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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★★

著者:  莫言
出版社: 岩波書店

  中国のマジックリアリズム小説。眩暈がしてきます。読んでいて本当に疲れました・・・ 物語はちょっと変な構造をしています。

  「酒国にて、街の政府高官が嬰児の丸焼きを食しているという情報を得た特捜検事は事態を重く見て、『丁鈎児(ジャック)』という捜査官を送り込みます。彼は、潜入捜査を行おうとするのですが、なぜか全てがばれていて、女と酒によって取り込まれていきます。そして、彼は激しい混乱の中で破滅していきます・・・」というのは、莫言が執筆中の『酒国』という小説です。つまり作中作。

  その莫言という高名な小説家は、酒国に住む文学青年・李一斗と往復書簡を交わしていました。その手紙が物語の途中途中に挿入されます。そしてその手紙とともに載せられているのは、文学青年が次から次へと送りつけてくるグロテスクな短編小説。文学青年は、それらの作品を世間に発表して欲しいと願うのですが、手厳しい体制批判が含まれているためか出版されません。青年はじょじょに体制批判を避け、莫言に媚びるような手紙を送ってくるようになってきます・・・

  文学青年の書いた短編小説の世界観は、『酒国』ともリンクしてきます。そうして『酒国』という小説と、往復書簡と、文学青年の書いた短編小説と、莫言自身の手記とが渾然一体となり、グロテスクで、どこかおかしくて、不可解な混乱が生まれています。

  本当に訳が分からないです。

  もうめちゃくちゃというしかない。でも楽しいです。美味しそうな嬰児料理と、溢れかえって物語を破壊しつく酒。体制を嘲笑しつつ、それを強く批判するその姿勢。醜い自分を自覚して自虐する莫言の自己反省。ぐちゃぐちゃだけど、この『酒国』と言う物語そのものが、今の中国それ自体を表している、という指摘には頷かされます。

  精神的余裕がある時に読まないと、精神崩壊を招きそうな強烈な作品。


自森人読書 酒国―特捜検事丁鈎児の冒険
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★★★★★

著者:  ジェイムズ・P・ホーガン
出版社: 東京創元社

  近未来。月で測量をしていた調査チームが、真紅の宇宙服を着た人間の遺体を発見します。その遺体はどこの月面基地にも所属していませんでした。しかも、調査の結果、死後5万年が経過しているらしいことが判明。人類は彼をチャーリーと名付け、チャーリーが何者なのかを解明しようとします。彼はほぼ現代の人類と同じ体型と同じ身体構造をしており、人類の仲間と考えられました。つまり明らかに異星人ではないのです。しかし、5万年前、地球上には人間を月面に送り込むほど高度な文明が存在したとは考えられません。物理学者、ヴィクター・ハントは全体を俯瞰する役につき、科学者たちを仲介して情報を流通させながら壮大な謎に挑みます。しかし、謎が謎を呼び、調査は暗礁に乗り上げ・・・

  SFミステリ。最高に面白い傑作。

  海外SF小説の中で好きな作品を1作だけ選んで欲しい、というふうになったら『星を継ぐもの』を選ぼうかなぁ、と思うほど。

  『星を継ぐもの』というタイトルがまず良い(Zガンダムの映画がまねしたほど)。

  そして、ミステリとしても素晴らしいです。感動と言う言葉を安易に使ってはならないと思うんだけど、謎が解き明かされた時には感動しました。全てがみごとにぴったりはまります。人類が抱え込んでいる色んな謎、(たとえば、古生物学におけるミッシングリンクの謎)への解答が示されます。

  素晴らしいアイディアが根幹にあります。しかも、ジェイムズ・P・ホーガンの作品の底流には人間の良心への信頼があります。そこも良いです。とにかくおすすめ。


自森人読書 星を継ぐもの
★★★★

著者:  グレッグ・イーガン
出版社: 東京創元社

  西暦2034年、突如として地球の夜空から星々が消えました。冥王星軌道の倍の半径を持つ謎の物体「バブル」が発生し、太陽系を包囲したのです。世界は大混乱に陥り、各地で暴動が発生し、新興宗教がタケノコのように大発生。テロも相次ぎました。科学者たちは必死でその原因を探りましたが、何も分かりませんでした。

  それから33年の時が流れました。元警察官ニックは精神病院から消失した女性の捜索依頼を受け、女性を誘拐したらしき企業に忍び込みますが逆に捕まり、忠誠モッドを脳内にはめこまれます。彼はその謎の組織のために働くことになります。ですが、その内彼は組織の研究に巻き込まれ、特殊な能力を持つようになります・・・

  ハードSF。

  硬質な物語です。なかなかに読みづらいです。しかし、振り落とされないように物語を追っていくと、中盤の辺りから面白くなってきます。あまりにもとんでもない世界の秘密が発覚します。逆転の発想だ、と感じました。

  グレッグ・イーガンはほら吹きです(まぁほらではない可能性もあるのかも知れないけど)。量子論を基にし、そこにナノテクを組み合わせることで普通の世界を普通の世界ではなくしてしまいます。世界の見方ががらりと変わります。グレッグ・イーガンは本当に凄い人だ、と感じました。この物語を翻訳した山岸真という人も凄いと思いました。

  『宇宙消失』には、様々な科学問題に真正面から取り組み、世界の成り立ちを理解し、検討しようとするSFというものの醍醐味がつまっています。


自森人読書 宇宙消失
★★★★★

著者:  アルベール・カミュ
出版社: 新潮社

  二部構成。

  主人公はアルジェリアのアルジェに暮らすムルソーという男。彼は、母親の訃報を聞いて養老院へ行き、母の葬式に出席しますが、とくに泣いたりはせず、淡々とそれを終え、すぐさま家に帰りました。そして翌日には知り合いの女性とセックスしたりして、いつもと同じように日々を過ごします。しかし程なく悪友レエモンに巻き込まれ、アラブ人との喧嘩に加勢したことからなんとなくアラブ人の男を射殺してしまいます。ムルソーは、「太陽のせい」と言いました。そして、死刑の判決を下されることとなります・・・

  変則的な法廷小説のよう。

  太陽が照りつける灼熱の地が舞台だからか、からっとしています。別に盛り上がる部分があるわけでもないのに、とても面白かったです。なんというか、変てこな爽やかさを感じました。人を殺してしまったのに、なんとも思わない彼の心の風通しの良さというか悩まなさが面白いです。

  主人公は決して狂った人間ではない、と僕は感じました。それなりに一貫した論理を持っている人のような気がします。ある意味、芝居をせずに自分の思ったとおりに行動しているわけだから、真っ当なのではないか。

  最終的に、ムルソーは死刑判決を下されるわけですが、全く悔い改めていない者に罪を与えたところで意味があるのか。全く裁きとして成立していない気がします。彼は、周囲の決まりからはずれたことから、「異邦人」となってしまったのかなぁ。その場合、その事態に困るのは周囲で、彼自身は全く困らないというとこになります。死にも重い意味を見出さない彼という存在に、少しでも傷を与えうる者はどこにも存在しないわけだから。だから、消されてしまったのか。


自森人読書 異邦人
読書日記のはずなのに、この頃、本の感想を書いていないです・・・ なんというかだめだ・・・
学園祭の予算の問題を考えなければ、と思います。
多くの問題があるようです。

学園祭後、係が各企画の予算・売上を確認してみると計算が合わない場合が多くありました。
そして、大抵の企画は、律儀に売り上げた商品の個数を記録していませんでした。
だから、理由を確認していくことは困難です。
なんとなく、書類上で、辻褄を合わせていくしかありません・・・

しかも。
実行委員会に届けていない企画が、勝手に売買を行うことも可能ですが。
現に、そのような企画も存在したようです。

そして、数千、数万単位の儲けを、個人の懐に収めている人がいることも判明。
本部メンバーの人たちの中にも関与している人がいました。
高3がそれではどうしようもない、というか・・・

一昨年から、現金方式を導入しました。
しかし、なんというか、無理があったとしか思えないです。
もう、面倒だし、金券方式に戻して良いのではないか、と思います。

学園祭が終わりました。

今度、11月20、21日には、公開教育研究会があります。テーマは「中学校と高校がある意味」だそうです。

自由の森学園の授業が公開されます。分科会もあります。
先日、NHK教育の番組「ピクニック」がありました。自由の森学園の高校生が出演していました。
自由の森学園食堂のことを、日テレの夕方のニュース「news every.」が2010年10月28日に取り上げていました。
『漱石・芥川・太宰』
『漱石・芥川・太宰』
佐藤泰正、佐古純一郎の対談。

『太宰治はミステリアス』
『太宰治はミステリアス』。
著者は、太宰治という作家像がどのように作られたのかということを明らかにしていきます。非常に面白いです。


読んだ本
佐藤泰正、佐古純一郎『漱石・芥川・太宰』
吉田和明『太宰治はミステリアス』
410平成マシンガンズ
★★★ 三並夏

409戦争を止めたい―フォトジャーナリストの見る世界
★★★★ 豊田直巳

408アロマパラノイド―偏執の芳香
★★ 牧野修

407戦争を演じた神々たち
★★★★ 大原まり子

406百億の昼と千億の夜
★★★★★ 光瀬龍
★★★

著者:  三並夏
出版社: 河出書房新社

  親の離婚の後、私は父と父の愛人とともに生活しています。愛人とはとても仲が悪く、学校での毎日も楽しいものではありません。いじめられないようにうまく立ち回っているだけ。そんな中で、夢に現れた男にもらったマシンガンをぶっ放し続けます・・・

  第42回文藝賞受賞作。著者・三並夏はこの作品で15歳にしてデビュー。綿矢りさの記録を追い抜いたそうです。

  「ありきたり、目新しいものはない、でも15歳にしては凄い」といろんな人から言われまくった作品。僕はけっこう凄いと思いました。ありきたりな日常を普通に書いて、それを作品として完成させるのはかなり困難なことだと思います。

  句読点と改行を削った文章とかもまぁ全然斬新ではないけど、切迫した雰囲気を伝えてくれるし、全体に漂うなんというか暗いというよりは、空虚な雰囲気もなかなか良いです。しかし、読んでいて笑える部分がほとんど少しもないというのは辛い。まぁそういう作風ではない、ということなのだと思うのですが、なんというか一息つけない。

  『平成マシンガンズ』というタイトルの割にはどこにマシンガンを向けているのかすらいまいちすっきりしない感じが良かったです。最後急転直下のオチは、なんだかほったらかしというより、投げやりな感じがするけど、そこまで含めてまぁ世の中所詮はこんなもんだ、みたいな考え方が表れているような気がしました。。平成はそういう時代ということ、なのかなぁ・・・


自森人読書 平成マシンガンズ
自由の森学園後夜祭がありました。
今日、自由の森学園では、延期になっていた後夜祭がありました。
この頃、自森のこと、書いていませんが、土日に学園祭がありました。いろいろと大変なこともあったような気もしますが楽しかったです。しかし、雨のため、後夜祭のみが延期に。明日、なのか。


そのほか、自由の森学園関連の情報。

2010年10月28日(木)17:50~19:00(自由の森学園食生活部は18:35~頃)
「news every.」第二部で、自由の森学園の食堂が取り上げられるそうです。

10月30日(土) 午後6時50分~7時15分に、ピクニック後編があります。
自由の森学園の高校生が歩きながらいろいろなことを語る、という企画だそうです。
「図書新聞」のページが面白いです。
数多くの書評が載っています。

「図書新聞」
★★★★

著者:  豊田直巳
出版社: 岩波書店

  たくさんの写真が印象的でした。「岩波ジュニア新書」の中の1冊だけど、ジュニアじゃない人にも読んで欲しい本だと感じました。現場に赴いて事実を知り、それを語ろうとする豊田直巳さんの視点・立場は素晴らしいと感じました。とても読みやすくて分かりやすい文章も良かったです。僕が知りたいと思っていたことが書かれていたので、とても面白く読むことが出来ました。

  イラク戦争に協力する日本政府に対して違和感を覚えることがあります。というより、自衛隊派兵はおかしいのでは、と思っています。だけど、高校生がそのような感想を抱いても、それはただの感想にしか過ぎません。しかし豊田直巳さんは実際に戦地へ赴いて事実を確認しています。だから豊田直巳さんの書くものには裏付けがあるということになります。「政府による「人道支援」よりも、ペシャワール会による支援の方がより大きなものをアフガニスタンにもたらした」「イラク人にとってはフセインもアメリカも変わらない」と書かれていますが(そして、現地に赴いた多くの人が同じことを言っている)、それなのにテレビはそのような情報を報道しません。

  どうして事実が伝わらないのか。日本のマスコミはどうしてこうも頼りにならないのか(アメリカと、そして日本政府の視点偏重なのか)。本当に考えさせられました。人道支援・国際援助などといって、日本政府は色々なことをやっていますが、それは本当の人道支援にはなっていないのでは(アメリカに対して媚びを売っているだけでは)? としっかり追求すべきだろうと思いました。

  最後、沖縄、さらに東京に話を持ってくるところが良かったです。ぐっと身近に感じました。多くの人にとっては沖縄の出来事さえも遠いのかも知れないけど、僕は修学旅行で沖縄へ行ったことを思い出します。渡嘉敷のガマの中で、親を殺してしまったという金城重明さんは「集団自決」という言葉を避け、「集団強制死」があったと語ってくれました。とても重い内容でした。けど、金城重明さんの言葉が持つ重み全てを僕が受け止めて理解するのは不可能だけど、そこで理解できないと諦めるのは逃げているだけなのだから、卑怯だろうとも思いました。というか、そんなふうに人の思いに心を馳せることは無理と言い出したら、歴史に学ぶことが不可能になってしまう・・・


自森人読書 戦争を止めたい―フォトジャーナリストの見る世界
★★

著者:  牧野修
出版社: 角川書店

  ノンフィクションライターの八辻由紀子は、UFOに心惹かれている人たちを取材する中で、偶然限定本の『レビアタンの顎』を手に入れます。それは殺人者が自分の殺人について告白したものでした。著者は、言語に代わるものとして匂いを提示。それでもって別の形で、世界を理解することができると説くのですが、八辻由紀子には新興宗教の一種としか思えませんでした。ですが、彼女はその本を手に取ってから突如として怪異に襲われるようになり・・・・・

  ホラーというか、ファンタジー小説。いまいちでした。

  『アロマパラノイド 偏執の芳香』は、『香水 ある人殺しの物語』という小説の二番煎じというか、劣化バージョンでしかないような気がしました。『香水』は、上品な文章によって狂気や錯乱、その他猥雑なものでさえも美しく見せてくれたのに、『アロマパラノイド 偏執の芳香』はただ単に雑多なだけです。まとまりがないし、綺麗ではありません(物語の構成はみごとにぴちりとはまっているだけど)。

  とにかく、UFOだの、電波だの、インドの神話だの、いろんなものを詰め込みすぎて、匂いの物語ではなくなっていく部分が納得できませんでした。

  クライマックスにおける異形同士の対決も、意味が分からないです。外国のホラー映画みたいに、化け物を退治してめでたしめでたしというのは安易ではないか。しかもその後にまだ何かありそう、と思わせぶりなシーンを挟む手法もありきたり。

  まぁそれなりに面白いんだけど、そもそも思わせぶりなホラー小説の雰囲気が好きではないので、あんまり楽しめなかったです。


自森人読書 アロマパラノイド―偏執の芳香
★★★★

著者:  大原まり子
出版社: アスペクト

  神話のようなSF。連作短編集。『天使が舞い降りても』『けだもの伯爵の物語』『楽園の想いで』『異世界Dの家族の肖像』『宇宙で最高の美をめぐって』『戦争の起源』収録。短編どうしに直接の繋がりはないんだけど、背景には同じ宇宙世界が存在しています。

  「目くるめく」という言葉はこのような作品にこそ使うべきではないか、と感じました。壮大な宇宙規模の物語が、展開されていきます。しかも、映像では表現できないような状況・物事が、文字で表現されていきます。小説を読む楽しみがここにあると感じました。

  『天使が舞い降りても』

  作用と半作用の物語。老人AUMは、鮮烈な印象を残します。世界のエコーである彼にとっては、呼び出されれば何もかもが容易なのか・・・

  『けだもの伯爵の物語』
  心を解き放つ棺桶を手に入れた伯爵家の冒険。けだもの伯爵が怖いけど、面白いです。

  『楽園の想いで』
  紆余曲折あって盗賊になってしまう女王の物語。彼女は聖女から貶められて「ただの人」になるわけですが、誰もが結局はただの人なのたろう、と感じました。

  『異世界Dの家族の肖像』
  人間が生み出した、一生物のみでぐるぐると巡っていく不可思議な生態系を描いた作品。

  『宇宙で最高の美をめぐって』
  最高の美をめぐってたくさんの人が大騒ぎして駆け回る物語。美は善にも悪にもなりうる、というラストの言葉には考えさせられました。

  『戦争の起源』
  楽園に資本主義が持ち込まれてしまうという物語。

  とにかく、『戦争を演じた神々たち』の面白さは読まないことには分からないです。あらすじを説明しても伝わらない。物語はぎゅっと凝縮されているので、さくさく読むことが出来ます。おすすめ。

  第15回日本SF大賞受賞作。


自森人読書 戦争を演じた神々たち
★★★★★

著者:  光瀬龍
出版社: 早川書房

  地球の誕生の場面から物語は始まります。それから時は流れ・・・

  アトランティス王国の文書を求め、旅に出たギリシャの哲学者プラトン。彼はエルカシアという地にて、宗主と出会い、オリハルコンなる物質を見つけ、高度な文明がかつて存在したことを予感します。プラトンは何かを知っているらしい宗主に問いました。「どうしてアトンランティスは滅んだのか?」と。ですが宗主は「貴方自身がその問いに立ち向かうことになる」と謎めいた言葉を残して消えました。その会見のあった日の夜、プラトンは妙な音を聞いて外へ出ると砂嵐に巻き込まれ、死んでしまいますがその瞬間彼はオリオナエになっていました。彼は神によってアトランティスが滅ぼされる場面に遭遇します・・・

  プラトン(オリオナエ)、シッタータ、そして阿修羅王は宇宙の謎と超越者、すなわち神の秘密を追っていきます。一方、ナザレのイエスは『シ』の命令を受け、3人を阻止しようとします。彼らは過去、未来を超え、そして地球を飛び出し、宇宙で壮絶な戦いを繰り広げるのですが・・・ 『シ』とは? その支配下にある惑星開発委員会とは? そもそも私は何者なのか? なぜ生まれ、なぜ滅ぶのか? 終末と、弥勒の救済とは? そして神とはいったい何なのか?

  あらすじを説明することが非常に難しい作品。

  萩尾望都の漫画を読んで、『百億の昼と千億の夜』と言う作品を知り、あまりにも壮大な物語に気おされました。なので原作である小説も読んでみたのですが、素晴らしかったです。文章は流れるように進んでいくし、浮かび上がってくる風景は綺麗だし、新たなる神話といっても良いほど美しくて壮絶な悲劇が繰り広げられる様は感動的です。

  登場人物中最も印象に残るのは、やはり苛烈なる少女、阿修羅王。

  最後まで読み終わったとき、定められた破滅と、溢れる絶望をどう受け止めれば良いのか、分からなくなってしまいました。


自森人読書 百億の昼と千億の夜
10月23、24日、自由の森学園学園祭があります。

405黒いカーテン
★★ ウィリアム・アイリッシュ

404暗黒星雲のかなたに
★★ アイザック・アシモフ

403秘曲 笑傲江湖
★★★★★ 金庸

402アクロイド殺し
★★★★★ アガサ・クリスティ

401ホビットの冒険
★★★★ J・R・R・トールキン
★★

著者:  ウィリアム・アイリッシュ
出版社: 東京創元社

  突然墜落してきたものにぶつかって意識を失ってしまったタウンゼント。彼は急いで家に戻るのですが、そこには妻がいませんでした。彼は慌てて管理人を問いただし、妻の住んでいるところへ向かいます。そして妻と面会するのですが、彼女と話している内に衝撃的な事実にぶちあたります。なんと、これまで3年の間彼は失踪していたというのです・・・ その3年間、彼は何をしていたのか。タウンゼントは全く覚えていません。しかも、タウンゼントを付け狙う黒い影が現れ・・・

  「サスペンスの詩人」といわれたウィリアム・アイリッシュの小説。

  スリルに満ちています。前半が面白いです。3年間の記憶が欠けているために、自分というものを信じることが出来ず、苦しむ主人公の様子が上手に描かれています。自分がそんなふうになったら、どうするだろうかと考えてしまいました。

  けど、結構あっさりと書かれています(ぐちゃぐちゃ書き連ねる小説とは違って、『黒いカーテン』はそこが良い)。なので、すらすらと読んでいくことができます。

  後半、推理小説風になります。けど、推理ものとしてはそこまで面白くはないです。でも主人公が窮地に追い込まれる場面ではやっぱりどうなるのか不安になりました。

  自分の命を犠牲にする人が出てきて、それには少し驚かされました。そういうことか。


自森人読書 黒いカーテン
★★

著者:  アイザック・アシモフ
出版社: 東京創元社

  地球大学に留学していたウィデモス領主の跡継ぎバイロン・ファリルは、いきなり暗殺されそうになりました。彼は、冷徹な学友サンダー・ジョンティの助言を受けて地球を脱出します。しかし、バイロンは、父が反逆者だったことから星系を支配するティラン帝国に追われ、監視されます。バイロンは必死に逃亡しようとするのですが・・・

  SF小説。

  主人公バイロンは青臭くて、その上へまを繰り返します。あんまり共感できません。それに比べて、敵のアタラップが格好良すぎ。

  アタラップという人は視野が広いです。彼がややこしく長引かせるせいで、『暗黒星雲のかなたに』の物語が成り立っているともいえます。

  逃亡劇が延々と続いていくのが面倒です。

  ネタバレになるから詳しくは書きませんが、ラストには納得できませんでした。面白いものを持ってきたところには感心するけど、それを持ち上げすぎではないか。そこで登場させるべきなのは、絶対に「フランス人権宣言」だろう、といいたくなります(結局、失敗したとはいえ)。

  「暗黒星雲のかなたに」というタイトルは素晴らしいです。凄く面白そうだ、と思わされます。けど読んでみると、B級っぽい雰囲気が強く漂っているような・・・


自森人読書 暗黒星雲のかなたに
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