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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★★★

著者:  ジェイムズ・P・ホーガン
出版社: 東京創元社

  近未来。月で測量をしていた調査チームが、真紅の宇宙服を着た人間の遺体を発見します。その遺体はどこの月面基地にも所属していませんでした。しかも、調査の結果、死後5万年が経過しているらしいことが判明。人類は彼をチャーリーと名付け、チャーリーが何者なのかを解明しようとします。彼はほぼ現代の人類と同じ体型と同じ身体構造をしており、人類の仲間と考えられました。つまり明らかに異星人ではないのです。しかし、5万年前、地球上には人間を月面に送り込むほど高度な文明が存在したとは考えられません。物理学者、ヴィクター・ハントは全体を俯瞰する役につき、科学者たちを仲介して情報を流通させながら壮大な謎に挑みます。しかし、謎が謎を呼び、調査は暗礁に乗り上げ・・・

  SFミステリ。最高に面白い傑作。

  海外SF小説の中で好きな作品を1作だけ選んで欲しい、というふうになったら『星を継ぐもの』を選ぼうかなぁ、と思うほど。

  『星を継ぐもの』というタイトルがまず良い(Zガンダムの映画がまねしたほど)。

  そして、ミステリとしても素晴らしいです。感動と言う言葉を安易に使ってはならないと思うんだけど、謎が解き明かされた時には感動しました。全てがみごとにぴったりはまります。人類が抱え込んでいる色んな謎、(たとえば、古生物学におけるミッシングリンクの謎)への解答が示されます。

  素晴らしいアイディアが根幹にあります。しかも、ジェイムズ・P・ホーガンの作品の底流には人間の良心への信頼があります。そこも良いです。とにかくおすすめ。


自森人読書 星を継ぐもの
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★★★★

著者:  グレッグ・イーガン
出版社: 東京創元社

  西暦2034年、突如として地球の夜空から星々が消えました。冥王星軌道の倍の半径を持つ謎の物体「バブル」が発生し、太陽系を包囲したのです。世界は大混乱に陥り、各地で暴動が発生し、新興宗教がタケノコのように大発生。テロも相次ぎました。科学者たちは必死でその原因を探りましたが、何も分かりませんでした。

  それから33年の時が流れました。元警察官ニックは精神病院から消失した女性の捜索依頼を受け、女性を誘拐したらしき企業に忍び込みますが逆に捕まり、忠誠モッドを脳内にはめこまれます。彼はその謎の組織のために働くことになります。ですが、その内彼は組織の研究に巻き込まれ、特殊な能力を持つようになります・・・

  ハードSF。

  硬質な物語です。なかなかに読みづらいです。しかし、振り落とされないように物語を追っていくと、中盤の辺りから面白くなってきます。あまりにもとんでもない世界の秘密が発覚します。逆転の発想だ、と感じました。

  グレッグ・イーガンはほら吹きです(まぁほらではない可能性もあるのかも知れないけど)。量子論を基にし、そこにナノテクを組み合わせることで普通の世界を普通の世界ではなくしてしまいます。世界の見方ががらりと変わります。グレッグ・イーガンは本当に凄い人だ、と感じました。この物語を翻訳した山岸真という人も凄いと思いました。

  『宇宙消失』には、様々な科学問題に真正面から取り組み、世界の成り立ちを理解し、検討しようとするSFというものの醍醐味がつまっています。


自森人読書 宇宙消失
★★

著者:  牧野修
出版社: 角川書店

  ノンフィクションライターの八辻由紀子は、UFOに心惹かれている人たちを取材する中で、偶然限定本の『レビアタンの顎』を手に入れます。それは殺人者が自分の殺人について告白したものでした。著者は、言語に代わるものとして匂いを提示。それでもって別の形で、世界を理解することができると説くのですが、八辻由紀子には新興宗教の一種としか思えませんでした。ですが、彼女はその本を手に取ってから突如として怪異に襲われるようになり・・・・・

  ホラーというか、ファンタジー小説。いまいちでした。

  『アロマパラノイド 偏執の芳香』は、『香水 ある人殺しの物語』という小説の二番煎じというか、劣化バージョンでしかないような気がしました。『香水』は、上品な文章によって狂気や錯乱、その他猥雑なものでさえも美しく見せてくれたのに、『アロマパラノイド 偏執の芳香』はただ単に雑多なだけです。まとまりがないし、綺麗ではありません(物語の構成はみごとにぴちりとはまっているだけど)。

  とにかく、UFOだの、電波だの、インドの神話だの、いろんなものを詰め込みすぎて、匂いの物語ではなくなっていく部分が納得できませんでした。

  クライマックスにおける異形同士の対決も、意味が分からないです。外国のホラー映画みたいに、化け物を退治してめでたしめでたしというのは安易ではないか。しかもその後にまだ何かありそう、と思わせぶりなシーンを挟む手法もありきたり。

  まぁそれなりに面白いんだけど、そもそも思わせぶりなホラー小説の雰囲気が好きではないので、あんまり楽しめなかったです。


自森人読書 アロマパラノイド―偏執の芳香
★★★★

著者:  大原まり子
出版社: アスペクト

  神話のようなSF。連作短編集。『天使が舞い降りても』『けだもの伯爵の物語』『楽園の想いで』『異世界Dの家族の肖像』『宇宙で最高の美をめぐって』『戦争の起源』収録。短編どうしに直接の繋がりはないんだけど、背景には同じ宇宙世界が存在しています。

  「目くるめく」という言葉はこのような作品にこそ使うべきではないか、と感じました。壮大な宇宙規模の物語が、展開されていきます。しかも、映像では表現できないような状況・物事が、文字で表現されていきます。小説を読む楽しみがここにあると感じました。

  『天使が舞い降りても』

  作用と半作用の物語。老人AUMは、鮮烈な印象を残します。世界のエコーである彼にとっては、呼び出されれば何もかもが容易なのか・・・

  『けだもの伯爵の物語』
  心を解き放つ棺桶を手に入れた伯爵家の冒険。けだもの伯爵が怖いけど、面白いです。

  『楽園の想いで』
  紆余曲折あって盗賊になってしまう女王の物語。彼女は聖女から貶められて「ただの人」になるわけですが、誰もが結局はただの人なのたろう、と感じました。

  『異世界Dの家族の肖像』
  人間が生み出した、一生物のみでぐるぐると巡っていく不可思議な生態系を描いた作品。

  『宇宙で最高の美をめぐって』
  最高の美をめぐってたくさんの人が大騒ぎして駆け回る物語。美は善にも悪にもなりうる、というラストの言葉には考えさせられました。

  『戦争の起源』
  楽園に資本主義が持ち込まれてしまうという物語。

  とにかく、『戦争を演じた神々たち』の面白さは読まないことには分からないです。あらすじを説明しても伝わらない。物語はぎゅっと凝縮されているので、さくさく読むことが出来ます。おすすめ。

  第15回日本SF大賞受賞作。


自森人読書 戦争を演じた神々たち
★★★★★

著者:  光瀬龍
出版社: 早川書房

  地球の誕生の場面から物語は始まります。それから時は流れ・・・

  アトランティス王国の文書を求め、旅に出たギリシャの哲学者プラトン。彼はエルカシアという地にて、宗主と出会い、オリハルコンなる物質を見つけ、高度な文明がかつて存在したことを予感します。プラトンは何かを知っているらしい宗主に問いました。「どうしてアトンランティスは滅んだのか?」と。ですが宗主は「貴方自身がその問いに立ち向かうことになる」と謎めいた言葉を残して消えました。その会見のあった日の夜、プラトンは妙な音を聞いて外へ出ると砂嵐に巻き込まれ、死んでしまいますがその瞬間彼はオリオナエになっていました。彼は神によってアトランティスが滅ぼされる場面に遭遇します・・・

  プラトン(オリオナエ)、シッタータ、そして阿修羅王は宇宙の謎と超越者、すなわち神の秘密を追っていきます。一方、ナザレのイエスは『シ』の命令を受け、3人を阻止しようとします。彼らは過去、未来を超え、そして地球を飛び出し、宇宙で壮絶な戦いを繰り広げるのですが・・・ 『シ』とは? その支配下にある惑星開発委員会とは? そもそも私は何者なのか? なぜ生まれ、なぜ滅ぶのか? 終末と、弥勒の救済とは? そして神とはいったい何なのか?

  あらすじを説明することが非常に難しい作品。

  萩尾望都の漫画を読んで、『百億の昼と千億の夜』と言う作品を知り、あまりにも壮大な物語に気おされました。なので原作である小説も読んでみたのですが、素晴らしかったです。文章は流れるように進んでいくし、浮かび上がってくる風景は綺麗だし、新たなる神話といっても良いほど美しくて壮絶な悲劇が繰り広げられる様は感動的です。

  登場人物中最も印象に残るのは、やはり苛烈なる少女、阿修羅王。

  最後まで読み終わったとき、定められた破滅と、溢れる絶望をどう受け止めれば良いのか、分からなくなってしまいました。


自森人読書 百億の昼と千億の夜
★★

著者:  アイザック・アシモフ
出版社: 東京創元社

  地球大学に留学していたウィデモス領主の跡継ぎバイロン・ファリルは、いきなり暗殺されそうになりました。彼は、冷徹な学友サンダー・ジョンティの助言を受けて地球を脱出します。しかし、バイロンは、父が反逆者だったことから星系を支配するティラン帝国に追われ、監視されます。バイロンは必死に逃亡しようとするのですが・・・

  SF小説。

  主人公バイロンは青臭くて、その上へまを繰り返します。あんまり共感できません。それに比べて、敵のアタラップが格好良すぎ。

  アタラップという人は視野が広いです。彼がややこしく長引かせるせいで、『暗黒星雲のかなたに』の物語が成り立っているともいえます。

  逃亡劇が延々と続いていくのが面倒です。

  ネタバレになるから詳しくは書きませんが、ラストには納得できませんでした。面白いものを持ってきたところには感心するけど、それを持ち上げすぎではないか。そこで登場させるべきなのは、絶対に「フランス人権宣言」だろう、といいたくなります(結局、失敗したとはいえ)。

  「暗黒星雲のかなたに」というタイトルは素晴らしいです。凄く面白そうだ、と思わされます。けど読んでみると、B級っぽい雰囲気が強く漂っているような・・・


自森人読書 暗黒星雲のかなたに
★★★★

著者:  J・R・R・トールキン
出版社: 岩波書店

  主人公は、ホビット(小人)族のビルボ・バギンズ。彼はごちそう好きの引っ込み思案。なのに、魔法使いのガンダルフと、13人のドワーフ達に巧みに誘われて旅に出ます。目的地は「はなれ山」。邪竜スマウグによって奪われたドワーフの財宝があるといわれているところです。彼は旅の途中で、自分の姿を消すことの出来る黄金の指輪を拾い、それを活用しつつ、進んでいきます・・・

  ファンタジー小説。『指輪物語』の前日譚。

  たくさんの登場人物がしっかりと書き分けられています。ドワーフたち、大活躍を見せる弓が得意な人間バルド、森のエルフの長スランドゥイル、誰に対しても親切にもてなす「憩いの館」のエルロンド。後々活躍することになるガンダルフも今回はまだ余裕があるし、彼がどんな大仕事をしているのか明らかにはされません(後半は登場せず、死人占い師と戦っていたとだけ記されている)。

  そして、壮大な歴史が背景にあることを匂わせるものがいろいろあるところも良いです。他の中つ国の物語も一緒に読むと、もっと楽しめます。

  クライマックスの「五軍の戦い」は圧巻。

  最近流行の『ハリー・ポッター』シリーズは、J・R・R・トールキンの書いた「中つ国の物語(『シルマリルの物語』『ホビットの冒険』『指輪物語』)」や、その他多くのファンタジーの焼き直しとしか思えないです。全体的に劣化しているような印象すら受けます(「子ども向けだから」だとしたら、それは子どもを見くびっているように思う)。

  『ホビットの冒険』を読み終えると次は『指輪物語』が待っています・・・


自森人読書 ホビットの冒険
★★★★★

著者:  宮崎駿
出版社: 徳間書店


  発達した人類文明は最終戦争を引き起こしてしまい、破滅します(「火の七日間」)。その後、多くの地域が腐海に呑み込まれていきました。腐海とは、菌類の樹木が繁殖し、蟲たちが跋扈する森のこと。それから1000年余りの年月が過ぎ・・・

  辺境の小国「風の谷」は、腐海のすぐ傍にあるものの潮風によって守られていたため、貧しいものの穏やかに日々を過ごしていました。ですが近くの大国トルメキアが戦争を起こしたことから否応なく争いの渦に巻き込まれてしまいます。風の谷の族長であるジルの娘ナウシカは、メーヴェに乗って空を駆け、風の谷を守ろうとします。その中で、腐海とその地に生きる生物たちを悪と看做すことに疑問を覚えていたため、世界の秘密に気付くことになるのですが・・・

  壮大な物語。宮崎駿の描き出す風景がとても綺麗で、素晴らしいです。

  ただストーリーをたどっていくだけでも物凄く面白いのですが、面白いだけでは終わりません。たくさんのことを考えさせられます。映画とは大きく異なります。漫画は、映画で大切にされていた人間と自然の対立・共存をいかにするか、という問いから離れていきます。

  映画とは違ってナウシカも単純な聖女ではないし、登場人物や世界にも深みが増しているように感じられます。土鬼(ドルク)という勢力が登場します。ドルクとトルキアとの戦争の問題に焦点が当てられます。

  戦争はどこまでも拡大していきます。破滅への道に続くと分かっていながら人間は腐海を生物兵器として使用します。正義というものが見失われていくわけです。現実と似通っています。そして衝撃的なことが明らかにされます。腐海こそが浄化を促進するものだったと判明するのです。「綺麗は汚い、汚いは綺麗」じゃないけど、価値観の逆転が起こるわけです。それでは腐海のこちら側に生きる者はどうすれば良いのか。ナウシカは悩みます。

  自身の価値観が崩壊してしまったとき、どのように振る舞うか、と言う問いに向き合うことに、重きが置かれているように感じました。苦悩の末、ナウシカは生きようと呼びかけます。あらゆる論理を取っ払った後、結局、最後に残る言葉はそれなのかも知れない、と感じました。

  第23回日本漫画家協会賞大賞受賞作。


自森人読書 風の谷のナウシカ
★★

著者:  森絵都
出版社: 理論社

  主人公は夏目環。彼女は家族を事故で失い、その上育ての親だった叔母まで亡くしてしまいます。彼女は絶望してしまうのですが、その後、いろんなことがあった後、愛用の自転車「モナミ1号」に乗って必死に走り始めます。この世と冥界との間には「レーン」があって40キロを一気に走りきれば、冥界にたどり着けるからです・・・

  不思議な小説。

  最初、主人公の不幸が淡々延々と綴られている部分には辟易しました。森絵都らしからぬ、いかにも重々しくて、どこかで読んだことがあるような展開だったからです。

  だけど、途中からは面白くなってきます。走って走って死者の国まで行く、という突飛な展開になるからです。そして、いつもながらのちょっと笑える良いはなしに突入していきます。その接続は面白いです(『サウスバウンド』みたい)。そうくるのか、と感心しました。

  スポコンものと化していきますが、スポーツで過去を紛らわす、というふうにはなりません。全力で走ることが死者と出会うことにも繋がるからです。

  最終的に彼女は自転車に乗ることなく、自分で走ることで成長していき、こちら側の世界にも居場所を見つけ出します。いろんな人と衝突するんだけど、それでももう生きることを諦めたりはしなくなっていきます。良かった良かった、と感じます。

  全体としては面白いです。ただし、前半のタメはあまりにも長いし、読むのが面倒だった・・・


自森人読書 ラン
★★★★★

著者:  山本弘
出版社: 角川書店

  近未来、地球はアンドロイドによって支配されていました。そんな中、ロボットを襲って食料を奪っていた「語り部」の青年は、美人のアンドロイドと闘って敗れ、捕まってしまいます。彼は殺されるのかと脅えるのですが、アンドロイド・アイビスは物語を語り始めました・・・・・ 『宇宙をぼくの手の上に』『ときめきの仮想空間』『ミラーガール』『ブラックホール・ダイバー』『正義が正義である世界』『詩音が来た日』『アイの物語』といった短編の間に、青年とアイビスの会話(インターミッション)が挟まっています。

  物語に関するSF小説。

  豪華です。しかし、そのわりにはソフトな読み心地。アイとは何であるのか、というその一点がこの物語の肝。たくさんの意味が込められています。

  アイビスの語る物語はどれも綺麗なはなしばかり。しかし、アイビス(そして作者である山本弘)は、その綺麗過ぎということを逆手にとります。「現実よりも素晴らしいフィクションのどこがいけないのか?」と問いかけてくるのです。美しい物語にこそ真実は宿っている、物語には共感を創る力がある、というその主張には共感します。

  心の中につくった仮想空間に閉じこもってしまう人間の心の作用を、アイビス達アンドロイドはゲドシールドと呼びます。そして、彼女は人間を憐れみ、そしてその誤りを静かに指摘します。作者山本弘も同じ考えなのだろうと思います。彼は「と学会」の会長です。真実を拒絶し、トンデモないことを言い続ける人たち(ゲームをしすぎるとバカになるとか、アポロ11号の月面着陸はウソだったとか、超古代文明は存在したとか)の本をたくさん読み、紹介してきた人です。彼の言葉だからこそ説得力があります。

  とにかく強いメッセージ性を持った小説。僕は強く共感しました。「人間はみな痴呆症」「連綿と続いていく記憶だけが世界を断絶から救う」というアンドロイドの言葉は感動的。そして、ただ許容して欲しい、というアンドロイドの言葉が素晴らしすぎる、気がします・・・


自森人読書 アイの物語
★★★★

著者:  神林長平
出版社: 早川書房

  突如として南極大陸に出現した超空間通路を通って、未知の存在ジャムが地球に攻め込んできます。それに対して人類は必死で反撃し、ジャムを地球から撃退することに成功。そして逆に、通路の向こう側にある惑星フェアリイにFAFを派遣してジャムを押し込めようとするが、そこでは一進一退の攻防が続いていました。主人公は、FAFに属す特殊戦の深井零。彼は戦術戦闘電子偵察機・雪風に乗り込んで雪風とともに、孤独な戦いを続けます。彼の任務は、味方を見捨ててでも戦闘の情報を得て、それを確実に持ち帰るというものでした・・・

  加筆訂正と新解説が加わった改訂版(『戦闘妖精・雪風』 → 『戦闘妖精・雪風<改>』)。内容的にはほとんど変わりはないそうです。

  戦闘の場面は凄いなぁ、と感じました。戦闘機による未知なる存在との戦いの描写がぎっちりと詰まっています。緻密な描写を呑み込むのは大変だけど、面白さは抜群です。

  冷淡な零とも関係を保つことができるブッカーと言う人が印象に残ります。

  物語の中に、「人間的とは何か?」という問いが含まれていてとても考えさせられました。非人間的だとよく批判される主人公、深井零はけっこう情に篤い男です。それでは「人間的」とはどういうことなのか。利己的に振る舞って他人を顧みないと冷酷といわれるのだから、逆に言えば「他者との協調」こそが人間性の発露なのかも知れない。でも、結局は自分の世界に生きている自分が「他者と繋がる」ためにはどうすれば良いのか。本当に難しい・・・

  あと、どこからどこまでが命なのか、ということも考えさせました。

  神林長平がよくテーマとして扱うものに「言葉」と「機械」があるそうですが、人間や生命というものをどう捉えるか考える時、その2つは欠かせないなぁ、と感じました。自分の利便のために存在しているものなのに、使っているうちに自分の意思を離れていくものとどう付き合うのか。SF小説は深い。ただし、こなれていない日本語が少し微妙かなぁ、とも感じます。もう少しすっきりしないかなぁ・・・

  完結せず、『グッドラック』に続きます。

  第16回星雲賞受賞作。


自森人読書 戦闘妖精・雪風<改>
★★★

著者:  津原泰水
出版社: 集英社

  津原泰水の連作短編集。『反曲隧道』『蘆屋家の崩壊』『猫背の女』『カルキノス』『ケルベロス』『埋葬虫』『水牛群』収録。

  30になってもぶらぶらしている俺と、伯爵と呼ばれている怪奇小説作家の物語。毎度、彼らが不思議な事態と遭遇します。

  タイトルは、『アッシャー家の崩壊』のパロディみたいだけど、オマージュというわけではないです。ミステリのような、ホラーのような、ファンタジーのような、SFのような短編が集められています。日常の中に忍び込んでくる怪奇を上手に描き出しています。まず最初にある『反曲隧道』が良いです。いかにもこれから幻想の世界にお連れしますよ、という雰囲気で。

  しかも、その雰囲気が壊れることなく、最後までしっかりと保たれています。作品は各々違った色合いなのに、全体としても統一性があるのは凄いです。

  『埋葬虫』が一番怖いです。
  猿渡は学生時代の旧友と再会し、年代もののカメラを借りるのですが、その時森の写真を撮ってきて欲しいと頼まれます。そのカメラは、旧友のものではなく、彼の会社の後輩のものでした。彼とその後輩は、ともにマダガスカルへ行ったのですが、後輩は虫を食ったために体を虫に乗っ取られ、もう長くなくて、森の写真を見たいというのが末期の頼みだったのです・・・

  ぞくっとするし、古事記やおとぎ話などを下敷きにしている部分はとくに楽しいです。


自森人読書 蘆屋家の崩壊
★★

著者:  小松左京
出版社: 小学館

  地球物理学の権威・田所博士は、深海潜水艇“わだつみ”の操艇者・小野寺俊夫に伴われ、日本海溝に潜ります。そこで彼は恐るべき異変を発見しました。田所博士は日本が沈没するという衝撃的なことを言い出します。彼に促され、政府は密かにDー1計画を立案し、その未曾有の事態に必死で対処しようとするのですが・・・・・

  あまりにも有名な作品。

  大ヒットして「SF」を一般の人たちに広めた大作。SF小説とは何か、ということを説明する時、引き合いに出されることもあるみたいです。日本沈没という「絵空事」を、圧倒的な筆力と壮大な構想でもって現実のことのように描き出してくれます。

  けど、硬くて難しいことはなくて、壮大なエンターテインメント小説として読めます。物凄くたくさんのものが詰め込まれ、ごった煮になっています。最初期における海洋の探索、政治の動き、震災の拡大、登場人物たちの恋愛などなど全ての描写に力がこもっています(恋愛の部分の必要性が感じられなかったけど)。だから、とにかく凄いんだけど・・・

  でも、僕は冗長に感じてしまいました。上下巻あるのですが、読んでいて息切れします。もっとスマートにして欲しい、と思いました。僕がSF小説を読みなれていないせいかなぁ。

  映画化、テレビドラマ化、ラジオドラマ化、漫画化されているそうです。

  第27回日本推理作家協会賞・第5回星雲賞日本長編部門受賞作。


自森人読書 日本沈没
★★★★

著者:  恩田陸
出版社: 朝日新聞出版

  『六月の夜と昼のあわいに』は恩田陸の短編集。『恋はみずいろ』『唐草模様』『Y字路の事件』『約束の地』『酒肆ローレライ』『窯変・田久保順子』『夜を遡る』『翳りゆく部屋』『コンパートメントにて』『Interchange』収録。

  またまたいつもと同じパターンか、と思いきや、やっぱり同じ。最初は少しうんざりしながらページをめくっていたのですが、最後にはなんだか感動してしまいました。今回は、それぞれの短編の前に詩と絵が載っています。それ全体で1つの作品、ということなのだろうけど、全く意味が汲み取れません(その上、絵も詩も、恩田陸の小説に太刀打ちできていない気がする・・)。ここまでくると愉快です。

  もう『六月の夜と昼のあわいに』という本自体が、現代美術の作品みたいな感じ。それにしては親切。とても楽しめます。

  『窯変・田久保順子』は唐突です。天才となるはずだった田久保順子の悲惨な人生を描いた小説。あまりにもブラック。これは、一種のジョークなのだろうか。笑えない・・・

  『Interchange』は浮かび上がってくる風景が綺麗です。

  不思議な味がします。あまりおすすめは出来ないし、何かを期待すると裏切られるけど、とにかく読んでいると笑える部分もたくさんあって、おかしな気分になります。改めて恩田陸という小説家は凄い、と再確認できます。


自森人読書 六月の夜と昼のあわいに
★★

著者:  恩田陸
出版社: 集英社

  時を越えて巡り合うエリザベスとエドワード。なぜか2人は出会った途端に分かれなければなりません。1974年のロンドン、1932年のロンドン近郊、1944年のロンドン、1871年のシェルブール、1978年のロンドン、1905年のパナマ、1978年のロンドン、1603年のロンドン、1969年のフロリダ、1855年のオックスフォード、1978年のロンドン。物語の舞台は次々と変わっていきます・・・

  とてもロマンチックな小説です。

  めくるめくメロドラマ、という感じなのですが、SFというか、ファンタジー小説でもあります。歴史ものとしても楽しめます。純粋なミステリーではないけど、大きな謎を追求する小説としても読めます。いろんな要素が入り込んだ、いかにも恩田陸らしい小説。

  恩田陸という人の凄さがよく分かる作品なのですが、読んでいてとにかく疲れました。時系列はバラバラだし、章が変わるごとに出てくる人も変わるので混乱するのです(あと、章ごとの落差が激しい気がする。面白いものと面白くないが混在している、というか)。挫折しかけました・・・ よく最後まで読めたものだ、と自画自賛したくなります。

  そういえば、萩尾望都の『ポーの一族』を連想しました。雰囲気は似ている、かも知れない。

  途中に挟まれた絵画が良い感じです(各章の前に絵画が置かれてあり、章のタイトルはその絵画の名前を貰っている)。


自森人読書 ライオンハート
★★★★

著者:  北野勇作
出版社: 徳間書店

  かめくんは、「木星戦争」に投入されるために開発されたレプリカメのはずなのですが、クラゲ荘に住み、中州中央図書館に通い、巨大カメに乗ってザリガニと戦い、猫を気にかけ、りんごを愛し、穏やかな日々を過ごしていました。『かめくん』は、そんなほのぼのとしたかめくんの日常を描いています。ちょっととぼけた雰囲気をまとったSF小説。

  表紙がまず良いです。各章のタイトルも最高。
    第一章  模造亀(レプリカメ)
    第二章  機械亀(メカメ)
    第三章  亀記憶(カメモリー)
    第四章  亀手紙(カメール)
  ってな感じ。

  そして中身も非常に面白かったです。かめくんのほのぼのした雰囲気がまず良い、と感じました。そして、現実と物語が互いに侵入しあっている世界と、かめくんの哲学と、擬音語の多用と、随所に仕込まれたパロディと、そしてほのかな物悲しさといったものが混じりあっていて面白い物語を形作っています。ほのぼのしているのに、哀しくて、滑稽で、シュール。

  かめくんの哲学を読んでいて、この作品は確かにSFだ、と感じました。

  第22回日本SF大賞を受賞。


自森人読書 かめくん
★★★

著者:  野尻抱介
出版社: 富士見書房

  森田ゆかり、マツリ、三浦茜は美少女3人組。宇宙飛行士として活躍中。今回は、フランスが発射する宇宙飛行機の補助として、月の裏側へ向かう旅へ出掛けることになります。月面に水があるのかどうか、それを確かめることが目的でした。フランスの美少女5人組とペアを組むのですが、突然のアクシデントに見舞われてしまい、打ち上げが延期になりかけますが・・・

  SF小説。ロケットガールシリーズの3巻目。

  身体の軽い女子高生は、宇宙飛行士として最適である、という理由から、女子高生が宇宙を目指すことになります。けっこう軽いし、ストーリー展開自体も予想の範囲内からはずれることはあまりないのですが、面白いです。

  ただし、搭乗員が欠けてしまう理由には、びっくりしました。ジョークなのかなぁ。ありえない気がしないでもない・・・

  すぐれたシュミレーションなのかも知れない、と感じました。よく練られているし、著者も書きながら楽しんでいるみたいです。余裕があります。

  それに、ドラマがあります。月に赴いた主人公たちが絶体絶命の危機に陥った時、起死回生の策として提示されるものがあるのだけど、それも、宇宙やロケットのことがよく分かっている人でないと思いつかないものです。野尻抱介は、SFの人なのだなぁと感じました。

  優れたハードSF。


自森人読書 私と月につきあって


著者:  石田衣良
出版社: 徳間書店

  主人公は瀬野周司という男。膠芽腫という生存率が非常に低い悪性の脳腫瘍を発症。超高層マンション55階の一室を、先祖から引き継いだ広い土地と引き換えにして、手に入れますが妻との関係はうまくいっていないし、病気にも苦しめられています。つまり、何もかもうまくいっていないわけです。けれど、苦しみのあまり、いつの間にか200年後の世界に意識がトリップして・・・

  200年後の階級社会における闘争の物語と、現代における物語が交錯します。その未来における支配者の牙城がタイトルにもなっている「ブルータワー」。

  微妙な作品。

  物語があまりにも都合よく進んでいます。その上、最後は綺麗にまとまり過ぎていて嘘くさいです。予定調和なのです。典型的な展開を見せます。安易過ぎるのではないか、と感じてしまいました。その上、どこかで読んだようなありきたりな設定もたくさんあってうんざりします(インフルエンザから発展させた細菌兵器、とか)。

  あと、社会問題に対する著者の態度が気になります。

  きちりと書いている素振りを見せつつも、結局は物語のパーツとして処理しているだけのような感じがして好きになれません。もっと掘り下げて書くか、それが出来ないようならば、エンターテインメント小説として割り切って適当に書いていますというような態度を表明すべきではないか。「真面目に書いているふり」というのは一番悪いと思う(真面目に書いているのに、この浅さだとしたらそれはそれでひどい・・・)

  まぁ何にしてもよく分からないです。


自森人読書 ブルータワー
★★

著者:  高田侑
出版社: 双葉社

  短編集。『てのひらたけ』『あの坂道をのぼれば』『タンポポの花のように』『走馬灯』 収録。幻想小説っぽい雰囲気。都市伝説(未来予知とか、人面犬とか)つていうものはそのままだと嘘くさいから、それをもう少し柔らかな空気に包んでみた感じ。どこか、ひっそりとしています。

  『てのひらたけ』
  てのひらたけという幻覚を見せるキノコがとれる、と聞いた男は山に分け入り、それを食した途端に昏倒。母と娘の一家に助けられ、そこの家のお世話になることに。いつの間にか娘に惹かれていき、婚約しようとまで言い出すのですが・・・

  『あの坂道をのぼれば』
  落ちぶれた男の現状と、そこに到るまでの経緯(女に溺れて家族を捨てた)が交互に描かれていきます。主人公は本当にどうしようもない男だなぁ、と感じました。まぁ仕方ないのかもしれないけど。

  『タンポポの花のように』
  廃墟の遊園地で黄色い帽子を持ち、微笑んだまま死んでいる56歳の女性が発見されます。どうして黄色い帽子を持っていたのか。その謎を解き明かす物語。その女性の人生と、女性の遺体を回収し、死後の処理をしにきた家族の場面が交互に組み合わせられています。

  『走馬灯』
  主人公の男は、兄から「30年前に死んだはずの父をこの頃見かける」と言われ、からかわれているのかと思って怒ります。けど、昔、父は幼い子ども時代の自分に対して、未来を予知するようなことを口走っていたなぁ、ということを思い出し・・・

  なかなか良いです。構成が巧み。しかしどれもこれも、幸福感溢れるハッピーエンドにするところは頷けない。綺麗過ぎるというか。


自森人読書 てのひらたけ
★★★★★

著者:  萩尾望都
出版社: 小学館


  宇宙大学の入学試験最終科目は、外部との接触を絶たれた宇宙船に乗り込み、10人の乗員全員で協力しながら53日間生き延びる、というものでした。試験開始とともに、宇宙船に乗り込んだ受験生たち。彼らは、衝撃の事態に遭遇します。宇宙船には、10人しかいないはずなのに11人の乗員が乗り込んでいたのです・・・

  SF漫画の傑作。

  いかにもSF作品っぽい設定と雰囲気。それらが最高です。どう表現すればいいのか分からないけど、「本格的」な感じです。SF小説の名作を越えるほどの面白さを持ち、しかも漫画としても良いです。最初読んだときは感動しました。何度読んでも面白いです。

  登場人物が皆魅力的。11人ものキャラクターを描き分けるのは大変だろうに、『11人いる!』は成功しています。

  主人公は、タダとフロルの2人。タダは、テラ系シベリース出身。超能力に近いほどの直観力を持っていてよく動き回るので11人目ではないかと疑われてしまう人。フロルは、辺境出身。女性的な美人なのにべらんめえ調、それで女扱いされると激怒する人です。その他の9人もそれぞれ個性的。僕はとくにヌーが好きです。体中が鱗に覆われている僧の人。

  僕は、『11人いる!』を読み、萩尾望都という漫画家と出会い、全作品読まなくては、と思いました。とにかく面白いです。

  第21回小学館漫画賞受賞作。


自森人読書 11人いる!
★★

著者:  森博嗣
出版社: 中央公論新社

  飛行機に乗り、戦う「ぼく」が主人公。「ぼく」は、空でしか笑うことができません。「生きる」ということにたいして深い意味を見出すことはないし、ただ飛ぶことだけが目的なのですが・・・

  要約することが非常に難しい作品。

  「スカイ・クロラ」シリーズ第2巻。『スカイ・クロラ』以前の物語。時系列的には一番最初の作品になるのではないか。そういえば、『ナ・バ・テア』単行本の表紙は、印象的な紅い夕焼け。『スカイ・クロラ』の青空の表紙とは、対照的です。

  詩的というかなんというか、非常に淡白ながら凝った表現で埋め尽くされています。いくら読んでも、視界は澄み切っているのに何も見えない感じ。だからもやもやします。そもそも登場人物たちの過ごす世界は、どのような感じなのか分かりません、少し困惑します。しかし、そこらへんのことがだんだんどうでも良くなってきます。

  それで、最後には、主人公自身の描き出す狭い「純粋」な世界のみが残されます。独特の雰囲気。悪くはないのだけど、好きでもない。

  謎だらけ。いろんなことが分かりません。それらのことが解決されることは多分ないかも知れない、と思ったら3巻『ダウン・ツ・ヘヴン』というものがあったので、そちらへ進んでいってもやっぱりすっきりしないです・・・ う~ん、結局のところなんなんだ。


自森人読書 ナ・バ・テア
★★★

著者:  上橋菜穂子
出版社: 講談社

  主人公は、獣と心を通わせることができる少女・エリン。闘蛇(戦闘用の獣)が一時に何匹も死んでしまったために飼育係の母親が処刑され、彼女は孤児となってしまいます。そして、蜂飼いのジョウンに育てられることに。エリンは、その中で獣を愛し、とくに王獣という神の獣に惹かれ、王獣の医術師になることを目指すのですが・・・・・

  非常に丁寧で丹念。少し冗長ではないか、と感ずるほど。

  物語の始めで、いきなりお母さんが死んでしまってびっくり。しかも、よく分からない部分が多くて戸惑います。それに全然話が展開しないし。まぁ先に進むと面白くなるのですが。

  上橋菜穂子の長編ファンタジー小説。

  押し付けの善意ほどたちの悪いものはないということを思い知らされます。この物語の中でも、大公など権力者たちの「善意(けっこう理不尽というか、国が第一の考え方なのだけど)」が人を不幸に追いやる様子が印象に残ります。政治や権力と言うものを、難しい言葉は使わずにエリンの視点に立って見つめていく部分は面白いです。

  しかし、全体的にとにかくゆったりしているなぁ・・・ もう少しスピーディでも良かったのに、と僕は感じてしまいました。

  コミック化、アニメ化されています。


自森人読書 獣の奏者I 闘蛇編
★★★★★

著者:  森見登美彦
出版社: 幻冬舎

  『有頂天家族』は、糺の森に暮らす狸の名門・下鴨家の物語。

  狸界を束ねてきた下鴨家当主・総一郎は鍋にされ、突如として世を去ります。涙に暮れていた一家ですが、母は息子達を立派な狸と信じて励まします。ですが、下鴨家の兄弟は頼りない・・・ 長男・矢一郎は真面目ながら土壇場で力を発揮できません。次男・矢二郎は蛙に化け、井戸に引きこもったまま。三男・矢三郎はどうしようもないおっちょこちょい。末弟・矢四郎は化けるのも上手く出来ません。そこへ、つけ込もうと現れる夷川家の狸阿呆兄弟・金閣銀閣。

  さらに、その狸界に人間世界が交わります。人間に恋をしたたために能力を失った天狗・赤玉先生や、天狗さえ思いのままに放り出し、総一郎を食ってしまった美女・弁天が登場。京都を舞台にして、狸、人間、天狗が入り乱れた大乱戦が始まります・・・

  もう面白すぎです。とくに化かし合いが最高に面白いです。

  筆致は飄々として、それでいてやっぱり捻じ曲がっています。最初は登場人物紹介などもあるのでそこまでではないのですが、進むに連れてスピードが増していきます。一体全体どこへ行くんだーと追いかけていくと、どこまでも突っ走っていってもう止まらない。

  ほのぼのとした部分、ぐっとくる部分、バカバカしい部分、ドキッとさせられる部分いろいろあります。とくに、どことなくダメな下鴨兄弟たち同士のつながりが良いです。今回はダメな大学生の恋愛ではなく、家族愛がテーマみたいです。だから、今までの作品が好きになれなかったという人にもおすすめ。

  2008年第5回本屋大賞ノミネート作(3位)。


自森人読書 有頂天家族
★★

著者:  たつみや章
出版社: 講談社

  主人公は海の民・綿津見一族の娘イサナ。彼女は、「声」を聞くことのできる巫女でした。ある時、木の声が聞こえたため、海に乗り出していきます。それは冒険の始まりでした。彼女は、モリ撃ちの名手クレや、龍一族の生き残りヒコナらとともに、龍王を救い出すことになります。しかし、龍の魂を狙う者たちが現れ、それらと闘うことになり・・・

  児童文学。海を舞台にしたファンタジー小説。日本の神話を下敷きにしているようです。

  「神」というものが、自然に人々の中に存在する世界観は(といっても神を感じるだけなのだけど)、面白いなぁと感じさせられました。よくある「古代世界のイメージ」をモチーフにしつつ、独自の温かい人と神(大自然)とのつながりを形作っています(現実の古代世界は、もっと厳しくて辛い世界だっただろうなぁ、とも想像するけど、これはファンタジーだから夢でも良いのではないか)。

  ただし、「サソリの神シリーズ」や「勾玉シリーズ」などを読んだ後に『イサナ』へくると、どうしても甘さが目立つような気がします。強い苦しみや、鋭い悲しみといったものを作品に取りこみきれていないのではないか。いかにも「子供向け」っぽい、というか。

  とはいえ、作者によってこの作品のためにわざわざ構築された、新たな世界を感じるというのは非常に楽しいことです。

  シリーズ物なのでまだいろんな謎が残されたまま。次回作が楽しみです。


自森人読書 イサナと不知火のきみ
★★★

著者:  万城目学
出版社: 角川書店

  「神経衰弱」というあだなをつけられた「おれ」は周囲との軋轢の結果、一時的に大学を離れ、2学期の間だけ奈良の学校で高校生の子供達を教えることになります。ですが、最初の日から堀田イトという生徒が遅れてきて、しかも自分をからかうような言動を繰り返しました。そこから、戸惑いの毎日が始まります。そうしているうちにやってきた10月。おれは突如として鹿に話しかけられます。「目」を取り戻さないと日本滅亡の危機だ、と脅かされたのです・・・

  のほほんとしたファンタジー小説なのかなぁ。

  鹿やねずみが喋りだすし、奇天烈な設定が存在しています。。なので、ファンタジー小説ということでいいのかなぁとは思うのですが、青春小説ではないか、とも感じます。いろんなものが含まれた小説ということでいいのかなぁ。

  鹿の頭にされてしまう主人公が、おかしすぎます。面白いです。主人公の周囲にいる、個性的な同居人たちもいいなぁと思わされます(下宿先のばあさん、とか)。あとは悪い人も登場するんだけど、その人も奇矯な性格なので、憎めません。愉快です。

  『鴨川ホルモー』の方がインパクトはありました。ただし、こちらの方がどことなくとぼけていて楽しい気がします。全体的に、『坊っちゃん』を思わせる描写や小さな仕掛け(名前やあだ名が一緒)があって面白いです(そもそも主人公が地方の学校へ赴く、という最初の展開からして一緒)。

  ドラマ化もされています。そちらも良かったです。かなりたらたらしていて、やたらと主人公が情けなかったけど、そこがおかしかった。

  2008年第5回本屋大賞ノミネート作(8位)。直木賞候補作。


自森人読書 鹿男あをによし
ウェブサイトhttp://jimoren.my.coocan.jp/
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