『ルバイヤート』とは、ペルシャの詩人オマル・ハイヤームの四行詩集のこと。第二次世界大戦中、著者である陳舜臣はそれを手放さず、何度も繰り返し読み、自分の手で翻訳していたそうです。それをまとめたのが、この陳舜臣訳『ルバイヤート』。
詳細な註解と解説がついています。とくに解説が素晴らしいです。
オマル・ハイヤームは著名な数学者・天文学者・詩人。陳舜臣は「自由思想家」と読んでいますが、当時彼ほど近代的な合理主義者は世界にいなかったようです。初めて三次方程式の解法を体系化し、非常に正確なジャラリー暦を発明。
しかし、勤勉な人というわけではないみたいです。『ルバイヤート』を読んでいると、現代人の感覚とさほど変わらないものが見られます。彼は、神を疑い、イスラーム教を疑い、死が待ちうけている未来を直視しても意味はないし、世界は不可知であるから諦めるしかないと言います。そして、もう今を楽しみ、酒を飲むしかないと嘆くのです。再三にわたって酒が登場します。
四行詩は絶句とも似通っている部分があると陳舜臣は指摘していますが、確かに似ているかも知れません。四行で終わるところ、脚韻を踏んでいるところ、簡潔なところが一致します。そういえば、酒好きなところも同じかも知れない。
読んでいて、陳舜臣は凄い人だと改めて感じました。彼は台湾の人。1924年に神戸で生まれ、大学ではヒンディー語とペルシャ語を学び、戦後日本でミステリ作家としてデビュー。その後中国の歴史小説を発表し、一つのジャンルを形成。彼が、日本語で小説を書いてくれることに感謝しないといけないのかも。
読んだ本
オマル・ハイヤーム、陳舜臣『ルバイヤート』
読んでいる最中
サマセット・モーム『コスモポリタンズ』
物語の舞台は、第二次世界大戦末期のヨーロッパの田舎町。祖母のもとに双子をつれた母親が現れます。祖母は受け取りを拒否するのですが、母親は双子を置いて去っていきました。祖母は臭くて粗野でその上偏狭な性格でした。しかも祖父を毒殺したと思われたため周囲からは魔女と呼ばれます。ですが、そんな祖母のもとで、双子は一心同体となって残酷な世界を生き抜いていきます。彼らは溢れる苦痛や死、虐めに対してストイックに立ち向かいますが・・・
第二次世界大戦を描いた小説。アゴタ・クリストフのデビュー作。
双子の日記ということになっています。事実のみが淡々と記されているため描写は簡潔。そして、細切れです。読みやすいです。
感情は綴られていないし、固有名詞はほとんど登場しません。しかし、だからこそ普遍的なのかも知れません。グロテスクな戦争というものが明確に活写されています。敵だろうと味方だろうと軍隊と言う物は略奪と強姦を繰り返すという事実が生々しいです。また、ホロコーストについてもさっくりと描かれています。ユダヤ人の人たちはどこへ連行されていったのか、周囲の人は実感をもって受け止めることが出来なかったのかも知れない、と感じます。
様々な汚れもしっかりと記されているところが印象的。寓話的なのに、不思議なほど人間味があります。
主人公である、双子は決して離れ離れになることはありません。彼らは二人で一人なのです。だからこそ、独特の論理を突き通し、異様な事態に対処できるのではないか。徹底的に冷たいです。様々な感情を殺していくことでしか戦争という事態を受け止めることはできないのかも知れない、とも感じます。
醜さから隔絶された哲人のような双子を生み出した著者アゴタ・クリストフは凄い人だ、と感じました。ハンガリーから西側へと亡命してきてフランス語を学び、小説を書き始めたそうですが、母語ではない言葉を用いて小説を書くのは難しいだろうなぁ。
読んだ本
アゴタ・クリストフ『悪童日記』
読んでいる最中
サマセット・モーム『コスモポリタンズ』
昨日、私は銃を拾いました。私はその美しさに魅せられていきます。私は友人とともに女をひっかけ、セックスし、日々を過ごしていますが、どうしても銃が気になります。そして、銃を手に取るのですが・・・
いかにも純文学っぽい古風な作品。
私を何十回繰り返したら気が済むのか。淡々としていてシンプルだけど精神を逆撫でするような文章には疲れました。悪文ではないか、と感じましたが、著者は狙っているのかも知れません。
作品の構成自体はありきたり。空虚な暗闇のようなものを抱え込んでいるどうしようもない男が、どうしようもない日々の中で銃へと向かっていくというだけの物語。読んでいるだけで疲れてきますが、面白くないことはないです。
新潮新人賞受賞作。中村文則のデビュー作。
読んだ本
中村文則『銃』
読んでいる最中
ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』
『タイムスリップ・コンビナート』
去年の夏頃の話。マグロ恋愛する夢を見て悩んでいたら、いきなり電話がかかわってきて、どこかへいけ、と言われます。そして話している内に海芝浦へ行くことになるのですが・・・ 芥川賞受賞作。
『下落合の向こう』
電車に乗っていないとき、私は考えています。電車に乗っている間中私たちの時間は盗まれているのと。そればかりか知覚は捻じ曲げられ、ありもしない幻想を見せられていると。夢とも現実ともつかない電車の中での体験。
『シビレル夢ノ水』
家の中に入ってきた猫を拾ったのに実は飼い主がいたと発覚し、その猫を返した途端に精神が変なことになってしまいます。そして蚤が巨大化を始め・・・ グロテスクで、一番印象的。
笙野頼子の小説は奇妙です。時には現実的な話のように思える時もあるけど、基本的にはグロテスクな悪夢のようだし、おとぎ話のようです。決して綺麗ではなく、様々な物が詰め込まれ、接合されているため気持ち悪いです。だけど、その感覚が堪らなく面白い。
現代における現実や私とは何なのか考えさせられます。
読んだ本
笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』
笙野頼子『下落合の向こう』
笙野頼子『シビレル夢ノ水』
読んでいる最中
ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』
中村文則『銃』
ピエロは物言えぬ傍観者として十字屋敷で巻き起こる事件の一部始終を観察しています。葬式のためオーストラリアから帰ったばかりの竹宮水穂は次々と巻き起こる事件に遭遇し、困惑します。そして、ピエロを追って現れた人形師の悟浄とともに事件について考えるのですが・・・ 竹宮水穂の視点の間に、ピエロの視点がちょこちょこ挟まります。
奇を衒ったミステリ。
登場人物には魅力が感じられないし、会話もつまらないことこの上ありません。とはいえ、ミステリとしてはそれなりに面白いです。ありがちな館ものなのだけど、様々な人間が動き回っているため複雑。その絡み具合が面白いです。
しかも無駄がないです。伏線が上手に張られていて、しかもそれがみごとに収斂していきます。よく考えるなぁ、と感心します。
ラストはじんわりと怖いです。
基本的にコンパクトだし、サクッとしていて読みやすいので時間はとりません。東野圭吾のミステリ小説は軽いところがいいです。
読んだ本
東野圭吾『十字屋敷のピエロ』
読んでいる最中
笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』
ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』
貧困問題に関しては、自由の森学園森の時間で学びました(ウェブサイト「生きさせろ!」にまとめられている)。『貧困を考えよう』は、格差と貧困についてさらに考えを深めていこう、と思ったときに役立つだろうと感じました。
いすとりゲームの比喩は、非常に分かりやすいです。最初からイスの数が限定されている場合、どれだけ頑張ってもイスに座れない人が一定数でてくるのは当然だ、という論理は明快だし、納得できます。貧困の問題を自己責任という言葉で片付けてしまうわけにはいかないだろう、と思います。
多方面から評価された湯浅誠『反貧困』を始めとして、貧困について論じた本が世の中にはそれこそ山ほどあるけれど、『貧困を考えよう』は子どもの貧困について具体的かつ詳細に論じられているところが特色のようだけど、そこが良いと感じました。
岩波ジュニア新書。
読んだ本
生田武志『貧困を考えよう』
読んでいる最中
東野圭吾『十字屋敷のピエロ』
いすとりゲームの比喩は、非常に分かりやすいです。最初からイスの数が限定されている場合、どれだけ頑張ってもイスに座れない人が一定数でてくるのは当然だ、という論理は明快だし、納得できます。貧困の問題を自己責任という言葉で片付けてしまうわけにはいかないだろう、と思います。
多方面から評価された湯浅誠『反貧困』を始めとして、貧困について論じた本が世の中にはそれこそ山ほどあるけれど、『貧困を考えよう』は子どもの貧困について具体的かつ詳細に論じられているところが特色のようだけど、そこが良いと感じました。
岩波ジュニア新書。
読んだ本
生田武志『貧困を考えよう』
読んでいる最中
東野圭吾『十字屋敷のピエロ』
1964年(昭和39年)。東京オリンピックを目前に控え、日本中が熱気に包まれていました。市民や警察は勿論のこと、労務者、学生、左翼、はてはヤクザまでがアジアで初めてのオリンピックを誇りに思い、待ち望んでいました。しかし、マルクス経済学を学ぶ東大院生・島崎国男は、出稼ぎ労務者だった兄が東京の建設現場で事故死したことをきっかけにして、その状況に疑問を持ち始めます。彼は兄の遺骨を実家がある秋田の寒村に持ち帰ったときには極貧の中で苦しむ人々を目の当たりにし、夏休みの間労働者と肩を並べて働いたときには理不尽かつ過酷な労働現場を知ります。彼は悩みます。ですが最終的にオリンピックを邪魔することで国家を脅し、八千万円を奪い取ろうとします・・・
社会派サスペンス小説。
521p二段組。長大なのですが、とにかく引き込まれます。高度成長期の日本というものが細部にいたるまで描写しつくされています。西洋的な生活を送りつつビートルズに熱狂する市民と長時間労働に苦しみ明日のことなど考えることも出来ない薄汚れた労務者。開発が進み、娯楽が溢れる進歩的な東京と、次男三男に居場所はなく結婚は村が取り仕切る封建的な秋田。それらの対比が印象的。
そして、群像劇としても優れています。登場するキャラクターたちがとにかく魅力的。
島崎と意気投合する年老いたスリ村田留吉。官僚しかいない一族の中でテレビ会社に就職した須賀忠。オリンピックの日に出産予定の妻と二歳になる息子と郊外で生活している優秀な警官落合昌夫。誰もが、善意と悪意を併せ持った個性的な人間なのです。
そして、とにかく主人公・島崎が魅力的。彼は誰からも好かれる控えめな優男。東大の大学院にまで進むのですが、輝かしい日本/東京をつくるために踏みにじられている人々と出会い、その状況を是正しようと思いながら具体的な手段を見つけられません。そして、労務者の仲間から貰ったヒロポンに手を出したために薬物中毒に陥ります。ですが、感覚が鋭敏になるヒロポンをうまく用い、テロを決行。日本を脅かし、八千万円を奪い取ろうとします。国家の権威を剥ぎ取ろうとしたわけです。彼は少しずつ追い詰められていくのだけど、それでも基本的には誠実だし、愚直です。関係ない他人に迷惑をかけようとしません。
度重なる偶然と警察の内部対立が彼を救うのですが、少し都合よすぎる気がしないでもないです。けれど、好人物過ぎてテロリストになりきれていない島崎が活躍するためには、偶然が必要な気もします。
無邪気に未来を信じる人間が溢れかえるオリンピック開会式の会場で、過酷な現実に目を向けてた人間があっけなく射殺されるクライマックスの場面はあまりにも印象的。奥田英朗の最高傑作なのではないか、と感じます。
第43回吉川英治文学賞受賞作。
角川書店。
読んだ本
奥田英朗『オリンピックの身代金』
読んでいる最中
生田武志『貧困を考えよう』
元ボクサーの警官バッキー・ブライチャートは、同じく元ボクサーの警官リー・ブランチャードと、公衆の面前で久しぶりにボクシングの試合を行います。それは警察公債発行を実現するためのキャンペーンだったのですが、バッキーはそれをうまくこなし、出世。その後、バッキーとリーはコンビを組み、活躍していきます。1947年1月15日、ロス市内で腰を切断された女性の死体が発見されます。その内に身元が明らかになります。本名はエリザベス・ショート。女優になることをめざし、都会へでてきたのに誰に対しても妄想的な嘘をつきまくり、しかも体を男に売り続けていた女性でした。マスコミは、彼女を「ブラック・ダリア」と呼び、その事件をセンセーショナルに報じます。バッキーとリーは必死に事件を追うのですが・・・
実際に起こった殺人事件を基にした小説。
アメリカ社会の暗部を切り取った「暗黒のL.A.」四部作の第一作目。文体は軽快だし、ストーリーは物凄いスピードで進んでいきます。読みやすいけど、翻弄されます。
狂気と暴力とセックスと薬と汚濁とジョークが溢れています。まともな人間はほとんど一人も存在しません。とはいえ、誰もが強烈な個性の持ち主なので、記憶には残ります。
とくに、リーという男が印象的。彼は有能な警官なのですが、怒り狂うと手がつけられず、その上薬漬けになりかかっています。ブラック・ダリアを幼い頃喪った妹のように感じていて事件解決に狂奔します。最初の内は憐れな被害者のように思えますが、実は全然そのようなことはなく、汚れ切っています。
ミステリとしても優れています。ラスト近くになるまで真相は分からず、しかも痛烈などんでん返しが待っています。
読んだ本
ジェイムズ・エルロイ『ブラック・ダリア』
読んでいる最中
奥田英朗『オリンピックの身代金』
物語の舞台は、南欧の田舎をモチーフにした仮想空間「数値海岸」。そこでは、1050年の間、永遠のヴァカンスに倦むこともなくAIたちが同じ夏の1日を繰り返していました。ホストである人間が現れなくなったからです。ある日のこと、十二歳の少年ジュール・タピーはジュリーとともに硝視体<グラス・アイ>を拾うため海岸へ赴きます。ですが、区界を破壊する<蜘蛛>が現れ・・・
SF小説。
ヴァーチャル空間を舞台にしたSF小説は数多く存在しています。だから、『グラン・ヴァカンス』自体に独創性というものを感じることはないし、使い古された設定の焼き直しということもできます。だけど、描写が凝っていて、物語も面白いです。
キャラ設定などは、いかにも漫画的/映像的。構成は練られているようには感じられません。とはいえ、小説でしか表現できないようなものもしっかりと盛り込まれています。
官能的、かつグロテスク。
気持ち悪いところがいいです。ヴァーチャル空間が舞台だからこそありえる幻想性というか、脆弱な世界の描き方が秀逸。物語の中に、全ての基盤がぐらっと揺らぐ瞬間というものが存在します。
文章はさほど巧いとは感じられません。日本語として変な部分が多いので気になりました。主語が明確ではなくて妙にぐらぐらしています。けれど、軽いので非常に読みやすいです。
読んだ本
飛浩隆『グラン・ヴァカンス-廃園の天使〈1〉』
読んでいる最中
ジェイムズ・エルロイ『ブラック・ダリア』
奥田英朗『オリンピックの身代金』
『戦闘妖精・雪風』シリーズ第3作目。さらに、思弁的かつ抽象的な物語になってきています。戦闘シーンはほとんどありません。
情報軍に属するロンバート大佐はジャムと組んでFAFを乗っ取るべくクーデターを起こします。彼は不可解なジャムになりきることでジャムに打ち勝とうとしていたのです。そして、クーデターを起こしてから、すぐに地球に在住しているジャーナリスト、リン・ジャクスンへ向けて手紙を書きます。それは、人間に対する宣戦布告でした。
友達に借りた本なのですぐに読もうと思っていたのに、分厚くてその上2段組なので、読みきるのに時間がかかりました。非常に面白かったのですが、これまでの2作以上に難解なので何度も訳が分からなくなりました。登場人物は、誰もが理屈に拘ります。とにかく徹底的に理屈を捏ね繰り回すのです。疲れるけど愉快です。
クーリィ准将の存在というものが非常に巨大になってきます。彼女が特殊戦というものの性質を決定付けるからです。
あと、機械である雪風に擬似的な人格のようなものが生まれたことが明確になる部分が面白いです。むしろ、人間の意識は機械に見透かされているということまで明らかになり、状況はさらに複雑怪奇になります。誰が敵で、誰が味方なのかよく分かりません。
しかも、不確定性の原理についても語られだすので混乱します。SFとしてはありがちなネタではある気もしますが、それにしても様々な要素が盛り込まれすぎていてよく分からなくなってくるのです。しかし、著者の狙いはそれなのかも知れません。
続編が非常に楽しみです。
読んだ本
神林長平『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』
読んでいる最中
ジェイムズ・エルロイ『ブラック・ダリア』
奥田英朗『オリンピックの身代金』
斉木鮮は、英語教員に「ア・ルース・フィッシュ(だらしのないやつ)」だと非難されます。それは決して褒め言葉ではありませんでした。ですが、looseは「自由な」という意味も併せ持っていました。その言葉に勇気付けられた鮮は、教師を殴って進学校を中退。そして、赤子を抱えた元彼女・幹のもとへと赴き、彼女との生活を始めます。赤子を梢子と名付け、アルバイトに精を出すのですが・・・
成長の物語。
さっくりとしていますが、なかなかに面白いです。主人公は、母親との不和を引きずり続け、苦悩します。ですが、彼は幹、梢子と生活するうちに成長していき、最終的に幹とセックスすることでトラウマから脱出します。悩みは基本的に淡白なもののように感じられるし、ラストは随分と安易な気もします。けど、だからこそ、『ア・ルース・ボーイ』という作品は現代的なのかも知れません。
真摯な主人公は全くうじうじせず、淡々と苦境を乗り越えていきます。少しも大仰ではなく、気負いもなく、それでいてまっすぐ。
私小説なのに、客観的な視点から書かれている気もします。だから、妙にあっさりとした印象を受けるのかも知れません。
新聞配達などのアルバイトについて綴られている部分が面白かったです。
山田詠美の解説が面白いです。ただし、山田詠美の小説はそれほど好きではないし、彼女が褒めている佐伯一麦の小説にも感心はしなかったのですが・・・
第4回三島由紀夫賞受賞作。
読んだ本
佐伯一麦『ア・ルース・ボーイ』
読んでいる最中
神林長平『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』
ジェイムズ・エルロイ『ブラック・ダリア』
ウィリアム・フォークナーの出世作。架空の街ヨクナパトーファを舞台にしたヨクナパトーファ・サーガの4作目にあたるそうです。
1.女子大生テンプルは男友達に誘われ、車に乗り込むのだが、車はミシシッピー州のジェファスンの町はずれで大木に突っこんでしまう。二人は助けを求めるため、廃屋に立ち寄った。そこは数人の部下を率いるギャング・ポパイの根城だった。
2.ポパイは老人トミーを射殺し、テンプルを玉蜀黍の穂軸で強姦するのだが、彼の代わりにグッドウィンというポパイの部下が捕まる。グッドウィンには女と赤子がいた。その二人のためにも、弁護人ホレスはグッドウィンの無罪を証明しようとするのだが・・・
時間軸がおかしくなっていて、1と2が並行的に綴られていきます。なので、まずあらすじが把握しづらいです。しかも文章は即物的だから登場人物の心境は想像するしかないのですが、何を考えているのかいまいち分からない登場人物たちには感情移入しづらいです。
しかし、どの登場人物も強烈な個性を持っています。最も印象的なのはポパイ。彼は性的不能者であり、その上酒を飲むことができません。それが故に蔑まれるのですが、そういった侮蔑に対抗するかのように犯罪を繰り返します。
ヨクナパトーファは荒れ果てています。正義とか、神とかそういうものが通用しない世界なのです。その町に住む人間たちは、栄光や救いを求めることなく、暗闇の中で汚く生きて、死んでいくだけ。
フォークナーというのは、こういう感じなのか。
新潮社。
読んだ本
ウィリアム・フォークナー『サンクチュアリ』
読んでいる最中
神林長平『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』
『沈まぬ太陽〈1〉 アフリカ篇(上)』の続き。
異国を10年にもわたって盥回しにされた恩地は精神を病み、家族も苦しむのですが・・・
救いのあるラストでよかったです。まだまだ続くわけですが。
読んだ本
『沈まぬ太陽〈2〉アフリカ篇(下)』
読んでいる最中
ウィリアム・フォークナー『サンクチュアリ』
神林長平『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』
ブランドン・サッカレー(ブランディ)と、マイルズ・ジョーダン教授(クリックス)は恐竜が滅びた理由を探るため、6500万年前にタイムスリップします。ですが、2人はテスという一人の女性を巡って争っている最中でした。そのため、彼らは恐竜と出会うのですが、なかなか協調できません。そうして2人がいがみ合っているうちに恐竜の体内からは青いゼリーのようなものがでてきて、しかも恐竜が喋りだし・・・ というようなことが書いてある文書をブランドンは発見し、困惑するのですが・・・
優れたSFミステリ。
恐竜が滅びた理由、恐竜が巨大でも大丈夫な理由などなどが次々と解明されます。それらの真相はまったくもって奇想天外というしかなく、SFとして非常に面白いです。
しかも、タイムマシン、恐竜、異星人などなどがてんこもり。それなのに、古臭さ/安っぽさは感じられません。様々な謎が散りばめられているためか、読み進めることができます。
物語は伏線だらけ。むしろ、伏線だけといってもよく、もう少し深みが欲しい気がしないでもないです。まぁこれくらいさっくりとしているからこそ読みやすいのか。
読んだ本
ロバート・J・ソウヤー『さよならダイノサウルス』
読んでいる最中
神林長平『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』
R.U.Rの社長・ドミンは、ロボットを開発し、全世界に売り込みます。ロボットは人間と同じような肉体を持っているのですが感情は持っていなかったため給料を与えずとも徹底的に使い込むことができました。人間は全てをロボットに任せてしまい、働かなくなります。権同盟会長の娘ヘレナは、それを阻止しようとロボット製造工場がある孤島に乗り込むのですが逆に結婚を申し込まれ・・・
1921年に発表された戯曲。
この作品がロボットという言葉を生み、広めたそうです。人間にいいように酷使されていたロボットが叛乱を起こす、というストーリーは非常に印象的でした。
科学が進歩した結果、便利な物がたくさん生まれたわけですが、それを運用するだけの能力/倫理観を人間が持っているか、と問うているのかなぁ、と感じました。大戦すらまだ経ていない1921年にこの作品は発表されたわけですが、未来を見通した著者の目線は本当に素晴らしいと感じました。
失敗作とされていたロボットこそが最も人間的だったというラストは痛快です。著者は人間のことを憂慮しつつも皮肉っているわけか。
岩波書店。
読んだ本
カレル・チャペック『ロボット<R.U.R.>』
読んでいる最中
ロバート・J・ソウヤー『さよならダイノサウルス』
『この人の閾』は保坂和志の短編集。『この人の閾』『東京画』『夏の終わりの林の中』『夢のあと』収録。
『この人の閾』
主人公は37歳の三沢。彼は小島さんと会うために小田原へいくのだけど、一時という約束だったのに夕方になるまで会えないと分かります。なので、かつての学友・関根真紀と再会。2人の子供を持つ彼女と庭の草をむしります。芥川賞受賞作。
『東京画』
主人公は、東京都にある、環七近くのXXを巡っています。随分とたらたらとしています。でも、暗い雰囲気がよくでていて良いかも知れない。
『夏の終わりの林の中』
主人公は、ひろ子とともに自然教育園を散策します。さほど関係ないけど、『地球の長い午後』を連想。
『夢のあと』
主人公とれい子は、鎌倉にある笠井さんの家を訪ねます。3人は笠井さんが幼い頃過ごした土地を巡るのですが、記憶は美化されるということを悟り・・・
多分、空間と関係を描いた小説。
あらすじを説明することにはそれほど意味がないような気がします。2人の会話を綴っていたのに、突如として一度引くところがあります。そういういかにも映像的な部分が優れているのだけど、非常に説明しづらいです。
記憶が非常に重要な要素となっている気がします。人間だけが記憶を持っているのだろうか、と考えてしまいました。
著者は様々な物が開発され、全てがきっちりしていくこと、ひいては社会が進歩していくことに対して違和感を抱いてるようなのですが、その感覚はポストモダン的ともいえるし、いかにも現代的。進歩を肯定する通常のSFとはまっこうから対立するということができるかも知れないのですが、似た問題意識を抱いてるということも可能です。もしかしたら、保坂和志はSF作家になったかも知れないのか・・・
読んだ作品
保坂和志『この人の閾』
保坂和志『東京画』
保坂和志『夏の終わりの林の中』
保坂和志『夢のあと』
読んでいる最中
ロバート・J・ソウヤー『さよならダイノサウルス』
カレル・チャペック『ロボット<R.U.R.>』
主人公は、ダーリントンホールの執事スティーヴンス。彼はかつての主人ダーリントン卿を失い、新たにアメリカ人の主人ファラディ氏を迎えることとなります。ファラディ氏はジョークが好きなアメリカ人だったため、スティーブンスは戸惑いました。そんなある日のこと、主人に勧められ、イギリス西岸のクリーヴトンへと出掛けます。旧友ミス・ケントンと再会し、再び彼女とともにダーリントンホールを運営できたら嬉しい、と彼は考えたからです。小旅行の最中、美しいイギリスの田園風景に触発されるためかスティーブンスは回想ばかりを繰り返します・・・
イギリスというもの自体を描いた小説のようです。
小説は、執事スティーブンスのしっとりとした語りで進んでいきます。その語り口がまたいいのですが、彼が書きたくないと思っていることは注意深く取り除かれています(たとえば、ミス・ケントンへの恋情とか)。つまり、大切なことは書かれていないわけです。そこが奥深いです。
スティーブンスは品格ある執事であり続けるためにミス・ケントンに近寄ろうとはしません。ほとんどつっけんどんといってもいいような態度をとるわけです。2人は互いのことを想っているのに決して向き合うことは出来ません。あまりにも哀しくて胸を抉られます。
そして、スティーブンスとその主人ダーリントン卿は、時代の荒波にのまれていきます。
ダーリントン卿は騎士道精神に則った人間であろうとし続けたためにナチスドイツに操られ、スティーブンスは品格ある執事であり続けようとしたためにそれを助けることになってしまいます。あまりにも痛々しいです。ただただ誠実に、立派に生きようとすることで失われていくものがどれほど多いか、と考えさせられます。
でも、執事スティーブンスは決して惨めではない、と感じます。彼の生き方は間違っていたけれど、それでも立派だったのではないか。
ブッカー賞受賞作。
読んだ本
カズオ・イシグロ『日の名残り』
読んでいる最中
ロバート・J・ソウヤー『さよならダイノサウルス』
「国境なき医師団」という言葉はよく聞くから知っているけど、具体的にどのようなことをしている人たちなのか、まったく知りませんでした。『国境なき医師が行く』を読み、国境なき医師団の人たちが具体的にどこへいき、どういうことをしているのか分かって面白かったです。
国境なき医師団の人たちがとても壮絶な日々を送っているのだということがよく分かりました。医師であるならば、それだけでもたくさんの人の命を入れ替わり立ち代り預かるわけだから、とにかくタフで思い切りが良くないと勤まらないのだろうけど、国境なき医師団の人の場合はわざわざ設備がしっかりしていない地に赴くわけだから、さらに勇気が必要なのだろうなぁ、と感じました。
読んでいて、とても怖かったです。エマニュエルという少年や、サンバーという老人を治療したとき失敗し、死なせてしまったというふうに紹介されていたけど、たとえ失敗しても落ち込んでいる暇はなく、次の患者を助けるために動き出さないといけない、というのは本当に過酷な状況ではないか。肉体的にも精神的にも追い詰められるよなぁ・・・ それでもへこたれない著者は凄い人だなぁ、と感じました。
陳腐だけど、読みながらどうしても『ブラックジャック』を連想してしまいました。現実にブラックジャックみたいな生き方をするのは無理だろうとこれまで思っていたけど、著者の生き方はそれにちょっと近い気がしました。自分の信じるところを通し、人の命を救うことに全力を注ぐっていうのはほんとにかっこいい。
エピローグが非常に印象的でした。NPO・NGO活動に関わった人たちが帰ってきたとき、行き場に困る今の状況はおかしいと感じました。それでは怖くてなかなか海外に飛び出していくことはできない気がします。日本の人たちがここまでボランティアや様々な活動を理解しようとしないのは、嫉妬にかられているからなのかそれとも何ごとにも無関心だからなのか、よく分からないです。でも、おかしいとは感じます。
読んだ本
久留宮隆『国境なき医師が行く』
読んでいる最中
カズオ・イシグロ『日の名残り』
国境なき医師団の人たちがとても壮絶な日々を送っているのだということがよく分かりました。医師であるならば、それだけでもたくさんの人の命を入れ替わり立ち代り預かるわけだから、とにかくタフで思い切りが良くないと勤まらないのだろうけど、国境なき医師団の人の場合はわざわざ設備がしっかりしていない地に赴くわけだから、さらに勇気が必要なのだろうなぁ、と感じました。
読んでいて、とても怖かったです。エマニュエルという少年や、サンバーという老人を治療したとき失敗し、死なせてしまったというふうに紹介されていたけど、たとえ失敗しても落ち込んでいる暇はなく、次の患者を助けるために動き出さないといけない、というのは本当に過酷な状況ではないか。肉体的にも精神的にも追い詰められるよなぁ・・・ それでもへこたれない著者は凄い人だなぁ、と感じました。
陳腐だけど、読みながらどうしても『ブラックジャック』を連想してしまいました。現実にブラックジャックみたいな生き方をするのは無理だろうとこれまで思っていたけど、著者の生き方はそれにちょっと近い気がしました。自分の信じるところを通し、人の命を救うことに全力を注ぐっていうのはほんとにかっこいい。
エピローグが非常に印象的でした。NPO・NGO活動に関わった人たちが帰ってきたとき、行き場に困る今の状況はおかしいと感じました。それでは怖くてなかなか海外に飛び出していくことはできない気がします。日本の人たちがここまでボランティアや様々な活動を理解しようとしないのは、嫉妬にかられているからなのかそれとも何ごとにも無関心だからなのか、よく分からないです。でも、おかしいとは感じます。
読んだ本
久留宮隆『国境なき医師が行く』
読んでいる最中
カズオ・イシグロ『日の名残り』
アルセストは潔癖を好む青年でした。彼は嘘とお世辞と阿諛追従ばかりが満ちている社交界を憎み、妥協しませんでした。詩が下手な友人には詩が下手だと言い、決して自分の意見をまげなかったわけです。しかし、美しい未亡人セリメーヌに恋してしまいます。彼女は誰に対しても笑顔を浮かべ、親しくする浮気性な女性でした。友人フィラントの忠告を受け入れないアルセストは、自分の力でセリメーヌを変えてみせると豪語するのですが・・・
フランスの古典劇。戯曲。
あっさりとしているのだけど、深いです。初演は1666年だそうですが、現代の人間が読んでも理解できるし、共感できるのではないか、と感じます。
アルセストは嘘とお世辞を言わず、剛直に生きていこうとしたために追い詰められ、恋に破れ、傷付いていきます。直情を貫こうとすれば人間社会では生きていくことが出来ず、かといって社会に適応しようとすれば自分を偽ることになるわけです。その問題で悩んでいる人も多いのではないか。まぁ青臭い悩みということもできるけど、切実な問題だと思えます。
フィラントのように良識を身につければ誰とでも付き合えるのかも知れないけど、様々な矛盾を自分のうちに受け入れることはなかなかに難しいといえます。それこそが大人になる、ということなのかも知れないけど。
今日読んだ本
モリエール『人間ぎらい』
読んでいる最中
カズオ・イシグロ『日の名残り』
新潮社『考える人 2008年春号』
『どろぼう熊の惑星』はR・A・ラファティの日本版オリジナル短編集。『このすばらしい死骸』『秘密の鰐について』『寿限無、寿限無』『コンディヤックの石像』『とどろき平』『また、石灰岩の島々も』『世界の蝶番はうめく』『処女の季節』『意思と壁紙としての世界』『草の日々、藁の日々』『ダマスカスの川』『床の水たまり』『どろぼう熊の惑星』『イフリート』『公明にして正大』『泉が干あがったとき』『豊かで不思議なもの』収録。
奇天烈な法螺吹きSF小説ばかりが収録されています。
分かりやすい『寿限無、寿限無』などはとくにおかしかったです。しかし、もう少しよく分からない短編もそれぞれ面白い。寓話的な『泉が干あがったとき』もいいなぁ、と感じました。
『寿限無、寿限無』
優柔不断な天使ボシェルは罰を受けます。6匹の猿にランダムにタイプを打たせ、シェイクスピアの全著作が収録されている<ブラックリスト・リーダーズ版>を一文字違わず再現するように命じられたのです。しかし、何千年たっても何万年たっても、完成せず・・・
『泉が干あがったとき』
泉の水が干あがってしまい、人々のアイディアは枯れてしまいます。事態を憂慮した有識者が集まるのですが、彼らも意味があることを考え付くことが出ません。それはどうしてなのか、というと多くの生物がはぐくんできた創造的なものを生み出す泉を、人間が勝手に、しかも大量に消費尽くしてきたから。
童話のように残酷。すぐに人間が殺されたり、首をちょん切られたりします。随分とシュールなのですが、シュールとかそういう言葉で説明するのは少し違うかもしれません。企みや気負いが感じられません。小説というよりは、おとぎ話といったほうがぴったりきます。
言葉遊びに満ち、偶然が物語を支配しているようにみえて、しっかりとしたストーリーが存在しています。物語がどのように展開していくか読めないことも多くてはらはらします。
読んだ本
R・A・ラファティ『どろぼう熊の惑星』
読んでいる最中
カズオ・イシグロ『日の名残り』
モリエール『人間ぎらい』
モントリオールの一角に、ザ・メインという薄汚れた街がありました。ザ・メインは、イギリス地区とフランス地区の狭間に位置しており、元兵士や娼婦、ギャングの端くれ、老人など、様々な人間が溢れかえる吹き溜まりのような場所でした。ですが、それでも一定の秩序がありました。ラポワント警部補がいたからです。彼は三十年にもわたって毎日欠かさず街をパトロールし続けています。彼こそがザ・メインの法であり、運命なのです。そんなある日のこと、跪くようにして死んでいる男が発見されます。ラポワント警部補は、若い警官ガットマンとともに、その事件を追うのですが・・・
物悲しいミステリ小説。
猥雑な街に生きる人たちの悲哀のようなものが淡々と描き出されています。サ・メインという街そのものを描いた小説としても読めるのではないか。
清濁併せ呑む主人公クロード・ラポワントの姿が、あまりにも印象的。彼は毎日ザ・メインの治安を守るため街を歩きまわり、糞のような連中を脅し、叩きのめし、殴り、すかし、貶めます。ですが、そういう行為が非難され、警察組織の中では孤立しています。その上、胸の中には動脈瘤が存在し、明日も分からず、今では毎日のように若い頃喪った亡き妻と存在しない娘のことを妄想しつつ週に二晩友人とトランプで遊ぶことを楽しみにしているのです。いかにも父親的な人物です。
「進歩的」な考え方を持つ若い警官ガットマンは、ラポワントのことを全面的には賛同できないけれど、立派な人だというふうに評します。その意見には共感しました。
読んだ本
トレヴェニアン『夢果つる街』
読んでいる最中
カズオ・イシグロ『日の名残り』
笙野頼子の短編集『二百回忌』を読んでいました。
『大地の黴』
十歳の頃、私は龍の骨が入った壷を拾います。私はそれをただのままごとの道具だと思っていたのですが・・・
『二百回忌』
二百回忌が催されます。それに呼ばれたセンボンは祖母に会いたい、と思い、赤い喪服を着て出かけていきます。そして、生きた人間と死んだ人間が入り乱れる中でなぜかヤヨイだと間違われ・・・ 第7回三島由紀夫賞受賞作。
『アケボノノ帯』
一度教室の中で排便してしまった龍子は、排泄と言う行為を聖なるものとして決めます。幼稚なふりをしている私は龍子に引きずられ、困惑しつつも逆らえません。禁忌とされている排泄の神と化した龍子は、排泄の結果でてきたものをアケボノノ帯と呼びます。
『ふるえるふるさと』
私は故郷のハルチに帰っている最中だったのか、よく分からないうちに子どもになってしまい、様々なことを思い出しています。そして、母親のもとに盛り土をしにくる男への恐怖に震えていて・・・
どれもこれも奇怪で憂鬱な小説。
要約することがほとんど不可能に近い気がします。物語も、文体も難解で気持ち悪いです。使われている単語は平凡なものばかりなのに、それらが組み合わせられることによって、奇怪なものが生み出されています。
訳が分からないようにも思えますが、決して訳が分からないわけではありません。肥満の人間に対する様々な差別や、グロテスクな制度や、おかしな慣習といったものを抉り出そうとしているようです。とはいえ、真面目でも上品でもありません。
生真面目にぶっ壊れている、というか。全体的に破壊的。
笙野頼子作品は、マジックリアリズム小説に似通っているし、マジックリアリズム小説といってもいいと思うのですが、その本場である中南米で書かれた『百年の孤独』などと比べると、非常に暗いです。なんというか、日本とそこに巣食う様々な抑圧をえぐろうとした結果、笙野頼子作品は根本的に陰鬱なものになってしまうのではないか、と感じます。
読んだ本
笙野頼子『大地の黴』
笙野頼子『二百回忌』
笙野頼子『アケボノノ帯』
笙野頼子『ふるえるふるさと』
読んでいる最中
カズオ・イシグロ『日の名残り』
トレヴェニアン『夢果つる街』
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