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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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本多孝好の短編集『MISSING』を読んでいる最中。
『MISSING』

『眠りの海』
崖から飛び降りようとして失敗し、少年に助けられた高校教師。彼は、教え子と惹かれあうものの周囲から糾弾され、自動車事故を起こして彼女を殺してしまったことを語りだします・・・
小説推理新人賞受賞作。ミステリ色が強い作品。

『祈灯』
妹の友達に不思議な女の子がいます。彼女は、かつて事故で妹を失ってから、自分は妹だと思い込み、そのように振舞っていました。なぜ彼女はそんなふうになってしまったのか・・・?

悪くはないけれど、随分と恥ずかしい小説だなぁ、と感じました。


今日読んだ本
本多孝好『眠りの海』
本多孝好『祈灯』


今読んでいる本
本多孝好『MISSING』
林譲治『ウロボロスの波動』
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『女神さまと私』
実は女神様らしき、子猫が登場します。なんというかちょっと怖い、というかあんまりかわいくない感じです。かわいくない子猫というのは斬新かも知れない。みんな子猫はかわいく描くから。


今日読んだ本
波津彬子『女神さまと私』

今読んでいる本
本多孝好『MISSING』
『タウ・ゼロ』は海外のSF小説。
『タウ・ゼロ』
核戦争後、世界はスウェーデンを中心にして再興を果たしました。人類は、飛躍的な科学の進歩にも助けられ、様々な惑星に人間を派遣しました。そして人類が住めるかどうか確かめようとしたのです。しかし、なかなか人間の移住可能な地は見つかりませんでした。そんな中、乙女座ベータ星を目指して50人の男女を乗せたレオノーラ・クリスティーネ号は地球を出発します。彼らは順調に旅していきます。しかし、途中で事故が発生し、減速装置が破壊されてしまいます。レオノーラ・クリスティーネ号は止まることができず、どんどん加速していき・・・

いかにもSFらしい作品。面白かったです。しかし、何もかもが都合よくいきすぎだろう、と思ってしまいました。極限状況では、自殺者が出ない方がおかしいのではないか。

閉鎖的な船内で繰り広げられる愛憎劇は熾烈です。そういえば、船内はフリーセックス状態なのですが、やっぱりそういう面は書かれた時代(『タウ・ゼロ』の場合は1970年代)に影響されるのかなぁ、と感じました。

それにしても狭い空間においては、独裁が最も効率が良いのだろうか。けど、そこの破綻が書かれないところなどは、妙に甘い気がします。


今日読んだ本
ポール・アンダースン『タウ・ゼロ』

今読んでいる本
波津彬子『女神さまと私』
『差別と日本人』
在日として差別を受けてきた辛淑玉と、部落差別を受けてきた政治家・野中広務の対談。全体的には、辛淑玉が取材する側のような感じ。日本における差別の問題をこれからどう考えていけば良いのか、と迷うとき、参考になりそうです。

新書だから読みやすいけど、中身は重いです。

辛淑玉も、野中広務も格好良いです。2人は別々の位置に立っているけれど、差別はなくすべき、という点においては一致してることが読んでいて分かります。

とくに、ハンセン病のことは印象に残りました。野中広務が、ハンセン病患者の人たちを後押ししていた、と初めて知りました。しかも政界のいろいろなしがらみまで推し量り、自分から小泉首相に言うのではなくて遠まわしに援護していたのか。凄い・・・

ただし、野中広務という人の全貌は掴めないような気がしました。まだまだいえないことをたくさん抱えていそう。

辛淑玉の「差別される者の痛みは差別される者にしか分からない」的な立場についてはどう受け止めれば良いのか考えてしまいました。言わんとしていることは理解できるけど、そういわれてしまってはどうすれば良いのか分からない。けど、安易に「痛みを分かって」というよりはよほど素直だし、まっとうなのかも知れない。結局、言っても分かってくれないのだから。でも、そのような挑発的な言動は反発を生むだろうなぁ、正しいからこそ。


今日読んだ本
辛淑玉、野中広務『差別と日本人』

今読んでいる本
ポール・アンダースン『タウ・ゼロ』
『本の本―書評集1994-2007』

怒涛の738ページ。延々と書評が続きます。しかし、飽きません。サクサクしていて、読みやすいです。斎藤美奈子は本当に凄い人だと思いました。
『本の本―書評集1994-2007』

「小説と随筆の本」「文芸評論と日本語の本」「本のある生活」「社会評論と歴史の本」「文化と趣味の本」に分かれていますが、どこから読んでも大丈夫な感じです。どれも面白い。僕は「小説と随筆の本」が一番読んでいて楽しかったです。笙野頼子の本をもっと読まなきゃ、と思いました。あとは、姫野カオルコ、石黒達昌、野中柊、田口ランディ、三浦俊彦といった人たちの作品も読んでみたいです。

斎藤美奈子は「フェミニズム系の批評家」と言われています。確かにその系統の批評家につながる人なのだろうけど、彼女はフェミニズムのだめな部分もきちりと指摘してみせます。さすがです。そして、「右にも左にも疑問を覚える」と書いてさめた視点を保持しつつ、実はかなり反権力的なところも格好良いです。

ただし、大森望・豊崎由美の『文学賞メッタ斬り!』などの方がもっと気軽で、バンバン批判がでてきて面白かったなぁ、と思ってしまいました。斎藤美奈子の方が少し上品、ということか。


今日読んだ本
斎藤美奈子『本の本―書評集1994-2007』

今読んでいる本
ポール・アンダースン『タウ・ゼロ』
『ばかもの』
気ままに生きている大学生ヒデは、年上の女性・額子が好きでたまらなくて彼女とのセックスに明け暮れていたのですが、そんなある日、下半身丸出しのまま木に縛り付けられ、捨てられてしまいます。ヒデは、それから幾人かの女性と付き合ったりするのですがじょじょに酒に溺れていき・・・

妙にうらぶれた雰囲気が漂っているのに、全体的にはスパッとしていて、とても読みやすかったです。スピード感があります。

けっこう笑えます。主人公ヒデが落ちぶれていく様は痛々しいけど、吾妻ひでお『失踪日記』を連想させます。なんというか、ブラックでどこか抜けた描写が良いです。

絲山秋子の小説は、どれも純愛ものとして読むことも可能な気がします(『袋小路の男』とかも)。だけど、純愛がテーマなのだろうか。微妙に違うのではないか。純愛とか、愛という言葉でひとくくりにされてしまう、微妙な感情の動きを写し取った小説のような気がします。


今日読んだ本
絲山秋子『ばかもの』

今読んでいる本
ポール・アンダースン『タウ・ゼロ』
斎藤美奈子『本の本―書評集1994-2007』
いとうせいこうのデビュー作。
『ノーライフキング』
家庭用ゲーム機「ディス・コン」が普及し、子どもたちはそれにはまりました。その中でもとくに流行ったのが『ライフキング』というゲーム。クリアの仕方や裏技などを教え合う巨大なネットワークすら出来つつありました。そんなゲーマーの一人に、大沢まことという小学4年生の男の子がいました。彼の学校の校長が『ライフキング』を否定する発言を行った直後に急死。それがノーライフキングの呪いだという噂が広まり・・・

流行するゲームとそれによって生まれた子どもたちのネットワークを敵視する大人たちが子どもたちを追い詰めていく物語。物語内に登場するゲームの雰囲気がちょっと古い気がするのだけど、今の世の中にも充分通用する物語だと思います(いまだに「ゲーム脳」などという言葉を科学的裏づけもなく多用し、ゲーム駆逐を目指している学者や大人が世の中に満ち溢れているのだから)。

いとうせいこうは辛辣です。子ども達の自閉をもきちりと描写します。ハッピーエンドはやってきません。

ただし、少年たちは閉じてしまったのかどうか、という部分はもしかしたら議論の余地があるのかも知れません。僕は、大人との対決から逃げることは自閉にあたると思っています。しかし、そういった考え方自体が間違えなのかも知れない。

映画化されているそうです。


今日読んだ本
いとうせいこう『ノーライフキング』

今読んでいる本
絲山秋子『ばかもの』
『鳥類学者のファンタジア』
ジャズピアニスト・池永希梨子(通称フォギー)は、柱の陰にいる人に向かって音楽を届けることをいつも気にかけていました。不振が続いていたある日、本当に柱の陰に黒づくめの女性がいるような気がしてとても良い演奏ができました。彼女は、その後外出し、外でその女性と邂逅します。彼女は「ピュタゴラスの天体云々」といった謎の言葉を残して消えました。やがて、夏になり、フォギーは故郷へ帰ります。そして突如として1944年敗戦間近のドイツへタイムスリップしてしまい・・・

SFのようなファンタジーのような作品。

イントロダクションだけで100ページあります。中盤までは読み進めるのが辛かったです。奥泉光の古風ないかにも純文学作家っぽい長い文章を読むためには根気が要るからです。しかし、いろいろな謎が絡み合ってくると面白くなってきます。

笑える部分が随所に挟まれているので楽しかったです。たとえば、「武富士」のポケットティシュが思わぬ疑惑を呼ぶところなどは爆笑。

脇岡氏が最高におかしいです。歌手なのにリズム感覚に欠け、みんなから疎まれているのにやたらとつらつらと喋り続ける無神経の塊なのだけど、どこか憎めない彼の面白さは格別。


今日読んだ本
奥泉光『鳥類学者のファンタジア』

今読んでいる本
いとうせいこう『ノーライフキング』
『ディスコ探偵水曜日 下』
迷子捜し探偵、ディスコ・ウェンズデイは、少女、梢のために時空を駆けずり回ります。立ち塞がる影との闘いは熾烈を極め、未来の世界は子どもの虐待によって、ストレスを解消するグロテスクな社会となっていました。しかも、一方では3億人の子どもが誘拐されていました。JJと向き合い、それを知ったディスコは・・・

読み終わった後で、頭が痛くなりました。上下巻あわせて1000ページ。上巻はトンデモミステリ、下巻は、SF。

舞城王太郎らしさが全開です。倫理(好き嫌い)が世界を決定する、意識と運命が世界を形作る、という思想が繰り返し語られます。最終的には、「愛が世界を救う」を飛び越え、「愛が世界を創る」というところにまでたどりきます。凄すぎる。

ある意味では、正統的な「詰め込み小説」なのかも知れない、と感じました。散りばめられた北欧神話、聖書、西洋占星術、カバラ、ヨハネの黙示録などなどの断片。少し、トンデモ本の世界に偏っていないか、と不安を感じたのですが・・・

村上春樹を潰すために書かれた小説なのかも知れない、とも感じました。


今日読んだ本
舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日 下』

今読んでいる本
奥泉光『鳥類学者のファンタジア』
『自分で作れるグミの本―GUMMY BOOK』
グミの作り方についての本。
簡単につくれるんだなぁと感じました。

ついでに、萩尾望都『アロイス』を再読。二重人格のところとか、『バルタザールの遍歴』ってけっこう似た構造をしているなぁ・・・


今日読んだ本
荻田尚子『自分で作れるグミの本―GUMMY BOOK』
萩尾望都『アロイス』


今読んでいる本
舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日 下』
『老ヴォールの惑星』は、小川一水の短編集。『ギャルナフカ迷宮』『老ヴォールの惑星』『幸せになる箱庭』『漂った男』収録。
『老ヴォールの惑星』

『ギャルナフカ迷宮』
些細な罪で、地下にあるギャルナフカ迷宮に閉じ込められた男の物語。彼は、人間らしい生活が営めるようにするため、社会を築こうとします。しかし、迷宮には疑心暗鬼が満ちていて・・・

『老ヴォールの惑星』
一風変わった生物たちの物語。彼らは吹き乱れるプラズマの嵐の中で社会を築いている金属の魚でした。その生物の中に「ヴォール」という者がいました。彼は「もっと落ち着いた惑星がある」という予言のような言葉を残し、沈んでいきます。彼の言葉が後の世に影響を与えます。

『幸せになる箱庭』
木星から資源を持ち去っている機械が発見されます。人類は、その作業が地球の軌道に与える影響を無視できず、異星人との交渉に乗り出すのですが。未知の生物との遭遇を描いた作品。設定が甘すぎる、と感じた作品。

『漂った男』
陸のない水の惑星に墜落してしまった兵士タテルマは、ずっと漂い続けることとなりました。彼は、外界との通信機での会話を頼りにして生き続けるのですが・・・ 良い話です。

印象に残る作品ばかりだなぁと感じました。しかし妙に既視感を感じる、というか・・・ どこですでに読んだことがあるような設定の作品が多い気がしました。

小川一水という人は善人なんだろうなぁ、と読んでいて感じました。ちょっと甘すぎないか、とも思いますがまぁ悪くはないです。


今日読んだ本
小川一水『老ヴォールの惑星』

今読んでいる本
荻田尚子『自分で作れるグミの本―GUMMY BOOK』

ひとまず置く
奥泉光『鳥類学者のファンタジア』
『怪盗グリフィン、絶体絶命』
ニューヨークの怪盗グリフィンは「あるべきものを、あるべき場所に」という信条を持ったちょっとおかしな盗みやでした。彼は、メトロポリタン美術館に所蔵されていたゴッホの自画像を盗んでほしいと依頼されます。もちろん、ただの盗みはお断りといったのですが、依頼者はメットにあるのは贋作だと言いました。さて、怪盗グリフィンはどうしたかというと・・・

怪盗、美女のパートナー、謎の男、大統領、将軍、大佐といった人たちが登場します。法月綸太郎らしからぬ軽快な冒険小説。とにかく読みやすいです(字も大きいし)。でも最後のぐちゃぐちゃした(緻密ともいう)推理の過程の説明はやっぱり法月綸太郎らしいなぁ、と感じました。

人種差別や政治(9.11テロによって云々という説明があったり)についてのはなしも挟まれたりして、読み応えはあります。

講談社ミステリーランド。


今日読んだ本
法月綸太郎『怪盗グリフィン、絶体絶命』

今読んでいる本
奥泉光『鳥類学者のファンタジア』
小川一水『老ヴォールの惑星』
『漱石先生の事件簿―猫の巻』
主人公は、夏目漱石の家に居候している探偵小説好きな書生。彼は、癇癪もちで、世間知らずで、とにかくとぼけた漱石先生に悩まされながらも、彼と彼の家に現れる変人たちと名前のない猫に混じって楽しい毎日を送っていたのですが、おかしな謎がゴロゴロ現れ・・・

猫にこだわったらしき、事件が5つ起きます。

愉快な作品です。夏目漱石とその周囲に集まってくる変人達の掛け合いがおかしいです。でも、夏目漱石の『我輩は猫である』を読んだ後だともっと楽しめます。

柳広司は、当時の時事ネタ・出来事をうまくからめています。『ジョーカー・ゲーム』よりもこちらの方が僕は好きでした。

ミステリーYA!シリーズ。海堂尊『医学のたまご』、田中芳樹『月蝕島の魔物』、皆川博子『倒立する塔の殺人』などと同じ。


今日読んだ本
柳広司『漱石先生の事件簿―猫の巻』

今読んでいる本
奥泉光『鳥類学者のファンタジア』
『容疑者の夜行列車』
あなたの旅行記。『第1輪 パリへ』『第2輪 グラーツへ』『第3輪 ザグレブへ『第4輪 ベオグラードへ』『第5輪 北京へ』『第6輪 イルクーツクへ』『第7輪 ハバロフスクへ』『第8輪 ウィーンへ』『第9輪 バーゼルへ』『第10輪 ハンブルグへ』『第11輪 アムステルダムへ』『第12輪 ボンベイへ』『第13輪 どこでもない町へ』。

最初は、ある程度普通っぽいのですが、じょじょに幻想的な雰囲気になってきます。夢が入り混じってくるような感じ。

けど、ホラーというわけではありません。全体的には静かな雰囲気が漂っているし、とぼけた味わいがあります。明確な目的もなく、ただ夜行列車に乗るあなた。日常と非日常の狭間を揺れるあなたはいったいどこへ向かおうとしているのか。

夜行列車での旅を、人生の比喩と捉えるのはたぶん陳腐すぎる、とは思いますが、やっぱり人生に似ているような気がしました。『容疑者の夜行列車』を読んでいると、目的のない模糊とした旅を楽しめます。

第38回谷崎潤一郎賞、第14回伊藤整文学賞受賞作。


今日読んだ本
多和田葉子『容疑者の夜行列車』

今読んでいる本
柳広司『漱石先生の事件簿―猫の巻』
『天使の囀り』
小説家・高梨は病的なまでの死恐怖症でした。しかし、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加し、アマゾンへ赴いてそこであることを経た後、人格が変貌。異様なまでの性欲と食欲を示し、その後、死に魅せられ、自殺してしまいます。彼の恋人で終末期医療に携わっている精神科医・北島早苗は彼氏の死に対して不審を抱き、アマゾン調査隊のことを調べ始めるのですが・・・

ホラーがかったSF小説。タイトルと物語のギャップが激しいです。かなりグロい物語です。予想できるところへ物語は突入していくのだけど、やっぱり圧倒されます。

あと、エロゲーにはまる自閉的な青年の気持ち悪さが、はっきりきっちりと描写されています。まぁ自業自得なのだけど、最後にはあまりにもかわいそう過ぎるなぁとも感じました。だって・・・

過剰なまでにいろんな(ある意味では無意味な)情報が詰め込まれています。現代社会というものの病理みたいなものを抉っていこうとしている部分には共感しますが、枝葉にばかりこだわるのでやたらと長いです。多分、綺麗におさめようとしたら半分以下で済んだと思うんだけど・・・

角川書店。


今日読んだ本
貴志祐介『天使の囀り』

今読んでいる本
多和田葉子『容疑者の夜行列車』
『バルタザールの遍歴』
日本ファンタジーノベル大賞を受賞した作品。佐藤亜紀のデビュー作。

主人公は、バルタザールとメルヒオール。一つの体の中にバルタザールとメルヒオールという二人の人間が宿っているのです。彼らは貴族なのですが、世界が変わっていく中で母親は憤死し、じょじょに落ちぶれていきます。そうした中で家を手放し、故郷を離れることになりました。しかも、ナチスが台頭してきていて・・・

前半部分『「転落』は、ようするにヨーロッパを舞台にした『人間失格』ではないか、と感じました。いや、全然違うと反論されるかも知れないけど。

一つの体に二つの人格というのは、少女漫画でもよくあるパターンのような気もするけど、佐藤亜紀はそれをみごとに活かし、物語を構成していきます。文体も、物語も、全体的にとにかく格好良いです。いかにも文学好きな人が好きそうな小説。

惚れ惚れするけど、読むのは一度だけで良いや、と思ってしまいました。なんというか、飽きます。勝手に堕落し、転落してください、と思ってしまいます。

今日読んだ本
佐藤亜紀『バルタザールの遍歴』

今読んでいる本
貴志祐介『天使の囀り』
『供花』は詩集。
『供花』
町田康、詩だとますます意味が分からない。
もう文章がほとんど意味をなしていない・・・・・
どういうふうにも読める気もします。


今日読んだ本
町田康『供花』

今読んでいる本
佐藤亜紀『バルタザールの遍歴』
『くっすん大黒』
愉快な小説。なんというか、まぁいかにも生粋の純文学っぽいのだけど、ユーモアも含んでいてなかなか良いです。でも、いかにもねらっているっぽい部分がいまいち。

とはいえ、あえて「文学」していないわけではないのに文学になっているのだろうところはさすが。

町田康のデビュー作。


今日読んだ本
町田康『くっすん大黒』
町田康『河原のアパラ』


今読んでいる本
佐藤亜紀『バルタザールの遍歴』
『SFはこれを読め!』
世の中には面白そうな本がたくさんあるんだなぁ、と思いました。
まずはハイペリオンを読んでみたいなぁ。


今日読んだ本
谷岡一郎『SFはこれを読め!』

今読んでいる本
町田康『くっすん大黒』
佐賀に行っている間、SF小説の大作をいろいろ読んでいました。

『ディスコ探偵水曜日 上』はトンデモミステリのふりをしたトンデモSF。舞城王太郎世界が全開。表紙を見ると、タイトルよりも舞城王太郎という文字の方が大きい・・・
『ディスコ探偵水曜日 上』
主人公は、ディスコウェンズデイ(水曜日)という名前。ロリコンにたいして批判的な人たちをまるで挑発するような部分があります。しかもかつて大和民族はユダヤ人だったという本を引用していたり。とにかくいろいろと凄い・・・ けどここまで(400ページ超)で、まだ上巻。うわー、まだ同じ量物語が展開されていくのか・・・

『宇宙消失』
『宇宙消失』は、量子論を利用したSF小説。ある意味、トンデモなんだけど、きちりと細部も書かれているので、ハードSFに分類される作品。

『百億の昼と千億の夜』
『百億の昼と千億の夜』は巨編。以前、萩尾望都が漫画にしたものを読んだことはあったのだけど、原作を読んだのは初めてでした。素晴らしい作品。各所に言葉の間違いがあるのが気になったけど・・・


佐賀に行っている間に読んだ本
舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日 上』
グレッグ・イーガン『宇宙消失』
光瀬龍『百億の昼と千億の夜』


今読んでいる本
谷岡一郎『SFはこれを読め!』
町田康『くっすん大黒』
アロマパラノイド
ノンフィクションライターの八辻由紀子は、UFOに心惹かれている人たちに取材する中で、偶然限定本の『レビアタンの顎』を手に入れます。それは殺人者が自分の殺人について告白したものでした。著者は、言語に代わるものとして匂いを提示。それでもって別の形で、世界を理解することができると著者は説くのですが、八辻由紀子には新興宗教の一種としか思えませんでした。ですが、彼女はその本を手に取ってから突如として怪異に襲われるようになり・・・・・

いまいちでした。

『アロマパラノイド 偏執の芳香』は、『香水 ある人殺しの物語』という小説の二番煎じというか、劣化バージョンでしかないような気がしました。『香水 ある人殺しの物語』は、上品な文章によって狂気や錯乱、その他猥雑なものでさえも美しく見せてくれたのに、『アロマパラノイド 偏執の芳香』はただ単にごちゃごちゃです。まとまりがないし、綺麗ではありません(物語の構成はみごとにぴちりとはまっているだけど)。

とにかく、UFOだの、電波だの、インドの神話だの、いろんなものを詰め込みすぎて、匂いの物語ではなくなっていく部分が納得できませんでした。

クライマックスにおける異形同士の対決も、意味が分からないです。外国のホラー映画みたいに、化け物を退治してめでたしめでたしというのは安易ではないか。しかもその後にまだ何かありそう、と思わせぶりなシーンを挟む手法もありきたり。

まぁそれなりに面白いんだけど、そもそもホラー小説が好きではないので、あんまり楽しめなかったです。


今日読んだ本
牧野修『アロマパラノイド 偏執の芳香』

今読んでいる本
舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』
『戦争を演じた神々たち』
SF小説。連作短編集。『天使が舞い降りても』『けだもの伯爵の物語』『楽園の想いで』『異世界Dの家族の肖像』『宇宙で最高の美をめぐって』『戦争の起源』収録。

「目くるめく」という言葉はこのような作品にこそ使うべきではないか、と感じました。壮大な宇宙規模の物語が、展開されていきます。しかも、映像では表現できないような状況・物事が、文字で表現されていきます。小説を読む楽しみがここにあると感じました。

『天使が舞い降りても』
作用と半作用の物語。老人AUMは、鮮烈な印象を残します。世界のエコーである彼にとっては、呼び出されれば何もかもが容易なのか・・・

『けだもの伯爵の物語』
心を解き放つ棺桶を手に入れた伯爵家の冒険。けだもの伯爵が怖いけど、面白いです。

「楽園の想いで」
紆余曲折あって盗賊になってしまう女王の物語。彼女は聖女から貶められて「ただの人」になるわけですが、誰もが結局はただの人なのたろう、と感じました。

「異世界Dの家族の肖像」
人間が生み出したぐるぐると巡る生態系を描いた作品。神話的。

「宇宙で最高の美をめぐって」
最高の美をめぐってたくさんの人が大騒ぎして駆け回る物語。美は善にも悪にもなりうる、というラストの言葉には考えさせられました。

「戦争の起源」
楽園に資本主義が持ち込まれてしまうという物語。

とにかく、『戦争を演じた神々たち』の面白さは読まないことには分からないです。あらすじを説明しても全然面白さが伝わらない。物語はぎゅっと凝縮されているので、さくさく読むことが出来ます。おすすめ。

第15回日本SF大賞受賞作。


今日読んだ本
大原まり子『戦争を演じた神々たち』

今読んでいる本
牧野修『偏執の芳香 アロマパラノイド』
たくさんの写真が印象的でした。
「岩波ジュニア新書」の中の1冊だけど、ジュニアじゃない人にも読んで欲しい本だと感じました。現場に赴いて事実を知り、それを語ろうとする豊田直巳さんの視点・立場は素晴らしいと感じました。とても読みやすくて分かりやすい文章も良かったです。僕が知りたいと思っていたことが書かれていたので、とても面白く読むことが出来ました。戦争を止めたい―フォトジャーナリストの見る世界
僕も、イラク戦争に協力する日本政府に対して違和感を覚えることがあります。というより、自衛隊派兵はおかしいのでは、と思っています。だけど、高校生がそのような感想を抱いても、それはただの感想にしか過ぎません。

しかし豊田直巳さんは実際に戦地へ赴いて事実を確認しています。だから豊田直巳さんの書くものには裏付けがあるということになります。「政府による「人道支援」よりも、ペシャワール会による支援の方がより大きなものをアフガニスタンにもたらした」「イラク人にとってはフセインもアメリカも変わらない」と書かれていますが(そして、現地に赴いた多くの人が同じことを言っている)、それなのにテレビはそのような情報を報道しません。

どうして事実が伝わらないのか。日本のマスコミはどうしてこうも頼りにならないのか(アメリカと、そして日本政府の視点偏重なのか)。本当に考えさせられました。人道支援・国際援助などといって、日本政府は色々なことをやっていますが、それは本当の人道支援にはなっていないのでは(アメリカに対して媚びを売っているだけでは)? としっかり追求すべきだろうと思いました。

『週間金曜日』とか、『通販生活』とかを読んでいるので、僕は一応、劣化ウラン弾のことと、それが白血病を生んでいる(としか考えられない)ということを知っています。でも周囲でそれを知っている人はあまりいません。多分、事実を知らない人たちは自分達が何を知らないかということを分からないから、知ろうともしないのだろうと思いますが、それで良いとは思えないです。

悪事を傍観することは、悪事に加担することと等しいとも言えるわけだから。知らなかったなどという言葉は言い訳にはならない。

最後、沖縄、さらに東京に話を持ってくるところが良かったです。ぐっと身近に感じました。

多くの人にとっては沖縄の出来事さえも遠いのかも知れないけど、僕は修学旅行で沖縄へ行ったことを思い出します。渡嘉敷のガマの中で、親を殺してしまったという金城重明さんは「集団自決」という言葉を避け、「集団強制死」があったと語ってくれました。とても重い内容でした。

けど、金城重明さんの言葉が持つ重み全てを僕が受け止めて理解するのは不可能だけど、そこで理解できないと諦めるのは逃げているだけなのだから、卑怯だろうとも思いました。というか、そんなふうに人の思いに心を馳せることは無理と言い出したら、歴史に学ぶことが不可能になってしまう・・・

とか、うだうだ考えている間にも、どこかで誰かが殺されているのかも知れない、いや、いるのだろうと思うと本当にどうすれば良いのか分からなくなります。そして、実際に行動している豊田直巳さんやその他多くの人たちの凄さも分かります。昨年の学習発表会では、自森の図書館に『週刊金曜日』編集長代理の片岡伸行と、『DAYS JAPAN』編集部の樋口聡という方が来て、語ってくれました。

その時にも感じたのですが、文章にしろ、写真にしろ、どのような方法でも良いから、事実を発信していこうとする動きがもっと拡大してくれたら良いなぁと感じました。豊田直巳さんにもぜひ頑張って欲しいです。とはいえ、それを他人事のように捉えてはいけない、とも感じました。僕も、自分の出来うる範囲で、自分が正しいと思うものに対して賛同したり、広めたりしていこう(具体的には買うという行為になったりするのかなぁ)、と思います。とはいえ、言うは易しで、そこが本当に難しいんだけど・・・


今日読んだ本
豊田直巳『戦争を止めたい―フォトジャーナリストの見る世界』

今読んでいる本
大原まり子『戦争を演じた神々たち』
『アイスクリン強し』
連作短編集。『序』『チョコレイト甘し』『シュウクリーム危し』『アイスクリン強し』『ゼリケーキ儚し』『ワッフルス熱し』収録。

舞台は明治の東京。主人公は、皆川真次郎(ミナ)。彼は、西洋菓子屋・風琴屋を営む青年。居留地で育ったため、ピストルの扱いが上手。彼は、毎回のように厄介事を持ってくる元武士の巡査・長瀬らとともにいろんな事件を解決していきます。そして、そこにいろんな形で女学生の小泉沙羅が絡んできます。彼らの毎日には何もない日などありません・・・

それなりに面白いのですが、やっぱり畠中恵は詰めが甘いような感じがします。西洋菓子が単なる小道具と化していて、全然おいしそうではありません。

『美味礼讃』などを読んで料理人達のこだわりを知った後で、こちらを読むと、主人公真次郎が料理人として失格としか思えないです。だって、真次郎は、(諸事情あったとはいえ)急ごしらえで料理をつくってそれを出すのだから。

しかも、畠中恵は「明治時代」を書こうとしているみたいなのですが、明治期の貧困などの問題をさらっと扱っているから、「時代を包む早急な雰囲気」と、それが生み出す危険性が全く伝わってこない。

登場人物たちは多すぎてごちゃごちゃしている上に、書き込みが少なくて存在感が希薄。真次郎や巡査らは「俺ら金欠」と連呼するのですが、そのわりにはみんな根本的に裕福な中流階級の人たちだから、全然危機的に思えない。どうせ沙羅の財布があるんだし。しかも、成金の商人・小泉琢磨氏は頭良すぎ。日本は戦争に勝ったら増長するから負けた方が良い、とかそんなこと言い切れる「成金」なんてありえないだろう・・・

リアリティが感じられません。


今日読んだ本
畠中恵『アイスクリン強し』

今読んでいる本
豊田直巳『戦争を止めたい―フォトジャーナリストの見る世界』
SF小説。
『アイの物語』
近未来、地球はアンドロイドによって支配されていました。そんな中、ロボットを襲って食料を奪っていた「語り部」の青年は、美人のアンドロイドと闘って敗れ、捕まってしまいます。彼は殺されるのかと脅えるのですが、アンドロイド・アイビスは物語を語り始めました・・・・・
『宇宙をぼくの手の上に』『ときめきの仮想空間』『ミラーガール』『ブラックホール・ダイバー』『正義が正義である世界』『詩音が来た日』『アイの物語』といった短編の間に、青年とアイビスの会話(インターミッション)が挟まっています。

豪華です。しかし、そのわりにはソフトな読み心地。

アイとは何であるのか、というその一点がこの物語の肝。たくさんの意味が込められています。

アイビスの語る物語はどれも綺麗なはなしばかり。しかし、アイビス(そして作者である山本弘)は、その綺麗過ぎということを逆手にとります。「現実よりも素晴らしいフィクションのどこがいけないのか?」と問いかけてくるのです。美しい物語にこそ真実は宿っている、物語には共感を創る力がある、というその主張には共感します。

心の中につくった仮想空間に閉じこもってしまう人間の心の作用を、アイビス達アンドロイドはゲドシールドと呼びます。そして、彼女は人間を憐れみ、そしてその誤りを静かに指摘します。作者山本弘も同じ考えなのだろうと思います。彼は「と学会」の会長です。真実を拒絶し、トンデモないことを言い続ける人たち(ゲームをしすぎるとバカになるとか、アポロ11号の月面着陸はウソだったとか、超古代文明は存在したとか)の本をたくさん読み、紹介してきた人です。彼の言葉だからこそ説得力があります。

とにかく強いメッセージ性を持った小説。僕は強く共感しました。「人間はみな痴呆症」「連綿と続いていく記憶だけが世界を断絶から救う」というアンドロイドの言葉は感動的。そして、ただ許容して欲しい、というアンドロイドの言葉が素晴らしすぎる。


今日読んだ本
山本弘『アイの物語』

今読んでいる本
畠中恵『アイスクリン強し』
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