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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★

著者:  初野晴
出版社: 角川書店

  暴走族ルートゼロのリーダーだった昴(すばる)は、月が照らす夜にだけ、機械の力を借りて喋りだす脳死の少女・葉月の依頼を受けます。それは「欲している人の下へ彼女の体のパーツを届けて欲しい」いうものでした。昴は、最初断るのですが・・・

  第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作にして、初野晴のデビュー作。ミステリの賞をとった作品だけど、ミステリっぽくないです。

  以前、同じく初野晴の書いた『退出ゲーム』という小説を読んだことがあります。そちらは明快な学園ミステリで、まぁ可もなく不可もなく、という感じでした。しかし、デビュー作の『水の時計』は凄かった。僕は、こちらの方が断然好きだなぁと感じました。

  童話『幸福の王子』をモチーフにしています。でも、ふわふわした夢物語というわけではなくて、物語の舞台は現代の日本です。臓器移植の問題や日本の医療の問題などが大きなテーマとなっています。だから、かなり重たいものも含んでいるわけですが、ぐいぐいひきつけられます。

  人間の残酷な部分や、汚い部分、見つめたくない部分というのが結構描かれています。それらは、ホラー小説のように恐怖を誘うことを目的としているわけではありません。社会の仕組みの中で爪弾きにされてしまった主人公たちの姿をくっきりと浮かび上がらせるためにあえて書かれています。

  そういうふうに社会的な問題や、人間の汚さをきっちり書いてしまうと、たいてい物語までギシギシしてしまうものです。ですが、『水の時計』は透明感に溢れています。全体としては薄暗いのに、絶望に呑み込まれてはいません。必死で生きる人たち(とくに主人公)の必死さと、ほのかな優しさがあるからなのか、不思議なほど「どこかに救いはあるはずだ」と思わせてくれるのです。

  ラストはとくに哀しいです。


自森人読書 水の時計
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★★

著者:  宮部みゆき
出版社: 文藝春秋

  主人公は、尾崎孝史という浪人生。彼は東京に出てきて予備校に受験するためにホテルに篭もるのですが、火事が起きて死にかけます。しかし偶然暗い雰囲気を持った男に救われ、突然に2.26事件前夜にタイムスリップしてしまいます。孝史は、最初その事実を疑うのですが、人との触れ合いの中でそれを次第に受け入れていき・・・

  タイムスリップを扱ったSF小説。第18回日本SF大賞を受賞。

  設定は面白いです。しかし長すぎる気がしました。長くても物語が魅力的だったらいいのだけど、脈絡もなくだらだらとどこまでも続くので疲れます。いったいいつまで続くんだ、と何回も文句を言いたくなりました。2.26事件の真っ只中にいるはずなのに、主人公が緊迫感に欠けているところも物足りない。というより、2.26事件の時代に物語を持っていく必要性が全く感じられませんでした。『蒲生邸事件』は、タイムスリップをテーマにした恋愛小説みたいなもの。だったら、昔ならいつでも構わなかったのでは?

  SFとミステリの融合したもの、と説明する人もいますが。ちょっとSFとしてはスリルに欠けるし、ミステリとしては面白みがない(というより、推理小説にはなっていない)。かといって、孝史の独白がうるさすぎて歴史小説には絶対になれない。微妙な作品。同じく2.26事件を扱ったSF小説としてならば、恩田陸の『ねじの回転』の方が面白い、と僕は思いました。

  それでも読ませるところが宮部みゆきの凄さかも知れません。非常に平易です。

  でも、最終的に読んで損したかも、と思ってしまいました。宮部みゆきにしては、つまらないのではないか。もっと凝ったタイムスリップ恋愛小説はたくさんあります。なので★2つ。もしもこれが宮部みゆきの本でなければ、もっと「凄い!」と思っていただろうなぁ。う~ん微妙です。期待をかけすぎて、かえって失望したから評価しない、というのはおかしいかも知れない・・・


自森人読書 蒲生邸事件
★★★

著者:  円城塔
出版社: 文藝春秋

  『オブ・ザ・ベースボール』は短編集。『オブ・ザ・ベースボール』『つぎの著者につづく』収録。

  『オブ・ザ・ベースボール』
  空から落下してくる人間をバットで打ち返すことが務めの男の物語。

  著者は、奇怪な状況を淡々と語り、退屈な物語に仕立て上げています。結果として、どこにも切迫感のない、どこまでもだるい空気が漂う世界が構築されています。もう全てがどうでも良い、とすら言えてしまえそうです。疲れる・・・ とにかく退屈。早く終わってくれないか、と思ったほどです。★2つでも良いのではないか、という気がします。しかし、それが意図されたものであるかも知れない、というところが難しい。どういうふうに受け止めれば良いのか、迷います。

  そういうふうに幻惑されるのだから、やっぱり面白い小説と言えるのではないか とも思います。しかし、決して「面白い」わけではない。ほんと難しい。

  中原昌也という作家は、物語を破壊することでかえって面白い物語を構築しています。それと比較してみると面白い。退屈でどうしようもないような物語を書いている、円城塔の方がもっと変な方向に走っているということになります。

  『オブ・ザ・ベースボール』は文學界新人賞受賞作。芥川賞候補作にもなっています。

  『つぎの著者につづく』の方は理解不能でした。やりたいことはなんとなく分からないでもないけど(ボルヘスみたいな感じにしたいのではないかなぁ)、やっぱり分からないので感想の書きようもないです。本当に難しすぎる・・・


自森人読書 オブ・ザ・ベースボール
★★★★

著者:  田中芳樹
出版社: 早川書房

  大転倒という大異変が発生。地軸が90度転倒し、かつての南極と北極がそれまでの赤道地帯に移動してしまいました。人類は壊滅的な被害を受け、滅亡の危機に瀕します。しかし、月面へと移住していた人たちは助かりました。彼らが援助してくれたことで地上には7つの都市が建設されます。しかし、月の人々は、地球の7都市が反逆することを恐れ、地上500メートル以上を飛ぶ飛行体を撃墜するオリンポスシステムを宇宙に設置しました。ですが、月の人々は疫病によって全滅してしまいました。

  そうして、地球上の7つの都市と、そしてオリンポスシステムが残されました。空中戦を制限された中で、7都市はそれぞれの勢力を伸ばすべく戦争や政争を繰り広げます・・・

  近未来SF。群像劇。

  癖の強い政治家と軍人が登場します。田中芳樹の作品らしく、やたらと皮肉屋で、毒舌家で、しかも自分の仕える政権に批判的な人ばかり・・・ 元医師ながら非凡な才能を持っている将軍、AAA(アクロイニアのアルマリック・アスヴァール)、顔の傷跡が怖い将軍ケネス・ギルフォード、農業が趣味で危機になると力を発揮する政治家リュー・ウェイ、社会性にも協調性にも欠け、天才を自称するが確かに軍事的才能には恵まれているクルガン。彼らが手を取り合ったり、競合したりします・・・

  『銀河英雄伝説』より、硬いです。女性キャラはほとんど登場しないし。登場人物は嫌な奴ばかり。だたらこそ苦味があって良いんだけど。もっと続きを書いて欲しい、と思うほど面白いです。

  アニメ化されているそうです。


自森人読書 七都市物語
★★★★

著者:  池上永一
出版社: 角川書店

  地球温暖化の結果、海面は際限なく上昇。人類はそれを阻止するために経済の形を変えてしまいました。炭素を削ることが最上の価値というふうになったのです。日本政府は、東京にアトラスという巨大な都市を建築。その周りの関東平野は全て森にしてしまいました。住居を奪われた反政府ゲリラは東京の森林化に反対し、アトラスに挑みかかります。それを率いるのはセーラー服の少女、國子。

  ぶっ飛んだSF小説。「B級映画的な大作」というのはそういうことか。辞書のような厚さですが、読みづらさはありません。全体の雰囲気はコミック的。まぁアニメ化されるのも当然です。魅力的で、個性的な登場人物たちと、ジェットコースターのような物語。どちらも素晴らしい。しかし、かなりハチャメチャです。「國子が神武天皇の○○」と分かった部分では脱力・・・

  スペースコロニーという言葉から、ガンダムの影響を受けている、もしくは意識しているのが感じられます。人間の世界を呑みこむ凶悪な森というのは『ナウシカ』を連想させます。そういうアニメやマンガを連想させる数々の設定には親近感を覚えます。

  よく戦闘がでてくるけど、戦争になっていません。ふざけているほど圧倒的な人たちがめちゃくちゃな活躍を見せます。たとえば、主人公・國子はブーメランで戦車部隊をぶっ潰して壊滅させます。その場面では笑うしかない。ありえないだろう・・・ ニューハーフ・モモコの強さも面白すぎる。

  気になったのは、『シャングリ・ラ』に登場する人物達はみんな徹底的なまで明るくてバカなこと。なんというか、未来の物語のはずなのに登場人物たちの考えていることは紀元前の人間とほとんど同じ。動物的です。「民主主義」なんてものは欠片も存在していません(民主主義なんて、男の屁理屈ということか)。そこにも笑うしかない・・・

  沖縄の民謡『てぃんさぐぬ花』が途中で登場します。池上永一は沖縄の人なんだなぁ、と実感します。


自森人読書 シャングリ・ラ
★★★★★

作者:  田中芳樹
出版社: 徳間書店

  ヤンの後継者ユリアンは、民主主義の精神を残すために帝国との和平の道を模索します。一方、帝国の皇帝ラインハルトは若くして病の床につきました。万全と思えた帝国にも揺らぎがでてくるとみた地球教は最後の反撃に出ます。そうして、圧倒的な帝国と弱小な共和国、地球教の3勢力が、最後の踏ん張りを見せ、ぶつかり合いますが・・・

  シリーズ完結篇。とうとう英雄達の伝説の時代が終焉を迎えます。

  終わってしまうのは残念と感じます。なんだか感慨深いです。メルカッツは、ヤンの旗艦とともにこの世から去っていきます。戦乱の時代の幕引きとして彼の死が必要だったのだろうか。

  女たらしで白兵戦の天才でもある同盟のシェーンコップ、誰からも嫌われつつ策謀を巡らしてきた帝国の参謀オーベルシュタインが死亡。この2人がまさか死ぬとは、と思わされます。やっぱり『銀河英雄伝説』の魅力は、アクの強い登場人物だなぁ、と感じさせられます。

  同盟の人たちはこれからどうなるのか。気になります。無職になってしまったわけだから。キャゼルヌはあと片づけまで背負い、アッテンボローは飄々と、オリビエ・ポプランはしぶとく生き延び、ユリアンとカリンは結ばれ・・・ これからどうなっていくのだろうか。

  だけど想像の余地を残しつつも、きっちりとおしまいになるところが良い気がします。だらだら続く続編は、たいていつまらないものだし。


自森人読書 銀河英雄伝説10 落日篇
★★★

作者:  田中芳樹
出版社: 徳間書店


  前の巻にてヤン・ウェンリーが殺されて危機に瀕した不正規隊は、それでもくじけずに帝国に叛旗をひるがえすべく、共和政府を樹立します。その中心メンバーは、ヤンの妻フレデリカと、養子ユリアン。ヤンの意思は引き継がれます。一方、帝国では皇帝ラインハルト暗殺未遂事件が発生。不吉な影が忍び寄ります。そして、地球教の策謀によってがんじがらめになったロイエンタールがとうとう自ら起ち、反乱を起こします・・・

  8巻で物語の主人公の一人、ヤン・ウェンリーが死んでしまったのですが、それでも物語は勢いよく進んでいきます。物語の前半から何度も予告されていた通り、帝国の双璧の一人、ロイエンタールが反乱を起こすのです。それにしても凄い、としか言いようがないです。全然失速しない。

  今回、互いに信頼しあっていた双璧が、敵味方に分かれてぶつかります。帝国軍のミッターマイヤーと、反乱を起こしたロイエンタール。どうにかならなかったのか。そうなる前に、避けることはできなかったのだろうか・・・?

  この巻で、ヨブ・トリューニヒトが退場。同盟の元首として権力を一手に握って政治の腐敗を助長し、同盟滅亡後は帝国に取り入った男がとうとう去ります。まさかの展開。まぁけど、悪辣な人物だったので誰にも悼まれません・・・

  そうしてまたもや多くの人が去っていき、物語はとうとう最終巻『落日篇』へと突入していきます。


自森人読書 銀河英雄伝説9 回天篇
★★★★

作者:  田中芳樹
出版社: 徳間書店

  もう最初からネタバレしてしまいますが・・・

  8巻は衝撃的。終わりへ向けて物語が大きく動きます。「無敗の魔術師」ヤン・ウェンリーがテロリストに襲われて斃れてしまうのです。読んでいる最中、茫然としました。作中の人物達が茫然とするのにも共感できます。まさかの展開です。

  「テロは歴史を前進させることはない、逆行させるか、もしくは停止させるだけ」というヤンの言葉が、重く響きます。ヤン亡き後、不正規部隊はどこへと向かうのか、というのが、これからの大きなテーマになってくるわけですが、彼らはへこたれながらも帝国に屈することはありません。そうして、やはりどこまでも戦争が続いていくわけです・・・

  ヤン以外にも主要人物たちが次々と死にます。

  あまり登場しないけど、実は重要人物だった工部尚書・シルヴァーベルヒがテロで殺され、帝国の猛将ファーレンハイトが戦死し、さらに帝国の将軍シュタインメッツも戦死し、ヤンの部下達パトリチェフ、ブルームハルトらがヤンとともに死亡。その上で、「良い人が殺されるのが戦争というものなのだ。だから戦争はだめなのではないか」と作者は問います。印象に残ります。

  戦闘シーンではなく、キャラクターが魅力的です。


自森人読書 銀河英雄伝説8 乱離篇
★★★★★

著者:  藤枝静男
出版社: 新潮社

  主人公はモグリの骨董屋(実は彌勒菩薩の化身)。彼は、池に3つの陶器を放り込んでそれらがどのように変化するかを確かめていたのですが、そのうちそれらの陶器は好き勝手を始めます。グイ呑みは、C子(金魚)と愛し合い、丼鉢は空を飛びゆき、茶碗は、モグリの骨董屋を仏と知らずに、古美術商の手ほどき行い・・・(神様に何を教えるというんだろうか・・・)

  そういった日常を主人公と陶器たち、四者の視点から描いています。

  物語は、けっこう淡々と進むんだけど、中身はぶっ飛んでいきます。洒脱な語り口が良いです。読みやすい。一応作者が私小説を書いている人だから、「私小説です」みたいなふうになっているけど、これって立派なファンタジーではないか。読んでいて笑える傑作。

  谷崎潤一郎賞を受賞した作品を追っていこうと思い、読んでみたのが、『田紳有楽』。

  小難しそうな解説がついていたので、最初は警戒していました。しかし、読んでみたら面白くて逆にびっくりでした。よく分からない解説は読者を遠ざけるから、むしろ取っ払った方が良い気がする・・・ その解説は次のような感じ。「あくまで私小説に徹し、自己の真実を徹底して表現し、事実の奥底にある非現実の世界にまで探索を深め、人間の内面・外界の全域を含み込む、新境地を拓いた、“私”の求道者・藤枝静男の「私小説」を超えた独自世界。」。よく分からない・・・

  素晴らしい快作。そういえば、『聖おにいさん』を連想しました。

  第12回谷崎潤一郎賞受賞作。


自森人読書 田紳有楽
★★★★

著者:  谷川流
出版社: 角川書店

  変人・涼宮ハルヒは、周囲の人間を強引に巻き込んで、SOS団(世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団)を結成。キョンや、みくる、長門有希、古泉一樹らはそれに付き合うことに。実は彼らにはそれぞれ秘密があって・・・

  ちょっと『究極人あ~る』を連想します。読んでいると途轍もなく恥ずかしくなってくる青春学園もの。

  スニーカー大賞受賞作。この作品を高く評価するとそれだけでオタク扱いされるけど・・・(表紙からして、ラノベっぽいかわいい女の子が飾っている) とはいえ、ラノベとしてまったくそつがなくて、なおかつ良くも悪くも「ラノベ」でありながらそれに自覚的(つまり自虐的)なところが面白い。かつこれ以後のシリーズで「物語」とは何かという問題に面白おかしく挑んでいくところはさすがです。とか、そういうことを書いたところで「御託に過ぎない」と言われればそれまでですが・・・

  とにかく、願望小説としてよくできているのです。青春したいけどそれを素直に認められない子どもたち(とそれを通り越してしまった大人たち)のためにあるような小説と言ってしまって良い気がします。ハルヒみたいな女の子がいて、SOS団みたいなゆるくて心地よい空間があったら・・・ と、誰もが望むのではないか。

  しかも、最終的に主人公キョンが選び取るのは魅惑的な「非現実・バーチャル」ではなくて味気ないけどそれなりに何かがあるはずの「普通の日常」。そこだけでも、現実(というか主に女性)から逃げまくる『エヴァ』より素晴らしいのではないか(いろいろと設定がずるいけど)。

  ライトノベルというのは、『ビューティフルドリーマー』『エヴァ』などのサブカルチャーの系譜を受け継いだものなわけですが。そのラノベというものが行き着くところまで行き着いたらどうなるのか、ということに挑んだところは評価できると思います。回答は「日常への回帰」だから、ある意味では「二次元」の敗北を指し示しているんだけど(いや、あらゆる要素を取り込んでしまえる可能性だろうか)。

  ラノベの一種の到達点ともいえるし(あんまり、ライトノベル読んでいないのに偉そうに言うな、という感じですが・・・)、ラノベそのもののパロディとしても読めて面白いです。


自森人読書 涼宮ハルヒの憂鬱
★★★

著者:  星新一
出版社: 新潮社

  ショートショートという一分野を切り開いた大作家、星新一の本を初めて読みました。彼がいなければ、ショートショートという分野は成り立たなかったといわれるし、彼が去った後、ショートショートの分野は退嬰気味らしいです。ほんとに凄いSF作家なんだなぁ・・・

  『なりそこない王子』は、『死体ばんざい』『ものぐさ太郎』『合法』『なりそこない王子』『エスカレーション』『ミドンさん』『魅惑の城』『善良な市民同盟』『新しい政策』『そして、だれも……』『収容』『流行の鞄』の12編を収録。

  星新一の文章を読むと、難しい言葉と簡単な言葉が並んでいて、どこかちぐはぐな印象を受けることもあります。昔と、今とで言葉のニュアンスがかわってしまったのかもなぁ。とはいえ、玉石混交みたいなショートショートの山の中にはキラリと光る物語が潜んでいたりして、読んでいると楽しいです。

  説明がはちゃめちゃで、その登場人物がどうしてそういう方向に思考をすすめていくのか、納得できない部分があります。だけどそこも含めて面白い。星新一って「乾いた」文章だから面白みとかをだすのが難しそうなのに、良い意味でどこか「滑稽」なんだよなぁ。そこに、意外なラストが加わったりするからもっと面白くなる。

  よくこの短さでこれだけの物語を展開させるなぁ、ととにかく感心します。とくに、『そして、だれも・・・・・・・』とか凄い! と思いました。ただし、僕は、短編よりも長編の方が好きなので、この短さにどうしても味気なさを感じてしまいます。それぞれもっともっと展開させていけるだろうに。物語の種みたいなものが、もうごろごろしています。いや、そこをあえてショートショートでまとめるところが星新一の潔さであり、みごとさなのか。


自森人読書 なりそこない王子
★★★★

作者:  田中芳樹
出版社: 徳間書店


  銀河帝国の皇帝・ラインハルトが、とうとう自由惑星同盟を滅ぼすべくフェザーンを発ちます。それに対して、自由同盟惑星の老将ビュコックは最後の抗戦を試みるべく立ち上がります。そして2人はマル・アデッタにおいて衝突することになりました。同じ頃、今まで守ってきた祖国に追われたヤン・ウェンリーと彼の率いる不正隊は、エル・ファシルの独立革命政府と合流。再び、イゼルローン要塞を奪還し、そこに反銀河帝国の拠点を築くことを目指していました・・・

  ラインハルト率いる銀河帝国による銀河系統一がほぼ成し遂げられてしまいます。

  老将・アレクサンドル・ビュコックの最期が記憶に残ります。同盟は独裁国家として長らえるより、民主国家として滅びるべきと言い放ち、勝ち目のない戦いへと進んでいきます。あとは、味方の手で殺される最高評議会議長・ジョアン・レベロの最期も印象的です。結果としてはヤンを放逐し、同盟を滅亡へと追い込んでしまった1人なわけですが。それでも、最期には毅然とした態度をとります。

  民主主義の擁護者として奮戦するヤンの姿が印象的です。これまで属してきた同盟からも追われてしまった彼には、銀河帝国に降伏するという選択肢もありえます。だけど、迷いながらもその道を歩まない、ということを決意します。

  この巻でとうとう自由惑星同盟は滅亡し、ヤンらのほとんどゲリラ戦に近いような抵抗が始まります。こうしてみると、5巻が全体のなかのクライマックスだったのだということが分かります。しかし物語はまだ終わりません。ここからもまだまだ続いていきます。


自森人読書 銀河英雄伝説7 怒濤篇
★★★★

作者:  田中芳樹
出版社: 徳間書店

  銀河英雄伝説シリーズ全体の感想のページ

  自由惑星同盟は銀河帝国との戦いに敗北し、事実上隷属国のような状態となりました。そうして宇宙には平和が訪れたかに見えました。しかし、それはつかの間のことに過ぎなかったのです・・・

  帝国の全権大使として同盟にやってきたレンネンカンプ提督は、すでに軍隊を離れたヤン・ウェンリーを監視しました。一方、同盟政府の高官たちもヤンを警戒し、彼を監視します。憧れの年金生活になったはずのヤンは不愉快な気分にさせられました。ですが、彼も辛抱していました。

  そんな中で、レンネンカンプは同盟政府に圧力をかけました。それに屈した同盟政府は、ヤンを不当に拘束し、殺してしまおうと目論見ます。今まで幾度となく自由惑星同盟という国家を救ってきた彼が、その自由惑星同盟のために殺される、という事態になったわけです。

  しかし、ヤンの部下達はそれを黙ってみてはいませんでした。ヤンは、副官フレデリカや、シェーンコップなど白兵戦の得意な『薔薇の騎士連隊』に救出されました。そしてその救出作戦の間に、シェーンコップらは勝手に同盟の最高評議会議長ジョアン・レベロを拉致し、さらには帝国の全権大使レンネンカンプをも拉致してしまっていました。そうして、助かったヤンは仲間を連れ、レンネンカンプを人質にとって同盟の首都を脱出しました・・・

  その一方、銀河帝国では地球教の暗躍がさらに進んでいきます。ラインハルトは、地球に部隊を派遣して地球教を叩き潰そうとしますが・・・

  物語はさらに大きく動いていきます。地球教というものが登場。不気味な存在感を放ちます。今回は、宇宙から地上へと物語が移ります。次はどのように展開していくのか、楽しみになってきます。


自森人読書 銀河英雄伝説6 飛翔篇
★★★

著者:  恩田陸
出版社: 双葉社

  アジアの西の果て。昔から、「存在しない場所」または「あり得ぬ場所」と呼ばれる、白い矩形の構造物があった。その中に入り込んだ人間は誰も帰ってこないという。そこへその謎を解くために満が呼ばれる。彼は、神原恵弥、スコット、セリムとともに、その地に1週間とどまることになるのだが・・・

  途中までは、ぐいぐいと引っ張られています。どこかの政府による陰謀なのではないかとか、いやいやそうじゃなくて建物自体が生き物なのではないかとか、色々な推理が提示されるのですが結局分からないまま、最後までその謎の解決が引っ張られていきます。もう読むのが止まりません。★5つ間違いないのではないかという気すらしてきます。

  それなのに、物語が収斂していき、ラストを迎えると何故だか「面白かったー!」と言えない。恩田陸の小説はだいたいどれもそうです。期待させておいて、なぜだか萎んでしまいます。『MAZE(めいず)』は、恩田陸の作品の中ではまだマシというか、よくまとまっているほうじゃないかなぁ、多分。

  恩田陸の小説って、とにかくラストが盛り上がらなかったり、ぐだぐだだったり、まとまりがなかったり、いまいちすっきりしません。ライオンがいるかと思ったら猫だった、どころじゃなくて、ライオンがいるかと思ったら幻想だった、みたいな感じで結局のところなんなんだ、と言いたくなるようなものが多い。だから「物語の終え方が下手」という人もいます。

  だけどこれって多分わざとやっているじゃないかなぁ、という気がします。あえて読者にカタルシスを与えず、もやもやな気分にさせているのではないか。それはそれで面白いです。ちょっと読後感が気持ち悪いけど。


自森人読書 MAZE(めいず)
★★★★

作者:  田中芳樹
出版社: 徳間書店

  銀河英雄伝説シリーズ全体の感想のページ

  『不敗の魔術師』ヤンは、イゼルローン要塞を放棄し、フェザーン回廊から侵攻してくる帝国軍と対抗。そして同盟の「民主主義」を守るために盾となります。彼の率いる第13艦隊が、同盟を守る最後の艦隊となってしまいました。

  ヤンは、シュタインメッツ、レンネンカンプ、ワーレンといった帝国の並み居る将帥を見事な心理戦の末に次々と打ち破っていきました。そうして、とうとう帝国軍全軍の司令官・ラインハルトは立ち上がりました。彼は自らの手でヤンを倒そうとします。そして、『常勝の天才』ラインハルトと、『不敗の魔術師』ヤンがバーミリオン星域においてとうとう激突します・・・

  シリーズ中最も盛り上がる巻といっても過言ではないです。

  同盟派の人間にとってはとてもじれったい巻でもあります。首都ハイネセンを包囲され、降伏してしまう同盟。そしてその首脳部の指示を受けて勝っていたはずの戦いを停止してしまうヤン・ウェンリー。「勝手にラインハルトを討てば、自分は独裁者ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムとなってしまう」という彼の言葉は確かにその通りなんだけど。シェーンコップの「独裁者になってしまえば良い」というけしかけが、凄く魅惑的に聞こえます・・・

  凄く悩ましいところです。


自森人読書 銀河英雄伝説5 風雲篇
★★★★

作者:  田中芳樹
出版社: 徳間書店

  銀河英雄伝説シリーズ全体の感想のページ

  門閥貴族に7歳の皇帝を誘拐させてそれを同盟に送り込み、侵攻の糸口をつくった帝国軍の元帥・ラインハルト。すでに事実上銀河帝国の最高権力者となっていた彼は、イゼルローン回廊とフェザーン回廊の両方から同時に同盟領土へ侵入することを計画する。作戦名は、「神々の黄昏(ラグナロック)」。

  その計画は見事に成功する。同盟政府は完全に危地へと追い込まれてしまった。それに対して、ラインハルトは、フェザーンにたどり着いた時、兵士らの「皇帝、ばんざい」という叫びに包まれた。彼は、大きな前進を遂げ、銀河系全体の支配へと向かっていく・・・

  大きな戦争もあるんだけど、それよりも激しい裏側の政争が印象に残る巻です。これまで三つ巴の中で、お金を握ることで独自の位置を占めていたフェザーンが潰れて、物語は大きく動きます(ルビンスキーも、地球教も潜伏してしまっただけなんだけど)。僕は、1・2巻と10巻の次くらいに、この4巻が面白いのではないか、と思っています。まぁヤンや、ロイエンタールの最期が描かれている別の巻も、それぞれ印象的ではあるからどの巻が面白いかなんて決めらるわけがないんだけど・・・

  「ラグナロック」なんて、ありきたりなネーミングになってしまったわけですが。まぁ北欧神話からもってきたわけだから、かぶるのは仕方ない。というよりか、だいたいの場合こちらの作品の方が先で他の作品が後追いになるわけで・・・ まぁ何にしろ格好良いから良いじゃないか、と思います・・・ なんだか言い訳めいているけど。

  流浪を余儀なくされる老いた名将・メルカッツが辛そうだなぁ・・・ 本当ならばもっと活躍できたほどの人なはずなのに。ついでに、メルカッツに何も言わずに従う副官シュナイダーが格好良いです。


自森人読書 銀河英雄伝説4 策謀篇
★★★

著者:  乙一
出版社: 角川書店

  『きみにしか聞こえない』は乙一の短編集。『Calling You』『Calling You』『傷 -KIZ/KIDS-』収録。

  『Calling You』。内気な少女・リョウは、空想のケイタイを頭の中で思い浮かべることで自分の孤独から気を紛らわせていた。そして、ある時、存在しないはずのケイタイが鳴り出し、自分と同じように孤独を抱え込む人と電話がつながり・・・ 『Calling You』を原作として『きみにしか聞こえない』という映画も作られているそうです。

  『傷 -KIZ/KIDS-』。傷を移す能力を持つアサトと、虐待を受けている少年タケオの物語。そしてあとシホという人も登場するんだけど。

  『華歌』。恋人を事故で失ってしまった「わたし」は、病院に入院していた。そんなある日、雑木林の中を散歩していたら人間の女の子の顔のついた花に出会ってしまい・・・ 叙述トリックが仕掛けられていて最後の辺りになって、なんてこったと思わされます。

  どれも似たような話じゃないか、という気がしてきてしまうんだけど、どれも面白いです。

  乙一のつくりだす設定というのはどれも巧いなぁと思わされます。ささっと読めてしまうこの軽さも良いし。でも、どれもこれも分かりやすくて、「泣かせる」ようにつくられているところは、なんというか首をかしげてしまう、というか・・・ 泣かせるよりも笑わせることの方が難しいんだよ、というようなことを、豊崎由美が以前どっかで書いていたけど。そんなに「泣かせる」ような話ばかりではなくても良いんじゃないかなぁ・・・


自森人読書 きみにしか聞こえないCALLING YOU
★★★

作者:  田中芳樹
出版社: 徳間書店

  銀河英雄伝説シリーズ全体の感想のページ

  傀儡の幼帝を擁立し、帝国の全権を握ったラインハルト。彼は、配下の将軍であるケンプとミュラーにガイエスブルグ要塞を与えます。そして、それでもって同盟軍のイゼルローン要塞を陥落させるよう命じます。要塞対要塞という、シリーズの中でも珍しい展開となるわけです。

  帝国軍の侵攻に対して、イゼルローン要塞を守る同盟軍は動揺します。なんと要塞の総司令官にして、天才戦術家のヤン・ウェンリーがいなかったからです。ですが、敵が攻めてきたからには戦わない訳にはいきません。同盟軍は、ヤンの不在を隠したまま、戦闘に突入していきます・・・

  さて、ヤン・ウェンリーは、自分の持ち場を離れてどうしていたのか? 実は、査問会に呼び出されていました。数々の戦争で活躍してきたヤンは、中央の政治家(とくに元首・トリューニヒトとその取り巻き)たちから疎まれていたのです。そして査問会という名の「いじめ」を受けることになります。ですがヤンも黙っているわけではない。そうして、首都では舌戦が繰り広げられます・・・・・

  ちょっとここで小休止、というような感じです。1・2巻が怒涛のような展開を見せたのでここで息継ぎ、というか。決してつまらないわけではないんだけど、物語の中の狭間みたいになっています。ほとんど物語は進まず、この巻では同盟内部の政治腐敗が再確認されます。建て前としては民主国家・議会政治ということになっているけど、実質的にはトリューニヒトとその1派によって政治が壟断されている様が、少しずつ露になってきます・・・ そして、同盟の人材枯渇というのも見えてきます。

  それとは対照的なのが帝国軍。2巻末ではキルヒアイスが倒れ、この巻ではケンプが戦死してしまいます。ですが、ミッターマイヤー、ロイエンタール、オーベルシュタイン、メックリンガー、ビッテンフェルトら有能な将軍・参謀たちが揃っているため、全く優位の立場は揺らいでいません(と列挙されても、困るか・・・)。

  ラインハルト率いる圧倒的な帝国軍と、ヤン1人の活躍で保っている劣勢の同盟。またもや、その差がまざまざと表れます。


自森人読書 銀河英雄伝説3 雌伏篇
★★★★★

作者:  田中芳樹
出版社: 徳間書店

  銀河英雄伝説シリーズ全体の感想のページ

  突如、銀河帝国と自由惑星同盟の両陣営でほぼ同時にクーデターが発生します。それによって、両国は戦争どころではなくなり、内乱を鎮圧するために仲間同士で相争うことになります・・・

  実は、その2つの内乱は、帝国の天才元帥・ラインハルトによって仕組まれたもの。ラインハルトは、帝国で大きな権力を握る門閥貴族を潰すために動き出し、クーデターを起こします。ですが、ただ単にクーデターを起こすだけでは、現在対立している同盟側につけ込まれる可能性が高くなります。なので、同盟の内部にクーデターが起こるように種を蒔いたのです・・・

  同盟の天才戦略家ヤン・ウェンリーは、ラインハルトが何かを仕掛けてくるであろうことを予知していながら、それを止めることができません。帝国軍との戦いの最前線・イゼルローン要塞を守るため、そこに縛り付けられているからです。

  「疾風ウォルフ」ミッターマイヤーや「金、銀妖瞳」ロイエンタールといった有能な将軍たちや、幾多の艦隊を配下に持ち、強大な力を握るラインハルトと、一個艦隊の指揮官でしかないヤン・ウェンリーとの違いがはっきりとします。これからの展開というのも見えてきます。ラインハルトは帝国を乗っ取って羽を伸ばしていき、それに対してヤン・ウェンリーは孤軍奮闘せざるを得ない・・・

  ネタバレになってしまうんだけど。『銀河英雄伝説2 野望篇』のラストには、びっくりします。主役級の登場人物(ラインハルトの親友である、キルヒアイス)がいきなり死ぬという急展開を見せるのです。

  著者・田中芳樹は、「物語を重層的・複合的に構築する要素となりえたモチーフ」を自ら壊してしまったと5巻のあとがきで後悔しています。でも、それによって戦場においては「死」というものは突然に訪れる不合理なものなのだ、ということがはっきりと読者に突きつけられたわけです。かえって物語のテーマとも合っていると僕は感じたんだけど。意図せぬ地雷、というか。キルヒアイスの死によって、『銀河英雄伝説』は「面白い戦争もの」にとどまらない物語になったのではないかなぁ・・・


自森人読書 銀河英雄伝説2 野望篇
★★★★★

作者:  田中芳樹
出版社: 徳間書店

  銀河英雄伝説シリーズ全体の感想のページ

  西暦2801年を宇宙暦1年と定めた人類は、銀河系へと拡大していきました。そして、人類は幾多の戦いを経た後に、史上初めての統一政府として銀河連邦を建国します。しかし権力は必ず腐敗する、というのが歴史の法則。いつの間にか銀河連邦の政治もぐずぐずになっていきました・・・

  そこへ彗星のごとく登場したのが、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム。彼は、まず宇宙海賊をぶっ潰して国民からの圧倒的な支持を取り付けると政界に進出。元首となり、そのまま独裁政権を築き上げます。そして国民の支持を取り付けたまま、「神聖にして不可侵たる」銀河帝国皇帝に即位。その年を帝国暦1年と定めて宇宙暦を廃止。それから、皇帝は反対派を粛清して、議会を解散。貴族階級を築き、さらに優良ならざる者(体が健全でないもの・危険思想を持つもの)を弾圧、国民を締め付けました。なんと宇宙世紀にもなって、独裁政治が復活してしまったわけです。

  しかし、それに対して歯向かう者はもちろんいました。帝国歴164年アーレ・ハイネセンを中心としたメンバーらは宇宙船になって帝国を脱出し、かなりの損害をだしながらもそれまで人類の到達していなかったところまで行き着き、そこに自由惑星同盟を建国。宇宙暦を再び用い、帝国から隠れながら勢力を拡大していきました・・・

  2国は、宇宙暦640年に邂逅。そしてダゴン会戦が勃発しますが、劣勢なはずの自由惑星同盟軍は地の利を得て、帝国軍を壊滅させ、存在感を発揮。その後、自由惑星同盟は、たくさんの亡命者を受け入れて帝国に対抗できるほどの勢力に膨張しました。

  時代を経るごとに両国は変化しました。帝国では、貴族たちが権力闘争に明け暮れて政治が腐敗。一方、自由惑星同盟でも、やってくる流民の中で国家は膨れ上がり、民主主義はじょじょに腐敗。いつ終わるか知れない不毛な戦争を続けることになります。そして、いつの間にか、その両国の間に、商業国家・フェザーンが生まれました(帝国に従属しているけど、実質的には独立国家)。

  ・・・とここまでは、プロローグみたいな前書き。ここからが伝説の始まり。宇宙暦8世紀。銀河系は、銀河帝国、自由惑星同盟、フェザーンの3つに分裂し、微妙な均衡を保っていました。そこへ、2人の天才が登場します。帝国のラインハルト、自由惑星同盟のヤン・ウェンリー。2人はアスターテ会戦において初めて対戦し・・・

  もう何回読み返したことか。面白くて面白くて。僕にとって、SF小説の原体験がこの本になってしまいました(子供向けをのぞくと)。だからなのか、愛読書になっています。


自森人読書 銀河英雄伝説1 黎明篇


著者:  山田悠介
出版社: 文芸社

  話題沸騰の作品、だったのかなぁ。文章のあまりの酷さに、非難囂々の作品です。

  1ページにつき、1つは日本語としておかしな表記があります。わざとやっているか、もしくは気が狂っているとしか思えないほどです。とても列挙しきれません。「二人が向かった先は地元で有名なスーパーに足を踏み入れた」 「騒々しく騒いでいる」 「最後の大きな大会では見事全国大会に優勝」 「三人は分かち合うように抱き合った」「永遠と続く赤いじゅうたん」「人々の間とともに長く受け継がれていく」「まだ成人を迎えていない幼き少女」「そう遠くなく、近いようだ」「十四年間の間」「うっすらと人影がかすかに現れた」・・・

  設定も意味不明です。西暦3000年のはずなのに、ちゃぶ台やら、新幹線やらコンビニやらが出てくるのです。しかも、展開も意味不明。とげとげしい対立を繰り広げているはずの親子が一瞬で和解してしまうのです。物語として成立していません。これをギャグで書いているというのならそれなりに笑えるけど、著者はまじめに書いるらしいから頭を抱えたくなります。

  「こんなものは、小説として認めない!」と書いている人をネットなどでよく見かけますが、僕もほぼ同感です。これが若者に受ける、というのはどういうことなのか。

  僕は、『レンタル・チルドレン』を読んで山田悠介を知りました。たいして面白くないホラーっぽい感じのお話だったと思います。そして、その後話題になったので『リアル鬼ごっこ』を読み、山田悠介の作品はこれきりにしよう、と決意しました。というわけなので、多分読書日記に再び「山田悠介」の4文字が登場することはない、と思います・・・

  『リアル鬼ごっこ』批判を飛び越えて、山田悠介否定になってしまった・・・


自森人読書 リアル鬼ごっこ
★★★

著者:  畠中恵
出版社: 新潮社

  体がめっぽう弱くてよく寝込む大店の若だんな・一太郎。彼には、佐助と仁吉という2人の付き人がいました。しかし、実は一太郎は妖の見えるという特別な力がある人で、佐助は犬神、仁吉は白沢という妖(あやかし)。若だんなの周囲には妖怪があふれていました・・・

  若だんな・一太郎は、夜出歩いていたために奇怪な猟奇殺人事件に巻き込まれてしまいます。一太郎の周りに次から次へと血が流れる・・・ 一太郎は責任を感じて、妖怪たちとともに事件を解決することにします。江戸を舞台にした謎解きファンタジー。

  日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した作品。けっこう面白かったです。ただ、そんな絶賛するほどかなぁ・・・ あんまり凝ったところはなくて、拍子抜けしました。う~んこの畠中恵という人の作品も、あさのあつこと同じ系統なのかなぁ・・・(違うかなぁ、分からないです)

  かなり読みやすいところが良いのかもなぁ。それぞれの登場人物が色付けされていて、すごく解りやすいです。若だんなが寝込むのがちょっとじれったいけど、はなしのテンポはとても早いです。何か考えたりせずともずんずん読み進むことができてしまいます。

  つまらないことはないけど、期待はずれだったなぁ、と僕は感じました。

  続きが面白い、と言う話を聞いたので、読んでみようかなぁ。


自森人読書 しゃばけ
★★★★★

著者:  中島敦
出版社: 新潮社

  唐の時代、李徴という男がいました。彼は、秀才として知られる優秀な人物でした。しかし狷介で自尊心、自負心が強く、つまらない官吏たちの下につくのをいやがって役人をやめます。そして、故郷へ帰り、詩人として生きていこうとしますがうまくいかない。その内痩せ細っていき、眼光ばかりがギラギラするようになってしまいます。そして最終的には貧窮に苦しみ、妻子のために再び役人となりますが同輩たちはみな高官となっていました。以前、彼が「鈍物」とみなしていた者たちが、彼の上に立つことに耐えられなくなった李徴は、とうとう発狂寸前となり、ある夜意味不明なことを絶叫しながら闇の中に失踪してしまいます・・

  その後、以前李徴と親しかった友人が、商於の地をたち、ある林中の草地を通りかかった時、人食い虎に襲われます。しかしその人食い虎は、李徴の親友を襲うのを途中でやめます。果たして、信じられないことにその虎が李徴だったのです。人食い虎と化した李徴は、親友にこれまでの経緯と、嘆きを語ります・・・

  清の時代の説話集『唐人説薈』の中の、「人虎伝」を元にしているそうです。短編なのですぐ読めます。中島敦の名文は素晴らしいです。漢文を崩していったような文章なのですが、もうこれ以上削るところも、つけ加えるところもない、と感じさせてくれます。凄く難しそうな気がするけど、こういう文章を1度まねして書いてみたいなぁ、と思います。

  そういえば北方謙三も、中島敦の文章を意識して『三国志』を書いている、というはなしを聞きました。いろんな人が中島敦の影響を受けているのかもなぁ。

  人食い虎になってしまった李徴の嘆きの痛々しさが伝わってきます。『山月記』は、何度も読み直している好きな作品のひとつです。


自森人読書 山月記
★★★

著者:  筒井康隆
出版社: 角川書店

  ある日のこと。中学3年生の芳山和子は、理科室を掃除していた時に実験室でラベンダーの香りを嗅いだことで意識を失います。それから、和子の周囲にはいろんな事件が起こるのですが、和子はそれらの事態を時間を遡行することによって回避できてしまうことに気付ききます。彼女は悩み、理科の教員・福島先生に相談すると、それは「テレポーテーションとタイム・リープではないか」と教えられ、真相を確かめるべく何日か前の過去へ向かうのですが・・・

  何度もドラマ化、映画化されてとても有名な作品。2006年にも細田守によって「続編」のアニメ映画がつくられました。

  僕は、『時をかける少女』から筒井康隆の作品を読み始めました。なので、読み終わったあと何も思わなかったのですが、あとで他の筒井康隆作品をいろいろ読んでみると、彼がこんな正統派ともいうべきジュブナイル作品を書くのは珍しいのだと知りました。

  なかなか面白かったです。だけど、なんというか「古風」な感じは否めないかなぁ。ラノベなどを読んだ後に『時をかける少女』を読むと登場人物たちのお行儀の良さと、物語としてのしっかりした造りが、よく分かります。僕はとても好きだけど。

  ただし、どちらかというと筒井康隆作品の中では、七瀬三部作の方が好きだなぁ。そちらも超能力が登場して、とても面白いです。なんていうか物語としては、かなり暗いけど。人間の心の薄暗い部分が見えてしまうんだから、あまり明るい物語にはならないよなぁ・・・

  今ちょうどNHKで『七瀬ふたたび』が実写化されています(木曜日夜8時)。あの悲劇がどういうふうになるんだろうなぁ。もう少し救いのあるラストになるのか、それとも小説通りの展開になるのか、ちょっと楽しみにして見ています。


自森人読書 時をかける少女
★★★

作者:  時雨沢恵一
出版社: メディアワークス

  旅人・キノと相棒・モトラド(「注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す」らしい)・エルメスがいろんな「国」をめぐっていくというもの。『人の痛みがわかる国』『多数決の国』『レールの上の三人の男』『コロシアム』『大人の国』『平和な国』といった短編で構成されています。

  キノのたどりつく「国」は不思議な「国」ばかりです。なんらかの寓話なのかなぁ、とちょっと考えてみるけど、う~んまぁどちらでもいいかという感じです。考えなくてもけっこう面白いです。さらっと読んでいくことが出来ます。

  ありがちな戦闘のシーン等はとくになくて、淡々とすすみます。短いのでとても読みやすいけど、物足りなさもある。その物足りなさが良いのかもしれないけど。でもやっぱり、もっと愛憎渦巻く神話や、英雄伝説みたいな物語が読みたい、と思っている人には物足りないかもなぁ・・・ っていうかそんな人はあまりいないのかなぁ。

  ここからあと1歩踏み出すのがこれまでの小説だったのだから、そういうきまりを打ち破った画期的な小説ということもできるのかなぁ。でも僕には物足りないです。

  ちょっと不思議な物語です。


自森人読書 キノの旅
ウェブサイトhttp://jimoren.my.coocan.jp/
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