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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★

著者:  川田伸一郎
出版社: 岩波書店

  生物ニッチの授業の中で登場したので、モグラのことはいろいろと知ってはいたのですが(アズマモグラとコウベモグラの標本がなぜかあって、それをみせてもらった覚えがある)、それ以上のことが書かれていて面白かったです。日本にすむモグラは、ヒミズを別にすると3種類しかいない、というふうに習いました。けど、「6種類(アズマ、コウベ、サド、エチゴ、センカク、ミズラ)いることが分かっている」と書いてあって、モグラ研究が着々と進んでいるのかなぁ、と感じました。

  読んでいて、とにかく細かい部分に感心しました。「他の多くの動物と違って、モグラの毛はほとんど垂直にはえている」→「それは、前にも後ろにも進むため。毛が後ろ向きにはえていると穴の中ではひっかかっていまう」。そういうふうに進化したモグラも凄いけど、それを発見したモグラ研究者たちも凄い。

  でも、モグラがどういうふうにしてこどもを残すのか分かっていない、というのは意外でした。土の中にいるから大事なことも案外分からないのか。

  最後の辺りは難しいはなしのはずなのに(それでもまぁ生物学入門にすぎないのだろうけど)、するすると頭の中に入ってきました。というか、まるきり高校1年のときの生物の授業とかぶっていて、半分くらいはおさらいみたいな感じだったから、分かったのかも知れない。

  モグラ博士になるための方法が書かれている部分も面白かったです。どこまでも、モグラというひとつのものにこだわり、それを探求し、それで食っていく、というのは本当に楽しそうだなぁ、と感じました。でも。そのためにはきっちりとした幅広い知識(外国の人とも意思疎通できないといけないみたいだし。何かを研究するならば、やっぱり英語とかを書き、話すことができないとだめなのか・・・)が必要なのだということも分かりました。


自森人読書 モグラ博士のモグラの話
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★★★★

著者:  山口二郎
出版社: 岩波書店

  岩波ジュニア新書。

  国会の仕組みなど、随分と知っていることも多かったけど、それを再確認する上でも役立つかなぁ、と感じました。読んでいて民主主義に則った政治を行うことは本当に難しいのだなぁ、と感じました。自民党は、大規模な公共事業を行って地方と企業に金を流し、それでもって支持を取り付けていたけれど、多くの人が満足するならば民主的ではない政治が支持されるということもありうるわけで、その部分については考えさせられます。

  多数決が民主主義というわけではないし、大勢の人が間違った方向へ進んだとき、それをとめることは容易ではない、とも思います。小泉元首相が叫んでいた「構造改革/郵政民営化」という言葉に引き寄せられて多くの人が自民党に票をいれ、結果として格差と貧困は拡大しているのを見るとなおさらそう感じます。

  全くはなしはそれるのだけど。日本にはこれまで一度も民主主義が根付いたことはない、と主張する人もいて、全面的には賛成はできないけれど(これまで日本を民主的な国にするべく多くの人が努力してきたわけで、それらに全く意味がなかったとは思えないし)、なんとなく言いたいことはわかります。民衆が権力者を倒して革命を起こしたこともないわけだし(明治維新が革命だという人もいるけどそうは思えないです。武士である薩長が天皇を掲げて幕府を倒しただけだし、それに「大政奉還」とか「王政復古」とかそういう言葉で年表が埋め尽くされているわけです。武士以外の者が集まって結成した奇兵隊は、後々天皇の軍隊に組み込まれ、それを率いていた高杉晋作は病死してしまうし)。

  自己責任という言葉がいつでも持ち出される世の中になってしまったけど、権利を訴えることはやはり大切だと思います。デモも政治参加の一種だという主張には共感します。

  「政治的中立」の部分を読んでいて、政治的中立というものはありえないという主張に共感しました。だって、誰もがこれまでの人生、今の自分の位置、目指す先を持っているはずです。それらをいったん忘れて中立の位置に立つ、というのはどういうことなのか、さっぱり分からない。それに問題意識を持ちつつ、神の視点に立ってそれらの問題に関して口出ししないというのは、無理だし。


自森人読書 政治のしくみがわかる本
★★★★★

著者:  足立力也
出版社: 岩波書店

  最近、様々な情報が飛び交っていて(警察が他国の軍隊と同規模存在するから実質的には軍隊みたいなもの、とか)、コスタリカという国がよく分からなかったのですが、この本を読み、コスタリカって面白そうだし、本当に人権と民主主義を大切にしている国なのだろうなぁと感じました。行ってみたいです。大統領秘書の「そこそこが良い」という言葉に驚かされたというふうに書いてあるけど、僕も凄いなぁと驚きました。

  コスタリカでは大統領のアメリカ追随を憲法違反だと訴える人たちがいて、彼らが勝訴したというはなしは前から聞いていたけど、それってやっぱり凄いことだよなぁと改めて思いました。日本で同じことがありえるだろうか。多分、裁判を起こした人に対するバッシングの嵐が巻き起こるような気がします・・・

  日本の学校は民主的とはいえないという指摘は面白かったです。その通りだなぁと感じます。自森は一風変わっているというか他の学校とは違い(多分、システムへの不信が根強く存在しているため)、生徒会は存在せず、やりたい人がやりたいときにやりたいことを自由に立ち上げ、やっていくという方式になっているのですが、機能不全に陥っているというかなかなかうまくいっていないなぁと僕は感じます。何かしたくても踏み出せない人のとっては苦痛な場所でしかないのではないか。コスタリカの取り組みを学び、卑近な自森に活かせたら面白そうだなぁと思いました。

  授業内で模擬選挙を行っただけでも「不適切」と言われるような日本の学校というのはやはりおかしいのではないか、と僕は思います。投票率が低いのは問題だと言うけれど、それだったらどうして選挙について学校で扱わないのかなぁ。

  コスタリカの人たちの環境問題に対する取り組みについて一つの章が割かれていますが、環境問題と戦争のかかわりについては田中優さんが(多分、『戦争って、環境問題と関係ないと思ってた』って岩波ブックレットだった気がする)繰り返し、述べたり書いているのを聞くと別個の問題ではないんだなぁと感じます。そして、軍事費を増やせば、社会保障費は削られるわけだから、軍備拡張に反対することは自分達の生活を守ることにもなる。そう考えていくと全ての問題は繋がっているといえるのだなぁと思いました。


自森人読書 平和ってなんだろう 「軍隊をすてた国」コスタリカから考える
★★

著者:  荻田尚子
出版社: 文化出版局

  「綺麗な写真・一行程度の文章」で構成されたページと、グミの作り方を書いたページが交互に挟まっています。いろんな種類のグミの作り方が書かれています。随分簡単につくれるんだなぁ、面白そうだなぁ、と少し驚きました。

  ビジュアルに凝っている本。表紙も細々していてかわいいです。もしかしたら絵本に分類すべきかも知れない。

  僕はグミよりも(あと、ガムよりも)どちらといえば、アメの方が好きです。アメは昔からよく食べているものなので懐かしいのです。けど、『自分で作れるグミの本―GUMMY BOOK』を読んでグミもちょっと良いかもなぁ、と思いました。

  そういえば、グミを食べた記憶がないです。もう最近、グミなんて全く食べていないのです。グニッとしていて噛み心地が面白かったことだけは少しだけ記憶にあるけど、なんというかグミといわれても確たるイメージが浮かんでこない。

  抹茶のグミや大葉のグミ、食べてみたい、と思いました。いったいぜんたいどのような感じなのだろうか。別に普通なのか、と考えてしまいました。


自森人読書 自分で作れるグミの本―GUMMY BOOK
★★★★

著者:  豊田直巳
出版社: 岩波書店

  たくさんの写真が印象的でした。「岩波ジュニア新書」の中の1冊だけど、ジュニアじゃない人にも読んで欲しい本だと感じました。現場に赴いて事実を知り、それを語ろうとする豊田直巳さんの視点・立場は素晴らしいと感じました。とても読みやすくて分かりやすい文章も良かったです。僕が知りたいと思っていたことが書かれていたので、とても面白く読むことが出来ました。

  イラク戦争に協力する日本政府に対して違和感を覚えることがあります。というより、自衛隊派兵はおかしいのでは、と思っています。だけど、高校生がそのような感想を抱いても、それはただの感想にしか過ぎません。しかし豊田直巳さんは実際に戦地へ赴いて事実を確認しています。だから豊田直巳さんの書くものには裏付けがあるということになります。「政府による「人道支援」よりも、ペシャワール会による支援の方がより大きなものをアフガニスタンにもたらした」「イラク人にとってはフセインもアメリカも変わらない」と書かれていますが(そして、現地に赴いた多くの人が同じことを言っている)、それなのにテレビはそのような情報を報道しません。

  どうして事実が伝わらないのか。日本のマスコミはどうしてこうも頼りにならないのか(アメリカと、そして日本政府の視点偏重なのか)。本当に考えさせられました。人道支援・国際援助などといって、日本政府は色々なことをやっていますが、それは本当の人道支援にはなっていないのでは(アメリカに対して媚びを売っているだけでは)? としっかり追求すべきだろうと思いました。

  最後、沖縄、さらに東京に話を持ってくるところが良かったです。ぐっと身近に感じました。多くの人にとっては沖縄の出来事さえも遠いのかも知れないけど、僕は修学旅行で沖縄へ行ったことを思い出します。渡嘉敷のガマの中で、親を殺してしまったという金城重明さんは「集団自決」という言葉を避け、「集団強制死」があったと語ってくれました。とても重い内容でした。けど、金城重明さんの言葉が持つ重み全てを僕が受け止めて理解するのは不可能だけど、そこで理解できないと諦めるのは逃げているだけなのだから、卑怯だろうとも思いました。というか、そんなふうに人の思いに心を馳せることは無理と言い出したら、歴史に学ぶことが不可能になってしまう・・・


自森人読書 戦争を止めたい―フォトジャーナリストの見る世界
★★★

著者:  尾木直樹
出版社: 岩波書店

  著者の尾木直樹さんは以前、自由の森学園の公開教育研究会に来て、講演してくれたことがあります。その時のテーマは『いじめ』でした。尾木直樹さんは「いじめられている側に頑張れ、と声をかける日本の文化人たちはおかしい。たとえば、児童文学作家あさのあつこ。『いつか輝ける日が来る。その日まで頑張れ』などと新聞に書いているが、全く状況を理解できていない。今にも自殺してしまうかもしれないのに」というようなことを述べていました。非常に的を射ているのではないか、と感じました。

  なのでこの本も読んでみました。

  いろいろな危険が具体的に書かれていて、分かりやすかったです。

  「単純にケータイを否定するだけではだめだ。ケータイとどう付き合っていくかしっかりと考えないといけない」という尾木直樹さんの立場には賛成です。

  愛知の高校生達の活動、私学フェス(私学助成金削減反対/公私格差是正を求める活動。パレードなどでは毎年1万人集めている)では、ケータイをフル活用しているそうです。ケータイは使い方によっては高校生にとって力強い武器になるわけです。

  僕は携帯電話を持っていない人間なのでなんともいえませんが・・・ やっぱり単純に取り上げようという議論ではだめではないか、と思います。


自森人読書 「ケータイ時代」を生きるきみへ
★★

著者:  笹山尚人
出版社: 岩波書店

  知っておくべき労働法のことや、「働く」ということを分かりやすく解説してくれる本。突然解雇された時どうすればいいのか、等の大切な疑問に分かりやすく答えてくれます。条文なども載っていますが、難しくはないです。物語風になっているので、読みやすいです。

  自由の森学園の森の時間(総合学習)の中で学んだことと重なるなぁ、と感じました(詳しいことは、生きさせろ! 現代日本の貧困と生存をめぐってに書いてあります)。

  ただし、雨宮処凛さんや湯浅誠さんの現実を抉り出した本を読んでしまったあとに、『労働法はぼくらの味方!』を読んでもなぁ、という気もします。基本的なことを知るのは大事だとは分かるんだけど、あまり印象に残らない、というか、インパクトに欠ける、というか。

  現代日本における貧困問題を鋭く切り取った本を読むと、いやでも労働法を用いていかねばならない、ということがよく分かります。それに比べて『労働法はぼくらの味方!』は柔らかいです。

  著者は、ヨドバシカメラ事件を担当した弁護士の方らしいので、そちらの事件のことをぜひ本にしてもらいたいと感じました。


関連リンク
生きさせろ! 自由の森学園総合学習のまとめ


自森人読書 労働法はぼくらの味方!


著者:  内田樹
出版社: アルテスパブリッシング

  内田樹が、様々な角度から村上春樹を賞賛し、絶賛している本。

  村上春樹が書いた小説の解説なのかと思い、手に取ったのですが、ブログを本にしたものだから全体としてまとまりに欠けているし、しかも「村上春樹を読み解く」というところに全く話が及ばないので、ちょっとがっかりしてしまいました。「村上春樹の小説が世界で受けているということは時代を反映している。そこには何かある。だから凄い。」と内田樹は幾度も指摘します。しかし、世界的に受けていることを評価の基準にするならば、ハリウッド映画だって世界で受けているのだから偉大ということにならないか(僕はハリウッド映画が映画の中で最も優れているとは思わないのですが)。

  その上、僕は村上春樹のファンでもなければ、内田樹のファンでもないので、些細なネタは楽しめない。内田樹は、自分にとって好ましいように村上春樹を読み、自分のことと絡めていきます。もう書かれていることの半分くらいは、我田引水的な自分語りに近い。つまり、彼は村上春樹というネームをダシにして、好きなことを好きなように語っているだけなのです。

  しかも、内田樹お得意の論理の「すり替え」というか、「転換」が溢れかえっています(まぁ、「飛躍」ともいうけど)。期待していたものとは違う・・・

  「言葉にはローカルな土地に根ざしたしがらみがあるはずなのに、村上春樹さんの文章には土も血も匂わない。云々」という村上春樹への批判に対しては、「それこそが世界性」と言い、そして村上春樹に対する批判を「村上春樹に対する集団的憎悪」と斬って捨てるのですが、ほとんど「言葉遊び」のようにしか見えないです(「世界性」ってなんなんだ、そんなものがあるのか)

  この『村上春樹にご用心』を読んで、内田樹というのは言葉が巧みな(すなわち内田樹こそ用心すべき)人で、やはり村上春樹は分からない人だなぁ、ということを僕は感じました。


自森人読書 村上春樹にご用心
★★★★

著者:  岡野宏文、豊崎由美
出版社: 筑摩書房

  岡野宏文、豊崎由美の対談。2人が20世紀のベストセラー本を評価していくというもの。読んでいて非常に楽しかったです。

  夏目漱石(1章「1900~1910年」)、芥川龍之介(2章「1911~1920年」)の作品は別格というふうに紹介されていますが、それには頷きます。何十年も前の人の作品なのに高校生の僕が読んでも理解できるし、面白い。しかも文学的にも価値があるらしい。凄い小説家たちだよなぁ、と思います。

  読んでいないものが多かったです・・・ 面白いものはたくさんあるみたいなのに、勿体ないかも知れない。内田百閒、泉鏡花『春昼』、江戸川乱歩『押絵と旅する男』、谷崎潤一郎 『細雪』、庄司薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』、さくらももこ『もものかんづめ』を読んでみようと思いました。

  そういえば、太宰治『斜陽』は読んだはずなのに、中身をまったく思い出せないです、もう一度読み直してみようかなぁ・・・

  ハリー・ポッターシリーズに対する低い評価には同感。どうして大傑作といわれて、あれほど売れたのだろうか? 僕も1巻読んだ時にはけっこう感動していたけど、次の巻が出てくる度に落胆していきました。『指輪物語』には、全然敵わないよなぁ・・・ それは期待しすぎか。

  豊崎由美の渡辺淳一徹底批判は『百年の誤読』でも展開されています。大人気ないのかも知れないけど、面白い・・・


自森人読書 百年の誤読
★★★★★

著者:  大森望、豊崎由美
出版社: PARCO出版

  大森望と、豊崎由美の対談。2人が日本のいろんな文学賞を紹介しつつ、その文学賞の褒められるべき点と、良くない点を挙げていきます。

  大森望、豊崎由美両人の凄いところは、とにかくなんでも読んでいること、です。読書量が圧倒的。「それ(書評)が仕事だから当然」ともいえるけど、凄いとしか言いようがないです。

  しかもその2人は、「メイン」とはいえないような読書領域を持っているところが強みです。大森望はSF、豊崎由美は海外文学(その上、純文学もきちりと読んでいる)を徹底的に読んでいるみたいです。だから、視野が広い。ベストセラーになるような「易しい」本だけしか眼中にないようでは面白い書評家にはなれない、ということがよく分かります。

  『文学賞メッタ斬り!』を最後まで読んでいると、「個人的にチェックしときたいと思うのは・・・ 新人賞では、メフィスト賞とファンタジーノベル大賞。新人賞ではない賞の中では、谷崎潤一郎賞、泉鏡花賞。その4つ以外はまぁどうでも良いや」という豊崎由美の言葉(と言いつつ、仕事だから他の受賞した作品も読むんだろうけど・・・)に頷かされます。

  とにかく『文学賞メッタ斬り!』は面白いです。どうしたら新人賞などをもらえるのか、という案内ではなくていろんな賞の紹介です。賞をあげるかどうかの決定の裏側には、人間関係やその賞の選考委員の人たちの好悪がからまっている、という2人の指摘は参考になります。

  まぁ基本的には賞なんて気にせず、面白い本を読んでいけばいいんだと思いました(面白い賞は押さつつ)。


自森人読書 文学賞メッタ斬り!
★★★

著者:  鮫島敦
出版社: 岩波書店

  今は、職人として生きるということが難しい時代だろうなぁと読みながら感じました。中学をでたらすぐに技を磨くのが良い、と言う人もいるけど、多くの人は漫然と中学・高校・大学へと上がっていく気がします。僕も、中学を卒業したときすぐに職人になるという道を選ぶ勇気はなかったです。ただでさえ、新学歴社会とかそんなことが叫ばれている中で、「技で生きる」なんて可能なのかなぁ・・・

  本の中でも、「学歴」と「職人として生きること」について触れられていたけど、やっぱり釈然としないです。現代は、昔と比べて自由になったと言われるけど、案外生き方が限定される不自由な時代なのかもなぁ、とも考えました。人間も、機械と同じように幅広い有用性というか、万能性が求められてしまう、というか。一芸に秀でているだけでは生きていけないといえば良いのか。

  「相互扶助・相互監視(プライバシーの存在しえないようなつながり)」を兼ね備えた「ムラ」がなくなった代わりに「個人」が生まれて激しい競争の時代になった、という日本・明治の近代論みたいなものを読んだことがあるけど、それともかかわりがあるのかなぁ(その後も「ムラ」的関係は続いて、終戦後の占領統治下において個人主義が完全に導入された、という人もいるけど) それまでは互いに欠けた部分を補完しあえていたのに、1人ひとりに独り立ちが求められたことによって、1つのことをやって生きていくことが不可能になったのではないか。それは良いことなのか。悪いことなのか。判断が難しい。というか、難しくてよく分からない・・・

   随分と変なところに迷い込んでしまったので話を戻すと。いくら腕を磨いて良い物をつくっても、かってもらえないのでは生きていけないということも悩ましいなぁと感じました。海外からやってくる大量生産された安い物に対して立ち向かうためには、まず買う側の意識を変えて買ってもらう必要があります。だけどそれはかなり難しいことだというのは明らかです。だって、命に直接関わる食べ物を選ぶときだって、消費者の基準は「安さ」だから。

  グローバリゼーションの問題とも言える気がします。ソ連が崩壊して曲がりなりにも二分されていた世界が「1つ」になったことで問題が溢れかえっているといわれるわけですが。その中で、貴重な文化(言語とかも)もどんどん失われていくのかなぁ。そうだとしたら、「残念な出来事」ではすまない気がします。何もかも1色に染まってしまったら、とても、つまりらない世界になってしまうのではないか。

  それでは、人類は豊かになったはずなのに文化的には貧しくなっているということではないか(まぁ、よく言われる陳腐な論だけど・・・)。いろんな「色」を残すという点からも、職人を次の世代へとつなげていくべく奮闘している人たちには頑張って欲しいなぁと思いました。


自森人読書 職人を生きる
★★★

著者:  倉橋由美子
出版社: 講談社

  倉橋由美子の偏愛している本がたくさん紹介されています。

  紹介されている本
  夏目漱石の『夢十夜』/森鴎外の『灰燼/かのように』/岡本綺堂の『半七捕物帳』/谷崎潤一郎の『鍵・瘋癲老人日記』/内田百閒の『冥途・旅順入城式』/上田秋成の「雨月物語」「春雨物語」/中島敦の『山月記』『李陵』/宮部みゆきの『火車』/杉浦日向子の『百物語』/蒲松齢の『聊斎志異』/蘇東坡の『蘇東坡詩選』/トーマス・マンの『魔の山』/カフカの『カフカ短篇集』/ジュリアン・グラックの『アルゴールの城にて』『シルトの岸辺』/カミュの『異邦人』/コクトーの『恐るべき子供たち』/ジュリアン・グリーンの『アドリエンヌ・ムジュラ』/マルセル・シュオブの「架空の伝記」/ジョン・オーブリーの「名士小伝」/サマセット・モームの『コスモポリタンズ』/ラヴゼイの『偽のデュー警部』/ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』/サキの『サキ傑作集』/パトリシア・ハイスミスの『太陽がいっぱい』/イーヴリン・ウォーの「ピンフォールドの試練」/ジェフリー・アーチャーの『めざせダウニング街10番地』/ロバート・ゴダードの『リオノーラの肖像』/イーヴリン・ウォーの『ブライツヘッドふたたび』/壺井栄の『二十四の瞳』/川端康成の『山の音』/太宰治の『ヴィヨンの妻』/吉田健一の『怪奇な話』/福永武彦の『海市』/三島由紀夫の『真夏の死』/北杜夫の『楡家の人びと』/澁澤龍彦の『高丘親王航海記』/吉田健一の『金沢』。

  ダメなものはダメと言い、決して妥協しない小説家、倉橋由美子という人のことがよく分かります。その作家の手さばきが分かるものとして、「一品料理」である短編小説をおすすめしているところは頷けます(それでもやっぱり僕は長編小説が好きだけど)。

  読んだことがない作家ばかりだなぁ・・・ これからもっと本を読もう、と思います。とくに澁澤龍彦は面白いみたいで、吉田健一は論理的な日本語を追求した優れた「悪文(的な名文)」らしいのでそこらへんをまず読んで。あとは外国の作品もちょっとくらいは読んでみようと思います。

自森人読書 偏愛文学館
★★★

著者:  保阪正康
出版社: 平凡社

  松本清張は昭和史をどのように捉えていたのか、という問いを取り上げたのが『松本清張と昭和史』。具体的には、『昭和史発掘』と、『日本の黒い霧』を掘り下げ、それらを引用しながらすすんでいきます。入門書みたいな感じ。とても分かりやすいです。

  そもそも松本清張とはどのような人なのか、というと。1909年生まれ。家が貧しかったため、小学校までしか卒業できず、戦時中は給仕、版工などの職を転々としました。戦後になってから(1953年・44歳)、『或る『小倉日記』伝』で芥川賞を受賞してデビュー。1958年に、推理小説『点と線』『眼の壁』を発表。「社会派推理小説」という分野を築き上げ、それから一躍人気作家となりました。

  彼はとにかく多作です。しかも多彩な分野で活躍しました。推理小説、歴史小説、古代史の発掘、昭和史を見つめたノンフィクションなどいろんな小説を書いています。政治にも深い関心を持ち、「民主主義者」としていろんな発言を行っています。共産党を支持したから「左翼」と叩かれたけど、それでいて広範囲から支持を得ていました。戦後民主主義を擁護し、弱者の側に立って世の不正を暴くというそのスタンスが彼を国民的作家に押し上げたと言われます(というので、だいたいの紹介になっているかなぁ・・・)

  この『松本清張と昭和史』では、昭和史を見つめたノンフィクション(『昭和史発掘』と、『日本の黒い霧』)が取り上げられています。2.26事件を起こした青年将校や数々の「謀略」を行うGHQに対する松本清張の怒りというのは共感できるなぁと感じます。

  著者は、松本清張の持つ歴史の見方を「清張史観」と呼んでいるんだけど(「司馬史観」のまねか)、けっこう面白いです。とても考えさせられます。「2.26事件は昭和史の中で最も重要視すべき」という意見を世間に広めたのは松本清張だそうです。そうだったんだ・・・


自森人読書 松本清張と昭和史
★★★

著者:  星浩
出版社: 講談社

  星浩は、政治部記者の人。

  『自民党と戦後-政権党の50年』は、記者として培った政治への見方をもとに、自民党という、戦後の日本政治を担ってきた「巨象」のような政党のことを再考していこう、というもの。いろんな人の名前がぽんとでてくるので、そこが分からないとまずだめだけど、まぁ基本的なところを知っていれば、だいたい読めます。よくまとまっていて分かりやすいです。

  著者なりの考えも時折述べられているので(一番裏側にいる黒幕は誰か、とか)、とても勉強になります。そういうふうにも考えられるのか・・・・・

  1993年、一度自民党が下野した時、梶山静六が、「自民党の下野は良いことだ。何年かは政権からはずれたほうが良い。55年体制下において38年間も政権に在り続けて、緊張感を失って、惰性で続いてきた。野党になって贅肉を落として、再び政権に戻れば強力な政党になるだろう。」と言ったというエピソードは面白いなぁと感じました。

  今、そんなことを言い切れる自民党議員はいるのかなぁ。もしかしたら若手にはそういう威勢のいい人もいるかも知れないけど、だいたいの人はみんな与党の場所にすがりつくんじゃないか。梶山静六といえば田中眞紀子に「軍人」と命名されたおじいちゃんとしか記憶になかったけど、なかなか気概のある人だなぁ、と感じました。凡人、小渕恵三に敗れてしまったけど。


自森人読書 自民党と戦後-政権党の50年
★★★

講演者: 鐸木能光
出版社: 岩波書店

  なかなか参考になる部分が多い本でした。デジカメで撮った写真は良いところだけ切り取れるんだから、その切り取るということを大切にしよう、とか。確かにその通りだよなぁ。デジカメ写真を撮る上で大切にしないといけないことが確認できます。

  とはいえ、全体的には知っていることばかり書いてあったので、拍子抜けしました。「写真編集には、フリーソフト『IrfanView』が良いよ!」ということが書いているのですが。『IrfanView』ってもう超有名ソフトではないか。僕も前から使っています。軽くてぴぴっとできてはまうところが良い。

  『自森人』の写真も、だいたい『IrfanView』で編集してしまうことが多いです。

   IrfanView32 日本語版のページ

  だけど、『デジカメ写真は撮ったまま使うな!―ガバッと撮ってサクッと直す』の中で紹介されていた『縮小専用。』というのは面白そうだなぁ、と思いました。

  まぁ読んでおいて損はしないです。多分。デジカメで撮った写真をどういうふうに整理していけば良いのか悩んでいる人がいたら、読んでみると良いと思います。


自森人読書 デジカメ写真は撮ったまま使うな!―ガバッと撮ってサクッと直す
★★

著者:  津本陽
出版社: 講談社

  宮本武蔵、大石内蔵助、徳川吉宗、山岡鉄舟等いろんな剣士や豪傑たちの事跡を追い、剣の奥義は、処世の指針になるんだ、と説く1冊。それぞれの小話は、それぞれけっこう面白いです。だけどだいたいどれもこれもどこかの本から全部引き写ししてきたようなものばかりなのでうんざりします。手軽に金儲けしているとしか思えない。

  盗作まがいのことばかりやっているおじいちゃんに、偉そうに「生きる道」なんて説かれたくない、と思います(文章をあっちこっちからたくさん「無断引用」している)。

  津本陽は、歴史小説作家として活躍していた人です。もう90歳くらいだから、もう小説を書く仕事からは引退しているのかも知れないけど。昔は直木賞の選考委員とかやっていたこともあって紫綬褒章とかもらったこともあって、もうほんとに大作家です。どうして、そういう人が無断で引き写しをやってしまったりしたんだろうか。

  歴史小説っていうのは、それだけ大変なのかなぁ。いやそういう問題じゃないと思うけど。勝手に人のものを自分のものみたいに発表して良いはずがない。

  しかも、女性蔑視的な視点がそこかしこに見られる。まぁ舞台が戦国・江戸だからそれは仕方ないことなのだろうか。だけど仕方ないですまされたらどうすれば良いんだろうか。

  これに時間をかける必要性はなかったなぁ、と感じました。


自森人読書 勝つ極意 生きる極意
★★★

著者:  井芹浩文
出版社: 中央公論社

  自民党の内部には、幾つもの集団があります。党内に党があるような感じです。それが派閥と呼ばれるものなわけですが。この『派閥再編成―自民党政治の表と裏』は、その派閥というものを分かりやすく解明してくれます。

  『「株式会社」化する派閥』『「総合病院」化する派閥』というのが2・3章のタイトル。派閥はどんどん肥大化、強力化して現在では自民党の議員が派閥に属さないという選択肢は不可能な状況になっていることを分かりやすく説明してくれます。僕は、自民党議員は派閥に属しているのが当然、と思い込んでいました。昔はどこの派閥にも属さない人もいた、ということに驚かされました。今と昔とでは、普通・常識が異なるんだなぁ。勉強になります。

  読んでいると、中曽根康弘とそれに続くニューリーダー達の複雑な関係というのもちょっと分かって面白いです。世話してもらったがもう老いぼれた爺さんに頭を抑えられているわけにはいかない、と考えるニューリーダーの1人・竹下登の立場。彼は結局、中曽根康弘とうまく渡り合い、若手の支持も固めて総理になるわけですが。竹下登も、今はもう亡き人になってしまったんだなぁ・・・・・(2000年死去)

  最後の章のタイトルは、『「小政治」時代の危うさ』というもの。大きな政治的問題を論ずるということがなくなった日本の政治に対して著者が苦言を呈しています。1988年の本なので、もうちょっと当てはまらない部分もあるのですが、とても勉強になります。

  なぜか、政治家たちはこの頃、国家にとってとても重大な問題である「憲法をどうするのか」という点に関して発言を控えています。首相だった安倍晋三があのような形で、ボロボロになったからなんだろうけど。あえて大きな論点をだそうとしない・あえて立場を曖昧にぼかす、というのでは政治家としてだめじゃないか。それでは議論も始まりません。


自森人読書 派閥再編成―自民党政治の表と裏
★★★★

著者:  岡田斗司夫
出版社: 筑摩書房

  アニメや漫画などで、「世界征服」という言葉がよく登場しますが。それは本当に可能なのか? そして世界制服を成し遂げるためには具体的には何が必要なのか、ということを、レインボーマンと仮面ライダーなどに登場する悪の秘密結社の計画などをもとにしながら、論じたものが、この『「世界征服」は可能か?』という本です。

  なぜにショッカー(仮面ライダーの中に登場する「世界征服を企む悪の秘密結社」)は、幼稚で、しかもまるで世界制服に結びつかないような計画ばかりたてているのだろうか? ということを冗談半分にからかった本はこれまでにもあったかも知れないけど、本当に「世界制服」は可能なのだろうか? ということをきちんと考えていったものはあまりなかったような気がします。なかなか面白いです(岡田斗司夫は「おたく」だからもともとそういう話に詳しい人だし)。

  世界制服のためにはまず、目的・ビジョンといったものを用意しなければならず、その上で人材を集め、それを教育し、さらには資金を用意して、基地も用意して、さらには後継者を育成して、というふうにやっていき、もしも世界制服が成し遂げられたとしても、そのあとの世界の支配は大変。部下にもきちりと報酬を支払わないと裏切られる心配があるし・・・

  もしも世界制服を目指す者がいたとしたら、やせ細ってまで、世界のために奉仕し尽くさないとならないことになります。支配者のはずなのに、奴隷のようになってしまうわけです。

  というわけで、最終的には世界制服は「割に合わない」という結論がでてしまいます・・・ おかしくて笑うしかない。どんなに頑張って世界を征服したとしても、逆にのしかかる仕事によって自分が奴隷と化してしまうのか・・・


自森人読書 「世界征服」は可能か?
★★★

著者:  野村二郎
出版社: 講談社

  キムタク演じる検事が主役のドラマ『HERO』の再放送を見ていて検事とは何ぞや、ということに興味を持ちました。そして読んでみたのが『日本の検察―最強の権力の内側』。よくまとまっていて面白いです。検事の役割や、日本における歴史などが大雑把に分かります。

  戦後の日本では、検察という組織がとても大きな権限を握っているということがよく分かります。政治の腐敗を徹底的に叩いてその不正を糺せるのは検事くらいなのだなぁ・・・ しかし、検事だって代議士と闘うのは大変だろうと思います。

  検事として大活躍し、その後ヤメ検弁護士に転じてまたもや活躍、そしてやりすぎて最終的には逮捕された 田中森一という人の書いた『反転』を読むと、検察も国策には逆らえない、という側面も見えてきます。まぁそこは駆け引きなんだろうけど。

  ちょうどこの前、野党第一党(民主党)の党首の秘書が逮捕される、ということが起きました。どことなく国策捜査のような雰囲気がするんだけど(麻生政権が組閣のときに、官房副長官にわざわざ前警察庁長官を起用したという時点でちょっとおかしくはないか)、いったいどういうことなのだろう。政界と検察との関係を、もっと掘り下げていってくれる人はいないのかなぁ・・・ 期待したいです。

  『日本の検察―最強の権力の内側』の中では、検察内部の派閥争いのこととなども、きちりと書かれているのですが、さらさらっと説明されてもあまり頭に入ってきません。まぁまずこの本で大体のところを掴んだ上で、もっと別の本にあたっていけば良いか。初心者には分かりやすい良い本です。


自森人読書 日本の検察―最強の権力の内側
★★

講演者: 鈴木淳史
出版社: 中央公論新社

  匿名掲示板「2ちゃんねる」の書き込みから生まれた『電車男』という物語とはいったい何なのだろうか? 何者かによる自作自演ではないのか? といったことを考えていこうとする本、らしいんだけど、全然面白い展開がないです。つまり当たり前のことを当たり前に紹介していくだけ。

  全体を俯瞰して、見直すのにはそれなれに役立つかもしれないが、それ以上にどうということはない。まぁ「電車男現象って何?」っていうことに初めて興味を持った人が最初に読む分には分かりやすくまとまっていて良いかも知れないけど(もう随分と昔のことになってしまったけど・・・)。

  なんだか、『電車男』の正体に関する話よりも、「2ちゃんねる」というものはなんであるのか(「2ちゃんねる」という現象はなんであるのか)、という部分の評論に重点が置かれている気もするなぁ・・・ まぁつまらないことはないけど。はっきり言ってしまうならば『電車男』のブームに乗って本出してしまおう、という便乗本に過ぎない。

  「―“ネタ化”するコミュニケーション」と大層な副題をつけているけど、電車男のことをネタにして本売っているんだから自分たちも偉そうなことはいえないのでは? というのは的の外れた揚げ足取りだろうか。でも、そんなふうなことを書かないと何も書くことがないんだけど・・・ どうすれば良いのだろうか。もう感想を書くのをやめれば良いのか。

  とはいえ、著者はまじめに書いているみたいだし、それなりに文章は読めるし、虚仮にするのも酷い気がするので★2つ。


自森人読書 「電車男」は誰なのか―“ネタ化”するコミュニケーション
★★★★

著者:  大塚英志
出版社: 角川書店

  大塚英志が、「文学」の読み方を指南するもの。

  文学という麻薬に陥らないためにはどうすれば良いのか。三島由紀夫『仮面の告白』、太宰治『女生徒』、井伏鱒二『黒い雨』、島尾敏雄『出発は遂に訪れず』、大岡昇平『野火』、李恢成『伽揶子のために』、安部公房『箱男』、中野重治『村の家』、中上健次『十九歳の地図』、大江健三郎『芽むしり仔撃ち』、村上春樹『海辺のカフカ』が、『初心者のための「文学」』のなかで解説されています。

  僕は、三島由紀夫、太宰治があまり好きではありません。なぜかというのはあまりうまく説明できないんだけど。大仰なのに空虚、「自分は哀れなやつだ」と思いながら「そう思える自分が凄い」と思っているような雰囲気とか、読んでいてこういうふうになってはだめだろうと思わされます。あとは、村上春樹も好きになれないんだけど。

  大塚英志は、戦争を懐古し、日常を生きられない小説家として三島由紀夫、太宰治を否定的にとりあげています。そこには納得。一方、村上春樹については、途中から「生死」を小説に取り上げることに対して真摯に取り組むようになったということで評価しています。そうなのか・・・ 村上春樹の後期の作品を読んでみようかなぁ、と思いました。

  紹介されている小説の一覧の中で、僕が読んだことがあって面白かったというか好きだと感じたのは、井伏鱒二と、大江健三郎くらいだなぁ。

  大塚英志は、評論家、小説家、編集者としていろんなところで活動している人です。なので、いろんなところから非難を浴び、罵倒されています。おたくを擁護する立場をとり(そもそも大塚英志は、「おたく」という言葉を「発明」した人)、またその一方で「おたく」に成長・成熟しろと言い続け、戦後民主主義を評価する立場をとり、「売れない純文学は商品として劣る」と主張して純文学論争を巻き起こし・・・

  ・・・まぁとにかくツッコミどころが満載の人なわけです。「大塚英志なんて古すぎる」「大塚英志はトンチンカン」「バカ」とか散々に言われています。確かに全面的に賛成できる訳じゃないけど、僕はなかなかに面白い人だと思います。


自森人読書 初心者のための「文学」
★★★★

著者:  榊原悟
出版社: 岩波書店

  『日本絵画のあそび』は、平安時代から江戸時代までのいろんな日本の絵画を紹介し、その面白さを紹介したもの。固くなくて読みやすいです。普通、絵画のはなしとなると、滔々と歴史のはなしが始まり、難しい技法のはなしが始まり、なんかやたら読みにくかったりすることもあるのですが、この本はそのようなことはありません(だからかえって、全体的に大掴みで大雑把なのかも知れないけど、初心者の僕にとってはそこがいいです)。

  何メートルもある紙にでかでかと「達磨」の絵を描いた葛飾北斎、米粒に雁や唐人を描いた坂本文仲。「大」「小」のマジックっていろいろあるんだなぁ、と思いました。今度、自分でも何か活かしてみたいなぁ、美術でも絵画をとっているんだし。

  絵から、花が浮いて見えるように、絵と生け花を組み合わせたという工夫をした人がいたり・・・ 達磨を茶化し、遊女に聖性を見出す人がいた、というはなしも面白い。逆転の発想が絵を面白くするんだなぁと思います。

  章【1.誇張と即興/2.「虚」と「実」のはざま/3.対比の妙/4.「右」「左」をめぐって/5.江戸人のユーモア】

  『日本絵画のあそび』、けっこうおすすめです。

  そういえば、この頃ものすごく岩波書店にはお世話になっています。1週間に読む本のうち、半分くらいは岩波の本のような気がします。


関連リンク
高1 美術(絵画)


自森人読書 日本絵画のあそび
★★

著者:  小泉武夫
出版社: 岩波書店

  基本的な部分においては、著者の主張(日本農業を復活させないといけない)に全面的に賛成だと感じました。食糧自給率が半分にも満たない今の日本の状況が危機的であるというのは同感です。ただし、あまり好きになれないような気になる点がたくさんある・・・

  まず、食糧からエネルギーをつくりだすバイオエタノール技術を批判して、その上で水素エネルギーを推薦している部分。べつに水素エネルギーをお奨めするのは悪いことではありません。だけど、水素エネルギーにも多々問題点があるのに、それには触れない。フェアとは思えません。

  あと、著者は、肉ばかり食べているから最近の子どもは骨が折れやすいと主張します。だけど、「運動不足」など別の問題を考慮にいれない内にそう結論付けるのは、説得力に欠けるのでは? しかも著者の日記をもとに「昔は、小学校の運動会で骨折者はいなかった」と結論付けられても全く信憑性に欠けます。もととなるデータが正確とはいえない。

  そして、1番気になった点。
  全体的に上から目線・役人目線みたいなものが目立ちます。日本国を強くするために・日本民族の文化を守るために農と食を立て直す、と著者は主張しているようです。だけど、「お国のために」とかいわれるとかえって不気味です。しかも、全体的に漂う懐古主義的な雰囲気・・・「昔は良かった」「昔は良かった」と何十度も口走っているようでは、若者の心は掴めないと僕は思うんだけどなぁ。そういう言葉ではなくて、「未来に向けて、日本に住む人たち1人ひとりの健康のために考えていこうよ」という言葉のほうが、信頼されると思うんだけど。

  つけ加えるとすると、「日本人は食べ物を粗末にする恐ろしい民族」「天罰が下る」という文章も気になります。書かれていることの意味は分かるし、共感するけど、そういう感情的な文章で煽るのはどうかと思う・・・ かえって信用できない、と僕は感じました。


自森人読書 いのちをはぐくむ農と食
★★★

著者:  岡田吉美
出版社: 日本文芸社

  面白いほどよくわかる世界の秘密結社、というわりにはよく分かるという訳でもない感じです。図解とかがたくさんあるので中身はそれほど多くないし、ちょっとごちゃごちゃしていているなぁ、という感じがしました。まぁそういうつくりだからしかたないのか。文と図を組み合わせて、子どもにも分かりやすく書いてあるような感じの本の中の1冊です。

  まぁ西洋東洋問わず、いろんな地域の秘密結社がのっているのは良い、と思いました。中国の「結社」のこともでてきます。王朝をぶっ潰すほどものすごい、民衆の力を結集したものが中国の結社なんだよなぁ・・・ 革命家・孫文や国民党の蒋介石も結社に属していたことがあります。

  だけど、こういう「秘密結社」って過大評価されて、よく陰謀史観に利用されるからなぁ。注意しないとだめなんじゃないか、と思います。ユダヤ陰謀論とか、フリーメイソン陰謀論とか、三百人委員会とかとにかく何者かが裏側から世界を操作していると主張する人は多いからなぁ・・・

  よくそれだけ色んなことを思いつくなぁと感心します。いろいろありすぎて全部ウソに見えてきます。まぁ実は、事実に近い説もなかにはあるのかも知れないけど、どれもがどこかしらに正しい指摘を含んでいても不思議ではない気がします。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるというし。

  『面白いほどよくわかる世界の秘密結社』は、そこらへんをちゃんと意識して書かれているので、まぁでたらめなことは書かれていないと思います。たぶん。分からないけど。


自森人読書 面白いほどよくわかる世界の秘密結社―秘密のベールに隠された謎の組織の全貌
★★★

著者:  池上彰
出版社: 講談社

   どうやって話せば、伝えたいことが伝わるのか・・・? とても難しい問題です。NHKの報道記者として、「週刊こどもニュース」のお父さん役を務める池上彰が、「話し方」について具体的な事例を1つひとつ挙げながら、それについて説明してくれるのが、この『相手に「伝わる」話し方―ぼくはこんなことを考えながら話してきた』。

  どこに視線を向ければ視聴者にとって自然か? というところにまではなしがおよんで面白いです。そこまで考えないといけないのか・・

  話し言葉と書き言葉は「生理的な違い」みたいなものがある、というはなしもそうだよなぁ、と頷きました。全然違うんだよなぁ、話すのと書くのとでは。本当かどうかは知らないけど、脳の違う部分を使っている、というようなはなしを聞いたこともあります。

  池上彰の半生みたいなのも分かって面白いです。サツ回り、警察巡りから始まって、首都圏向けニュースのキャスターになり、そしていろいろありながら、最終的に「週刊こどもニュース」のお父さんになるまで。そもそもは記者だったんだ、知らなかったです。

  喋る、というのは難しいことだ、と改めて思います。ぺらぺら喋れれば良いという訳じゃないんだよな・・・ 自分の伝えたいと思っているニュアンスを、出来る限り正確に、相手にまで届けないといけない。いつも後悔ばかりです。まぁ後悔していても意味がないから、反省しながらとにかく喋っていかないといけないんだけど。


自森人読書 相手に「伝わる」話し方―ぼくはこんなことを考えながら話してきた
ウェブサイトhttp://jimoren.my.coocan.jp/
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