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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★

著者:  海堂尊
出版社: 理論社

  2020年頃の「東城大学医学部付属病院」が舞台。普通の中学生の男の子・曽根崎薫は、潜在能力試験で全国一位の成績を取ってしまったために、日本初の中学生医学生として東城大学の医学部に通うことになります。しかし、実は凄い潜在能力があったからではなく、父であるゲーム理論学者・曽根崎信一郎がつくった試験の原案を事前に知っていたためその成績が残せたのです。

  彼は、医学のことは何も分からない。なので四苦八苦しますが・・・ いろんなことがある中で、大人の醜い世界を知ることになります。

  横書き。『ミステリーYA!シリーズ』の中の1冊。縦書きではないので不思議な感じです。やっぱり日本の小説は、基本的に縦書きであるべきではないか、と僕は思います。まぁ別に横書きでも良いのではないか、という気もするけど。

  面白いけど、佳作とまではいかないなぁ。軽妙なところは良いけど、しつこい気がします。

  早く海堂尊のデビュー作・『チーム・バチスタの栄光』を読んでみたいです。図書館で借りようとしても予約だらけで大変なので、いまだに読んでいません。本当は、そちらを先に読まないとだめだよなぁ・・・ 医療への熱い思いのあまり脱線していく「その後の作品」じゃなくて、まずは素晴らしい傑作と賞されている第1作目を読まなきゃ。そうしたら海堂尊の面白さが分かるかもしれない。

  というわけで★3つ。


自森人読書 医学のたまご
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★★★★

著者:  五十嵐貴久
出版社: 双葉社

  主人公は高校生・梶屋信介(カジシン)。彼は、居眠り運転のトラックにはねられて志望校へいけず、工業高校に入学。ぐちばかりこぼしていました。そうしたら、大企業の御曹司にして、その高校の理事長の息子である男に疎まれ、彼の差し金で事実上学校中から無視されるはめになります。カジシンは荒れてタバコを吸い、酒を飲み、パチンコにはまります。そしてあるとき、運悪く酒飲んで倒れ・・・

  翌日教員から呼び出され、退学になるか、それとも言いなりになるか二者択一を迫られ、退学を避けるために、なんとキューブサット(小型人工衛星、10cm×10cm×10cm)をつくるはめに。彼は、世間では「オチコボレ」として扱われるような仲間たちととにもその課題に取り組むことにします。すると最初は嫌々だったのに、いつの間にかそこに居場所を見つけるようになっていきます・・・

  2009年1月1日。1年の1番始めに読んだ本。

  爽快で読みやすさは抜群、ものの30分で読み終わります。傑作というほど凄いかどうかは分からないけど、快作ではあります。読んでいて、暗い気持ちになるところはほとんどありません。テレビドラマ化されたらしいです。0地点どころか、マイナス地点からスタートし、どこまでも疾走していく「オチコボレ」の主人公たち。かっこ良いです。

  個性的としか言いようがない登場人物たちが際立っているなぁと感じます。極端に語彙が少なくて、「おお」と「ああ」しか喋らない190㎝の不良(翔ちゃん)、とか。数学の才能だけは天才的、心に闇を抱えていて一言も喋らないネット中毒の男の子(レインマン)、とか。

  そういえば、作者も1番最後に書いているように、「2005年のロケットボーイズ」というタイトルだけど、ロケットはあんまり関係ありません。ロケットは申し訳程度しか登場しません。「2005年のキューブサットボーイズアンドガール」の物語です。


自森人読書 2005年のロケットボーイズ
★★★★

著者:  舞城王太郎
出版社: 講談社

  「涼ちゃん」が飛び降りてから2年後。15歳の僕と、14歳のルンババ12は修学旅行で東京へ行きます。そして、その途中「僕」は変な姉妹に会い、家まで連れて行かれ、すぐまた戻るということがあったのち、いろんな「密室」と出会っていくことになります・・・・・

  何に分類すれば良いのか分からない。ミステリではないような気がします・・・ なので一応青春ものに入れておきます。

  以前、同じく舞城王太郎が書いた小説『熊の場所』を読んだときは、なんて凄いんだ! と感動みたいなものを覚えました。だけど、今回は期待を裏切る事はないのだけど、想像を絶することもないなぁ、という感じです。ありえない予想外の推理とか、つながってどこまでもきれない文章はさすがだけど、もうだいたい予想の範囲内。初心者でも読みやすいソフトな仕上がりです。

  もしかして、僕に耐性がついた、ということなのかなぁ。いやそれとも今回はぶっ飛びがそれほどでもない、ということなのか。エログロ描写といわれそうなものはほとんどないです。『煙か土か食い物』みたいに、やたらめったらに暴力が飛び出したりはしません。そこらへんにいそうではないけど、ある程度は普通な少年「僕」が主人公です。

  ルンババ12が活躍してくれるのが嬉しいです。『煙か土か食い物』では途中であっさりと退場してしまって残念でした。今回は大活躍です。次から次へとぶっ飛んだ推理でいろんな謎を解いていきます。よくそんなことが考えられるなぁ・・・


自森人読書 世界は密室でできているTHE WORLD IS MADE OUT OF CLOSED ROOMS.
★★

著者:  水森サトリ
出版社: 新潮社

  沢村幸彦は、中2の時、友人の綾瀬涼平とスクーターで海まで遠乗りしたとき、突如胸を蹴られて崖から転落。大怪我を負います。それで手術ののち中学2年生から復学するのですが、大好きなバスケはできないようになり、いつでも眼帯をはずさない少女や、植物の声を聴く機械をつくっている変わり者といった不思議な人たちとともに過ごすようになります・・・

  「宇宙的スケールの青春小説。」という宣伝を見てから、手にとって読んで、そんなに宇宙的なのか、と首をかしげました。いまいち青春小説とファンタジーをからめた意味が分かりませんでした。もう少し、うまくからめていって欲しかったです。

  それと、また夢だ・・・ ということを思いました。夢が登場します。『平成マシンガンズ』でも夢がでてきて、いまいちとりとめのない感じで終わってしまったんだけど、それと似た感じです。まぁ面白いといえば面白いんだけど。いまいち効果的じゃない、というか・・・

  個性的だけど、なんとなくどこかにいそうな登場人物たちの描写がうまいです。ただし最後の和解の部分(?)もすっきりしないなぁ・・・

  まぁつまらなくはないけど、あまり面白さが感じられなかったです。


自森人読書 でかい月だな
★★★★

著者:  川上健一
出版社: 講談社

  二宮清純というスポーツ評論家の著書の中で引用されていて、面白そうだなぁと思った本です。しかしどこを捜してもみあたらない。もうだめかなぁ、と諦めかけていたら、自由の森学園の図書館に文庫本がありました。案外いろんな本があるんだよなぁ、自由の森学園の図書館って。

  一匹狼の投手・江夏豊の野球人生を(途中までだけど)ずっと追っていったものです。冷静なアナウンスのような文章と、江夏豊自身の独白が交互につながってきます。現在では、ファンから『20世紀最高の投手』とまで絶賛されていますが、当時は、マスコミから徹底的に叩かれていました。「若い礼儀を知らない小僧」というふうに見られたからです。阪神時代、歴代監督との軋轢がクローズアップされて非難され、黒い霧事件に巻き込まれて非難され、巨人に9連覇を許したことを非難され、いろんな失言で非難され、スキャンダルで非難され・・・

  江夏豊は徹底的に叩かれます。それでもぼろぼろの体を薬(痛み止めとかその他いろいろ)でなんとか保って闘い続けるところは凄い、としか言いようがありません。あとになって見てみると、「礼儀を知らない小僧」「傲岸不遜な野郎」でありながら、それと同時に「孤高のエース」だったのだともいえる、ということに気付きます。

  『博士の愛した数式』のなかに登場する博士は、阪神というより江夏豊の熱烈なファンなのですが、その気持ちがよく分かります。江夏豊は凄い人だもんなぁ。


自森人読書 サウスポー魂
★★★

著者:  川原泉
出版社: 白泉社


 ・レナード現象には理由がある
 ・ドングリにもほどがある
 ・あの子の背中に羽がある
 ・真面目な人には裏がある
という互いに関連のある、短編の集められたものです。

  『レナード現象には理由がある(レナードげんしょうにはわけがある)』は、レナード効果というのを起こしてしまう、蕨よもぎが主人公。超がつくほどの進学校らしい彰英高校に、なぜか入学してしまった蕨よもぎ。彼女は、テストで凄い点数をとる隣の席の飛島穂高のことを気になり始め・・・

  「川原泉が、以前とはがらりと違う絵柄になった」と言われても、僕は以前の川原泉の作品を読んだことは無いので、よくは分からないのですが。すっとする軽い感じの短編ばかりで、面白かったです。絵柄はやわらかいし。中身もやわらかくて、萩尾望都みたいな感じじゃないし。なんというかなんとなく読む、ような感じです。

  それにしても、自由の森学園とは全く異なる世界だなぁ・・・ 登場人物の学生達が制服着ているという時点で、う~んなんか自森とは違う、ということになるけど。偏差値とか、超進学校とか、そういう言葉がでてくると、もう別次元みたいな感じです。


自森人読書 レナード現象には理由がある
★★★★★

著者:  あずまきよひこ
出版社: メディアワークス

  5歳の「よつば」の物語。元気で、活発で、とかそんな言葉ではくくりきれないくらい自由奔放というか、強烈なよつばの毎日が描かれています。ストーリーを説明しようにも、説明できない・・・ 物語の始まりは夏休み1日前、とある町に、よつばととーちゃんが引っ越してくるところから始まるんだけど、そのあとは本当に、よつばの毎日、です。そうとしかいいようがない・・・ とにかく面白いです。

  書くことないので、登場人物の紹介でも。登場人物は、よつば、とーちゃんの一家。とーちゃんの友達で、花屋の息子、ジャンボ。隣家の綾瀬家のあさぎ、風香、恵那、綾瀬家の母・父の一家。恵那の友達、みうら。という感じです。あと、やんだ、虎子、しまうーとか。という感じです(って何の説明にもなっていない・・・)

  とーちゃんは、よつばのお父さん(実の親ではない)で翻訳家。普通に常識的だけど、よつばと張り合ったりするとき、子どもっぽくなったりする人、なのかなぁ。ジャンボは、2メートルを超える巨漢。花屋の息子。よつばの家によく来て遊んでくれる。恥ずかしがりや。

  あさぎは綾瀬家の長女。大学生。茶髪。凄い美人で、今までフラれたことがないらしい。風香は綾瀬家の次女。高校生。ロマンチスト。どこかはずれていて、だけど、まぁまぁしっかりしている。恵那は綾瀬家の三女。小学4年生。よつばとよく遊んでくれる。度胸があって、しっかりしている。という感じかなぁ・・・ 全然うまく説明できない。

  とにかく、奇想天外なまでに面白い人たちの生活が、面白いです。


自森人読書 よつばと!
★★★★

著者:  森見登美彦
出版社: 新潮社

  「自主休学」をしている京都大学農学部の5回生「私」の物語。「私」には三回生の時、水尾さんという恋人ができた。だが結局、水尾さんにふられてしまう。今では、水尾さんへの恋情はすでに断ち切っている、と「私」は思い込んでおり、「なぜ自分が水尾さんに惚れたのか」ということを冷静に見つめよう、と200枚以上になる大レポートを書いている。

  「私」は水尾さんに避けられ、「研究停止」の宣告を受けながらも水尾さんの観察・研究を続けていた。そんなある日、水尾さんを追いかける、あやしい男「遠藤」に出会う。「私」と「遠藤」は、互いに反目し合い、妨害し合うのだが、「私」は暴漢に襲われたときに「遠藤」に救われ、それ以来理解(?)し合うようになる。恋人のいない若者を苦しめる、クリスマスがやってきた。町の一角で、ええじゃないか騒動が起こり・・・・・

  妄想と幻想に満ちた生活を送る大学生たちの物語。水尾さんをつけているのは、ほとんど「ストーカー」に近い、というか「ストーカー」なんだが・・・ どこか突き抜けた文章なので、読んでいるだけで笑えてきます。ただし、少し読みにくいかも知れないけど・・・

  日本ファンタジー賞を受賞した作品だそうです。

   万城目学と並んで、京都・京都大学を舞台にしたファンタジーというのか、青春小説というのか、面白い物語を書いている森見登美彦のデビュー作。万城目学・森見登美彦の2人、周りでは読んでいる人がまったくいなかったんだけど・・・(高校生は全然読んでいないのかなぁ) おすすめです。


自森人読書 太陽の塔
★★★

著者:  正本ノン、丹内友香子
出版社: ポプラ社

  ノンフィクションです。自由の森学園人力飛行機部の15年間がまとめられています。

  自由の森学園の人力飛行機部は1985年に、部員1名、顧問1名でスタートしました。それから地道に努力し、「鳥人間コンテスト」にでようと頑張ります。大学生みたいに、専門知識を持っている訳ではありません。書類審査落ちの年もあるし、リング型の機体のときには壊れてしまってリタイヤしたこともありました。それでも、プテラノドン型のものを作って、「鳥人間コンテスト」の出場にまでたどり着きます・・・

  プテラノドンは、大きな反響を呼び、優勝したチームをさしおいて専門誌の表紙を飾ったりもしたそうです。だけど、そのプテラノドンで終わりではありません。今も人力飛行機部の挑戦は続いています・・・

  自由の森学園の図書館にあったので手に取りました。今でも自由の森学園に人力飛行機部はあるし、人力飛行機部の顧問、伊藤賢典さんはいます。部室(というか、1つの建物まるごとみたいな感じ)もあります。それなのに、あまり人力飛行機部のことを知りませんでした。こんな歴史があったんだ、と驚きました。面白いなぁ。

  何に分類すればいいか分からないので(ノンフィクションというのがないので)、青春・学園ものにいれておきます。まぁそれで、はずれてはいないと思うし。


自森人読書 ぼくらが鳥人間になる日まで 飛べ!プテラノドン
★★★

著者:  杉本亜未
出版社: 講談社

  まだ完結していないのに★3つというのも気がひけるのですが。

  マンガでマジックのことを描くのには限界があるのではないか、という気がします。本物のマジックを、目の前でパッとやるのと、マンガの中の作中人物がマジックをするのでは、まったく異なります。マジックというのはタネがあって成り立つ一種の劇というか、虚構であるのに、それをさらにマンガで描くとなると、どうしても凝ることが必要な気がします。でもそこに工夫があるわけじゃない。

  ストーリーとしては別につまらないわけじゃないけど、そこまで目新しいわけでもないので、あまりページをめくる気になりませんでした。まぁ、それほど明るいとはいえないストーリーの中、それを受け止めている主人公の少年はかっこ良いんだけどなぁ。「障害を持ちながらも手品によって、多くの人たちに夢を与える少年」か・・・

  なんでだろう。あえてマジックを題材にしたというのは斬新かどうか知らないけど、新しい気がするのになぁ。まぁどんどん続きを読んでいったら、また評価が変わるかもしれません。終わっていないものをどうこう言うのは難しいからなぁ・・・

  でもはなしが進むごとにちょっとずつ面白くなってきているかなぁ、と感じます。まだまだこれからか。


自森人読書 ファンタジウム
★★★

著者:  佐藤多佳子
出版社: 新潮社

  映画にもなった、落語を愛する男の物語。

  26歳の今昔亭三つ葉は噺家。前座の1つ上の二ツ目。落語が大好きだけど、恋にも悩み・・・ でも女の心にはとんと疎いので、悶々とすることになります。そんな中、ひょんなことから、喋るのが苦手な人たちの師匠をやることになります。あがり症のいとこ、口下手の美女、いじめられてる小学生、赤面症の元プロ野球選手、そんな人たちに「喋り」を教えようとするんだけど、それは全然難しいことで、四苦八苦・・・ 全然うまくいかないが・・・

  文章が小気味良いです。かなり意識してやっているはずのとんとん進んでいく文章が良いです。物語としては恋愛小説になるのかなぁ。でもこの読書日記の分類の中にそれがないので、青春・学園ものにいれておきます。だいぶ違う気がするんだけどなぁ。

  今昔亭三つ葉のところへ行ったからといって、すぐさま効果テキメンという訳じゃないんだよなぁ。別に劇的に何かが良くなるという訳ではない。だけど、今昔亭三つ葉の一本気に触れて何か見つけ、自分に希望をもち、自分に「よしっ!」と言える、そんな感じだ、と書いている人がいるけど、まぁそんな感じだなぁ、と思います。


自森人読書 しゃべれどもしゃべれども
★★★★★

著者:  山岸凉子
出版社: 集英社

  1970年代の物語です。主人公・ノンナは、ソビエト連邦支配下のウクライナ共和国・キエフのバレエ学校に通っていました。長身(当時「規格外」といれていた)で、荒削りな踊りのため、いつもバレエの教師である母親からは叱咤されていました。その上、優雅に踊る姉といつも比べられ、劣等感を抱いていました。

  しかし転機が訪れます。ソビエト界屈指の男性ダンサーにして、「金の星」とよばれるユーリ・ミロノフがノンナの才能を見出し、レニングラードのバレエ学校に連れていってくれたのです。その後、ノンナは新作バレエ『アラベスク』の主役に抜擢され、若くしく素晴らしいバレエダンサーとたたえられるようになります。しかし、ユーリ・ミロノフとの意思疎通に苦しみ、また「天才」と称されるいろんなダンサーとの出会いの中で、苦しみつつも成長していきます・・・

  あまりバレエマンガを読んでいないのにこんなこと言うのもどうかとは思うのですが。僕は、『アラベスク』は、バレエマンガの最高傑作じゃないかなぁ、と思っています。

  どこまでも上へ上へとのぼっていく主人公ノンナと、「天才」といわれる強烈なライヴァル達。ノンナがつまづくのは、だいたい人間関係のことです。それをひきずってバレエまでうまくいかなくなってしまうのです。嫉妬や悲しみ、それらに苦しめられつつもそれでもバレエを続けて、さらに上を目指すノンナ。バレエへの情熱と、人間としての弱さ、両方が表れていて、とても共感できる人だなぁ、という気がします。

  そして中身が濃いのに、どこまでも延々と続くということがなくて、4巻でコンパクトに収まっているのがいいです。熱い部分がぎゅっと凝縮されている気がします。


自森人読書 アラベスク
★★★

著者:  あだち充
出版社: 小学館

  ライヴァルでありながら、親友の2人、国見比呂(ひろ)と橘英雄。2人は中学野球で大活躍し、地区大会二連覇を果たします。しかしそのあと、野球を続けると確実に肘が壊れると医師に診断されてしまい、比呂は甲子園を諦めて野球部の無い高校へすすみます。けれど、その高校には「野球愛好会」というのがあり・・・ しかも比呂の診断をしたのはやぶ医者だったということが分かり・・・ 比呂はもう1度野球をやることに決めます・・・

  暗いはなしになるのか、と思いきや。やっぱり甲子園に向けてまっしぐらの青春スポコン(っていうのかなぁ)の野球マンガです。あだち充は、野球が好きなんだなぁ・・・・・

  シンタの家で、夜1時頃読んでいました。1度に半分くらい読んでしまいました。あだち充の作品の終わり方はどれも余韻というか、後味を残すなぁ、と思います。まぁここには書かないが、このおはなしのラストも印象的です。それにしてもどれもこれも似ているなぁ、ストーリーと絵柄が。どれを読んでいるのか、途中で分からなくなってくるほどです。

  というより、全部主人公の性格が同じような気がしてきます。飄々としていて、実は良い奴。それで、意外とモテて(いや当然モテて、かなぁ)。やっぱりかっこいい。とかそんな感じで。面白いから、いいんだけど。

自森人読書 H2
★★★★★

著者:  吉田秋生
出版社: 小学館

  鎌倉の高校を舞台にした、朋章と里伽の2人を中心としたいろんな人たちの恋模様です。

  1話ごとに別の人の視点に移って、物語がすすんでいきます。いくつもの視点がからみあうことで、かえって何かが見えてくる。そんな物語かなぁ、と思いました。ミステリ小説だけど、宮部みゆき (『理由』)が同じようなことをやっている気がします(ちょっと違うか・・・)。青春のストーリーだと、それとはまた違っていいなぁ、ということを思いました。

  この長さ(1冊)がいい、と感じました。ぎゅっと良さが凝縮されて、きれいにまとまっている気がします。僕は、本が長いのは嬉しいのに、マンガが長いと辟易してしまいます。どうしても読むのが面倒くさくなってしまうんだよなぁ。30巻とか巻数になると、まず全巻揃えるか、もしくは全巻揃っているところへ行くのが面倒だし・・・

  最近のマンガはみんな長くて、読むのが大変だけど、『ラヴァーズ・キス』は1巻なので、ぜひどこかで手にとってみて欲しいなぁ、と思いました。

  つけ加え。そういえば朋章って、最近の作品『海街diary』にも登場する、ということにあとで気付きました。面白い、作品通しでつながっているんだ・・・ 同じ鎌倉だもんなぁ。


自森人読書 ラヴァーズ・キス
★★★

著者:  あさのあつこ
出版社: 岩崎書店

  ある日。中学2年の転校生・瀬田歩は、クラスメイトの秋本貴史から付き合ってくれないか、と訊かれます。瀬田歩は男に告白されたのか、と思ってどきっとするのですが、それは実は一緒に漫才コンビを組まないか、というお誘いでした。2人は、コンビを組んで、漫才をやることになり・・・

  読み始めた時は面白かったです。1巻読んで、これは面白いかも知れない、と思いました。でも2巻、3巻と読みすすめていくうちに段々飽きてきました。映画化が決定されたらしいけど、それを聞くと、なんでもかんでも映画化すればいいってものでもないだろう、と言いたくなってしまいます。(『鴨川ホルモー』や、『容疑者xの献身』が映画化されるのはいいことだ、と喜んでいるくせに・・・)

  いろんな人が「心温まる」とか言って、あさのあつこの作品をほめまくるけど、ボーイズラヴを連想させるあざとさが気になる。なんというか、微妙であざとくて、中途半端にひっかかっているんだよなぁ。というより、全体的に中途半端な気がします。各所で笑いを誘っているのか、よく分からない部分があるんだけど、そこも別に笑えるわけじゃない。それで、漫才がストーリーの主眼になっている訳でもない。

 1巻は面白いんだけど、巻がすすむごとに、だんだんとマンネリ化してくる、というのか、飽きてくる気がしました。★は3つだけど、続きを読もうとは思わないかなぁ、あまり。『バッテリー』もそうなんだけど、どうしてあさのあつこの作品は、先を読むのが面倒くさくなってきてしまうんだろう。自分でも不思議です。


自森人読書 THE MANZAI
★★★★

著者:  恩田陸
出版社: 集英社

  ある高校に、不思議な噂がありました。3年に1度、密かに「サヨコ」と呼ばれる役割(?)が受け継がれているというものです。いったいサヨコとは何なのか・・・? ちょうど六番目の小夜子が生まれる年。津村沙世子という美しい少女が、その高校に転向してきます。そのときいったい何が起こるのか? 「サヨコ」をめぐる高校3年生たちの1年間の物語です・・・

  って全然上手く説明できていません。難しいんだよなぁ。こういうおはなしです、と言い切るのが。まぁ是非1度読んでみることをおすすめします。

  僕は、「砂時計」というものに興味があります。中3卒業制作(未完成)の映画の歌詞を考えていたときにも・・・「砂時計」というフレーズを無理矢理入れようしていました。なんというか、砂時計の形というか、あの全体的な雰囲気が面白いのです。

  恩田陸『六番目の小夜子』を読んでいました。(またまた恩田陸の本です、恩田陸ばかり毎日読んでいるなぁ)すると、なんと「砂時計」というのが面白い形で登場してきました。
 岡田幸四郎の最後の解説に、永遠と刹那の関係のことが書かれていました。学校の時間は、(川のように)流れいき、永遠をはらみ、蓄積される閉じた永遠です。それに対し、生徒の時間は一回性の直線的な(火のような)刹那だというのです。

  そしてその人は、この『六番目の小夜子』のことを・・・「学校の時間(永遠)に抗う生徒の時間(刹那)の静かな闘争の軌跡」として見てみたい、といいます。その中で砂時計というのはどういう意味を持つのかというと、砂時計というのは、「円環しない時の流れを刻む」ものです。学校の時間(永遠)とは違う時間を刻む、刹那の象徴みたいなのです。そうか、面白い、砂時計をそういうふうに見ることもできるのか、と思いました。


自森人読書 六番目の小夜子
★★★★★

著者:  万城目学
出版社: 産業編集センター

  舞台は京都。京大の新入生の安倍は、貧しいので新歓コンパに片っ端から行って食費を浮かせていました。ある日、京大青竜会なるちょっと危なそうな名前を持つサークルのコンパへ。すると美しき美鼻を持つ乙女に出会ってしまい、そのまま入会してしまいます。いったい何のサークルなんだろうか? それも知らずになんとなくサークルに行っていました。そしてある日、『ホルモー』のことを知らされます。異形のものを使って戦うらしいが、いったい何なのかよく分からない。よく分からぬまま、『ホルモー』へと向かっていきます・・・

  傑作です。なんてバカらしくて、楽しそうな毎日なんだろうか。これを読んでいて少し京大に入りたくなってきました・・・ これはフィクションなんだけど、どこかリアルなんだよなぁ。サークルか。いいなぁ。もしかしたら、リアルかどうかということではなくて楽しそうなところがいいのかもなぁ。自由の森学園でもこんなことができたらいいなぁ、と思える楽しさみたいなものがあります。

  もっと細かいところを突っ込んで書いて欲しい気もしたけれど、(「吉田の諸葛孔明」凡ちゃんの智謀の冴えとか)とても面白かったです。と思ったら、『ホルモー六景』というのがありました。でも、そちらはう~んなんかもう1つ、という感じでした。やっぱり『鴨川ホルモー』が面白い! どうやら映画化されるらしい、というはなしを聞きましたが、映像が目に浮かんできます。

  「鹿男」も面白いし、「鴨川ホルモー」も面白いし、万城目学って人は凄いなぁ。「鹿男」も、「鴨川ホルモー」も、両方ともおすすめです。

  ヴォイスの原稿です。


自森人読書 鴨川ホルモー
★★★★

著者:  上條淳士
出版社: 小学館

  パンクバンド「GASP」のボーカルだったトーイ。けれども彼は自分の求めるものはパンクではないし、パンクからそれを見出すこともできない、と悩みます。それを察したバンドリーダー桃ちゃんは、トーイの背中を押しました。トーイは、パンクバンドをやめて、アイドル・哀川陽司のバックバンドのベースになります。そこで哀川陽司をおちょくってライブを乗っ取ってアピール。そしてそのあとソロデビューしてスターとなりますが・・・

  ルックス良し、スタイル良し、音楽の才能にすぐれ、喧嘩も強いトーイ。彼はアイドルとして祭り上げられます。けれどトーイ自身は、自分の音楽を守りぬき、何にも染まらない白さを保とうとします。80年代のオウム真理教の掲げた「純粋」とつながるとかいう深読みをする人もいるみたいだけど、それはどうだろうか? そこまで深読みしなくてもいいんじゃないかなぁ。

  単純にTO-Yの音楽の物語として読んだら、とても面白いです。それと、ちよっとエキセントリックっぽいけど、よく分からない登場人物たちが面白いです。眼鏡をつけると豹変する人とか、眼鏡をとると豹変する人とか。眠そうな顔を見られるのがいやで朝は仮面をつけてる人とか。変人ばっかりだなぁ・・・

  それにしてもこれを読んでトーイに憧れた人は多いんだろうなぁ、と思います。かっこいいもんぁ・・・


自森人読書 TO-Y
★★★

著者:  萩尾望都
出版社: 小学館


  主人公はナイーブな青年・レヴィ。不眠症ぎみのバレーダンサーです。彼はひとりで静かに眠りたいと思って引っ越してきたのに、隣人のモリスとその恋人ミリーは世話好き。しかも、ミリーの、レヴィへの親切心はいつのまにやら恋心へと変わっていました。ただでさえ、人間関係に苦しんでいる年頃の男の子のレヴィが、三角関係におちいってしまったのです・・・

  レヴィはうんざりしてしまいます。「親切」なんかされたっていやだ、結局無償の親切なんてありえない、世話されたって決して見返りを求められない、感謝知らずの男になりたい、と彼は思います。その気持ち、ちょっと分かるなぁ、と思います。わがままだけど。

  バレーの場面というのはそれほど多くはでてきません。でも、ミリーがレヴィに恋したのは多分、レヴィの演じる美しいバレーを見てしまった瞬間です。だからけっこう重要な場面じゃないかなぁ、と思います(それにしてもバレエマンガってものすごくたくさんあるなぁ。全部一覧にしてみたら面白いかも)。

  レヴィは、うんざりして、ためいきつくような苦悩を味わっているみたいです。でもまぁ全体的にコミカルです。そしてなにより萩尾望都の絵です。すらすら読めてしまいました。


自森人読書 感謝知らずの男
★★★

著者:  折原みと
出版社: ポプラ社

  親友のタケルが山で死んだ、と親友、祥太、アツシ、ノブは知ります。3人は、タケルとの約束を果たすために、親たちにはヒミツで山へ旅にでかけました。その約束とは4人で天命水を見つけよう、というものでした。天命水は、飲むとその人の心からの願いを必ずかなえてくれるといいます。どうやらタケルは、1人で探しにいき、死んだようでした。残された3人は、タケルのあとを追うように山を登っていきます・・・・・

  男の子たちの友情の物語です。子どもから大人へとじょじょに変わっていく中。4人は受験勉強とかでバラバラになっていきます。なんでこんなに忙しいんだろうか? 大人になるってそんなにいいこと? いろんな疑問ががうずまいています。そして死んだタケルへの思いが、消えずに残っています。

  ぐっとくるおはなしでした。そこまで洗練されていない思い、というのがとても分かるような気がします。それと、あのザ・リトルブランチの演劇とも重なって、よりいっそういろいろ思ってしまうのかなぁ。2008年3月15日に、『永遠の夏休み』の演劇を見にいきました。その時見た演劇は今でも覚えています。その演劇は男の子ばかり、というわけではなかったし、もともとの物語とは違った部分も多くありました。それでも「友情」とかつながるメッセージはいろいろありました。それとだぶって僕の中では「永遠の夏休み」はとても記憶に残っています。

関連リンク
3月15日 『永遠の夏休み』


自森人読書 永遠の夏休み
★★★★

著者:  森絵都
出版社: 理論社

  「おめでとうございます、抽選にあたりました!」と天使は死んでしまった「ぼく」に告げました。「ぼく」は、生きていた頃、悪事を働いたために輪廻のサイクルからはずれてしまいました。けれど抽選にあたると生まれ変わる事ができるのです。自殺した「小林真」という少年の体をかりて生まれ変わることになります。

  僕は前世でどんな悪いことをしてしまったのか? 記憶は何も残っていません。思い出そうとするけど思い出せません。自殺した「小林真」君はどうやら人生に絶望していたらしく、まともな友達1人いないようでした。生まれかわった「ぼく」は、他人の人生だし、と気楽にすごしますが・・・

  「小林真」として生きていくうちに、「温かい」と思っていた家族が、実はぎくしゃくしていたと気付いたりもします。失望したり、つらいこともたくさんあります。けれどそれだけではなくて、人の温かさを感じることもあります。生まれわった「ぼく」は、どうなるのか? 人生を捨ててしまった自殺した「小林真」の人生はどうなるのか・・・

  最後につながった時はすっきりしました。大好きなおはなしです。説教くささというのがまったくない。それでいてカラフルというタイトルの意味がしっかりと伝わってきます。


自森人読書 カラフル


著者:  あさのあつこ
出版社: 教育画劇

  主人公は、自分に絶対といってもいいほどの自信を抱くピッチャー・原田巧。自尊心が強くて威圧的で、あまり人に心を開きません。なれなれしくされることを嫌います。基本的にクール。周りとぶつかりつつも、じょじょに周りを変えていく不思議な力を持ってるみたいです。でも、どう考えてもいやな奴だよなぁ。

  登場する人たちは・・・ 巧との関係で苦しむけど、あくまで巧とバッテリーをくむキャッチャー・永倉豪。病弱で、激しい運動の出来ないが、同情をされるのはきらいで優しくて周りを和ませる巧の弟・青波(せいは)。人望があり、野球を愛する元キャプテン・海音寺。オトムライのあだなのある管理主義の教員、戸村。横手第二中学校の4番にして天才打者といわれる門脇秀吾。門脇の親友にしてひねくれまくっている男・瑞垣俊二。

  僕はあさのあつこの文章はあまり好きじゃありません・・・ なんていうんだろう。脳内に映像が浮かび上がってくるシンプルな文章を書くのは恩田陸の方がうまい。揺れ動く子どもから大人への移り変わりの時期の様子を書くのは森絵都の方がうまい。では、あさのあつこの良さというのは何か?

  「少年の心を描ききっていること」や、「不器用さ・温かさ」があげられています。でも、巧は幻想の中のキャラクターのような気がします。野球などの、スポーツという協調性を求められる中で、孤高を保つ、というのは自己満足でしかないし、それでは野球ができません。それに普通、上級生がいて下級生はあまり口出しできないものです。どうしてそれが許されるのか、というと・・・

  あさのあつこは、上級生たちを退場させるために、「巧へのリンチ事件」を起こしてしまいます。上級生たちが巧を鞭打ってリンチしたので退部する、という都合の良いストーリーをつくってしまったのです。だけどこんなの現実にはありえません。いじめというのは基本的にもっと陰湿なものです。中3の男の子が、そんなことをやるとはとても思えません。高校生のいじめにしたって「鞭打つ」なんて、そこまでやらないだろう、おふざけにしたって。こんな理解不能な場面いれておいて、児童小説なのかな。

  野球をテーマにしているようですが・・・ リンチ事件で全国大会出場も辞退してしまいます。そしてもう物語としての展開もないので、非公式試合で隣の学校と戦うだけ。試合としてはあまり面白みもないので、原田巧と永倉豪の関係とかそこらへんにばかり目がいきます。

  巧を見ると、野球にうちこみ、永倉豪によりかかり、そして恋人がいない。少女が登場し、巧の憧れの人になったりしたら大変です。兄弟愛や友情を越えてしまってはいけないのです。あさのあつこが書くと、決して恋愛小説にはならない。男同士の友情(幻想のような・・)しかない。あさのあつこって、恥ずかしがりのやおい好きですか。うーんなんだかなぁ。

  極めつけはラストのシーン。あのラストシーンは明らかに逃げだ、と僕は感じました。巧の孤独と野球のもつ協調性との間にどんな整合性をとっていくのか、少しは楽しみにしていました。でもまったく物語は展開せず、結局あんなありきたりでどうしようもないラストに落ち着くとは・・・ 落胆というかなんというか、期待はずれでした。

  ある人の言葉を借りるなら、「あさのあさこは少女が書けない作家」です。それは好都合だったのかも、と思います。大人の憧れる少年像が生まれたのです。バッテリーは恥ずかしがりやの大人向け萌え小説だなぁ、と思いました。いやぁ、なんだか散々なこと言ってるなぁ・・・

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