぁ。


今日読んだ本
折原一『倒錯のロンド』

今読んでいる作品
佐野洋『灰色の絆』
仁木悦子『山のふところに』
西東登『壷の中』
森村誠一『悪魔の飽食』
井上靖『敦煌』
昨日読んだのに、書き忘れていたの。


なんだか知っていることばかり書いてあったので、拍子抜けしました。「写真編集には、フリーソフト『IrfanView』が良いよ!」って書いてあるのですが、それはずっと以前から使ってます。もうそれは超有名なソフトはないか。

上の写真もそれをつかって編集したものです。

ただし、ためにはなります。読んで損ではない。


昨日読んだ本
鐸木能光『デジカメ写真は撮ったまま使うな!』

今読んでいる作品
佐野洋『灰色の絆』
仁木悦子『山のふところに』
西東登『壷の中』
森村誠一『悪魔の飽食』
井上靖『敦煌』
折原一『倒錯のロンド』
★★★★★

著者:  小林多喜二
出版社: 新潮社

  ずっと昔から人間の社会には、貧困問題というものがあってそれを解決できていないけど、今以上に酷い状況がかつてはあったんだなぁ。だけど、労働状況というのは労働者が改善を求めて行動してきたから良くなってきたのであって、その努力を怠ったらその途端に昔に逆戻りになってしまうのではないか、と思います。僕は自由の森学園中学3年森の時間の中で、現代日本の貧困ということについて学んできました。 生きさせろ! チームのことです。

  そこで学んだことをまとめると、いま日本は昔のひどい状態へ逆戻りしかけているんじゃないかなぁ、という気がします。最近、再び「蟹工船」ブームがやってきた、というのは、いろんな人が言っているように「蟹工船」の世界が現代の日本の貧困問題と通ずるところがあるからではないか。搾取に対抗するためには団結するしかない、労働争議だ、というのが「蟹工船」の主題だと思うけど、その通りだと思いました。力の無い側は連携して、戦うしかないんだから。

  読んでいて、「現代のプロレタリア文学」というのは生まれないのかなぁ、と思いました。石田いらは、みみっちいというかあんまり面白くないし。雨宮処凛は凄いけど、文学というよりも、ルポみたいなものだし。 湯浅誠の本も、冷静な分析であって文学というのとは少し違う気がする。

  そういえば、「蟹工船」を読んでいて思ったのですが、作中では淺川さんだっけ? トップの人しか名前で呼ばれないんだなぁ・・ 他の人たちは、ほとんど誰も名前が無いのか。「千と千尋の物語」のテーマだったけど、固有名詞・名前は大切なものです。それが無い、というのは労働者たちがどれだけ軽んじられているか、の証じゃないかなぁ。

  あと、軍隊は資本家の味方、支配階級の番犬だ、というのもこのおはなしの大きなテーマだと感じました。ものすごく分かりやすいです。沖縄修学旅行の中で学んできたこととも関係してきます。結局軍隊が守るのは国民じゃない、国家なんだよなぁ。歴史上、軍隊はいつも国民を弾圧し、戦争の巻き添えにして、守ることはないんだよなぁ。

  もしかして、蟹工船というのはそれ自体が日本の比喩なのかなぁ。という気が少ししました。横暴で人の心を踏みにじる男が沈没しかけみたいな船の頂点にいる。違うかな・・・

  凄く考えさせられるなぁ、と思いました。


自森人読書 蟹工船
高木彬光『原子病患者』は、被爆の被害を描いた短編。名探偵・神津恭介が登場。
ちょうど太平洋ビキニ環礁で、水爆実験が行われ、第五福竜丸が核の灰をかぶった頃の物語です。長い間寝たきりの夫を看病していた、ある女性が自分は被爆しているのではないか、と医者に相談します。ですが、彼女は、広島にも長崎にも行ったことはない。それなのに、被爆反応は確かにある・・・
いったいどういうことなのか・・・

実は、寝たきりの男の主治医が放射性カルシウムを寝たきりの男の脊髄にいれた、というのが答え。その主治医は、女に恋をしていたので、女の夫を普通の病死にみせかけ、殺してしまおうとしたのです。
直接戦争に関係はないけど、背景に原爆の問題がある作品。ミステリとしては、ちょっとこれはないだろう、という感じですが、お話としては面白いです。


日影丈吉『月あかり』は、奇怪な、戦争のホラーを描いたような物語。戦争中の物語。
主人公は、村木中尉という男。彼の属する中隊が、湖南の月下鎮(仮名)というところに着いたとき、彼の率いる小隊から小城一等兵が脱走します。そしてその夜、敵軍の夜襲を受けました。
中隊の隊長は、小城一等兵は敵に走ったのではないか、と疑い、村木中尉に小城を探すように命じました。けっこうばかげた命令です。ですが、村木中尉はそれに従い、探しにいき、酒飲んで寝ていた小城を発見。中隊のところへ戻ります。
そして成果を報告しに、中隊の隊長に会いにいくと彼の首が机の上にすとんと乗っていました。多分青竜刀を持った敵にばっさりとやられたのでしょう・・・


樹下太郎『泪ぐむ埴輪』は、男が妻に貞淑を求めた怖い物語。戦争中の物語。これはミステリとしてもなかなかです。
友次郎という男がいました。彼はさと子と結婚してすぐに出征し、戦死しました。2人の仲は、あまりよくなかったという者もあるけど、物語の語り手・正吉はそんなこともないのでは、と思っています。

友次郎の遺骨が届けられたのち、突然さと子が毒死しました。新聞はこぞって「靖国の妻 夫に殉ず」などと書きたて、自殺と断定。しかし、彼女の周辺には、あやしい人がけっこういたので周りの人間は誰もさと子が自殺だと考えているものはいません。そして疑いあいの嵐が巻き起こるのですが・・・
実は、友次郎が「自分が死んだらこれを飲みながら俺のことを思い出してくれ」と言って、さと子に残していったウィスキーの中に毒が入っていたのです。つまり、戦死した友次郎が、和歌の男にとられないように妻を殺したわけです・・・

かなりグロテスクです。「貞女は二夫に見えず」というのを実行するように男が強制したわけです。


菊村到『ヒロシマで会った少女』は、広島という地と原爆の問題を描いた短編。
矢尻という記者が語り手。彼は原爆投下から18年たった広島へ行き、赤ちゃんの頃被爆した18歳の少女と出会います。彼女はとても健康的で、ぴんぴんしていたのですが・・・
彼女は、暴力団の抗争に巻き込まれ、命を落とします。

菊村到は、第37回芥川賞を受賞した人。この短編集の中では、文章がとても読みやすいです。


今日読んだ作品
高木彬光『原子病患者』
日影丈吉『月あかり』
樹下太郎『泪ぐむ埴輪』
菊村到『ヒロシマで会った少女』


今読んでいる作品
佐野洋『灰色の絆』
仁木悦子『山のふところに』
西東登『壷の中』
五木寛之『冥府への使者』
森村誠一『紺碧からの音信』
結城昌治『長かった夏』
山村美沙『骨の証言』
森村誠一『悪魔の飽食』
★★★

著者:  三好徹
出版社: 光文社

  三国志に登場するいろんな脇役達に目を向けた短いストーリーの数々。

  崔えん―直言の士がはまった陥穽/とう芝―三国鼎立を生んだ外交の才/陸遜―軍事の天才も政治センスは欠如/劉曄―才能があり過ぎた男の「不足」/劉巴―無欲の士が拘った主君の資質/太史慈―主君運がなかった弓の名手/張遼―関羽が心を許した勇猛なる人格者/馬超―曹操が恐れた「意地」の武将/魯粛―国を動かした高所からの軍略思考/陶謙―劉備に国を譲った無欲の恩人などなど24人の人物を取り上げています。

  『三国志傑物伝』のあとがきに、三好徹が中国史の中で面白いのは、「史記」「三国志」「清国滅亡(辛亥革命)」の3つだ、とか言っているけど、どうせそれ以外の中国の歴史をろくに知らないで言っているのだろうなぁ。作家の田中芳樹がずっと前から言い続けていることだけど、日本人は、中国史のことをまったくしらないんだよなぁ・・・ それで、「史記」「三国志」「水滸伝」ばかり持ち上げる。唐・宋の時代だったものすごく面白いのに。


自森人読書 三国志傑物伝
昨日、自由の森学園高校卒業式がありました。
長い、6時間の卒業式です。


自由の森学園高校卒業式


自由の森学園高校卒業式


なので今日は代休で休み・・・
『黒衣の聖母』『絆』は、『最大の殺人』収録の作品。佐野洋・編『最大の殺人』は、戦争に関わる作品集らしいです。
『最大の殺人』

山田風太郎『黒衣の聖母』は、学徒出陣して戦後に帰ってきた男・蜂須賀が主人公。彼には、愛する人がいたのですが、彼女は戦争中空襲に遭って行方不明になってしまいました。戦場へ出ていった男が生き延び、本土にあった女が死んだ・・・・・ とても皮肉な結果です。
戦後、蜂須賀は闇屋となり、けっこう儲けてそれなりに良い暮らしをするのですが、愛した人のことが忘れられない。そんなある日、かつての恋人とどことなく雰囲気の似た女性と出会います。凄く美人。それでいて実は、パンパン。赤ちゃんを養うために体を売っている、というのです。
蜂須賀は出会った彼女のことを「聖女」のように思いながら、買うのですが、実は・・・

「酒飲んで女を買った、その後女を買うときはなんとなく酒が必要になった」というところがミソ。つまり、意識が朦朧とした中、しかも暗闇で女と抱き合っているので入れ替わっていても気付かない、というのがこの物語のどきりとさせられる部分です。いやー、ほんと怖い。
しかも、最後の手紙を読むともっとどきりとします。


土屋隆夫『絆』は、ある地方の小学校の教員・千野先生が主人公。彼は、ある綴方(作文)が、とても気になってしまいました。タイトルは、「ぼくの父は殺された」。その中では、「ぼくの父親は自殺したことになっているが、その前に歯医者を訪ねている。死ぬ前に歯を治すなんておかしい」と書いてありました。

それは、小学生の男の子が書いたもの。千野先生は、その男の子のために男の子の父親が自殺なのかどう確認したいと思い、ちょうど郷土に帰ってきた警視庁の朝霧に、個人的に調査を依頼します。落ちぶれた元軍人というところが、あやしい・・・誰かに復讐されたのでは?

う~ん、あんまり面白くないなぁ、ミステリとしては。でも、それなりに読むことはできます。


今日読んだ作品
山田風太郎『黒衣の聖母』
土屋隆夫『絆』


今読んでいる作品
高木彬光『原子病患者』
日影丈吉『月あかり』
樹下太郎『泪ぐむ埴輪』
菊村到『ヒロシマで会った少女』
佐野洋『灰色の絆』
森村誠一『悪魔の飽食』
★★

著者:  城生佰太郎
出版社: 講談社

  「ことば」というものはとても興味深いものです。『指輪物語』を書いたトールキンは、自ら1つの世界を構築しましたが、そのとき最初に考え始めたのは「言葉(エルフ語)」からだったと言います。聖書には、最初「光あれ」という言葉がまず有った、ということが書かれています。言葉というのは突き詰めて考えていくと、だんだん訳が分からなくなっていく不思議なものです。白い石があったとき、それを「白い」とみんな呼ぶけれど、そもそも誰が「白い」という言葉をつくったのか? それは本当に同じ色を差しているのか?(哲学に踏み込んでしまっているかな・・・)考えれば考えるほど不思議です・・・

  『ことばの未来学―千年後を予測する』はそういう言葉を、科学的に解明していこう、というもの。つまり言語学です。ダーウィニズムやマルキシズムという言葉が次々登場します(それって生物学の言葉じゃないのか・・・)。言葉は、喋るのが楽な方向へ向かっていくのだそうです(より発音しやすい言葉がより使われていく、ということ)。

  そして、特定の言語(例えば日本語)には、その言語なりの方向性なるものが存在するのだ、と著者は述べます。そしてそれによって、言葉はどう変化するかは決定するのだそうです。僕にはとても信じられないんだけど・・・ そんなのがあるのかなぁ・・・

  日本語の1000年後を予想すると大きく出たけれど、結局の結論はたいしたことありません。そんなの予測できる訳がないからです。言語への政治の干渉(例えば英語が母国語になる、とか)とか、まったく予想不可能なことがたくさんあります。1000年後なんて分かる訳ないじゃないか・・・

  『ダーリンの頭ン中』のほうが面白いなぁ、と感じました。


自森人読書 ことばの未来学―千年後を予測する
『新・世界の七不思議』

『邪馬台国はどこですか?』の姉妹編、だそうです。まぁ続編みたいなものです。今回は世界のいろいろな不思議を、宮田が鮮やかに読み解いていきます。登場するのは・・・

アトランティス大陸
ストーンヘンジ
ピラミッド
ノアの方舟
始皇帝
ナスカの地上絵
モアイ像

といった謎。
ほんとに信じてしまいそうなくらい納得させられます。まぁけどそこまで意外性はないかなぁ・・・ 始皇帝は実は英傑だったなんてもう当たり前な結論だし。
前作の方がもっと面白かったなぁ、と感じました。でも『新・世界の七不思議』も充分面白いです。読んでいて、唸らされます。


今日読んだ本
鯨統一郎『新・世界の七不思議』

今読んでいる作品
森村誠一『悪魔の飽食』
山田風太郎『黒衣の聖母』
土屋隆夫『絆』
ウェブサイトhttp://jimoren.my.coocan.jp/
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