『棒になった男』は、安部公房の戯曲。
短編小説『棒』の戯曲版なんだそうです。3つの不可思議なエピソードで構成されています。
1つ目のエピソードには、女と友人の客と、そして鞄(戯曲では、その鞄を男の人が演じる)が登場します。女は、彼氏からある鞄を預かっていました。鞄の中には「先祖」がいるらしいのですが、中からはなんだか変な音が聞こえてきて気持ち悪い。
女は気味悪がって開けようかどうしようか、客に相談するのですが・・・
2つ目のエピソードには、落ちぶれかけたボクサーが登場します。彼は、これまでそれなりに闘ってきたわけですが、この頃は負け続け、どんどんとランクが落ちています。そして、今度の試合で負けたら、もうおしまい、というところまできていました。
最後、ボクサーは相手に倒されて立ち上がろうと思いながら、もう負けを覚悟しています・・・
3つ目のエピソードは、棒になってしまった男の物語。
若いフーテン風の男女がいるところに、いきなり棒が落ちてきます。それは、死んだ途端、なぜか棒になってしまった男でした。「地獄の男女」たちがそれを確認して、回収しようと、そこへ現れるのですが・・・
フーテン風の女が、立ち去るときにきどって「断絶の時代なのよ」と言うところが印象的です。
人と物との間に、隔たりをなくしてしまって、逆に人と人との隔たりを明らかにする、みたいな感じでとても面白いなぁと感じました。この、不可解さが良いなぁ・・・
『榎本武揚』も、安部公房の戯曲。
榎本武揚は、幕末に海軍副総裁に就任。幕府海軍を率いた人物です。幕府軍が陸上で鳥羽・伏見の戦いに敗れると、敗残兵を載せて北海道の五稜郭へ行き、共和国建国を目指しましたが、最終的に新政府軍に敗北して降伏。その後、牢獄にいれられます。しかし、出所後は新政府の中核にあって政治家として活躍しました。
安部公房はそれらを振り返っていき、問います。実は、土方歳三とかそういう血気にはやるやつらを北海道に隔離するつもりだったのでは・・・? ほんとに「最後の幕臣」だったのか。ほんとに「最終的な裏切り者」だったのか。実は確信犯的な策謀だったのではないか。
変節漢として蔑まれることも多い「榎本武揚」という男を、戯曲の中で再評価しています。凄く面白いです。歴史にはいろんな見方がある、というのがよく分かります。安部公房にしてはとても分かりやすいし。
今日読んだ本
安部公房『棒になった男』
安部公房『榎本武揚』
今読んでいる作品
鯨統一郎『新・世界の七不思議』
森村誠一『悪魔の飽食』
山田風太郎『黒衣の聖母』
土屋隆夫『絆』
短編小説『棒』の戯曲版なんだそうです。3つの不可思議なエピソードで構成されています。
1つ目のエピソードには、女と友人の客と、そして鞄(戯曲では、その鞄を男の人が演じる)が登場します。女は、彼氏からある鞄を預かっていました。鞄の中には「先祖」がいるらしいのですが、中からはなんだか変な音が聞こえてきて気持ち悪い。
女は気味悪がって開けようかどうしようか、客に相談するのですが・・・
2つ目のエピソードには、落ちぶれかけたボクサーが登場します。彼は、これまでそれなりに闘ってきたわけですが、この頃は負け続け、どんどんとランクが落ちています。そして、今度の試合で負けたら、もうおしまい、というところまできていました。
最後、ボクサーは相手に倒されて立ち上がろうと思いながら、もう負けを覚悟しています・・・
3つ目のエピソードは、棒になってしまった男の物語。
若いフーテン風の男女がいるところに、いきなり棒が落ちてきます。それは、死んだ途端、なぜか棒になってしまった男でした。「地獄の男女」たちがそれを確認して、回収しようと、そこへ現れるのですが・・・
フーテン風の女が、立ち去るときにきどって「断絶の時代なのよ」と言うところが印象的です。
人と物との間に、隔たりをなくしてしまって、逆に人と人との隔たりを明らかにする、みたいな感じでとても面白いなぁと感じました。この、不可解さが良いなぁ・・・
『榎本武揚』も、安部公房の戯曲。
榎本武揚は、幕末に海軍副総裁に就任。幕府海軍を率いた人物です。幕府軍が陸上で鳥羽・伏見の戦いに敗れると、敗残兵を載せて北海道の五稜郭へ行き、共和国建国を目指しましたが、最終的に新政府軍に敗北して降伏。その後、牢獄にいれられます。しかし、出所後は新政府の中核にあって政治家として活躍しました。
安部公房はそれらを振り返っていき、問います。実は、土方歳三とかそういう血気にはやるやつらを北海道に隔離するつもりだったのでは・・・? ほんとに「最後の幕臣」だったのか。ほんとに「最終的な裏切り者」だったのか。実は確信犯的な策謀だったのではないか。
変節漢として蔑まれることも多い「榎本武揚」という男を、戯曲の中で再評価しています。凄く面白いです。歴史にはいろんな見方がある、というのがよく分かります。安部公房にしてはとても分かりやすいし。
今日読んだ本
安部公房『棒になった男』
安部公房『榎本武揚』
今読んでいる作品
鯨統一郎『新・世界の七不思議』
森村誠一『悪魔の飽食』
山田風太郎『黒衣の聖母』
土屋隆夫『絆』
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95タイムマシンの話―超光速粒子とメタ相対論
★★ 都筑卓司
94死神の精度
★★★★ 伊坂幸太郎
93夢を与える
★ 綿矢りさ
92天を衝く―秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実
★★★★ 高橋克彦
9110ぱんだ
★★★★ 岩合日出子
★★ 都筑卓司
94死神の精度
★★★★ 伊坂幸太郎
93夢を与える
★ 綿矢りさ
92天を衝く―秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実
★★★★ 高橋克彦
9110ぱんだ
★★★★ 岩合日出子
★★
著者: 都筑卓司
出版社: 講談社
タイムマシンとは何か。タイムマシンが存在すると生まれてしまう矛盾(パラドックス)はどうしたら解決できるのか。どうしたら、タイムマシンを実現可能なのか? 未来・過去を行き来する、タイムマシンについて考える、ブルーバックスの本。
読んでいるとだんだんだんだん難しくなっていきます。説明されても分からないよ、という感じの部分もありました。しかも目新しいことは何もありません。もっと楽しい、タイムマシンのことを書いてある入門書、みたいなのが他にあったような気がします。そちらを先に読むほうがいい気がするなぁ。あとは、SF作品のタイムマシンものを読むのもいいと思います。どうもつじつまが合わない困った作品というのもありますが、凝っているSF小説はしっかりと考えられています。タイムマシンに興味があるならば、そういうのも楽しいかも知れません。
で、タイムマシンというのは要は光の速さ(光速)よりもより速い物質によってなされるもの、というのが結論のようです。光速を超えられる物質というのはいまのところ存在が確認されていないし、相対性理論的にも光速を超える物質が存在するとなると、つじつまが合わないみたいですが。でも、相対性理論も完璧じゃないから、もしかしたらタイムマシンもありうるかも、というのがこの本に書いてあることです。
タイムマシンがあったら面白いだろうなぁ・・・ 過去に干渉すると生まれてしまうパラドックスとかってどうなるんだろうか、とか考えるのは楽しいです。
自森人読書 タイムマシンの話―超光速粒子とメタ相対論
著者: 都筑卓司
出版社: 講談社
タイムマシンとは何か。タイムマシンが存在すると生まれてしまう矛盾(パラドックス)はどうしたら解決できるのか。どうしたら、タイムマシンを実現可能なのか? 未来・過去を行き来する、タイムマシンについて考える、ブルーバックスの本。
読んでいるとだんだんだんだん難しくなっていきます。説明されても分からないよ、という感じの部分もありました。しかも目新しいことは何もありません。もっと楽しい、タイムマシンのことを書いてある入門書、みたいなのが他にあったような気がします。そちらを先に読むほうがいい気がするなぁ。あとは、SF作品のタイムマシンものを読むのもいいと思います。どうもつじつまが合わない困った作品というのもありますが、凝っているSF小説はしっかりと考えられています。タイムマシンに興味があるならば、そういうのも楽しいかも知れません。
で、タイムマシンというのは要は光の速さ(光速)よりもより速い物質によってなされるもの、というのが結論のようです。光速を超えられる物質というのはいまのところ存在が確認されていないし、相対性理論的にも光速を超える物質が存在するとなると、つじつまが合わないみたいですが。でも、相対性理論も完璧じゃないから、もしかしたらタイムマシンもありうるかも、というのがこの本に書いてあることです。
タイムマシンがあったら面白いだろうなぁ・・・ 過去に干渉すると生まれてしまうパラドックスとかってどうなるんだろうか、とか考えるのは楽しいです。
自森人読書 タイムマシンの話―超光速粒子とメタ相対論
角田光代『空中庭園』は映画化もされた「家族」をめぐる小説。
家族に関わりのある6人の視点から、郊外にあるダンチの「家族」を見つめていく物語。6人というのは、姉・父・母・祖母(母の母)・父の愛人(にして弟の家庭教師)・弟、です。
とても読みやすくてだーっと進めます。
「秘密のない家庭をつくろう」と母親は言います。しかし、実はみんながみんな秘密を心の奥底に抱え持っています。不甲斐なくて軟弱で、ノリだけがとりえみたいな父は、2人の愛人とつきあっていて(1人とは、10数年も付き合ってきた)・・・ 母は、自分の母から逃れるために父をはめて妊娠、結婚までもっていったということを父にも子どもたちにも黙り込み・・・(とはいえ、いまだに母から離れられずにいる・・・)
という感じです。
「家族」ってなんだろう? とても考えさせられます。
この物語に登場するダンチの家族は崩壊しているのか。むしろ、「普通」なのか。いや、でも普通ではないだろう。ゆがんでいるよなぁ。
ラストには微かな希望を感じる、というふうに書いている人がいるけどそうかなぁ? 僕は全然希望なんて感じられなかったけど。醜悪な内面を抱え込んだまま、のどかな日常は続いていく、というだけじゃないか?
今日読んだ作品
角田光代『空中庭園』
今読んでいる作品
安部公房『棒になった男』
安部公房『榎本武揚』
家族に関わりのある6人の視点から、郊外にあるダンチの「家族」を見つめていく物語。6人というのは、姉・父・母・祖母(母の母)・父の愛人(にして弟の家庭教師)・弟、です。
とても読みやすくてだーっと進めます。
「秘密のない家庭をつくろう」と母親は言います。しかし、実はみんながみんな秘密を心の奥底に抱え持っています。不甲斐なくて軟弱で、ノリだけがとりえみたいな父は、2人の愛人とつきあっていて(1人とは、10数年も付き合ってきた)・・・ 母は、自分の母から逃れるために父をはめて妊娠、結婚までもっていったということを父にも子どもたちにも黙り込み・・・(とはいえ、いまだに母から離れられずにいる・・・)
という感じです。
「家族」ってなんだろう? とても考えさせられます。
この物語に登場するダンチの家族は崩壊しているのか。むしろ、「普通」なのか。いや、でも普通ではないだろう。ゆがんでいるよなぁ。
ラストには微かな希望を感じる、というふうに書いている人がいるけどそうかなぁ? 僕は全然希望なんて感じられなかったけど。醜悪な内面を抱え込んだまま、のどかな日常は続いていく、というだけじゃないか?
今日読んだ作品
角田光代『空中庭園』
今読んでいる作品
安部公房『棒になった男』
安部公房『榎本武揚』
安部公房『友達』は、小説ではなく戯曲。
安部公房『友達』は、谷崎潤一郎賞受賞作。
笑顔で隣人愛を唱え続ける、グロテスクな9人の「家族」の人たちが突然、ある男の家に闖入してきて男の生活を侵食しつくしていきます。男は「家族」の屁理屈と数に圧倒され、どんどんと追い詰められていきます。ありえないような屁理屈だらけのやりとりは凄く笑えるけど、最後まで読むとちょっと笑えなくなってきます。
好意を装っているけど、明らかに男の全てを破壊し、最後には男を殺してしまう9人の「家族」が、怖いです。でも、世の中にこういうことってよくあるのではないか? むしろありがちじゃないか。
見せかけの好意と、「多数派」の横暴。
多数派というのは多いというだけで、すでに少数派を圧迫しているともいえます。自分がそちらの側になっているかも知れない、と思うととても怖いなぁ。知らないうちに誰かを追い詰めているのかも・・・?
今日読んだ作品
安部公房『友達』
今読んでいる作品
角田光代『空中庭園』
安部公房『棒になった男』
安部公房『榎本武揚』
安部公房『友達』は、谷崎潤一郎賞受賞作。
笑顔で隣人愛を唱え続ける、グロテスクな9人の「家族」の人たちが突然、ある男の家に闖入してきて男の生活を侵食しつくしていきます。男は「家族」の屁理屈と数に圧倒され、どんどんと追い詰められていきます。ありえないような屁理屈だらけのやりとりは凄く笑えるけど、最後まで読むとちょっと笑えなくなってきます。
好意を装っているけど、明らかに男の全てを破壊し、最後には男を殺してしまう9人の「家族」が、怖いです。でも、世の中にこういうことってよくあるのではないか? むしろありがちじゃないか。
見せかけの好意と、「多数派」の横暴。
多数派というのは多いというだけで、すでに少数派を圧迫しているともいえます。自分がそちらの側になっているかも知れない、と思うととても怖いなぁ。知らないうちに誰かを追い詰めているのかも・・・?
今日読んだ作品
安部公房『友達』
今読んでいる作品
角田光代『空中庭園』
安部公房『棒になった男』
安部公房『榎本武揚』
ゴーゴリ『鼻』は、滑稽でシュールな小説。
ある役人の鼻が勝手に役人のもとを離れて一人歩きしてしまうと言う物語。なぜそんなこと起きたのか、とかは全く説明されません。
「外見」や「外見」ばかりを気にする役人のおかしさというのが、こういう突飛な設定によって表現されている、らしいけどまぁそんなこと気にせずとも楽しめます。ほんとに情けなくて、笑っちゃうくらい、頭が凝り固まっていて変な感じで、それでいてある意味普通な登場人物たちがおかしい。
面白いなぁ、鼻が突然なくなってしまう、なんて話が名作として残されているんだなぁ・・・ いやー、写実主義とかどうでもいいけど、面白いです。
今日読んだ本
ゴーゴリ『鼻』
今読んでいる作品
角田光代『空中庭園』
安部公房『友達』
安部公房『棒になった男』
安部公房『榎本武揚』
ある役人の鼻が勝手に役人のもとを離れて一人歩きしてしまうと言う物語。なぜそんなこと起きたのか、とかは全く説明されません。
「外見」や「外見」ばかりを気にする役人のおかしさというのが、こういう突飛な設定によって表現されている、らしいけどまぁそんなこと気にせずとも楽しめます。ほんとに情けなくて、笑っちゃうくらい、頭が凝り固まっていて変な感じで、それでいてある意味普通な登場人物たちがおかしい。
面白いなぁ、鼻が突然なくなってしまう、なんて話が名作として残されているんだなぁ・・・ いやー、写実主義とかどうでもいいけど、面白いです。
今日読んだ本
ゴーゴリ『鼻』
今読んでいる作品
角田光代『空中庭園』
安部公房『友達』
安部公房『棒になった男』
安部公房『榎本武揚』
『花輪の海』は、農協に勤めていたのに色々あって辞めざるを得ず、今は桃を育てている男が主人公。
彼には、いつも後悔していることがあります。友が死んだのに、その横でそれを嬉しいと感じてしまったことがあったのです・・・
大学生の頃、甘言にのせられて「空手部」に入部。そして、激しい暴行を受けることになりました。地獄の苦しみです。
とくの厳しかったのは、合宿。昼夜を問わない練習を何日間も強いられました・・・ そんな合宿の中で、OBの人たちに、深夜海に浸かりながら「千本突き」をやることを強要されます。そしてその結果友達が溺死してしまいます。そのとき彼は、友が死んだのに、合宿がこれで終わる、と思って激しい喜びを感じてしまったのです・・・・・
いやー、ほんとに壮絶です。ひどいなぁ・・・
『他人の家』は、昔強盗をしてその結果として人を殺してしまった男が主人公。
彼は、罪を償って出所します。しかし、世間はとても冷たい。彼が、かつて犯罪を犯した、と知れた途端、住むところからも追い出されてしまいます。
そんな中、鈴木さんという老人と出会います。
鈴木さんは、彼をとても厚遇してくれるのですが・・・
横山秀夫はなかなか面白いです。暗い話が多いけど、いろんなことを考えさせられます。
ただし、解説・吉野仁が、横山秀夫という作家を評して、「松本清張賞を受賞したばかりか、すでに松本清張に迫る任期と実力をそなえているといえよう」と書いているけど、それは過大評価だなぁ。
松本清張は、日本における推理小説分野の開拓者みたいなものです。横山秀夫じゃ、松本清張には全然かなわないだろう・・・ 月とすっぽんとは言わないけど、存在の巨大さが違う。
今日読んだ作品
横山秀夫『花輪の海』
横山秀夫『他人の家』
今読んでいる作品
ゴーゴリ『鼻』
角田光代『空中庭園』
彼には、いつも後悔していることがあります。友が死んだのに、その横でそれを嬉しいと感じてしまったことがあったのです・・・
大学生の頃、甘言にのせられて「空手部」に入部。そして、激しい暴行を受けることになりました。地獄の苦しみです。
とくの厳しかったのは、合宿。昼夜を問わない練習を何日間も強いられました・・・ そんな合宿の中で、OBの人たちに、深夜海に浸かりながら「千本突き」をやることを強要されます。そしてその結果友達が溺死してしまいます。そのとき彼は、友が死んだのに、合宿がこれで終わる、と思って激しい喜びを感じてしまったのです・・・・・
いやー、ほんとに壮絶です。ひどいなぁ・・・
『他人の家』は、昔強盗をしてその結果として人を殺してしまった男が主人公。
彼は、罪を償って出所します。しかし、世間はとても冷たい。彼が、かつて犯罪を犯した、と知れた途端、住むところからも追い出されてしまいます。
そんな中、鈴木さんという老人と出会います。
鈴木さんは、彼をとても厚遇してくれるのですが・・・
横山秀夫はなかなか面白いです。暗い話が多いけど、いろんなことを考えさせられます。
ただし、解説・吉野仁が、横山秀夫という作家を評して、「松本清張賞を受賞したばかりか、すでに松本清張に迫る任期と実力をそなえているといえよう」と書いているけど、それは過大評価だなぁ。
松本清張は、日本における推理小説分野の開拓者みたいなものです。横山秀夫じゃ、松本清張には全然かなわないだろう・・・ 月とすっぽんとは言わないけど、存在の巨大さが違う。
今日読んだ作品
横山秀夫『花輪の海』
横山秀夫『他人の家』
今読んでいる作品
ゴーゴリ『鼻』
角田光代『空中庭園』
★★★★
著者: 伊坂幸太郎
出版社: 文芸春秋
『Sweet Rain 死神の精度』という映画になった作品です。僕は友達と一緒に映画を見にいって、そのあと本を貸してもらって読みました。どちらかというと、本よりも映画の方が全体の組み立てに工夫がされていると感じました。映画は、死神・千葉と、ヒロイン役の女性の2人の物語、みたいになっていて途中でなんどかプツンときれる部分があるのですが、随所にうまくつながりをいれていました。まぁ、本も映画も、どちらも面白いです。
主人公は死神・千葉。彼は、不慮の死を遂げる予定の人物の最期の7日間を観察し、その人の死を決定する存在です。いつも黒い犬を連れています。(伊坂幸太郎の作品にはよく黒い犬(ドーベルマンだっけ?)が登場するなぁ・・)音楽のみをこよなく愛する雨男であり、どこか世間一般の人とは言動がずれています(ジョークをジョークとして解さないで対応する、とか)。
千葉は、7日後に不慮の死を遂げるはずのいろんな人たちと出会い、どういう判断をくだすのか・・
とても面白い作品です。死というものをとりあげて、それでいて重くひきずらないのはさすがだなぁ、と思いました。とあるメーカーの苦情処理係、謎のクレーマー、任侠なヤクザ、片思いの青年、ストーカーにおびえている女性、人殺し、死神と対する老女・・・ それぞれの短編のなかに登場する人たちもそれぞれとても「普通」だけど、面白い人たちばかりです。死神とそのいろんな人たちとの滑稽なやりとりが、深刻さを突き抜けていくのかなぁ・・・
『重力ピエロ』を読んで、あんまり好きではなかったので、それ以来、伊坂幸太郎を読んでいませんでした。だけどこれを読んで、実はとても面白いんだ、と気付かされました。映画になっているということもあってか、高校生にも伊坂幸太郎はけっこう読まれているようです(僕の周りの人がみんな読んでる)。田中芳樹といっても誰も分かってくれないし、そこからはなしは拡がらないけど、伊坂幸太郎といったらはなしが通じるのか・・・
自森人読書 死神の精度
著者: 伊坂幸太郎
出版社: 文芸春秋
『Sweet Rain 死神の精度』という映画になった作品です。僕は友達と一緒に映画を見にいって、そのあと本を貸してもらって読みました。どちらかというと、本よりも映画の方が全体の組み立てに工夫がされていると感じました。映画は、死神・千葉と、ヒロイン役の女性の2人の物語、みたいになっていて途中でなんどかプツンときれる部分があるのですが、随所にうまくつながりをいれていました。まぁ、本も映画も、どちらも面白いです。
主人公は死神・千葉。彼は、不慮の死を遂げる予定の人物の最期の7日間を観察し、その人の死を決定する存在です。いつも黒い犬を連れています。(伊坂幸太郎の作品にはよく黒い犬(ドーベルマンだっけ?)が登場するなぁ・・)音楽のみをこよなく愛する雨男であり、どこか世間一般の人とは言動がずれています(ジョークをジョークとして解さないで対応する、とか)。
千葉は、7日後に不慮の死を遂げるはずのいろんな人たちと出会い、どういう判断をくだすのか・・
とても面白い作品です。死というものをとりあげて、それでいて重くひきずらないのはさすがだなぁ、と思いました。とあるメーカーの苦情処理係、謎のクレーマー、任侠なヤクザ、片思いの青年、ストーカーにおびえている女性、人殺し、死神と対する老女・・・ それぞれの短編のなかに登場する人たちもそれぞれとても「普通」だけど、面白い人たちばかりです。死神とそのいろんな人たちとの滑稽なやりとりが、深刻さを突き抜けていくのかなぁ・・・
『重力ピエロ』を読んで、あんまり好きではなかったので、それ以来、伊坂幸太郎を読んでいませんでした。だけどこれを読んで、実はとても面白いんだ、と気付かされました。映画になっているということもあってか、高校生にも伊坂幸太郎はけっこう読まれているようです(僕の周りの人がみんな読んでる)。田中芳樹といっても誰も分かってくれないし、そこからはなしは拡がらないけど、伊坂幸太郎といったらはなしが通じるのか・・・
自森人読書 死神の精度
名作として知られる、ニコライ・ゴーゴリ『外套』を読みました。
アカーキイ・アカーキエウィッチという、へんてこな名前のしがない役人が主人公。
彼は、文書を写すという職業を愛してやまず、それだけに気をとられて他のことなど全く気にしませんでした。
ある日のこと。古くなった外套がもうこれ以上は使えない、と教えられて新しい外套をつくってもらうことにします。いつの間にか、彼はいまだ存在しない新しい外套に心を奪われていました。
そして新しい外套が完成すると、彼は大喜びしてそれを着ました。するとぴったり。アカーキイはうきうきです。すると、服を新調したと知った仲間たちまでそれを祝おうと言い出します。そして、アカーキイはパーティに招かれることになりますが・・・
登場人物たち全員が、どこか滑稽です。まぁ世の中なんて、こんな感じか。
今日読んだ作品
ゴーゴリ『外套』
今読んでいる作品
ゴーゴリ『鼻』
角田光代『空中庭園』
アカーキイ・アカーキエウィッチという、へんてこな名前のしがない役人が主人公。
彼は、文書を写すという職業を愛してやまず、それだけに気をとられて他のことなど全く気にしませんでした。
ある日のこと。古くなった外套がもうこれ以上は使えない、と教えられて新しい外套をつくってもらうことにします。いつの間にか、彼はいまだ存在しない新しい外套に心を奪われていました。
そして新しい外套が完成すると、彼は大喜びしてそれを着ました。するとぴったり。アカーキイはうきうきです。すると、服を新調したと知った仲間たちまでそれを祝おうと言い出します。そして、アカーキイはパーティに招かれることになりますが・・・
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今日読んだ作品
ゴーゴリ『外套』
今読んでいる作品
ゴーゴリ『鼻』
角田光代『空中庭園』
今日は、横山秀夫の短編集を読みました(まだ読みかけ)。
『真相』の主人公は、かつて息子を殺された税理士。
10年たってから、彼のもとに犯人を逮捕したと警察から連絡がきます。「万引きをしていたから脅した」と犯人が述べていると知って、税理士の男は怒り狂います。良い子だと思っていた我が子がそんなことはするはずがない、と彼は考えたのです。しかし・・・
犯人が捕まったことから、次々と明らかになる事実。緻密に積み上げられていきます。読んでいておー、凄いと思わされました。
『18番ホール』は、県庁の職を辞し、村長選に出馬した男が主人公。
彼は、巨大な力を握る前村長に見込まれて村中の実力者をほとんど味方につけます。そして「絶対に勝てる選挙」に乗り出します・・・
実は、彼にとってこの選挙は、決して負けられない選挙でした。ゴルフ場建設予定地の18番ホールのあたりに、かつて誤って車で轢いてしまった女の死体を埋めたのです。彼は、村長になってその予定地を別のところにずらそうとしています。
しかし、彼は殺人の発覚を恐れて誰も信用できなってしまい・・・
圧巻です。誰も信用できなくなっていく主人公の姿が哀れ、というか。壮絶です。短編集の中で1番面白いかもしれない。
『不眠』は、車会社をリストラされ、睡眠薬開発の実験を引き受けた男が主人公。彼は実験の結果、不眠症になってしまい、どんどんやつれていきます。そんなある日の朝方、昔自分が勤めていた会社を見に散歩にでかけますが。
それが災いします。なんと、近くで殺人事件が起き、男は犯人ではないか、と疑われてしまったのです。男は必死で言い逃れしようとして、とっさに思い出したことを言うのですが・・・
今日読んだ作品
横山秀夫『真相』
横山秀夫『18番ホール』
横山秀夫『不眠』
今読んでいる作品
横山秀夫『花輪の海』
横山秀夫『他人の家』
ゴーゴリ『外套』
ゴーゴリ『鼻』
角田光代『空中庭園』
『真相』の主人公は、かつて息子を殺された税理士。
10年たってから、彼のもとに犯人を逮捕したと警察から連絡がきます。「万引きをしていたから脅した」と犯人が述べていると知って、税理士の男は怒り狂います。良い子だと思っていた我が子がそんなことはするはずがない、と彼は考えたのです。しかし・・・
犯人が捕まったことから、次々と明らかになる事実。緻密に積み上げられていきます。読んでいておー、凄いと思わされました。
『18番ホール』は、県庁の職を辞し、村長選に出馬した男が主人公。
彼は、巨大な力を握る前村長に見込まれて村中の実力者をほとんど味方につけます。そして「絶対に勝てる選挙」に乗り出します・・・
実は、彼にとってこの選挙は、決して負けられない選挙でした。ゴルフ場建設予定地の18番ホールのあたりに、かつて誤って車で轢いてしまった女の死体を埋めたのです。彼は、村長になってその予定地を別のところにずらそうとしています。
しかし、彼は殺人の発覚を恐れて誰も信用できなってしまい・・・
圧巻です。誰も信用できなくなっていく主人公の姿が哀れ、というか。壮絶です。短編集の中で1番面白いかもしれない。
『不眠』は、車会社をリストラされ、睡眠薬開発の実験を引き受けた男が主人公。彼は実験の結果、不眠症になってしまい、どんどんやつれていきます。そんなある日の朝方、昔自分が勤めていた会社を見に散歩にでかけますが。
それが災いします。なんと、近くで殺人事件が起き、男は犯人ではないか、と疑われてしまったのです。男は必死で言い逃れしようとして、とっさに思い出したことを言うのですが・・・
今日読んだ作品
横山秀夫『真相』
横山秀夫『18番ホール』
横山秀夫『不眠』
今読んでいる作品
横山秀夫『花輪の海』
横山秀夫『他人の家』
ゴーゴリ『外套』
ゴーゴリ『鼻』
角田光代『空中庭園』
★
著者: 綿矢りさ
出版社: 河出書房新社
物語は、幹子のお化粧の場面から始まります。彼女は、別れようと切り出してきた彼氏トーマをなんとかつなぎとめ、そして結婚してしまいます。その2人の間に生まれたのが夕子。幼い頃から、モデルとして活躍している夕子は、「スターチーズ」というチーズのCMに起用されます。それは、成長していく夕子の自然な姿をうつしていく、という面白いCM企画でした。
夕子は芸能界で活躍しますが、ある男と恋に落ち、そして、その男との関係がきっかけで転落していくことに・・・・・
最期まで読むのが退屈でした。最期まで読んでも、すかっとした爽やかさとかそういうものがないどころか、もうため息がつきたくなる感じです。かといって何か深く考えさせてくれる、という訳でもない。なぜにこの分厚い本のために、時間を割いてしまったんだろう・・・ 読みごたえはあるけど、読後に抱く感想というのがとくにないです。しかもその上、暗くて好きになれない・・・
『夢を与える』以外、綿矢りさの作品を読んだことがないのですが、他のは(『インストール』『蹴りたい背中』)面白いのかなぁ。『夢を与える』から読み始めたのは失敗だったかも知れません、もしかたら。作家との出会いというのも難しいものです・・・・・ 例えば、『重力ピエロ』を読んでたいしたことないな、と思って読まなかった作家、伊坂幸太郎が実はものすごく面白かった、とあとで気付いたことが、僕にはあります。
これから、『インストール』と『蹴りたい背中』読んでみようと思います。
あとで付け加え
あとで『蹴りたい背中』を、読んでみたらとても面白かったです。僕は、『蹴りたい背中』の方が断然好きだなぁ、と感じました。
自森人読書 夢を与える
著者: 綿矢りさ
出版社: 河出書房新社
物語は、幹子のお化粧の場面から始まります。彼女は、別れようと切り出してきた彼氏トーマをなんとかつなぎとめ、そして結婚してしまいます。その2人の間に生まれたのが夕子。幼い頃から、モデルとして活躍している夕子は、「スターチーズ」というチーズのCMに起用されます。それは、成長していく夕子の自然な姿をうつしていく、という面白いCM企画でした。
夕子は芸能界で活躍しますが、ある男と恋に落ち、そして、その男との関係がきっかけで転落していくことに・・・・・
最期まで読むのが退屈でした。最期まで読んでも、すかっとした爽やかさとかそういうものがないどころか、もうため息がつきたくなる感じです。かといって何か深く考えさせてくれる、という訳でもない。なぜにこの分厚い本のために、時間を割いてしまったんだろう・・・ 読みごたえはあるけど、読後に抱く感想というのがとくにないです。しかもその上、暗くて好きになれない・・・
『夢を与える』以外、綿矢りさの作品を読んだことがないのですが、他のは(『インストール』『蹴りたい背中』)面白いのかなぁ。『夢を与える』から読み始めたのは失敗だったかも知れません、もしかたら。作家との出会いというのも難しいものです・・・・・ 例えば、『重力ピエロ』を読んでたいしたことないな、と思って読まなかった作家、伊坂幸太郎が実はものすごく面白かった、とあとで気付いたことが、僕にはあります。
これから、『インストール』と『蹴りたい背中』読んでみようと思います。
あとで付け加え
あとで『蹴りたい背中』を、読んでみたらとても面白かったです。僕は、『蹴りたい背中』の方が断然好きだなぁ、と感じました。
自森人読書 夢を与える
菊池寛の本を始めて読みました。菊池寛というのは、芥川賞・直木賞をつくった人です。大映初代社長でもある、らしい。とにかくけっこういろんなことをやっていた人です。戦後は、戦争に協力したということで不遇だったらしいけど。
『日本武将譚』は、タイトル通り日本のいろんな武将を紹介していくもの。簡潔で、すぱっとした文章が小気味いいです。
紹介しているのは、平将門、(源)八幡太郎義家、(源)木曾義仲、源義経、楠木正成、太田道灌、北条早雲、明智光秀、黒田如水、伊達政宗、加藤清正、石田光成、謙信と信玄。そして、最後にちょっと物語風の「秀吉と伊達政宗」というのがくっついています。
これを基礎にして、歴史小説を書いたら面白そうだなぁ・・・ いやもうとっくの昔に全部誰かがやってしまっているか。
今日読んだ本
菊池寛『日本武将譚』
今読んでいる作品
角田光代『空中庭園』
『日本武将譚』は、タイトル通り日本のいろんな武将を紹介していくもの。簡潔で、すぱっとした文章が小気味いいです。
紹介しているのは、平将門、(源)八幡太郎義家、(源)木曾義仲、源義経、楠木正成、太田道灌、北条早雲、明智光秀、黒田如水、伊達政宗、加藤清正、石田光成、謙信と信玄。そして、最後にちょっと物語風の「秀吉と伊達政宗」というのがくっついています。
これを基礎にして、歴史小説を書いたら面白そうだなぁ・・・ いやもうとっくの昔に全部誰かがやってしまっているか。
今日読んだ本
菊池寛『日本武将譚』
今読んでいる作品
角田光代『空中庭園』
★★★★
著者: 高橋克彦
出版社: 講談社
織田信長は、戦国時代を終わらせ、安土・桃山時代という1つの時代を築き、天下統一まであと1歩に迫りました。しかし、本能寺にて明智光秀に暗殺されてしまいます。その後、台頭してきたのが豊臣秀吉です。彼、豊臣秀吉は、政敵を次々と滅ぼし、天下の覇者になろうとしていました・・ その頃、奥州(東北地方の奥の方)に割拠していた南部家は跡継ぎ争いから内部分裂を起こしていました。南部家の一族にあたる、九戸政実が、宗家(南部家)と激しく対立したのです。九戸政実率いる九戸党は、南部家最強と言われており、南部家にとって重要なものだったので、排除されることがありませんでしたが、完全に異端視されていました。
だんだんと、南部家は自らの家を守るために、豊臣秀吉に臣従するようになります。どんなに酷い扱いを受けてもただ黙って、愛想笑いを浮かべるような態度をとったのです。九戸政実は憤慨しました。そして、決意します。豊臣秀吉に弓を引く、と。中央の権力に抵抗して、東北の誇りを守るためにはそれしか手段は無かったのです。
「北の鬼」九戸政実は、たった5千の九戸党を率いて、豊臣軍10万と戦いを挑みます・・・
とにかく九戸政実がかっこいいです。勝てると分かっていなければ戦(いくさ)はしない人なのに、最期は天下人に喧嘩をふっかけて壮絶な戦いを繰り広げます。周囲の九戸党の人たちの仲間思いなところもかっこ良いです。作者がテレビに登場して少しだけ解説していたのを見て、面白そうと思って図書館で借りたのですが、やっぱり面白かったです。
自森人読書 天を衝く ―秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実
著者: 高橋克彦
出版社: 講談社
織田信長は、戦国時代を終わらせ、安土・桃山時代という1つの時代を築き、天下統一まであと1歩に迫りました。しかし、本能寺にて明智光秀に暗殺されてしまいます。その後、台頭してきたのが豊臣秀吉です。彼、豊臣秀吉は、政敵を次々と滅ぼし、天下の覇者になろうとしていました・・ その頃、奥州(東北地方の奥の方)に割拠していた南部家は跡継ぎ争いから内部分裂を起こしていました。南部家の一族にあたる、九戸政実が、宗家(南部家)と激しく対立したのです。九戸政実率いる九戸党は、南部家最強と言われており、南部家にとって重要なものだったので、排除されることがありませんでしたが、完全に異端視されていました。
だんだんと、南部家は自らの家を守るために、豊臣秀吉に臣従するようになります。どんなに酷い扱いを受けてもただ黙って、愛想笑いを浮かべるような態度をとったのです。九戸政実は憤慨しました。そして、決意します。豊臣秀吉に弓を引く、と。中央の権力に抵抗して、東北の誇りを守るためにはそれしか手段は無かったのです。
「北の鬼」九戸政実は、たった5千の九戸党を率いて、豊臣軍10万と戦いを挑みます・・・
とにかく九戸政実がかっこいいです。勝てると分かっていなければ戦(いくさ)はしない人なのに、最期は天下人に喧嘩をふっかけて壮絶な戦いを繰り広げます。周囲の九戸党の人たちの仲間思いなところもかっこ良いです。作者がテレビに登場して少しだけ解説していたのを見て、面白そうと思って図書館で借りたのですが、やっぱり面白かったです。
自森人読書 天を衝く ―秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実
岩波ジュニア新書の2冊を再読。
『日系人の歴史を知ろう』は、ブラジルなどに移住した日系人の歴史を紹介している本。分かりやすくて良いです。
そういえば、昨年の大晦日、ブラジル移民100周年ということで紅白歌合戦に宮沢和史が登場して、ブラジルで『島唄』を歌っていました。『島唄』は好きな歌だけど(自由の森学園中3の時に6曲くらいいろんな歌を合唱するんだけど、その中でもとくに良い歌だと思う)、沖縄の歌をブラジルで歌うのか・・・ まぁ悪くはないけど。どちらかというと、サンバつきの『風になりたい』を通して歌って欲しかったなぁ、とか勝手に思っていたのですが。
あれ、本とは関係ない話だ・・・
この頃、外国人労働者の人たちが次々と国外退去処分になっている、ということをよくニュースで聞きます。でも一方で逆にブラジルなどからの日系人を受け入れて、その人たちを労働力として使っている、ということを始めて知りました。単純に不況のせいだと思っていたけど、実はそこにも日本人の純血を保とうとする、妙な血の論理みたいなものがあったんだ・・・
どうして、日本人の血を保つことが大切なのか分からないです。政府は、「少子化で大変だ!」と騒いでいます。でも、世界全体を眺めてみれば逆に人口爆発で悩んでいるんだから良いことじゃないか。人が少なくなったから、人を招くというので良いのではないか。
とはいえ、移民を受け入れると文化の摩擦が起きてものすごく大変だというのは確かにその通りのようだし(ヨーロッパで「移民を追い出せ」というデモが起きている、というのはよくニュースで聞くし)。『日系人の歴史を知ろう』を読んでいても、そう簡単にはいかないのかもなぁ、と感じました。何十年もかかることし。
でも、やっぱり、そんなに血統にばかり目をとらわれていてはだめだよなぁ。それじゃ狭いんじゃないか。本の最後のページのまとめには納得しました。「混」という言葉には、悪いイメージがつきまとうけど、それってどうなんだろうか? 違うものを拒むっていうのはただ単に偏狭なだけなのではないか?
「潔癖主義」みたいなものを突き詰めていったら、最後にはナチスみたいになってしまうのではないか。自分たちは美しく、正しいが、他の奴らはみんなダメだ、みたいな(関係ないけど、手塚治虫の『アドルフに告ぐ』を思いだします。ユダヤ人を根絶しろ、と叫ぶヒトラー本人にユダヤ人の血が混じっていたとしたら・・・? というところから、あれほど壮大な物語を生み出してしまうなんて凄いよなぁ・・・)。
はなしは戻るのですが。
終戦後、ブラジルの多くの日系人たちは、大日本帝国の敗戦を信じることがなかった、しかもその上サンパウロに朝香宮鳩彦王を騙る偽者の皇族が登場した、というのは有名な話だなぁ・・・ どうしてそんな狂ったみたいな事態が起きたのか。日本が勝ってほしいという願望のあまり、現実を直視できなかった、ということなんだろうけど。
もし自分がその中にいたら、やっぱり「日本は負けてない」という側についていたかも知れないなぁ。
どうしたら、勢いに呑み込まれずにいられるのか・・・ 太平洋戦争だって、そもそもほぼ勝ち目がないというのに、始めてしまったわけだし。別に戦争じゃなくてもそういうことは起こりえます。フィクションだけど恩田陸の『Q&A』とか、読むとぞくっとします。
勢いで、深い暗闇の淵の手前まで来てしまったら、すでに遅い。やっぱりちゃんと歴史を知ってそういう状況に陥る道へ進むのを慎重に避けないと、だめだと思います。そのためには、まず学ぶことが必要か・・・
『カラー版 屋久島―樹と水と岩の島を歩く』は、屋久島を紹介した本。写真が盛りだくさん。どれもとてもきれいです。おばけみたいな、ガジュマルの写真とか面白い。
自由の森学園高校の修学旅行は、生徒が行き場所まで決めます(何コースかに分かれて、北海道から沖縄までいろんな地へと行く)。その中で南の島というのはかなり人気です。毎年あるくらいなんだけど。今年度(昨年)は、屋久島コースもあったんじゃないかなぁ、多分。
この本を読むと屋久島に行きたくなってきます。ほんとに面白いなぁ。山と海がくっついているんだ。
だけどあまりにも観光客がたくさん来過ぎることで屋久島の自然が破壊されている、とニュースで言っていたなぁ・・・ 遠慮した方がいいかも知れない。というか、保護しなくて良いんだろうか。素晴らしいものは遠くから眺めるくらいで良いのではないか。それじゃ分からないこともあるのかも知れないけど、壊してしまったらもともこもないのではないか。
読書メモ
高橋幸春『日系人の歴史を知ろう』(再読)
青山潤三『カラー版 屋久島―樹と水と岩の島を歩く』(再読)
今読んでいる作品
菊池寛『日本武将譚』
角田光代『空中庭園』
『日系人の歴史を知ろう』は、ブラジルなどに移住した日系人の歴史を紹介している本。分かりやすくて良いです。
そういえば、昨年の大晦日、ブラジル移民100周年ということで紅白歌合戦に宮沢和史が登場して、ブラジルで『島唄』を歌っていました。『島唄』は好きな歌だけど(自由の森学園中3の時に6曲くらいいろんな歌を合唱するんだけど、その中でもとくに良い歌だと思う)、沖縄の歌をブラジルで歌うのか・・・ まぁ悪くはないけど。どちらかというと、サンバつきの『風になりたい』を通して歌って欲しかったなぁ、とか勝手に思っていたのですが。
あれ、本とは関係ない話だ・・・
この頃、外国人労働者の人たちが次々と国外退去処分になっている、ということをよくニュースで聞きます。でも一方で逆にブラジルなどからの日系人を受け入れて、その人たちを労働力として使っている、ということを始めて知りました。単純に不況のせいだと思っていたけど、実はそこにも日本人の純血を保とうとする、妙な血の論理みたいなものがあったんだ・・・
どうして、日本人の血を保つことが大切なのか分からないです。政府は、「少子化で大変だ!」と騒いでいます。でも、世界全体を眺めてみれば逆に人口爆発で悩んでいるんだから良いことじゃないか。人が少なくなったから、人を招くというので良いのではないか。
とはいえ、移民を受け入れると文化の摩擦が起きてものすごく大変だというのは確かにその通りのようだし(ヨーロッパで「移民を追い出せ」というデモが起きている、というのはよくニュースで聞くし)。『日系人の歴史を知ろう』を読んでいても、そう簡単にはいかないのかもなぁ、と感じました。何十年もかかることし。
でも、やっぱり、そんなに血統にばかり目をとらわれていてはだめだよなぁ。それじゃ狭いんじゃないか。本の最後のページのまとめには納得しました。「混」という言葉には、悪いイメージがつきまとうけど、それってどうなんだろうか? 違うものを拒むっていうのはただ単に偏狭なだけなのではないか?
「潔癖主義」みたいなものを突き詰めていったら、最後にはナチスみたいになってしまうのではないか。自分たちは美しく、正しいが、他の奴らはみんなダメだ、みたいな(関係ないけど、手塚治虫の『アドルフに告ぐ』を思いだします。ユダヤ人を根絶しろ、と叫ぶヒトラー本人にユダヤ人の血が混じっていたとしたら・・・? というところから、あれほど壮大な物語を生み出してしまうなんて凄いよなぁ・・・)。
はなしは戻るのですが。
終戦後、ブラジルの多くの日系人たちは、大日本帝国の敗戦を信じることがなかった、しかもその上サンパウロに朝香宮鳩彦王を騙る偽者の皇族が登場した、というのは有名な話だなぁ・・・ どうしてそんな狂ったみたいな事態が起きたのか。日本が勝ってほしいという願望のあまり、現実を直視できなかった、ということなんだろうけど。
もし自分がその中にいたら、やっぱり「日本は負けてない」という側についていたかも知れないなぁ。
どうしたら、勢いに呑み込まれずにいられるのか・・・ 太平洋戦争だって、そもそもほぼ勝ち目がないというのに、始めてしまったわけだし。別に戦争じゃなくてもそういうことは起こりえます。フィクションだけど恩田陸の『Q&A』とか、読むとぞくっとします。
勢いで、深い暗闇の淵の手前まで来てしまったら、すでに遅い。やっぱりちゃんと歴史を知ってそういう状況に陥る道へ進むのを慎重に避けないと、だめだと思います。そのためには、まず学ぶことが必要か・・・
『カラー版 屋久島―樹と水と岩の島を歩く』は、屋久島を紹介した本。写真が盛りだくさん。どれもとてもきれいです。おばけみたいな、ガジュマルの写真とか面白い。
自由の森学園高校の修学旅行は、生徒が行き場所まで決めます(何コースかに分かれて、北海道から沖縄までいろんな地へと行く)。その中で南の島というのはかなり人気です。毎年あるくらいなんだけど。今年度(昨年)は、屋久島コースもあったんじゃないかなぁ、多分。
この本を読むと屋久島に行きたくなってきます。ほんとに面白いなぁ。山と海がくっついているんだ。
だけどあまりにも観光客がたくさん来過ぎることで屋久島の自然が破壊されている、とニュースで言っていたなぁ・・・ 遠慮した方がいいかも知れない。というか、保護しなくて良いんだろうか。素晴らしいものは遠くから眺めるくらいで良いのではないか。それじゃ分からないこともあるのかも知れないけど、壊してしまったらもともこもないのではないか。
読書メモ
高橋幸春『日系人の歴史を知ろう』(再読)
青山潤三『カラー版 屋久島―樹と水と岩の島を歩く』(再読)
今読んでいる作品
菊池寛『日本武将譚』
角田光代『空中庭園』
★★★★
著者: 岩合日出子
写真: 岩合光昭
出版社: 福音館書店
パンダかわいい・・・ 小さいぱんだの子たちが転がっていると、ぬいぐるみみたいです。パンダの絵本(写真が載っているから絵ではないけど)です。1ページめくるごとに、パンダが増えていきます。1ぱんだ、2ぱんだ、3ぱんだみたいな感じで。
この頃、本の中でよくバンブーに出会います。バンブーというのは竹のことです。まず、この『10ぱんだ』のなかに竹が登場しました。あと、最近、森見登美彦の『美女と竹林』という本を読んだのですが、その作品はそのものずばり、森見登美彦の美女と竹林に対する(おかしな?)愛を書き綴ったものです。竹が全編に現れていました。そして、東野圭吾の『トキオ』という作品にも、「ボンバ」という酒屋が登場し、少しだけだけど「竹」がらみの謎解きみたいのが登場します。こういうどうでもいいような偶然は楽しいです。本当にどうでもいいんだけど。
パンダというのは、木に上ったりもするとは知りませんでした。なんか見た目とは違って身軽なんだなぁ。『10ぱんだ』を読んでいて、かわいいかわいい、と言いつつ、実はパンダのことをほとんど知らない自分に気付かされました。『パンダ育児日記』というのも並べて読んでいます。そちらは、絵本ではなくて、中国の山奥でパンダの子ども達を育てるために頑張っている人たちの日記・記録です。詳しい文章もあり、そして貴重な写真も載っていて興味深いです。
『10ぱんだ』は楽しいなぁ。見ていてなごむというのか。楽しいです。
自森人読書 10ぱんだ
著者: 岩合日出子
写真: 岩合光昭
出版社: 福音館書店
パンダかわいい・・・ 小さいぱんだの子たちが転がっていると、ぬいぐるみみたいです。パンダの絵本(写真が載っているから絵ではないけど)です。1ページめくるごとに、パンダが増えていきます。1ぱんだ、2ぱんだ、3ぱんだみたいな感じで。
この頃、本の中でよくバンブーに出会います。バンブーというのは竹のことです。まず、この『10ぱんだ』のなかに竹が登場しました。あと、最近、森見登美彦の『美女と竹林』という本を読んだのですが、その作品はそのものずばり、森見登美彦の美女と竹林に対する(おかしな?)愛を書き綴ったものです。竹が全編に現れていました。そして、東野圭吾の『トキオ』という作品にも、「ボンバ」という酒屋が登場し、少しだけだけど「竹」がらみの謎解きみたいのが登場します。こういうどうでもいいような偶然は楽しいです。本当にどうでもいいんだけど。
パンダというのは、木に上ったりもするとは知りませんでした。なんか見た目とは違って身軽なんだなぁ。『10ぱんだ』を読んでいて、かわいいかわいい、と言いつつ、実はパンダのことをほとんど知らない自分に気付かされました。『パンダ育児日記』というのも並べて読んでいます。そちらは、絵本ではなくて、中国の山奥でパンダの子ども達を育てるために頑張っている人たちの日記・記録です。詳しい文章もあり、そして貴重な写真も載っていて興味深いです。
『10ぱんだ』は楽しいなぁ。見ていてなごむというのか。楽しいです。
自森人読書 10ぱんだ
宮部みゆきの『サボテンの花』は心温まるお話。ミステリ。
米澤穂信は、『氷菓』がなかなか良かったです。日常の中に潜むミステリを楽しむような作品。でも、米澤穂信の作品の中では、『さよなら妖精』が1番の傑作のような気がしました。
岡嶋二人『クラインの壺』は面白かった・・・ 凄いなぁ、こんな小説が世の中にあったとは。もっと早く読んでいればよかった。
『人形つかい』と、『検屍官』 はなかなか。でも好きじゃない。『検屍官』はフェアとは思えない・・・
松本清張の短編は面白い。中でも『尊厳』が良いかなぁ。
ミステリ小説、『有限と微小のパン―THE PERFECT OUTSIDER』を読み終わったときは、感慨深かったです。シリーズ10作これでやっと読みおわった・・・
シリーズの後半5作の中では『夏のレプリカ―REPLACEABLE SUMMER』が1番かなぁ。
大江健三郎の短編も面白い。『死者の奢り』『飼育』『人間の羊』とそこらへんは凄い。
島田荘司『占星術殺人事件』は凄い! こんな犯罪を考え付くなんて。ミステリの傑作。薬丸岳の『天使のナイフ』は普通よりは上、だろうか。そこまで凄くきない、というか、ご都合主義っぽい。
『ぼくがハリーズ・バーガー・ショップをやめたいきさつ』『血をわけた子供』などの海外のSFはさすが、と思わされます。
アガサ・クリスティ『カーテン』は、凄い。ポアロ最後の事件。最後の最後まで、どきっとさせられます。
高村薫の短編州も良い。『愁訴の花』とか。宮部みゆきと並ぶほど。長編の『レディ・ジョーカー』は傑作。
カート・ヴォネガット『タイタンの妖女』は笑ってしまいます。村上春樹も影響を受けた、という作家。
竹山道雄『ビルマの竪琴』は名作として知られる作品。なかなかだと重いました。
初野晴『退出ゲーム』は、すっきり爽やか。ちょっと・・・
『坊っちゃん』『夢十夜』は面白い。夏目漱石の中短編はけっこうどれも読みやすくて面白い。
『グラスホッパー』も面白い。伊坂幸太郎はどれを読んでも面白い、感じです。
『インディゴの夜』は軽くて、
『2005年のロケットボーイズ』は爽やか。
不気味な味
湊かなえ『告白』
面白い、とよく言われるけど、駄作だろう。京極夏彦『姑獲鳥の夏』、小川糸『食堂かたつむり』は。
米澤穂信は、『氷菓』がなかなか良かったです。日常の中に潜むミステリを楽しむような作品。でも、米澤穂信の作品の中では、『さよなら妖精』が1番の傑作のような気がしました。
岡嶋二人『クラインの壺』は面白かった・・・ 凄いなぁ、こんな小説が世の中にあったとは。もっと早く読んでいればよかった。
『人形つかい』と、『検屍官』 はなかなか。でも好きじゃない。『検屍官』はフェアとは思えない・・・
松本清張の短編は面白い。中でも『尊厳』が良いかなぁ。
ミステリ小説、『有限と微小のパン―THE PERFECT OUTSIDER』を読み終わったときは、感慨深かったです。シリーズ10作これでやっと読みおわった・・・
シリーズの後半5作の中では『夏のレプリカ―REPLACEABLE SUMMER』が1番かなぁ。
大江健三郎の短編も面白い。『死者の奢り』『飼育』『人間の羊』とそこらへんは凄い。
島田荘司『占星術殺人事件』は凄い! こんな犯罪を考え付くなんて。ミステリの傑作。薬丸岳の『天使のナイフ』は普通よりは上、だろうか。そこまで凄くきない、というか、ご都合主義っぽい。
『ぼくがハリーズ・バーガー・ショップをやめたいきさつ』『血をわけた子供』などの海外のSFはさすが、と思わされます。
アガサ・クリスティ『カーテン』は、凄い。ポアロ最後の事件。最後の最後まで、どきっとさせられます。
高村薫の短編州も良い。『愁訴の花』とか。宮部みゆきと並ぶほど。長編の『レディ・ジョーカー』は傑作。
カート・ヴォネガット『タイタンの妖女』は笑ってしまいます。村上春樹も影響を受けた、という作家。
竹山道雄『ビルマの竪琴』は名作として知られる作品。なかなかだと重いました。
初野晴『退出ゲーム』は、すっきり爽やか。ちょっと・・・
『坊っちゃん』『夢十夜』は面白い。夏目漱石の中短編はけっこうどれも読みやすくて面白い。
『グラスホッパー』も面白い。伊坂幸太郎はどれを読んでも面白い、感じです。
『インディゴの夜』は軽くて、
『2005年のロケットボーイズ』は爽やか。
不気味な味
湊かなえ『告白』
面白い、とよく言われるけど、駄作だろう。京極夏彦『姑獲鳥の夏』、小川糸『食堂かたつむり』は。
最後の解説の中で、北村薫が褒めまくっているけど、確かに宮部みゆきはうまい、と感じます。とても面白い。
『祝・殺人』は、結婚披露宴を盛り立てる役目のエレクトーン奏者の女性が、あるバラバラ殺人事件の謎を解決してしまう、というお話。些細な出来事をつなぎ合わせていくことで、殺人事件の全体像が浮かび上がってくるところが見事です。これが長編になったら、凄く面白そうだなぁ、と思いました。
披露宴はスペクトル、というのは面白いなぁ。
『気分は自殺志願(スーサイド)』は、何を食べても生ごみみたいに感じるようになってしまって自殺したいと語るボーイ長に相談を受けた推理作家が、見事にそのボーイ長を助けるお話。
自殺したいと言いながら元気で、きっちりとしているボーイ長のおじさんのキャラクターが面白いです。
今日読んだ作品
宮部みゆき『祝・殺人』
宮部みゆき『気分は自殺志願(スーサイド)』
今読んでいる作品
菊池寛『日本武将譚』
角田光代『空中庭園』
『祝・殺人』は、結婚披露宴を盛り立てる役目のエレクトーン奏者の女性が、あるバラバラ殺人事件の謎を解決してしまう、というお話。些細な出来事をつなぎ合わせていくことで、殺人事件の全体像が浮かび上がってくるところが見事です。これが長編になったら、凄く面白そうだなぁ、と思いました。
披露宴はスペクトル、というのは面白いなぁ。
『気分は自殺志願(スーサイド)』は、何を食べても生ごみみたいに感じるようになってしまって自殺したいと語るボーイ長に相談を受けた推理作家が、見事にそのボーイ長を助けるお話。
自殺したいと言いながら元気で、きっちりとしているボーイ長のおじさんのキャラクターが面白いです。
今日読んだ作品
宮部みゆき『祝・殺人』
宮部みゆき『気分は自殺志願(スーサイド)』
今読んでいる作品
菊池寛『日本武将譚』
角田光代『空中庭園』
いまは短編集『我らが隣人の犯罪』を読みかけですが、その間に『クワイエットルームにようこそ』を読みました。
芥川賞候補作。オーバードース(薬物過剰摂取)で精神病院送りになった佐倉明日香が主人公。
彼女は、彼氏と大喧嘩して薬品を摂取し、自殺しかけて入院します。そして、精神病院の中でいろんな人と出会い、いろんなことを考えることになります。クワイエットルームというのは、女子だけの閉鎖病棟の中の保護室のこと。主人公も、その部屋に入れられたりします。
松尾スズキの作品は、『ふくすけ』しか読んだことがありませんでした。舞台の人だとは知っていたけど、本格的に小説も書いていたとは知らなかったです。この『クワイエットルームにようこそ』 は、なんだろうか、純文学なのか。でも、純文学ってもっと割り切れない作品のことではないか・・・ 分類は難しいけど、確かに面白いです。
今日読んだ作品
松尾スズキ『クワイエットルームにようこそ』
今読んでいる作品
菊池寛『日本武将譚』
角田光代『空中庭園』
芥川賞候補作。オーバードース(薬物過剰摂取)で精神病院送りになった佐倉明日香が主人公。
彼女は、彼氏と大喧嘩して薬品を摂取し、自殺しかけて入院します。そして、精神病院の中でいろんな人と出会い、いろんなことを考えることになります。クワイエットルームというのは、女子だけの閉鎖病棟の中の保護室のこと。主人公も、その部屋に入れられたりします。
松尾スズキの作品は、『ふくすけ』しか読んだことがありませんでした。舞台の人だとは知っていたけど、本格的に小説も書いていたとは知らなかったです。この『クワイエットルームにようこそ』 は、なんだろうか、純文学なのか。でも、純文学ってもっと割り切れない作品のことではないか・・・ 分類は難しいけど、確かに面白いです。
今日読んだ作品
松尾スズキ『クワイエットルームにようこそ』
今読んでいる作品
菊池寛『日本武将譚』
角田光代『空中庭園』
『我らが隣人の犯罪』は、宮部みゆきの初期の頃の短編集。5篇収録。
『我らが隣人の犯罪』は、宮部みゆきのデビュー作。
宮部みゆきも最初の頃は、読み終わった後ちょっと良い気分になる、軽い日常に寄り添ったミステリを書いていたんだ・・・ これまで、重厚な社会派ミステリ『火車』と『理由』しか読んだことがなかったので驚きました。
『我らが隣人の犯罪』は隣の家の犬がやたらとうるさいのでその犬を誘拐し、別の飼い主のもとへ連れ去ってしまおうというお話。その犬は、飼い主の女性から猫かわいがりされ、一方で散歩には連れて行ってもらえず、重いストレスを感じているみたいなのです。だから、誘拐したほうが、その犬のため、という感じです。
しかし、意外なところから意外なものが見つかったことで計画は変更され・・・
『この子誰の子』は、ある豪雨の夜、少年が留守番をしていたらとんでもないことが起きたというお話。
両親は、札幌で行われる親戚の結婚席に出席するためにその夜はいませんでした。だから少年は1人なわけですが・・・ そこへ赤ん坊を抱えた女性がやってきて、家の中に強引に入ってくると告げました。「この子はあなたのお父さんの子なの。だからあなたはお兄ちゃんね」。しかし、少年は、その子がお父さんの子ではない、という絶対の確信を抱いていました。その理由とは・・・?
『サボテンの花』は、ある小学校で起きた心温まるお話。
6年1組の子どもたちは卒業研究として、ある植物、たとえばサボテンには超能力があるということを調べたいと言い出しました。すると担任は怒りだし、やめさせようとやっきになって教頭の権藤のもとへやってきます。しかし教頭は、子どもたちの自主性を重んじることを大切にする、といって、その担任を無視。担任は、学校に来なくなってしまいました。なので教頭の権藤が、6年1組の子たちの面倒を見ることになりますが・・・
これは良い話です。最後の最後にそういうわけなのね、と納得します。
続けて、あとの2篇も読んでいこうと思います・・・
今日読んだ作品
宮部みゆき『我らが隣人の犯罪』
宮部みゆき『この子誰の子』
宮部みゆき『サボテンの花』
今読んでいる作品
菊池寛『日本武将譚』
松尾スズキ『クワイエットルームにようこそ』
角田光代『空中庭園』
『我らが隣人の犯罪』は、宮部みゆきのデビュー作。
宮部みゆきも最初の頃は、読み終わった後ちょっと良い気分になる、軽い日常に寄り添ったミステリを書いていたんだ・・・ これまで、重厚な社会派ミステリ『火車』と『理由』しか読んだことがなかったので驚きました。
『我らが隣人の犯罪』は隣の家の犬がやたらとうるさいのでその犬を誘拐し、別の飼い主のもとへ連れ去ってしまおうというお話。その犬は、飼い主の女性から猫かわいがりされ、一方で散歩には連れて行ってもらえず、重いストレスを感じているみたいなのです。だから、誘拐したほうが、その犬のため、という感じです。
しかし、意外なところから意外なものが見つかったことで計画は変更され・・・
『この子誰の子』は、ある豪雨の夜、少年が留守番をしていたらとんでもないことが起きたというお話。
両親は、札幌で行われる親戚の結婚席に出席するためにその夜はいませんでした。だから少年は1人なわけですが・・・ そこへ赤ん坊を抱えた女性がやってきて、家の中に強引に入ってくると告げました。「この子はあなたのお父さんの子なの。だからあなたはお兄ちゃんね」。しかし、少年は、その子がお父さんの子ではない、という絶対の確信を抱いていました。その理由とは・・・?
『サボテンの花』は、ある小学校で起きた心温まるお話。
6年1組の子どもたちは卒業研究として、ある植物、たとえばサボテンには超能力があるということを調べたいと言い出しました。すると担任は怒りだし、やめさせようとやっきになって教頭の権藤のもとへやってきます。しかし教頭は、子どもたちの自主性を重んじることを大切にする、といって、その担任を無視。担任は、学校に来なくなってしまいました。なので教頭の権藤が、6年1組の子たちの面倒を見ることになりますが・・・
これは良い話です。最後の最後にそういうわけなのね、と納得します。
続けて、あとの2篇も読んでいこうと思います・・・
今日読んだ作品
宮部みゆき『我らが隣人の犯罪』
宮部みゆき『この子誰の子』
宮部みゆき『サボテンの花』
今読んでいる作品
菊池寛『日本武将譚』
松尾スズキ『クワイエットルームにようこそ』
角田光代『空中庭園』
今日は、米澤穂信『氷菓』を読みました。
米澤穂信のデビュー作にして、〈古典部〉シリーズの第1作目。第五回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞したそうです。
何事にも消極的な立場をとる「省エネ主義者」を自認する折木奉太郎は、高校に入学した後、外国から手紙をよこす姉の手紙がきっかけで「古典部」に入部。実はこの3年間入部者が皆無だったため潰れかけていたのですが、彼の入部によって古典部は廃部をまぬがれます。
彼は、1人で呑気にしていようと思っていたのですが、些細な謎にも異常な関心を示す少女・千反田えるが入部してきたことで状況は一変。そこへ、奉太郎にとって親友にして宿敵でもある福部里志が加わります。彼らは、古典部伝統の文集『氷菓』の謎と、33年前におきた「ある事件」とは何か、という謎に挑むことになります・・・
面白いです。だけど、なんとなく全体的に地味だなぁ。華がないわけではないのだけど、わざと大きなところははずして、小技で固めているみたいな感じです。そこが特徴的な、良さでもあるんだけど。
米澤穂信の作品の中では、『さよなら妖精』が1番だなぁ・・・ 今のところ。あとは『犬はどこだ』とかも面白い。
読書メモが200を越えました。この調子だと今年の間にどこまでいくだろうか楽しみです。
今日読んだ作品
米澤穂信『氷菓』
今読んでいる作品
菊池寛『日本武将譚』
宮部みゆき『我らが隣人の犯罪』
角田光代『空中庭園』
米澤穂信のデビュー作にして、〈古典部〉シリーズの第1作目。第五回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞したそうです。
何事にも消極的な立場をとる「省エネ主義者」を自認する折木奉太郎は、高校に入学した後、外国から手紙をよこす姉の手紙がきっかけで「古典部」に入部。実はこの3年間入部者が皆無だったため潰れかけていたのですが、彼の入部によって古典部は廃部をまぬがれます。
彼は、1人で呑気にしていようと思っていたのですが、些細な謎にも異常な関心を示す少女・千反田えるが入部してきたことで状況は一変。そこへ、奉太郎にとって親友にして宿敵でもある福部里志が加わります。彼らは、古典部伝統の文集『氷菓』の謎と、33年前におきた「ある事件」とは何か、という謎に挑むことになります・・・
面白いです。だけど、なんとなく全体的に地味だなぁ。華がないわけではないのだけど、わざと大きなところははずして、小技で固めているみたいな感じです。そこが特徴的な、良さでもあるんだけど。
米澤穂信の作品の中では、『さよなら妖精』が1番だなぁ・・・ 今のところ。あとは『犬はどこだ』とかも面白い。
読書メモが200を越えました。この調子だと今年の間にどこまでいくだろうか楽しみです。
今日読んだ作品
米澤穂信『氷菓』
今読んでいる作品
菊池寛『日本武将譚』
宮部みゆき『我らが隣人の犯罪』
角田光代『空中庭園』
豊崎由美の書評は面白い・・・
つまらない作品はけなしまくり、好きな作品はほめまくります。とはいっても、そこまで批判している本は多くはありません。稚拙な文章、「泣かせる」設定なケータイ小説系の小説には激しく噛み付くけど、その他はだいたい「金の斧(読むべき)」ばかり。
これじゃ斧の色の意味が、薄れるのではないか。もう少し全体的に評価を下げても良いんじゃないかなぁ。
金の斧 これだけは絶対読むべき
銀の斧 絶対読むべき
鉄の斧 読むな
というような感じで。というか5段階評価にしても良かったのではないか。そうした方が面白かったのではないか。
まぁこのままでも、とても面白いけど。
今日読んだ作品
豊崎由美『正直書評。』
今読んでいる作品
米澤穂信『氷菓』
菊池寛『日本武将譚』
宮部みゆき『我らが隣人の犯罪』
つまらない作品はけなしまくり、好きな作品はほめまくります。とはいっても、そこまで批判している本は多くはありません。稚拙な文章、「泣かせる」設定なケータイ小説系の小説には激しく噛み付くけど、その他はだいたい「金の斧(読むべき)」ばかり。
これじゃ斧の色の意味が、薄れるのではないか。もう少し全体的に評価を下げても良いんじゃないかなぁ。
金の斧 これだけは絶対読むべき
銀の斧 絶対読むべき
鉄の斧 読むな
というような感じで。というか5段階評価にしても良かったのではないか。そうした方が面白かったのではないか。
まぁこのままでも、とても面白いけど。
今日読んだ作品
豊崎由美『正直書評。』
今読んでいる作品
米澤穂信『氷菓』
菊池寛『日本武将譚』
宮部みゆき『我らが隣人の犯罪』
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