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自森人-自由の森学園の人-の読書ブログ
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★★★

著者:  上橋菜穂子
出版社: 講談社

  主人公は、獣と心を通わせることができる少女・エリン。闘蛇(戦闘用の獣)が一時に何匹も死んでしまったために飼育係の母親が処刑され、彼女は孤児となってしまいます。そして、蜂飼いのジョウンに育てられることに。エリンは、その中で獣を愛し、とくに王獣という神の獣に惹かれ、王獣の医術師になることを目指すのですが・・・・・

  非常に丁寧で丹念。少し冗長ではないか、と感ずるほど。

  物語の始めで、いきなりお母さんが死んでしまってびっくり。しかも、よく分からない部分が多くて戸惑います。それに全然話が展開しないし。まぁ先に進むと面白くなるのですが。

  上橋菜穂子の長編ファンタジー小説。

  押し付けの善意ほどたちの悪いものはないということを思い知らされます。この物語の中でも、大公など権力者たちの「善意(けっこう理不尽というか、国が第一の考え方なのだけど)」が人を不幸に追いやる様子が印象に残ります。政治や権力と言うものを、難しい言葉は使わずにエリンの視点に立って見つめていく部分は面白いです。

  しかし、全体的にとにかくゆったりしているなぁ・・・ もう少しスピーディでも良かったのに、と僕は感じてしまいました。

  コミック化、アニメ化されています。


自森人読書 獣の奏者I 闘蛇編
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『論文の書き方―わかりやすい文章のために』
「書くべきものを見つけだす」ために、まずどうすれば良いのかと言うことが記されています。参考になります。論理的文章の書き方などというものがありえるのかというふうに問うているところは面白いです。どのような論理も、飛躍を含むという指摘には納得します。あいまいさが必要だと記されていますが、どうなのだろう。

わかりやすさや、書くことについて考えさせられました。

文章のなかに、明快なつながりがあって、それらの繋がりが納得できるものになりえていれば、文章として良いのかも知れない、と感じました。しかし、それは、なかなかに難しいことです。文章というものは一筋縄ではいかない、と感じます。

とはいえ、とりあえず、わかってもらうことにこそ、意味があるのだという著者の立場には賛成です。誰が読んでもわからない文章に意味があるとは思えない。それはそれで面白そうだけど。

当たり前のことを書いても面白くないし、かといって暴論を書くのは良くないし。まずは、常識を疑うことが必要だと書いてありますが、その通りだなぁと感じます。


読んだ本
小笠原喜康『論文の書き方―わかりやすい文章のために』

読んでいる最中
スティーヴン・バクスター『時間的無限大』
『センセイの鞄』
主人公は三十七歳の大町ツキコ。彼女は、一杯飲み屋で、センセイに出会い、酒を飲みつつ、語りあいます。センセイは国語の教師です。背筋を反らせ気味にカウンターに座わり、「ワタクシは・・・」と律儀に語ります。そして、詩や内田百間を引用します。昔、ツキコもセンセイに国語を学んだことがありました。ツキコとセンセイはであってから、少しずつ、少しずつ惹かれあってきますが・・・

もわっとした恋愛小説。

なんともいいがたいです。案外饒舌なのだけど、なんとなく言葉が足りない気もします。語りつくされているということがないのです。ふわっとしたものが取り残されているような印象を受けます。

川上弘美らしい小説です。

今回は、普通の恋愛小説としても読めてしまいますが、やはり川上弘美の小説は普通ではない気がします。普通、現実といわれているものを忠実にうつしとるつもりはないようです。

だから、普通の小説として読むと不自然な部分が散見されるし、様々な人に批判されているようです。だけど、それらの批判は、全て的外れではないか、と感じます。はふっという感じ、なのだから、それを楽しむべきではないのかなぁ。

すーっと通り過ぎていくので、少し印象が薄いけど、それこそが『センセイの鞄』なのではないか。

平凡社。


読んだ本
川上弘美『センセイの鞄』

読んでいる最中
スティーヴン・バクスター『時間的無限大』
★★★★

著者:  川上健一
出版社: 集英社

  主人公は、神山久志という少年。彼は野球部で万年球拾いをやっていました。しかし、ある夜、ビートルズのプリーズ・プリーズ・ミーを聞いて変わります。彼は野球で大活躍。そして、大人の男になるために、日本で最も処女が失われるという十和田湖へ旅立ちます。そしてとにかくセックスしようとするのですが、クラスメイトの女の子と出会い・・・

  極上の青春小説。

  ツボをきちりと押さえてあります。要するに「典型的な青春小説」なわけです。展開がいくらなんでもうまくいきすぎじゃないか、と思う部分もあります。でも、そこらへんが気にならないほど面白いし、絶妙です。読後感は最高。

  引っ込み思案だった少年・神山久志を変えたのはビートルズの音楽という設定なのですが。ビートルズの衝撃というものを、僕は分かることが出来ません。「ビートルズは革命だった」のか・・・ う~んどんな感じだったのだろう。学校がビートルズを禁止したというのは信じられないです。

  あとは、「とにかく暴力ばかり振るう大人たち」というものも想像することしかできないです。そんな時代があったのか。そういう見えやすい抑圧があったから、かつての学生たちは手を取り合い、連帯できたのかもしれないと少し考えました。今では、もっと直接的な抑えつけではなくて「将来が危ないよ」という脅しになってきている気がします。

  第17回坪田譲治文学賞受賞作。


自森人読書 翼はいつまでも
★★★

著者:  絲山秋子
出版社: 講談社

  絲山秋子の短編集。『袋小路の男』『小田切孝の言い訳』『アーリオ オーリオ』収録。本屋大賞候補作だったので読んでみました。

  『袋小路の男』『小田切孝の言い訳』は連作短編。ダメな男、小田切孝からいつまでも離れない日向子が主人公です。「究極の純愛小説」というふうに紹介されていたので、『ナタラージュ』みたいな小説なのかな、と思いきや、そのようなことはありませんでした。なんとも言い難いです。何にでも、究極とつければ良いというものでもないと思うんだけど・・・ 『袋小路の男』は川端康成文学賞受賞作。

  『アーリオ オーリオ』は、宇宙というものをテーマに据えた小説。姪と、天文学好きの叔父との文通から、何やら切なさが染み出てきます。

  一番良いと感じたのは『袋小路の男』。

  でも、『小田切孝の言い訳』は、別の意味で面白かったです。小田切孝という男のどうしようもない、救い難いほどの自己中心主義が的確に表現されているところが良いです。呆れてしまうけど、そこがとても印象的なのです。ただし、普通に面白いというだけでそこまで凄い傑作だとは感じませんでした。とくに、好きにもなれないし。

  読んでいて、絲山秋子は日常の中の些細な風景を切り取るのが巧い人だなぁと感じました。しかも、物語を転がしていくのも上手。思わせぶりなドラマティックな展開ではないのに、しっかりとメリハリがきいていて読まされます。ただし非常に普通。可もなく不可もなくと言う感じ。

  2005年第2回本屋大賞ノミネート作(4位)。


自森人読書 袋小路の男
★★★

著者:  藤沢周平
出版社: 文藝春秋

  藤沢周平の短編集。

  『夢ぞ見し』『春の雪』『夕べの光』『遠い少女』『長門守の陰謀』 収録。

  『夢ぞ見し』。昌江は、ぶっきらぼうで無口で帰りの遅い夫・甚兵衛にうんざりしていました。理由を聞いても口の重い甚兵衛の返事は煮え切らないのです。そんなある日、美男の若者が突然現れ、家に泊まらせることになります。昌江はときめくのですが・・・

  だいたいそんな感じの短編が5つ集められています。どれも、普通の人が、何らかの理由によって(偶然から、とか、出来心から、とか)大事に巻き込まれるというパターンの小説です。ただし、表題作の『長門守の陰謀』だけはちょっと色合いが違います。その短編は、長門守と庄内藩との間に巻き起こった暗闘をさらさらとまとめた作品。僕は、とくに『夢ぞ見し』が良かったと感じました。

  藤沢周平は、物語を組み立てていくのが非常に巧みです。余分な部分がなく、しかも文章は簡素かつ堅実なので、非常に理解しやすいし、まっすぐに読み進めていくことが出来ます。だからいろんな人に愛されるのではないか、と感じました。

  しかし短編なのですらっとしているのだけど、溢れるような迫力とかはありません。長編を読みたいなぁと思いました。


自森人読書 長門守の陰謀
自由の森学園の評判のコト・モノってなんだろうということで。
思いつくままに。
なんだか別に評判でもないものも混じっている気がしますが。

自由の森学園 評判のコト・モノ

● テストがない

   点数による序列化を行わない、
   というのが自由の森学園の一番大切にしていることだと思う。




● 選択科目

   選択肢はたくさんあります。
   哲学、中国舞踊、選択演劇、日本の芸能、サンバ、英語。
   サッカー、細密画、木版画、農業、飯能地域研究、韓国講座、数学・・
   選ぶのに困ってしまいます。




● 民族舞踊と郷土芸能

   いろんなところから引っ張りだこ。とても評判ではないかなぁ。





● 食堂

   美味しい。
   高いけど、食材にこだわられています。





●ビオトープ

   五期生の人たちが作ったものだそうです。
  (五期生の人に教えてもらいました、ありがとうございます!)


日々のビオトープの写真





● サンバ

   サンバやってる高校はなかなかないのではないか。
   浅草カーニバルにも参加しています。





●人間生活科

   衣食住をまたにかける面白い教科。
   食品添加物とか、伝統の食事とかを学んだりします。

人間生活科の授業





●森の時間

   農業や戦争のことなどを学びます。
   ようするに総合学習。
   けど、その中身が面白いのです。
   田んぼとか、プロジェクト菜の花とか、貧困とか。

その他面白そうなもの・・・

・テニス部
・弓道部
・人力飛行機部
・学園祭の気球消える
・自森生、イラクの子たちとテレビを通して対話
・アフリカの子ども達のためにいらなくなったプリンタカートリッジを集める
・日中対話
・今井紀明さんを招く
・菜の花プロジェクト
・演劇
・キャラバン(民族舞踊・郷土芸能・中国舞踊)
・私学助成金活動
・9条の会「9理の会」
・ライヴ
・ガラス工芸部
・新聞部(潰れた)
・手品部
・鉄道研究部
・野球・サッカー
・時代劇
330RUN!RUN!RUN!
★ 桂望実

329みんな元気。
★★★ 舞城王太郎

328煙か土か食い物Smoke, Soil or Sacrifices
★★★★ 舞城王太郎

327有頂天家族
★★★★★ 森見登美彦

326蠍のいる森
★★★ 小池真理子


著者:  桂望実
出版社: 文藝春秋

  主人公は天才ランナー・優。彼の目標はオリンピック。誰に対しても傲岸不遜な態度を取り、「仲間」というものを認めようとしません。そして、箱根駅伝は自分にとっては通過点に過ぎないと言い切り、ただ1人どこまでも突き進みます。ですが、勉学の天才だった兄が自殺したことから家庭が崩れだします。そして、ある驚愕の秘密に気付いて苦しむことになります・・・

  青春小説。

  あまりにも文章が雑というか、締まりがないです。まぁいつでも桂望実はそういう感じなのですが。あと、中身も荒いです。なんというか、適当じゃないか。付け焼刃で書いたらしい雰囲気が漂っています。しっかりと調べて書いてくれれば、非常に納得できて、もっと良くなっただろうに。

  ただし、人間模様は面白いし、人物の描写はなかなか良いです。憎たらしい主人公の描写は、優れています。本当に嫌な奴だなぁ、と思わされるし、彼の世話をしてあげる友達・岩ちゃんが良い人なのだということが分かります。

  途中からは、まぁ予想通りの展開ではあるのだけど、じょじょに面白くなってきます。明らかになってくる事実が、結構衝撃的。一種のミステリとしても読めます。

  とはいえ、もう少しどうにかならないのだろうか。中身は面白いのに、とにかく文章や文体などが酷いです。


自森人読書 RUN!RUN!RUN!
『響きと怒り』
アメリカ南部の名門コンプソン家の没落を綴っています。第一章「一九二八年四月七日」の語り手は知的障害を持った三男ベンジー。彼は、様々なことを飛び飛びに想い、考えていますが言葉に出来ず、介護されています。第二章「一九一〇年六月二日」の語り手は錯乱しかけた長男クェンティン。彼はハーバード大学に入学しましたが、妹のキャディの乱交に心を痛め、彼女の罪を薄めるため、妹を犯した、つまり近親相姦の罪を犯したと妄想し、父親に言いますが信じてもらえません。ですが、本人はそれを信じ込み、狂っていきます。第三章「一九二八年四月六日」はの語り手は次男ジェイソン4世。彼は一家を支えています。出奔した姉キャディと彼女の産んだ私生児クェンティンを憎悪し、姉がクェンティンに送っているお金を隠しています。それが混乱と争乱を招きます。第四章「一九二八年四月八日」は第三者の視点から綴られています。

連作ヨクナパトーファ・サーガ中の1冊。

意識の流れと呼ばれるような手法が用いられています。とくに第一章と第二章は理解し難いです。辛くなってくるほど。斜体(イタリック)が頻出し、そのたびに場面が転換したり、転換しなかったりします。不意に句読点がなくなってしまうこともあります。

ですが、文章は非常に美しいし、惹かれます。

「ぼくは夕闇のむこうに曲がりくねった川の流れを嗅ぎとることができ、すると最後の明かりがこわれた鏡のかけらのような海水のたまった沼地の上に、あお向けに静かに映っているのが見え、ついでその明かりの向こうの青白く澄んだ空中に、まるで遠くで舞っている蝶々のように様々な光が震えながら輝きだした。」というような感じ。酔いそうなほど綺麗です。

多くの登場人物、とくにコンプソン家の人たちは、どこか壊れています。壊れていない人間の方が珍しいのかも知れない、と感じます。

講談社。


読んだ本
ウィリアム・フォークナー『響きと怒り』

読んでいる最中
川上弘美『センセイの鞄』
『無限と連続』
無限のことを深く考えていく前に、まず数について考えていきます。普段、誰もが何気なく数を使っています。ですが、実は数というものも案外奥が深いのだということを遠山啓は明らかにします。2+3が、5だということはすぐに分かります、一つ一つ数えていけば良いのです。しかし、200000000と300000000を地道に足していこうとすれば、大変な時間がかかります。恐ろしいことになります。素直に数えるのでは無理です。そういうときどうするか。

1億をひと塊とみれば良いのです。そうすると、2億という数は「1億」の塊が2つ、3億という数は「1億」の塊が3つ集まったもの、ということになります。そうすれば、すぐに足せます。「「1億」の塊2つ+「1億」の塊3つ=「1億」の塊5つ」です。だから、「2億+3億=5億」というふうになります。

そこで、遠山啓は、「数の概念の規定は集合数と単位であり、数そのものは両者の統一である」というヘーゲルの言葉を引用しつつ、「1億という数は、一方では1をたくさん集めたものである点では集合数であり、他方ではひと塊とみなされる点では単位」であると示します。つまり、相反するものが数のなかには共存していることを明らかにするわけです。深いです。しかし、まだ、それがスタート地点。そういうふうにして、基礎的な部分にも論理が活きていることを確認してから、カントールの集合論、幾何学、群論、位相空間、トポロジー、非ユークリッド空間などを扱っていきます。

平明な啓蒙書。1952年初版。

遠山啓は、はしがきで、「音符が読めなくても、すぐれた音楽鑑賞家にはなれるように、難解な数式などに触れずとも数学を鑑賞することはできるのではないかという乱暴な類推を頼りにし、ひたすら読者の知的感受性をあてにしながら、この弁明をつづった」と書いています。

数学の定理が、発見者の人生などとからめつつ説明されているので、興味が持てます(「盲目の幾何学者」ポントリャーギンなど)。多用されるたとえが面白いところも良いです。

「第1章 無限を数える/第2章 「もの」と「働き」/第3章 創られた空間/第4章 初めに群ありき」といった各章のタイトルも魅力的。

最後の辺りはかなり難しいのですが、全体的にはわかりやすいです。数学というもののことが分かります。数学は、物事を抽象化するわけですが、その抽象化の過程を理解することが出来ます。だから、面白いし、興味深いです。数学の中では、独特の言葉が多用されるわけだけど、それらについても説明されています。「点」や「距離」といった言葉が、数学の様々な分野で使われているので混乱しますが、『無限と連続』を読んでおくとさほど混乱しないはず。


読んだ本
遠山啓『無限と連続』

読んでいる最中
川上弘美『センセイの鞄』
『世界の果てまで何マイル』
トーキング・マンは自動車整備工場を営んでいましたが、実は魔法使いです。時の終わりエレンノーの塔から来たのです。エレンノーの反対側には、エドミニダインがあります。トーキング・マンは恋人ジーンを夢見るのだけど、彼女が「非在」を夢見たために世界が危なくなります。なのでトーキング・マンは「非在」を持ち、逃げます。そうして、今、トーキング・マンは過去へいき、娘クリスタルとともにアメリカ東部で生活しているのです。ある日、トーキング・マンは謎の女に銃撃され、客の大学生ウィリアムズのムスタングを勝手に使い、逃亡。クリスタルとウィリアムズは、クライスラーに乗り、トーキング・マンを追って旅にでます。

ファンタジー小説。

アメリカ東部を物語の舞台にしたロード・ノヴェル。車にのり、旅をするクリスタルと、ウィリアムズは少しずつ惹かれあっていきます。二人の恋愛は順調です。全体的に単調なのですが、少しずつ周囲の風景が変わってきます。いつの間にか、現実から離れているのです。

現実と幻想が絡み合っています。

文体はサクッとしています。軽快なのです。無駄なものが削られています。説明は少ないし、物語自体も単純。読みやすいのだけど、なんだか物足りない気もします。

「非在」のことも、ジーンのことも、詳しくは分かりません。だけど、それが味なのかも知れないとも思います。想像を膨らますことができます。


読んだ本
テリー・ビッスン『世界の果てまで何マイル』

読んでいる最中
遠山啓『無限と連続』
5月3日。愛知で、新入生歓迎フェスティバルがありました。
南山大学のキャンパスをかりて、模擬店企画、クラス企画、ステージ企画、
スポーツ企画、文化企画、交流企画などを行っていました。

カーニバルではあるものの、主題は私学の無償化。

公立だけが無償になり、
私立には高い学費がかかるのはおかしいということで、
その格差を縮めて欲しい、と訴えていました。
同じだけの税金を払っているのに、なぜに私立だけが異様に高いのか?

全国高校生サミットは凄かったです。
全国から大勢の高校生が集まってきていました。
全国高校生サミット

ダンスステージ。
新入生歓迎フェスティバル


最後の群舞も物凄かったです。
愛知の高校生が集まり、「Power to the People」にあわせて踊り、
それから「じょいふる」を踊っていました。
新入生歓迎フェスティバル

新入生歓迎フェスティバル

★★★

著者:  舞城王太郎
出版社: 新潮社

  『みんな元気。』は舞城王太郎の中短篇集。『みんな元気。』『Dead for Good』『我が家のトトロ』『矢を止める五羽の梔鳥』『スクールアタック・シンドローム』収録。

  『みんな元気。』
  朝起きると姉が15センチほどベットから浮いてました。驚いて家族を呼ぶけど、そのうちそれどころじゃないことが起こります。なんと、空飛ぶ家族が現れ、朝ちゃんと昭との交換を求めてきて、朝ちゃんを連れて行ってしまったのです。竜巻に乗ってそれを追跡するのですが、結局朝ちゃんは去り、昭が新たに家族の一員となるのですが・・・

  『Dead for Good』
  暴力男・兼益によって半身不随になり、いきなり白目を剥いて狂ったように笑うようになってしまった男が主人公。死ぬってなんなんだ、と問う作品。

  『我が家のトトロ』
  娘の千秋が我が家の飼い猫レスカはトトロだと言い出し、脳医学者を目指す主人公は、いろいろ考えてみるのですが。

  『矢を止める五羽の梔鳥』
  よく分からない話。少女連続殺害事件と、山火事が起きて・・・ それが絡み合っているのかいないのか問うていったら、いつの間にか全てが現実から後退していったというような話。

  『スクールアタック・シンドローム』
  3人の生徒によって、600人もの生徒と教員が校舎ごと吹き飛ばされるという事件が起きた世の中を舞台にした物語。引きこもりの父親と、学校の人間全員を皆殺ししようとしている小学生が主人公。

  朝ちゃんが、「みんな元気」というところで笑ってしまいます。すでに、物語が展開していくことに意味が失われかけています。全体的に、ぶち壊れ度がさらにあがっているわけです。ただし、他の作品に比べれば文章は読みやすくなっています。だからなんとか最後まで振り落とされずについていけるけど、もう何が何やら把握できません。

  物語のテーマというものはすっきりとは示されません。よくは分からないけど、多分、「選択」/「愛」/「家族」なのだろう、と思います。何かを選び取ることは何かを切り捨てることである、という部分には納得します。だからって首を切り落とす、というふうに持っていくのはよく分からないけど。分かってたまるか、という感じなのか。


自森人読書 みんな元気。
★★★★

著者:  舞城王太郎
出版社: 講談社

  アメリカサンディエゴで活躍していた救命外科医・奈津川四郎のもとに凶報が舞い込みます。母が、連続主婦殴打生き埋め事件に巻き込まれ、昏睡状態に陥ってしまったというのです。四郎は故郷西暁町へ帰り、犯人を探し出してぶっ潰すべく駆けずり回ることになります。彼は事件を解決できるのか・・・? 血と暴力に彩られた壮絶な小説。

  血塗られた奈津川家の物語。テーマは家族愛、なのだろうか。

  舞城王太郎の特長は、まず文体。読点句点が削られています。そして、英文はカタカナで表記されています。とにかく混沌としていて、暴走しまくりです。だから、読みにくいはずなのですが、テンポは良くてぐいぐいと引っ張られます。

  探偵やら暗号やらがでてくるので、一応装いはミステリっぽいなのですが、ミステリ小説としての枠組みを破壊しかねない勢いがあります。謎解きはほとんどこじつけに近いし、そもそも扱われている事件だって奇怪過ぎて阿呆らしいです。ミステリとして読むのが間違いなのではないか。

  何もかもがぶっ壊れた世界の中でも消えない、家族というもののつながりを感じる小説なのかも知れません。しかし、愛とは残酷なものではないか、とも感じます。人を救うのも壊すのも愛か。

  暴力が満ちている割には、テーマ自体は恥ずかしいほど真直ぐ。受け付けない人は絶対に受け付けないだろう作風。でも、僕は凄いや、と感じました。傑作ではないかと感じます。

  第19回メフィスト賞受賞作。


自森人読書 煙か土か食い物Smoke, Soil or Sacrifices
「子どもの本・九条の会」二周年の集い、が5月1日にありました。アーサー・ビナードさんの講演がある、というので聞きに行きました。まずは、ひのき屋がライヴしていました。

それから、アーサー・ビナードさんの講演。「ミイラ憲法の作り方教えます」というタイトルでした。非常に面白かったです。


アメリカの憲法はけっこういいこと書いてある。
だけど、もうミイラ化しているのです。
「議会が、宣戦布告しないと戦争を始めてはいけない」ということになっている。
しかし、守られていない。
実はアメリカが最後に宣戦布告した相手は、ドイツ、日本に対して。

1947年からそうなってしまった。
その頃から、アメリカは、戦争という言葉を使わず、防衛・国防という言葉を使うようになった。
そして、宣戦布告せずに、戦争を始めた。

大小含めて200回以上戦争しているのに、アメリカは決して宣戦布告しない。
戦争を、防衛といいかえることですりぬけている。
つまりアメリカの憲法はミイラ化して、カサカサで、効力をもってないということ。

憲法のミイラ化はアメリカだけのはなしではない。
日本の憲法のミイラ化もすすんでいる。
20年前、ちょうど自分が日本へ初めてきたときのこと。
国外へ自衛隊を派遣しようとしていた小沢さんは憲法に阻まれた。
そして、結局、自衛隊を国外へ送れなかった。
だから、「日本の憲法は生きている」ということを知って、自分は感動したんだけど。

何十年か後、もしも日本が戦争をする国になっているとして、
そのとき決定的なかわり目はどこだったか、と振り返ったならば、
多分、2009年の「海賊対処法」ということになるでしょう。




というようなはなしをしていました。
『マンゴーのいた場所』
文字、数字には、それぞれ各々の色や形がある、とミアは感じていました。しかし、授業のとき、そう言ってみたら、「頭おかしいんじゃない」といわれてしまいました。それ以来、他の人は文字や数字には色も形があるとは思っていないと知り、彼女は家族にも親友にもその感覚を隠すようになります。おじいちゃんの葬式の日、猫が現れます。ミアはその猫におじいちゃんの魂の一部が宿っているように感じたので、その猫を飼い、愛するようになります。声がマンゴー色だったので、ミアはその猫をマンゴーとよびます・・・

共感覚を扱った小説。

馴染みのない共感覚というものが扱われているのだけど、非常に面白いです。それだけに重きを置いているわけではないからです。思春期を迎えようとしているミアの物語が展開されていきます。彼女の心の揺れ動きはじれったいけど、分からないでもないです。けど、分からないかなぁ、やっぱり。

女の子の関係というのは大変なんだなぁ、と思いました。

共感覚とは、五感のうち二つ以上の感覚が同時に働いて起こる知覚現象だそうです。人によって違うそうですが、たとえば、ただの黒い文字の羅列をみていても、その字ごとに色があるように感じられるらしいです。

世界がカラフルなのは楽しいかも知れない、と感じます。

だけど、それを表明すれば、おかしい人だと指差されてしまいます。普通と違うからと言って「おかしい人」になるのは変だなぁと思います。普通というのは、そもそもなんだろう。多数派のことなのか。

各所に顔をみせるマンゴーがかわいいです。


読んだ本
ウェンディ・マス『マンゴーのいた場所』

読んでいる最中
テリー・ビッスン『世界の果てまで何マイル』
★★★★★

著者:  森見登美彦
出版社: 幻冬舎

  『有頂天家族』は、糺の森に暮らす狸の名門・下鴨家の物語。

  狸界を束ねてきた下鴨家当主・総一郎は鍋にされ、突如として世を去ります。涙に暮れていた一家ですが、母は息子達を立派な狸と信じて励まします。ですが、下鴨家の兄弟は頼りない・・・ 長男・矢一郎は真面目ながら土壇場で力を発揮できません。次男・矢二郎は蛙に化け、井戸に引きこもったまま。三男・矢三郎はどうしようもないおっちょこちょい。末弟・矢四郎は化けるのも上手く出来ません。そこへ、つけ込もうと現れる夷川家の狸阿呆兄弟・金閣銀閣。

  さらに、その狸界に人間世界が交わります。人間に恋をしたたために能力を失った天狗・赤玉先生や、天狗さえ思いのままに放り出し、総一郎を食ってしまった美女・弁天が登場。京都を舞台にして、狸、人間、天狗が入り乱れた大乱戦が始まります・・・

  もう面白すぎです。とくに化かし合いが最高に面白いです。

  筆致は飄々として、それでいてやっぱり捻じ曲がっています。最初は登場人物紹介などもあるのでそこまでではないのですが、進むに連れてスピードが増していきます。一体全体どこへ行くんだーと追いかけていくと、どこまでも突っ走っていってもう止まらない。

  ほのぼのとした部分、ぐっとくる部分、バカバカしい部分、ドキッとさせられる部分いろいろあります。とくに、どことなくダメな下鴨兄弟たち同士のつながりが良いです。今回はダメな大学生の恋愛ではなく、家族愛がテーマみたいです。だから、今までの作品が好きになれなかったという人にもおすすめ。

  2008年第5回本屋大賞ノミネート作(3位)。


自森人読書 有頂天家族
★★★

作者:  小池真理子
出版社: 集英社

  有馬美千代は、犬を拾ったことから偶然、江田真樹子と出会い、友達になります。美千代が人と心を通わせるのは、ほぼ生まれて初めてのことでした。そんな美千代の神経質さを慮ってか、真樹子は望月源太という好人物を紹介します。すると途端に、有馬美千代と望月源太は近しい中になりました。一方、江田真樹子は便利屋・高木修平と出会い、彼を愛するようになります。ですが、高木修平は真樹子を弄ぶだけでした。彼は、ハンサムで機転のきく男なので、幾らでも女を惹きつけることができたからです。高木修平は、阿久津絹枝という金持ちのお婆さんを騙して、その遺産を奪おうと画策しますが・・・

  サスペンス小説。

  図書館に務める神経質かつ人嫌いの若い女性、有馬美千代。英国人と離婚した翻訳家の女性、江田真樹子。熊みたいな児童文学作家、望月源太。人を嘲り、便利屋をやっている「天才詐欺師」高木修平。その4人の愛憎の物語に、阿久津絹枝というおばあさんが絡んできます。

  高木修平がかなり嫌なやつです。まぁ面白くて、憎めない部分もあるんだけど、全体としては好きになれません。

  最初は、延々と続く平穏な日常の描写に少し疲れます。しかし、中盤まで乗り切れれば、あとは最後まで一気に読めてしまいます。小池真理子は、どこにでもいる普通の人が突然、事件/非日常に巻き込まれる、という展開の小説をたくさん書いているそうです。それが、すごく面白いです。

  ドロドロした部分もあるけど、最後は爽快、か・・・


自森人読書 蠍のいる森
『水晶内制度』
原発を中心に据えた女の国ウラミズモが生まれます。そこには女しかいません。女は女と暮らすか(一致派)、あるいは人形とともに暮らす(分離派)ことを求められています。そして、男は人間ではないので、人権がありません。男性保護牧場に収容されています。その国へ語り手である主人公は放り込まれます。彼女はウラミズモにきて間もないのですが、何らかの処置を施されているらしく、記憶がバラバラです。戸惑いつつも、なぜか国のために妄想を用いつつ、出雲神話を書きかえていくことになります・・・

フェミニズムを扱った小説。

原発、出雲神話、児童ポルノ規制法案、翼をはやしたワニ、ロリコン、水晶夢、国家、歴史、発光納豆、常世、ミズハノメ、ははははははは、ミーナ・イーザ、排泄、宗教、フェミニズムといった様々なものがぶちこまれています。だから、気持ち悪いのに、そのハイブリッド的というべき文体は魅力でもあります。

頻出する「うわーっ。」にびっくり。

神話の読み替え、書き換えが行われています。あまりにも強引なのですが、神話や国民文学をつくる、というのは、つまりそういうことではないのか。

男女が反転されています。そして、性差別が誇張され、増幅されているのだけど、それが故に日本のおかしさが際立っています。現実世界において女性はどれだけひどい扱いを受けているのか、と考えると怖くなってきます。

主人公のみる水晶夢は非常に美しいです。それが印象的。


読んだ本
笙野頼子『水晶内制度』

読んでいる最中
ウェンディ・マス『マンゴーのいた場所』
 自由の森学園は明星学園から、わかれるような形で生まれた。全国の生徒・保護者から支持され、期待されていたという。
 自由の森学園の設立理由はだいたい下のようなもの、だと思われる。

・点数(による序列化)を用いた教育を否定する
・内部進学テストの導入に反対する
・公開研究会の中止に反対する
・国家による教育の独占化・中央集権化に反対する
・暴力と統制が溢れる学校制度を支える側にならない
・表現を重んじる

 自由の森学園設立の代表者は遠藤豊。
『あるキング』
地方球団・仙醍キングスは負け続けています。毎回のように負け、毎年最下位になるのが普通でした。しかし、熱烈なファンはいるものです。ファンだった父母の間に、山田王求が生まれます。彼は、生まれたときから、王になるべく運命付けられていました。彼はバットを手に取れば、絶対にヒットかホームランを打ちます。しかし、それがゆえに過酷な人生を送ることになります・・・

奇怪な小説。

非常に奇天烈なので、評価が分かれるのではないか、と感じます。『あるキング』という小説自体が不可解です。爽快ではないし、死やセックスなどが各所に、気軽に放り込まれています。突如として、怪物が現れることもあります。ぎこちないです。

シェイクスピア『マクベス』を下敷きにしているようです。三人の魔女が節目節目に登場します。しかし、『マクベス』とは逆転している気もします。あえて、なのか。

重いものを重いものとして扱わないところは、いつもの伊坂幸太郎作品と同じだけど、オチを用意しないところが変わっています。読者を困惑させようとしているのではないか、と感じました。いつもの伊坂幸太郎作品を期待していた人が読めば、必ず駄作というはずです。けれど、駄作ではない気がします。

面白い企みではあります。しかし、わざとはずしているのだけれど、それがはずれになっていない気もします。まだ真面目すぎる、というか。世の中には、奇天烈な小説が溢れているからなぁ・・・


読んだ本
伊坂幸太郎『あるキング』

読んでいる最中
笙野頼子『水晶内制度』
『沈黙』
日本で布教活動に励んでいたイエズス会の教父クリストヴァン・フェレイラが激しい弾圧を受け、棄教した、という知らせが伝わってきます。フェレイラの弟子たちはそれを信じられず、日本へ向かいます。その一人であるセバスチャン・ロドリゴは、日本につくと、隠れ切支丹の中に潜伏し、キリスト教を広めようとします。ですが、江戸幕府などにすぐさま追われ、しかも、神の沈黙に直面することになり・・・

キリスト教に関する小説。史実を基にしているそうです。

信者が酷い目にあっているというのに沈黙を守っている神の心が分からず、主人公は苦悩します。そして、神を信じられなくなっていきます。神を信じる、というのはどういうことなのだろう。

最後には、壮絶な転回が待っています。

しかし、その転回には納得します。キリストは弱い者のためにあるのではないか。だけど、それもまた日本的な変容に過ぎない、ということもできるのかも知れません。

「日本は恐ろしい沼地である」と漏らすフェレイラの姿が印象的です。日本は、多くのものを外側から摂取しているようにみえます。むしろ外から来たものしかない、といってしまってもいい気がします。しかし、外からきたものをもとからあるものに変容させてしまう不気味な力があるのではないか、という指摘は面白いし、頷かされます。


読んだ本
遠藤周作『沈黙』

読んでいる最中
伊坂幸太郎『あるキング』
325行きずりの街
★★ 志水辰夫

324夜のピクニック
★★★★★ 恩田陸

323赤朽葉家の伝説
★★★★★ 桜庭一樹

322架空の球を追う
★★ 森絵都

321さくらえび
★★ さくらももこ
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